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ずっと不穏で不快、そして不安。短編集なのかと思ったら連作短編。ずっと厭な空気が漂っていて、読んでいて苦痛になる程。でもなんとかして読み切っても全く読んで良かった〜って気持ちにならなかった。面白かった〜とかそういうプラスな感情一切なく、読まなきゃ良かったなと思ってしまうほど疲弊したし、誰の気持ちにも寄り添えず、不気味で、本当に厭な一冊だった。好きじゃない
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「奈落の踊り場」
夫のDVに追われるユリはイタリアンレストランで働く真崎と知り合い恋に落ちます。
真崎はユリに「遠くに行くことになったらついてきて」そして、ユリの子どもの郁也と三人で暮らそうといいます。
しかし、真崎は実は妻帯者であることに気づき、いくら探してもみつからなくなってしまいます。
なんか、これ一編でも怪談みたいな話だと思いました。
「馬鹿馬鹿しい安寧」
これは恋愛系ミステリーかと思いました。
若菜は海外で暮らし、ボーンという運転手と英利子から夫の不貞を聞かされ、自分もナットという青年と浮気をします。
夫とナットが鉢合わせたり、ナットといるとき、スリに合った若菜を助けてくれるのはいつも英利子でしたが…。
本当はすべてが違っていたのです。
「戯れ」
中一の僕が万引きした女の子と出会う話。
「カゲトモ」
もの凄い嘘つきの女性が出てくる話。
ここまでするかという嘘。
そういう女性と親友になった女性。
「きみに親はいない」
すべての話がつながる最終話。
英利子の娘の聖が小説家になって登場します。
普通の短編集だと思って読んでいたら、最終話でやっと連作短編集だったことに気づきました。
全然、意味のわからなかったプロローグを全部読んでから再読すると怖い話だということはわかりました。
ジャンルとしてはサスペンスでしょうか?
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今回もまんまと翻弄された。
第一章から止まらなくなる流れ。でも読み終わるとさらに深まっている謎。
こんなに整理するために読み直したの久々。
時系列はバラバラながら「英利子」とのそれぞれの出会い、受けた恩恵、予期せぬ無関係そうに思える出来事。
章を重ねるたびにそれらが密接に繋がっていることを理解し、表と裏から覗いているような感覚。理解する喜びとさらに深まっていく困惑がごちゃ混ぜになって、格別な体験だった。
全体的な大きな流れだけではなく、各章の欲望と悲哀、人間の不気味さ、明らかになり切らないちょっとした疑問点など、それぞれの読み応えも抜群だった。
また著者らしい、常識や大多数の意見を背にした正義観から、あぶれてしまう人たちを掬い取る文章はやはり胸がすくものがあった。
”悪気がないことはわかっていた。あるのは使命感。想像力の欠如した的外れの。”
そして、各章の轍を辿っていく最終章。
それまでずっと、もういないことにされていた英利子の長女・聖の視点でできる限りの収斂を迎える。
深く関わった登場人物で唯一、英利子に錯覚を抱かなかった聖は、抗い、逃げながらも創作を通じて母に対峙していく。
でもここで新たに「そんな母親の傍らで、娘のために積極的な行動を起こさなかった父親」は果たして無罪なのか、という疑問が出てくる。
個人的には母娘の話で終わるんだろうなと思っていたから、新たに父の存在まで出てくると一読では処理できない情報と感情になってしまった。
それは聖が生涯かけて解いていく命題でもあるし、最後の文章が納得と諦めの気持ちを持って、全てを代弁していると思う。
”こことここの辻褄が合わないと思うんですが。
その指摘を見たときは笑ってしまった。今見ても可笑しい。何度でも笑える。
事実を記すと辻褄が合わない。不可解で無秩序。それがわたしの育った家だった。”
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息をするように嘘をつく女と、彼女の嘘によって奈落に突き落とされ血を吐くような人生を歩いている「被害者」たちの物語。
理解も納得もできない必然性のない嘘と、嘘をつくための相手を見つけだす天性の才を持つ女。
一読目に持つ細胞レベルの嫌悪感から、二読目三読目と重ねるごとに変化していく彼女への気持ちに戸惑う。
「嘘」をつく意味。「嘘」をつかれる理由。自分の中のナニかがあぶりだされる恐怖を堪能。
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まず 連作短編小説であると途中から分かるが最後まで読み切っても腑に落ちない点が多く難解で暗い
読後感が良くない
この本を読む限りでは『悪』と『無垢』は反対ではなく 同時に存在し 同時にそれぞれを高め合う危険なペアである
◯「奈落の踊り場」
『優しさって口だけで済むからね』と父に言わしめた
ユリのひとときの恋(不倫)
「無垢」が故に不倫したユリは 自分を追い詰めるよりも 嘘つきと分かった浩二の中にも何か本当があったのだと信じ込ませ自分を納得させたいという「悪」が漂う一編
◯馬鹿馬鹿しい安寧
浩二の母 英利子の登場
はなから この人ぜったいちゃんと通訳してないよね!感満載であやしかった
「安寧」って意外と馬鹿馬鹿しさの頭上にありがちなのかも…って思った
◯戯れ
松田さんって 英利子だよね?
