投稿元:
レビューを見る
新作「コナン」が興行収入100億成し遂げる勢いに対して、公開一ヶ月経った「シン・仮面ライダー」ただいま20億行くか行かないか…それが続編(「仮面の世界」?)のありやなしやの運命を決める、と言われています。さて、東映はまた庵野秀明にオファーするのか、どうか?ここ数日で命運決まるような気がしてドキドキしています。本書を読んでいて庵野秀明は21世紀の黒澤明か?と思ったりしました。そこそこ利益上げても大ヒットじゃないと面倒臭がられる…映画は監督のものではなく、その監督に作らせる会社のもの。その会社の最高権力者「社長」にフォーカスした映画産業興亡史です。まったく新しい視点の本ですが、ものすごく既読感あるのは、著者の前著『プロ野球「経営」全史』の手法の横展開であり、野球ビジネスと映画ビジネスで登場人物も被っているからでしょうか。取材無しで、既存の資料だけで見えているようで見えていなかった歴史を浮かび上がらせる、まったくすごい方法論を築き上げたものです。中川右介の前では出版、野球、歌謡曲、映画、アニメ、すべてが繋がっていきます。MCUならぬNBU(中川書籍ユニバース?)なんちゃって。でも…彼の本がどうしても気になってしまうのは手口によるものではなくて、なぜそのジャンルを取り上げたか?という彼のモチベーションに共鳴しているから、なのではないかと思っています。深いところで影響を受けてしまった(特に10代に…)出発点が同世代として、かなり被っている気がします。ということで『ほにゃらら「経営」全史』シリーズ、地上波テレビ局に向かうのでは、ないか、と密かに予想しています。今回、そのプロローグめいた要素も満載ですし。
投稿元:
レビューを見る
日本映画120年、全盛・斜陽期の経営者の興亡を中心に描く映画「経営」史。
巻末に掲げられている文献が多数あり、それらを上手にまとめ上げたという感じ。誤植が結構目立ったのが残念。
投稿元:
レビューを見る
祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
「平家物語」
巻末に添えられた平家物語の一文のように、映画業界が大きく隆起し魑魅魍魎の人間模様あり友情ありを経て凪となり消えゆく様が非常に面白かった。残った3社も様変わりしていることだろう。今の映画業界にも少なからず映画さながらのドラマもあるのだろうが、この時代ほどではないと思われる。
裏切り者とされたが最後、業界締め出しの嫌がらせの憂き目にあう俳優、業界人の話しには辟易したが、それは今もあるんだろうと想像する。
541P、読み応えあり。
投稿元:
レビューを見る
まずはよくこれだけの歴史をまとめあげてくださった事で、一冊の本でたくさん知れたという事実に感謝
ここにもまた大企業病を患った方々が登場し謎の意地やプライドを振り回した結果が描かれていて呆れる
映画についてはもちろん興味深く読んだし、それ以外の業種にも映画会社が深く繋がっていた点についても勉強になったし、そもそも面白かった
経営者と制作サイドと演者、戦争と終戦。観客や興収に労組、舞台やテレビとの関係性まで知れて楽しい
そう考えるとめちゃくちゃ安い本だと今は思う
投稿元:
レビューを見る
最初の数ページで、NHKの『世界サブカルチャー史 欲望の系譜』で観た内容のテレビが登場して映画が売れなくなった。というところを詳細にとりあげており、最初から引き込まれてます。面白くなりそうな本なのでワクワク。
投稿元:
レビューを見る
書籍のボリュームを含めて、中味が濃い。出てくるメンツのキャラクターも濃すぎ。
ここ数年、旧作邦画を見るようになったので、この本読んでも自分の解像度が、以前よりは高くなってそうだったので読み始めました。
戦前からというか、今も残る映画系の企業の創業時の話から、話が進み、エンタメの業界だけに限らず、戦後までの近代史の一角が描写されてる感じでした。
自分自身が、知らない事も沢山記述があって、読み応えと満足感が非常に高かった。
投稿元:
レビューを見る
映画勃興期からの映画史を、経営者の物語として描いた。通常は映画や監督、俳優なを通して語るところを、社長たちの視点で語った異色の本である。その歴史は、面白い映画を作ろうとしたところが、会社の維持や社員の生活のために低品質の作品を量産し、結局は新興のテレビに押されて崩壊していくというものだ。どうして協力して高品質の映画を制作し、後世に残す、そして権利で食っていくという発想にならなかったのか。経営者も監督も俳優も、人間はかくも愚かだ。
投稿元:
レビューを見る
実録!という感じで、筆者の感情的なものを抑えた文体で、淡々と端的でとても読みやすい。くどくない程度に、流れを反復して説明を重ねてあるのも親切。だが!!なかなかの登場人物数。そして特に1部・2部あたりは映画会社がくっついたり離れたり、相当複雑な動きをするので、完全に理解したかと言えばそうでもない。けれど、章ごとの展開を追うだけでも十分ドラマティックで楽しめる。歌舞伎に始まる同族経営の松竹と、近代的経営の東宝、泥っぽい東映、菊池寛など文芸人を重役に置く大映…と、各社の個性もよくわかる。3部・4部は、「日本人が最も多く映画館へ行った年ー1958年」など1年ごとにまとめられていき、崩壊へのカウントダウンに手に汗握る。そもそも興業的で山師的だった映画界。水の江瀧子と女優さん以外、女性がまったく出てこないギラギラした男社会。キーになる五社協定のことは知ってはいたが、それにより不遇な扱いを受けた俳優さんや作品のあまりの多さ、あまりの理不尽さに驚く。これまで表から見ていた作品が、こんな綱渡りで作られていたのか!交換条件で出演していたんだ!と、知らなかった事情も浮き彫りになって、見方が変わってくる。三船、勝、石原ら独立プロのスターたちの純粋さ、無知さ、映画愛にも胸が痛む。最後に、市川雷蔵ファンとしては、352ページの眠狂四郎が誤字で狂死郎となっていることを申告。
投稿元:
レビューを見る
戦前から現代に至る映画産業の観点からの通史。
特に戦後映画が娯楽の花形だった1955年までの時期(第2部)からテレビの普及や娯楽の多様性によって斜陽となる1964年までの時期(第3部)は日本経済の高度成長を背景として読み応えあり。
また松竹、東宝、日活、大映、東映各社の製作方針や企業経営の考え方が、各社の経営陣の個性や対立協調と共に栄枯盛衰を客観的な動員数や配給網ともに浮かび上がってくる。
また会社間の人材の引き抜きや既存会社の存続保護ののための協定が、自由な映画製作や表現の自由、観客のニーズの把握にとっての功罪と限界を興味深く描く。