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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生において、知っておいた方がいいだろう大事なことを、
上からでもなく、厳しくもなく、何気なくさらっと文中で書いている。
単行本で500ページを超える分量だけど、読んで損なし。
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教員となった悌子の下宿先の家族とやむ終えない事情で引き取った子と、血は繋がっていない家族が泣いたり笑ったりしながら共に生きていくなんとも清々しく小説でした。
とても分厚い本だったので、読み切れるか?と思いましたがそんな心配は必要ありませんでした。
いい家族です。
どうして『かたばみ』なのかもよくわかりました。
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毎朝の新聞連載で悌子と権蔵に会うのが楽しみだった。
木内昇さんの小説の描く人間味が大好きだ。「笑い三年、泣き三月」を読んで、こんな書き手がいたんだなと日本も捨てたもんじゃないなと思ってからのファンだ。鋭く世相を切る小説とはまだ違って(そういう小説も好きだけど)人間の持つ善良なところを掴み取って見せてくれる、洒脱で落語を聞いているような人情味を小説で表す作家だ。朝から、泣き笑いさせてもらって、自分もいい人でいようと思わせてもらった。
清太と権蔵の触れ合いがとにかく心に沁みた。連載が終わってかなり経つが、こんなに記憶に残る小説も珍しい。
いい小説は終わる時に登場人物とのお別れが惜しくて悲しくなるが、これもまたそういう小説だった。
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「教師も親も、子供の手本になろうとする。でもそれは間違いだと思うのです。ひとは、どこまでいっても未熟で不完全です。ですから、ただ一生懸命生きている正直な姿を、子供たちに見せるほかないように思うのです。」
木内昇作品はブクログ始める前に読んだ『茗荷谷の猫』以来2冊目。本書はタイトルに惹かれ事前情報のないまま読みはじめたのだが、世代的にはまさしく母からよく聞かされていた時代の話。雑草で嵩増しした雑炊だとか、PTAのこと、教室に飾る花を持って行った事もあるな‥なんて事を唐突に思い出したら、当時の母は今の私よりうんと若かったのか!と今更ながらに気が付いて、懐かしいやら申し訳ないやら‥。花言葉は「母の優しさ」「輝く心」。覚えました。
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ひさびさに木内昇ワールド満喫しました。チェックしている作家なので読みたいリストには入れていたのですが去年の年末の新聞書評欄の今年の3冊に複数選ばれていて、選書の人々にも木内昇ファンがいるんだなとうれしくなりました。本作は「笑い三年、泣き三月」の家族形成ものと、「球道恋々」の野球沼ものとのミックスで、まさに著者の得意とする領域の掛け合わせ、まさに木内昇風カツカレーの味わいでお腹いっぱいになりました。でもそもそもが新聞の連載小説なのからか、テンポ良くさくさく読めるのと、登場する人物の性格がこの上も無く性善説で設定されているので、ボリュームの割に胃もたれせず読み終えることができました。この週末の土日、また残っている桜の下で一気読みです。心に中に富士山が見えたような気分になりました。主人公のキャラもいい…NHKドラマの「作りたい女と食べたい女」の春日さんか、いやいや、そのまんま女子槍投げの北口榛花選手か、もし映像化するなら。でも映像化してほしくないけど。悌子だけでなく権蔵含め、よくよく考えると出てくる人みんなトリッキーな設定だけど、その組み合わせで描かれる物語は普遍性のあるものなのです。なにかを信じたくなる小説。
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太平洋戦争前に槍投げ選手としてオリンピックを目指していた悌子。肩を壊し教師になり戦争が始まる。その厳しい状況のなかで子供達を教える難しさ。戦争の理不尽さと、先の見えない日々。戦中戦後の暮らしていくのがやっとの毎日のなか家族を持つ。個人的にはここからが本当に面白く一気読みだった。家族の形や繋がりが描かれていくのだけど、悌子の苦悩や息子への想いと息子の葛藤が溢れてくる終盤からラストシーンまで素晴らしい。たくさんの人に読んでもらいたい物語。
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戦中・戦後を舞台にした家族の物語です。
560ページの大作。しかも元は新聞小説だそうですが、ありがちなダラダラ感が感じられないとても良い作品でした。
第2章のタイトル「似合い似合いの釜の蓋」が示すように、モンペが裂けるほどがっちり体形の元槍投げ選手。家事は苦手だし、どこか調子っ外れなのだけど、一本気で生徒から好かれる小学校の先生・梯子は、実は意外に小心者。早稲田大学を卒業したもののやりたい事も無く、いつも悲観的。病気持ちで体力が無い為に軍隊の招集を免れ、肩身を狭く生きる権蔵。二人は権蔵の妹一家が営む下宿屋で出会い、周りの策略に乗せられて何となく結婚してしまう。そうしてできた「割れ鍋に綴じ蓋」夫婦が数え三歳の清太を養子として育てることになるのですが、この清太が超高級食材で。。。。
中盤で清太が権蔵に初めて寄り添うシーンが微笑ましくて可笑しくて、声を出して笑ってしまいました。重い印象が強い木内さんがこんなシーンも描けるんだと。
主人公たちの造形はもちろん、権蔵の先輩・六助や、権蔵の母で口の悪いケイ、妹・朝子とその夫の茂樹もその子供達も、登場する人物がみんな生き生きとしていて、折に触れ語る彼らが語る蘊蓄や意見が、見事に個性的で良い味が有ります。危機を乗り越えて見事に一つにまとまる家族を描いた暖かなホームドラマ。映画化したら良さそうと、ついつい配役に頭が行ったりします(若い頃の静ちゃんよりもう少しシャキシャキした・・・)。
背景に野球が出て来ます。そういえば木内さんには『球道恋々』という長編もありましたね。新撰組の外に野球もお好きなのでしょうか?