名前を偽って 各地に姿を現すんだから英利子って時間を持て余しすぎだと思う
「暇」って 人を「悪」に向かわせる力が強く働くって何かに書いてあったことを思い出す
◯カゲトモ
中学生時代の英利子の話
『平和な悩みだね、と秋尾は肩を揺らした。
この世は平和な悩みで溢れている。でもそれは世界が平和ということではなくて、平和じゃない悩みは簡単には口に出せないだけかもしれない。』
『どうしても現実から目を背けたいとき、大人には酒や娯楽や思い出がある。けれどあのときの私には英利子の
メモしかなかった。』
(本文より)
思春期ならではの 友情の危うさがまざまざと感じられる一編
そうそう 黙っててやる代わりに言うこときけって英利子に言われて誓約書まで書かされた 秋尾のしていたことってなんだったんだろう?
私 ちゃんと読みとれてなかったのかな?
気になる!
◯きみに親はいない
全部の章が繋がって 納得いくはずのラスト一編だと期待したが…不穏なまま終わった…
プロローグでは思わせぶりだった英利子の再来も 結局
なかったし…
ねえねえ これでは著者の一木さん!
「無垢」な読者に「悪」い読後感を与えちゃいます…と思った
読み取れきれなかった私の読解力が「悪」でしょうか…
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Na図書館本
大嘘つきな、何が真実なのか分からなくなる女性に翻弄された人たちを描く。
ずーーっと嫌な感じが続く一冊。
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息を吐くように嘘をつく母。どれだけ彼女に振り回される続けてきたか。関わるすべての人を不幸にしていく母。いつになっても母は母なのだ。
最終編にすべて集約されるが、そこまでの話が入り組みすぎて…私には難しすぎました。最近こういうのが多いなぁ、私の脳が劣化したんだろう、歳だな。
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これまでの一木さんの作風とは一線を画す不穏な内容だった。
プロローグを除き5篇からなる連作で、最初の2篇はどちらも同じような“不倫もの”でげんなりした。が、3作目から様子が変わり、遠回しに書かれているものの正体に気付く。5作目まで読み終え、改めてプロローグを読む。大きく息を吐いたが、結局のところ理解したとは言い難い。
病的な人なのか、モダンホラーに出てくるような超自然な存在なのか。どちらとも取れるが、おそらく前者だろう。人の行いは、時としてホラーより恐ろしい。
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不穏なプロローグから、一話目の物語を読み終えてこれは短編集なのか?紹介文にあった悪女とは??
ただ、すごく好みの作品っぽい…
常に持ち歩いて短い時間でも本を開いて没頭するくらい夢中になって読んだ。
読みながら、その嘘に気付かない私も簡単に信じきって騙されてしまう側なんだろう…
1話目2話目の危うい彼女たちのように自らすすんで騙されにいって、その束の間の幸福に身を委ねる描写が本当に上手くて、、私が一木けいさんの作品で一番好きな「穴底の部屋」を感じられたのが一番の収穫でした。
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不思議な小説だった。
初めは引き込まれて読み、何度かぱらぱらと読み返すと、
最後に少し救いのようなものがある気がした。
書くことで昇華できる感情も存在すると思う。その作業が苦しくても。
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あなたは、『意味のない噓を吐き続ける』というような人を知っているでしょうか?
