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どっぷり、賢治ワールドへ
2006/11/23 00:57
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ今、宮沢賢治なのか?最近読んだ梅原猛氏はその著作(「梅原猛の授業 仏教」、「同 道徳」)で宮沢賢治を絶賛している。梅原氏によれば賢治は仏教の影響を受けた作家の中で最も好きな作家であると言っている。賢治の哲学の精髄は「科学と宗教の一致」だとも言う。賢治の作品を読んだのは遠い昔のことであったが、当時は仏教の影響までは感じ取ることは出来なかった。今、改めて読んでみると、梅原氏が言っていることがよく分かった。本書には「銀河鉄道の夜」を初め8つの物語が収められている。賢治の作品の特徴としては、日本語の使い方の妙だろう。特に外来語に対する漢字の当て字が常に新鮮に感じられる。それは賢治の時代には普通だったのかも知れないが、ルビが振られていなければとても読めない単語をよく目にする。それらは鉱物であったり、動植物や星座だったりするが賢治の作品の世界には欠かせない要素だ。その他には擬音や修飾詞などの言葉使いも独特で面白い。「貝の火」の中の子兎が「ぴんぴん踊りながら・・」などなど。
「ひかりの素足」では兄弟の会話に方言が多く登場するが、興味深いのはそれだけではなく臨死体験を描いている点。「四又の百合」はわずか7ページの短編だが、短すぎて私には賢治が何が言いたかった理解できなかった。「銀河鉄道の夜」にはタイタニック号の沈没事件の一場面が取り入れられている。これは解説を読んで知ったのだが、賢治が事件と同時代を生きていたことが何とも意外であったが、そういう海外の情報も花巻の地でちゃんとキャッチしていたことに驚く。
賢治の描く世界は美しい。言葉遣いも易しいので子供でも理解できると思うが、背景にある思想は実に深い。賢治は生前はほとんど無名だったそうである。その作品は生前には広く読まれることもなかったようだ。当時も理解されなかったとすると、あまりに早く生まれすぎたということだろう。時代はあとからついて来る。
美しき寓話
2002/07/25 00:56
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投稿者:アセローラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の中で私が一番好きなのは「よだかの星」です。みにくい鳥よだかは仲間であるはずの鷹や他の鳥たちからも疎ましがられています。そして毎日虫を食べて生きている自分にも耐えられなくなり死ぬことを願うのです。けしてハッピーエンドではないですし、悲しい話なのですがなぜか安堵感のようなものがありました。私も他の生き物の命をもらって生きていることに罪悪感を持っていたことがあり、賢治も同じことを思っていたのか…と。美しい寓話に込められた賢治の思いが伝わってきます。