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最高で最愛の家族に出逢えた。
初めは分厚さに怯んだ。
けれど頁を捲るたびに、この物語と登場人物への愛おしさが加速していき、終盤は読み終えたくないほどに夢中になった。
物語は太平洋戦争から、戦後の高度成長期を生き抜いた家族に焦点を当てて描かれる。
死も飢餓も日常に存在する中で逞しく生きた家族がいる。
健やかな清太、不器用だが愛情深い権蔵、強さと優しさを兼ね備えた悌子。
血縁を超えた三人の絆に何度も涙が込み上げた。
「母の優しさ・輝く心」の花言葉を持つ『かたばみ』。
雑草の生命力も含めタイトルがドンピシャ。
紛うことなき傑作。
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Audibleで聴いた。
かなりの長編だけれど、登場人物たちに愛着が湧いてきて、もっとこの人たちの暮らしを聴いていたいと思った。
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古内さんの「編集者」の次は「先生と放送関係者」の戦中・戦後の貧しく辛い日々。そこに家族問題も加わり、内容てんこ盛りなのに500ページを一気読み。教頭以外は子どもからおばあちゃんまで個性的なイイ人達の会話に、ほんわか心も温まる。暗い時代の物語なのに、なぜか清々しい青空広がる読後感。「戦争が憎いのは、個人が生を享けて、その人生で出会えるはずだった出来事に出会えなくなることだ」「期待はあらゆる苦悩のもと」権蔵のように飄々と生きたい。
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家族ものであるけれど、
教育者って視点からもいろいろ考えさせられた。
どんなに大義名分をあげても、
戦争は絶対ダメだ。
終戦後の混乱の中、
学校の先生は本当に複雑だったろう。
そうした先達の想いを継いで
私たちも教育に携わってるんだな。
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槍投げ選手だった悌子は肩を壊して引退し代用教員となる。彼女の奮闘物語だが、彼女の周りの素敵なひとたちの物語であり、戦争のばかばかしさを考える物語である。そして、家族とは何かについても本当に考えさせられた。
下宿先の惣菜屋の面々、特に右手を失った茂樹が左手で料理を続けるところ、夫となる権蔵の真っ当な考え方、悌子の幼なじみの神代清一の人柄などキリがないほど魅力的な人々が登場して、(もちろん腹の立つ人達もたくさんいるが)、笑ったり感心したり、ただもう面白かった。
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人間の心の裡を具に描き出す語感は傑出。舞台は戦中、戦後の西東京。殺伐とした時代の中、逞しく生きる悌子たち。権蔵、六助、茂生…皆の達観した言葉は深くて温かい。暫し感動の余韻に浸っていたい親子の物語 。
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ああぁあぁあ。もうなんだろうこの五月の風のようなすがすがしさは。
湿度のカケラもないこの気持ちよさは。
いや、あるのだよ、あるのだ、実際には。だって物語は戦争中のあらゆる困難と理不尽さから始まっているのだから。
家族ってのは面倒臭いものだよね、そりゃそうだ。最も近い間柄で、最も密に過ごす関係なのだから。
そしてそもそもが二人の赤の他人から始まるものなのだから。
ゼロから始まる「家族」というもの。いろんな始まり方があって、いろんな関係があって、いろんな時間があって。
その中で大切なものってなんだろう、血のつながりってのがどれほどか、ってこと。
登場人物のだれもかれもが愛おしい。その中でも人一倍ダメダメな、あるいみダメの見本みたいな権蔵の素晴らしさよ。
柳の様に風に吹かれるままに、折れることなくたわんでそよいで生きているようなその男の、実は漢気に惚れる。
みんな幸せになってほしい。
どこまでも青い五月の空のような、読後に広がるさわやかな空気。ずっとそばに置いておきたくなる、そんな一冊。
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手に取った時、550ページ超えのボリュームに怯みそうになった。その心配も束の間、読み出したら物語の世界に入り込んでいた。そして、いつまでもそこにいたくて読み終わるのが惜しいほどの気持ちに。
戦時中の辛い出来事、戦後の手のひら返しのような国の方針に戸惑う人々、そしてその割を食う弱き者たち。戦争の理不尽さ、罪深さを感じる。
時代の波に翻弄されながらも、人として大事なものを保ち続け、真っ当に生きている家族の姿を描く物語は、人情と、家族愛と、真っ直ぐな思いが溢れたどこまでも温かい物語。
元槍投げの選手でそのガタイのよさから“おとこおんな”と揶揄された悌子の真っすぐさ、最初はちゃらんぽらんに見えた権蔵の慧眼、悌子の下宿先である惣菜屋家族の強くて明るい面々。決して平穏ではないけれど、登場人物が皆生き生きと前向きで輝いているのが嬉しい。
家族とは、生きていくこととは、愛情とは、当たり前のことを深く考えさせられる物語。終盤は何度も温かい涙を流し、読み終わった後は久しぶりに本を抱きしめたくなる衝動に駆られたほど。
間違いなく今年読んだ中で一番の作品。
出会えて良かった。時代ものじゃない木内さんも最高です。