“噓は泥棒の始まり”、そんなことわざがあるようり、噓をつくという行為の先には、泥棒のような犯罪も厭わなくなる、悪いことに対する感覚が麻痺していくことが警告されてもいます。しかし、一方で”噓も方便”ということわざもあります。時と場合によっては、必ずしも真実だけが全てではなく、噓をついた方が良い結果を得られる、この辺りは人間の長い歴史の中で人が習得してきた経験に基づくものでもあるのだと思います。
私たちが人間社会を生きていく中では、噓というものから無縁に生きていくことはできません。自分がつく噓、誰かにつかれる噓、噓をつきあう中に、人間関係を円滑に回していく絶妙なバランスを見出していく私たち。なかなかに日々を生きていくのも大変です。
ただ、そんな風に人間関係を円滑に…というような発想とは無縁に一方的に嘘をつき続ける、広い世の中そんな人もこの世には存在するようです。
“その女は、悪意なく、歌うように噓をつく”
そんな風に噓の中に生きるその女性。そんな女性は『噓をつく理由がな』くとも、『ついたってなんの得もない噓をつく』中にさまざまな人の人生を狂わせていきます。
この作品は、そんな女性に関わりをもった人たちが人生を狂わされていくのを見る物語。そんな女性を母親に持ったひとりの小説家が『わたしはもう、噓をたすける人にはなりたくない』という先に『復讐ではなく創造という形で』前に進んでいく様を見る物語。そしてそれは、『逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる』というそんな女性の生態に読者が震撼する物語です。
『私には心の底から信用できる人間がいない。日記にすらほんとうの気持が書けない』というのは主人公のユリ。『乗る予定だった飛行機が霧のため欠航となり、次の便は十三時間後と告げられた』ユリは、『三年経ったいまでも、あれは何だったのだろうと不思議に思う』中に、『恥も悔いもさらけ出して、書いてみよう』と思い『彼に出会ったのは三年前、台風迫る初秋の午後だった…』と、キーボードを打ち始めました。『夢か現か、生きているのか死んでいるのか』と、『街をさまよい歩いてい』たユリは、『イタリアンレストラン』へと入りました。『世に正常とされる範囲から自分がどんどん外れていく』のを感じるユリは、『尻の辺りがぬるぬるすることに気づ』き『左手で触れてみる。血がつ』きました。『よりによって白いスカートを穿いている日に。羽織るものは持っていない』と焦る中、『何気なくキッチンの方に顔を向けたそのとき、彼が私の人生に現れ』ました。『尖った眼。猛々しい骨相の顔』、『動物的な、突き刺してくるような眼差し』に『身動きが取れなくなった』ユリに、『どうかされましたか』と訊いてくれた彼。エプロンを巻いてくれ、化粧室へと連れて行ってくれた彼は『僕のうちすぐそこなんで』と声をかけてくれ、後に続いたユリは、彼の部屋『五〇四号室』へと入ります。『真崎浩之と名乗った彼』は『バスルーム』まで使わせてくれました。『用意されたタオルが白ではなく紺色』だったりと何かと気を使ってくれる真崎。場面は変わり、電話の音に目を覚ましたユリは、夫からの電話を受けます。電話の向こうで『嫁迎えに来させたんで』という声を訊くユリは、『寝息を立てる郁也』にメモ書きをして出かけます。そんな一方で『真崎はいま何をしているのだろう』と思うユリは、『私を傷つけるのが上手な人だ』という母から逃れるように夫と結婚した日のことも思います。しかし、ある夜、『こめかみを拳で殴られた』ことから始まった『夫の暴力』。『笑えるのは、郁也といるときだけだった』という日々を送るユリ。そんなユリは、『気がつくと真崎のことを考えている』という感情に囚われていきます。そして、『洗濯したハーフパンツと菓子折を持って、イタリアンレストランを訪れた』ユリは、真崎を見つけます。『真崎を発見した瞬間、悦びが脳内でスパークした』というユリの『真崎なしでは生きていけなくなった』という日々の先にまさかの真実が顔を出す、衝撃の物語が描かれていきます…という短編〈奈落の踊り場〉。絶妙な短編タイトルが主人公・ユリの危うい日常を描き出す、この作品世界に読者を引き摺り込んでいく好編でした。
“ある時は遠い異国で、ある時は港の街で。名前も姿さえも偽りながら、無邪気に他人を次々と不幸に陥れる…。果たして彼女の目的は、そして、聖は理解不能の母にどう向き合うのか?”、なんともイヤミス感がぷんぷんする内容紹介がとても気になるこの作品。プロローグと五つの短編が連作短編を構成する中に物語が展開していきます。そんな物語は、インパクト最大級の冒頭から始まります。
