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【あらすじ】
Iターンプロジェクトによる廃村へ移住者に定住してもらう計画。
特別に設置された市の「甦り課」に日々舞い込んでくる移住者達のトラブルと謎。
去っていく移住者達の悲喜劇。
【感想】
途中、陳腐な内容の話も出てくるけど、実はそれすらもこの物語全体で見ればなるほどと腑に落ちる内容。
第一章からあった違和感が終章で全て繋がっていく。
米澤先生の作品は「満願」や「王とサーカス」などどれも面白い。
氷菓シリーズも含めれば10作品近く読んでいるかもしれない。
この作品もとても面白かった。
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読み進めても、何がしたいんだろう、何が言いたいんだろうと、意図を読み取ることに腐心した。
最後にようやく納得できたが、ちょっとなあ。
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Iターンプロジェクトをサポートすることになった、1人の公務員が主人公。
単純な『そして誰もいなくなった』のオマージュではなく、その枠組みを使って、地方自治の難しさ•市民の生活を支えるべき公的団体であっても、常に予算と睨み合わなければならないことなどを、巧みに伝えた作品だった。
社会問題を伝える本格ミステリとはまた一味違ってとても興味深いし、ミステリーとしても完成度が高くてとても面白かった。
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限界集落、蓑石は最後の住人が亡くなり消滅する。
8年後、消滅集落を再生させる市長肝入りのプロジェクトが始動する。その集落で起きるちょっとした事件を連作短編のように描いていく。
限界集落や移住者の描写が非常にリアル。公務員の裏事情のようなコミカルな会話も楽しい。
同じ作者の『リカーシブル』を少し思い出した。
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この流れ前にもみたな。短編の集合体が、全体の大きな流れの伏線になってる系。
短編、短編の結末が結局同じになるので、すこし間延び感がある印象。
とはいえ、それぞれの伏線がキッチリ回収される流れは爽快な読み応え。
裏の意図というか背景の部分だったり、主人公の心理描写の印象が少し薄く感じたかなぁ。
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僕にとって、米澤穂信は、読んで後悔することがない。安心して手に取ることができる。地味だ、と感じる人もいるとは思うが、米澤が描いて見せる、滑らかな連続体を思わせる小説空間は、とても居心地が良い。
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社会派ミステリー小説
やや満足 時間つぶしには良い
著者のミステリーでの楽しみは、フレームのバリエーションのおもしろさかなと思う
地方行政の実態に関心ある人なら、このミステリーを楽しめると思う
国内の地方公務員数は、令和3年4月1日現在、280万661人で、平成6年をピークとして対平成6年比で約48万人減少
対前年比は、3万8,641人の増加
読者ターゲットとしてのマーケット規模ともいえる
地域活性化は多くの自治体の重要課題だ
Iターンを積極的に募集アピールしている自治体はかなりの割合になるのだろう
コミュニティデザインだとか
サポートコンサルビジネスも流行ってもう長いことになる
辻村深月など、毛色の違う作家を含め
色々な形で小説も作られてきているテーマだ
タイトルは、Iターン の悲劇 だ
過疎化する地方に都市部から住民が移住する
地方行政の施策
市役所は、住民の減少にブレーキをかけるための大事な施策として取り組む
小説は6つのエピソードでは、この山間部に移り住んだ人たちに起こるトラブルをミステリー仕立てで描かれる
新規定住者支援プロジェクトをになる、市役所の 甦る課 の職員3人の視線から描かれるのだが、最後に行政のカラクリとして表現されるネタ明かしがある
地方行政の逼迫した切実な財政のやりくりを現場でどう切り盛りするのか ありそうな話ではないだろうか
この著者は、滅び去るものを描くのも好きなんだろうと思う
身近な感覚で読める気軽なミステリーで、社会勉強にも良いのではなどとも思います
楽しめそうでしょ
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Iの悲劇/軽い雨/浅い池/重い本/
黒い網/深い沼/白い仏/Iの悲劇
始まりの悲劇が終わって、復活への活動が始まり、終わりの悲劇の理由が……
活動に弄ばれたような人々のその後の暮らしが気になって仕方がない。
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Iターン移住による起こる悲劇が綴られていき、そして誰もいなくなる。
おやおや、それでは結論を言ってしまっているのでは?と思うなかれ。
何が本当で何が嘘なのか、よく分からなくなる。その正義は本当に正義なのか。自分の価値観が思い切り揺さぶられる1冊になっている。
米澤穂信さんの作品では「王とサーカス」が好きなので、似たような空気感を持っていそうなこの1冊は読んでみたいと思った。