『クリスマスの朝、ひとりの女が死んだ。自宅の廊下で息絶えていた。あれだけのことをしてきたにしては、あっけない最期だった』。
クリスマスという一年の中でも最も華やかさが似合うそんな日に、『ひとりの女が死んだ』という事実を突きつける物語が語るのは、内容紹介に登場した”理解不能な母”、英利子の死です。そこに続く五つの短編は、そんな英利子が”無邪気に、優雅に、意味もなく、他人を不幸に陥れ”ていく様が描かれていきます。五つの短編の主人公はそれぞれに異なります。まずは、そんな各短編の内容を見てみたいと思います。
・〈奈落の踊り場〉: 『私には心の底から信用できる人間がいない』という主人公のユリは、『彼に出会ったのは三年前、台風迫る初秋の午後だった』という時のことを文字にしていきます。レストランでスカートに血を滲ませたユリは、真崎浩之という男性と出会います。『夫の暴力』に苦しむ中に、真崎に魅かれていくユリ…。
・〈馬鹿馬鹿しい安寧〉: 異国の地で親しくする英利子にボーンという運転手を紹介されたのは主人公の若菜。現地の言葉がわからない若菜にボーンの言葉を通訳してくれる英利子は、夫が『可愛い女の子とつきあってたみたい』と話していると告げます。英利子経由で『女の細い腰に手を回』す夫の姿を目にした若菜は…。
・〈戯れ〉: ホームセンターで女の子の万引き現場に出会した主人公の翔太は、春口花音と名乗る少女と関わりを持つようになります。そんな翔太は、母と妹と共に暴力を振るう父親から逃げ隠れの日々を過ごしていました。一方で、母親が交通事故にあったという花音と���動する中に彼女の本名は、エミリという名前だと知った翔太…。
・〈カゲトモ〉: 『中学時代の旧友である秋尾と偶然再会した』のは主人公の治美。そんな治美は中学時代を振り返ります。あることがきっかけでクラスの『誰も私と口をきいてくれなく』なったという治美は英利子を助けたことでグループに入れてもらえました。そして、『私たちは陰友(かげとも)』という関係になった二人でしたが…。
・〈きみに親はいない〉: 『わたしが小説の新人賞をとったのは、晶大とつきあいはじめて間もない、二十九歳の春だった』というのは主人公の聖(ひじり)。そんな聖は、『母の噓は違う。意味のない噓を吐き続ける』と思う中に生きていました。本名を出さず、写真も載せなかったのに『おめでとう!』と母・英利子から電話を受けた聖はすぐに番号を変えます。しかし…。
五つの短編は、内容紹介にうたわれる通り、”ある時は遠い異国で、ある時は港の街で”と、神出鬼没的に現れる英利子が陰の主人公のごとく登場します。しかし、これが正直なところかなりわかりづらく、全体像を掴むのになかなかに四苦八苦しました。サラッと匂わされる繋がりがあまりにサラッとしすぎていて掴みきれないところがあるように個人的には感じました。ということで、これから読まれる方に幾つかのキーワードをお伝えしたいと思います。ネタバレではなくて、意識すべき言葉という言い方がわかりやすいかと思います。
・『左手に歯形みたいな傷のある女』
・『ティッシュに包まれた一対のピアス』
・『五〇四号室』
・『傘谷弓って知ってる?』
・『Mというウォーターサーバーレンタル会社の広告に、四人家族が写っていた』
・『港町』
これらに類した言葉が登場したら、その時の登場人物と背景を意識しておくと、あっ!という瞬間が訪れていくと思います。しかし、それでも読者は間違いなくモヤモヤ感に包まれた鬱屈とした読書を強いられるはずです。なぜなら、その種明かし、全体像を見事に繋げてくれるのが最終章〈きみに親はいない〉までなされないからです。恐らくこの章で一気にモヤモヤを晴らそうという構成なのだと思いますが、そのある意味でのスッキリ感を味わうためにもキーワードは意識された方が最終的に楽しめると思います。
そんなこの作品ですが、イヤミス的気分に読者を陥れるのが、英利子という人物の存在です。
『逃げなきゃ。この女のそばにいるのは危険すぎる』。
そんな風にも言われる英利子という人物。短編が変わって視点の主が変わろうと英利子視点になることはなく、一貫して不気味な存在として描かれていきます。
『人は平然と噓をつく』。
そんな言葉をどう感じるかはその人の今までの人生経験にもよると思いますが、人が噓をつく時、それは、多くの場合、その嘘によって自らに何らかの利点があると思われるからそうするのだと思います。しかし、
『英利子には噓をつく理由がない。ついたってなんの得もない噓をつく人がいるだろうか』。
というように英利子の噓には、損得勘定で測れないものがあります。『噓の幸せ、真実の不幸』というように、理由や理屈ではなく、『噓をつく』という行為の結果論の先を求めて噓をつき続ける英利子という女性。そして、そんな彼女と出会ってしまったがために、人生を変えられていく人たちの存在が描かれていくこの作品。。
『母の噓は違う。意味のない噓を吐き続ける、それがわたしの母だった』。
そんな母親を持つ最終章で主人公を務める聖が思う母親という存在。600冊以上の小説ばかりを読んできた私ですが、母親のことをこんな風に強烈な表現で定義する作品は初めてです。『噓をつく』という行為の中に読者も騙される瞬間を見る読書、なかなかに強烈な作品だと思いました。
『あれだけのことをしてきたにしては、あっけない最期だった』。
そんなひとりの女の死を冒頭に描くこの作品。そこには、”その女は、悪意なく、歌うように噓をつく”という陰の主人公とも言える英利子と、そんな彼女に翻弄された人たちの生き様が描かれていました。近寄りたくないと本に目を伏せたくなるような荒んだ暮らしの描写に嫌悪感が抜けなくなるこの作品。英利子がつく噓に読者もはめられていくのを感じるこの作品。
全てが解き明かされる結末に、それでも『意味のない噓を吐き続ける』英利子という人物がどこまでも謎めいていくのを感じた、そんな作品でした。
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短編と見せかけつつ、最終的に、全ての話に登場する1人の嘘つきに繋がっており、その嘘つきの異常性について娘が言及する。
序盤は毒親から逃げる目的で急いで結婚し、その夫も亭主関白が強く、「稼いでくる旦那様の性的奉仕もできないなんて妻失格だぞ」と言っちゃう人だった。帝王切開で出産すると、母からも姑からも、「自然分娩ではない?痛みがなんだって?あんた異常。」とやっと産んだのに罵られ、現実で有り得る光景であり、絶望的で頭が痛くなった。
最後の話で、各話の登場人物が出てきたりするのだが、誰が誰だったか、名前の記憶が曖昧だったのでよく分からなくなった。
誰かの考察を読みたい。
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初読みの作家。
一気に読んでしまいたい魅力がありつつ、終始胸糞悪さが拭えない小説。
湯水のように嘘が出てくる人…出会いたくない。
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「奈落の踊り場」「馬鹿馬鹿しい安寧」「戯れ」「カゲトモ」「きみに親はいない」
5話収録の連作短編集。
それぞれ独立した物語だと思い読み進めていくと、一つのアイテムに既視感を覚え、ある人物の姿が浮き彫りになっていく。
途轍もなく嫌な予感は徐々に確信に変わり、この人物から目が離せない。
美しさと賢さを兼ね備え、息をするように嘘を吐く。
彼女に縋り頼って来る者達に見返りも求めず、純真無垢な言動で接しながら、そっとほくそ笑む姿はまるでサイコパス。
彼女の目的を探ろうとしても一向に真実は見えて来ない。
人間の不可解さに唸る読後。
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初めて一木さんを読んだ時の衝撃が忘れられない。当時から背後には暗い冷たいものはあったんだろうけれど、あの、ページを読み進めたい!と思わせる躍動感というか胸をえぐられる感じが…やっぱり乏しい。小説家としては、上手くなっているのかもしれないけれど。個人的にはすごく、寂しい気持ちになる。
特に今回は、最初2つを読んで、不倫の話か、もうやめよ…となり、ただレビューを見たら最後には繋がるというので期待を持ち直して最後まで読んだ。最後まで読むと、えぐみとか、薄ら寒さ、心地悪さをちょっとした言動も含め巧く描いているのだけれど…
あの、次のページを読みたい!!ってなる感じが最初の本からどんどん減っていってしまっているな…というのが個人的な感想です。なんだろう、残酷冷淡な環境の中での希望というか、縋るものというか、そこにすごく光があって、心が揺さぶられたんだよね。今回はそれが“書く”ということだったと思うんだけれど、それにしてはそこに焦点があてられるのが遅いし、繋がるのが遅いし、あまりそこに“光”が感じられない…。
でも、また次の作品も追ってみたい読んでみたいです。