ひとつの章で必ず誰かに何かが起こり、1人また2人…と10人が出て行ってしまう。果たしてこれは蓑石の呪いなのか?などと不穏な空気感を醸しつつも、話は進んでいく。得体の知れない恐怖感と、現実問題としての恐怖感が相まって、ミステリー要素を色濃くしているように思う。
田舎の住みづらさを利用した上手いミステリー。
とても面白かった。
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ミステリーのエラリークイーン「Xの悲劇」・「Yの悲劇」・「Zの悲劇」、夏樹静子さんの「Wの悲劇」へのオマージュ?...と思わせる表題に惹かれ、買って読みました。
米澤さんの著作は、「黒牢城」・「王とサーカス」・「満願」など数冊読んでおり、期待していましたが、とてもおもしろかったです。
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過疎を通り越して無人となった村へ、他県から住民の移住を誘致しようというプロジェクトの担当者のお話。鯉を養殖しようとした人以外、村で仕事をしていないような感じだったんだけれども、それで生活が成り立つなら大したものだなぁと思いました。まぁそれも最後からくりがわかるので、密集させるように人を入れるのもそういう事だったのか、と思いましたが。
それにしても移住した最初は報道が入ったり、色々注目されていても、その終わり方はあまり話題にならない。ダメになっても役所内以外では誰の記憶に残らなそう、という感じが熱しやすく冷めやすい、良くも悪くも飽きっぽい今の日本だなぁと思いました。鳴り物入りのプロジェクトでも、その後の検証迄行わない事が多いものな。日々新しい出来事に追われてしまって。
とはいえ上の人が取った選択はひどいもんだな、と思いました。一つ間違えば死人が出てもおかしくない状況を作り出すってのはちょっとやりすぎだとは思う。特に本好きの独身男性は人のよさそうな方だったのでこれは酷いなぁ…と読んで思いました。人の悪意、コワイ。
そして「おっとり刀で駆けつける」という表現がわからなくて、調べました。刀を鞘に納める間も惜しむ、という意味で押し取り、とか言うそうで勉強になりました。もう一つ、これどういう言い回しなんだろう?と思った表現があったのですが、調べる前に忘れてしまいました。残念。
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久々のミステリー。あまり読む分野ではないけど、人死がでるような内容ではなく特殊な環境でありつつの、隣人とのトラブル話といった感じかな。
連作短編集で各話毎に、パターンというか落ちは同じなのだし最後もある程度予想は付く、内容でしたが嫌な気分にもならずイッキ読みした。
米澤穂信さんの作品は前から読ましていただいており、自分の中では読みやすく、今回も気軽に手に取らせてもらった。
この方の作品の登場人物はいつもの魅力的で、この先の活躍もみたいと思わされるのですが、ないんでしょうね(泣)
サクサク読めたミステリーでしたが、バックボーンは深い話だったと解釈、知らない世界のことも勉強になりました。
好きなミステリーです。
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Iターンプロジェクト。放置されている土地建物に希望者を募り定住を促す「甦り課」。
定時退勤を旨とする西野課長、やる気の感じられない新人観山遊香、自他ともに出世を期待していたのになぜか配属された万願寺。
「甦り」という名前の皮肉。
中身がすっかり入れ替わった村はもともとの村の「甦り」と呼べるのか。
プロジェクトに応募した10世帯の移住。そのケアをする甦り課の三人。
次々と起こる「事件」。解決と共にひとりひとりと去っていく移住者。「そして誰もいなくなった」。
過疎、田舎への移住プロジェクト。あこがれや夢やいろんな理由を抱いて移住してきたそれぞれの思いと、そこに「住む」ことの現実。
社会問題を背景にした人の死なないミステリ連作短編集、なのか、と思いきや。
そりゃそうだよね、米澤さんだもんね、というラスト。あぁ、なるほど、とにやりにやり。
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Iターンプロジェクトの担当になった市役所職員の万願寺。担当部署のやる気のない上司と、学生気分の抜けない後輩に不満を抱きつつ、移住者の問題に対処する事になるが…。
色々とタイムリーなお話ですね。
万願寺さんは良くも悪くもお役人だなー、と。
生真面目で、無難に仕事をこなす、そこそこ優秀な人なんだろうけど、実は上司と後輩の方がより優秀な人なんじゃ…?
と思いながら読み進めてのあのラスト!
出だしこそ、読む本の選択を間違えたかな?と思いましたが、読み終わってみれば、流石は米澤穂信さんでした。
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各章を通して万願寺の仕事観に共感し、5章ではそれと真逆の考え方を提示する事でさらに主人公に感情移入させられる。それを経てあの結末なので、万願寺が住民に対してやり切れない気持ちを抱くシーンは非常に良かった。
各章の謎に魅力が少ないように感じてしまった。おそらく住民のトラブルとミステリ的要素が少し遠いもののようにから感じてしまったのだと思う。横溝的な「不幸が訪れる村」というようなテイストではなく、あくまで住民間でのトラブルの発展なので推理要素にそこまでハマれなかった。
個人的に、最後の気圧のトリックはなんとなく想像ついていたのだが作中で「あれは無理矢理だった」というように表現されていて悔しかった。