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投稿者:hid - この投稿者のレビュー一覧を見る
地の分なのか、翻訳なのか、編集なのか、どれが原因なのか不明だけど、
すごい読みにくい文章。
焦点がはっきりしないままダラダラ続いていく感じ。
じっさいに犯人捜索に結びつく情報の収集よりも、
フェイクニュースの拡散の方が大きな問題だと思うけどね。
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アメリカには40年逃げ続けた「黄金州の殺人鬼」を追い詰めた作家など「市民探偵」と呼ばれる人たちがいる。
実際に起きたいくつもの事件とそれを解決した市民探偵たちへの取材からあまり知られることのない彼らの正義と執念を描いた一冊。
連続殺人鬼に遭遇した人の証言などもあって、なかなか面白かった。個人情報保護が行き過ぎてる感のある日本では、こういうことは難しいだろうなぁ。
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集合知によって未解決事件を追う素人探偵たちは、時に警察官の捜査能力を上回り、未解決事件に一筋の光をあてる。
一方、文責を負わない素人探偵たちが暴走した時、事件に無関係の人が犯人にされたり、警察の捜査に大いなる支障をきたすという、負の側面もある。
インターネット、そしてSNSの登場により、誰でも容易に探偵になることができる恐ろしさを教えてくれる一冊である。
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面白かった。最後の章で「過熱した市民探偵」への警鐘が鳴らされる。しかしそれ以外は訓話的でなく、ジェーン・ドゥに対して名前を見つけるような、もっとヒューマニティある市民探偵の、狂気と執念について書かれているので安心して欲しい。
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ネットで見かけて。
あらら、また読んだことのある本が登場するとは。
しかもいきなり「まえがき」とは、「木曜殺人クラブ」は有名なのか。
警官でもなく私立探偵でもない一般市民が、
インターネットでの検索や情報交換、情報収集、画像分析を通じて、
身元不明の遺体の身元を探し当てたり、殺人犯の居場所を突き止めたりする。
それぞれの理由で、困難な調査の沼にはまっていくが、
最初の方に紹介されていたトッドが印象的だった。
トッド・マシューズは高校で出会った女の子から、
彼女の父親が遺体を発見した話を聞く。
遺体は19年たっても身元が分からず、テントに包まれていたため「テント・ガール」
と呼ばれていた。
彼は、話をしてくれた女の子と9か月後に結婚するが、
新婚の時からテント・ガールの身元調査に明け暮れ、
昼間は調査をして、夜工場で働く生活が続く。
収入は少なく、調査にかかる費用の負担は重くとなれば、
いかに知り合ったきっかけとはいえ、奥さんとけんかになるでしょ。
11年の調査の結果、とうとう身元をつきとめられて良かった。
娘を殺され、犯人のギャングを突き止めるべくSNSで偽サイトを作った母親の話や、
猫殺しの犯人を追ったが、捕まえられないうちに犯人が人を殺してしまう話とか、
思っていたより重い話もあったが、全体的に面白かった。
ただ、一番印象に残ったのは訳者のあとがきだった。
先日、子供が寝る時に横溝正史的な本を読み聞かせる親はいないだろと突っ込んだが、
子供を寝かしつけるために公園で首つり死体を発見した話をする母親が実在した。
その「どんぐり公園」にすべてを持っていかれた気がする。
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ネットの発展で誰もが私立探偵になれるようになった時代。それは警察も匙を投げた未解決事件を解決に導く事もある。
政府捜査機関以上に勤勉に仕事をする私立探偵の姿には目頭が熱くなるものの、それだけではなくネットの発展から来る探偵たちの暴走にも警鐘が鳴らされている。これは面白い。
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欧米のケースばっかりなので、元ネタが分からなくって全然楽しめなかったが、基本情報知ってたら面白いんだろうなとは思う。
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「アンナチュラル」というドラマを夢中になって見ていた。ドラマの主演の石原さとみが「何で焼いちゃうかなぁ」と不平を漏らすシーンを覚えている。火葬だとDNAが残らないからだ。
未解決事件に興味を持つ人は多くいると思う。しかしその解決に心血を注いで活動している人は、日本では少ないのではないだろうか。
市民探偵、と書かれているが、日本ではまず無理だろうな、と感じる。自らの安全は自らが構築しなければならない、ということを骨の髄まで染みわたっているアメリカ人だからこそ出来るように思える。もちろん法制度が違う、というのはあるけれど。
この本はパソコンやスマホで調べながら読むのがおすすめだと思う。私もパソコンで事件名を検索バーに何度も入れながら読んでいた。
市民探偵と呼ぶには凄すぎる人々がたくさんいる。
DOEにもアクセスしてみて、その後、日本の行旅死亡人サイトも見てみた。DOEは、英語表記なので詳しくは分からなかったけれど、画像が沢山あるのが驚きである。日本は行旅死亡人サイトに写真はほぼない。ケースによっては復顔されているものもあるのかもしれないけれど。
テッド・バンディから逃れることが出来た女性が市民探偵になるなんて、運命を感じる。
黄金州の殺人鬼の逮捕に関しては本当に驚いた。一人でここまでの犯罪を起こせるものなのか、と。しかも気づかれずに。
ルカマグノッタ事件は全く知らなかった。仔猫を殺す動画を沢山の人が躍起になって犯人を捕まえようとする。それはそれで狂気を感じるけれど(私が別に大の猫好きではないからかもしれないけれど)、殺人に移行するのも恐怖を感じる。自己顕示欲がこじれるとこうなってしまうのだろうか。
最後の章、探偵がしくじるときを読んで、思い出したことがある。
以前、ある県で学生がイジメによる自殺をした。そのイジメをした側の学生たちの個人情報がネットに流れ、住所を特定されていた。そしてその学生と同じ名字の会社が業務妨害と言えるくらいの電話がかかってきたということがニュースになったのだ。その会社は学生と何も関係がなかった、という。
鬼女板という名称で呼ばれる掲示板サイトがあり、そのサイトの中で、写真から場所を特定したり、実際に現地に行ったりする人がいる、と知っていたが、そのイジメ自殺騒動をパソコンで見ていて、ちょっとした高揚感があったものだ。
間違えられた人、は一生トラウマになりかねない。
書籍の始めに捧げられたジャーナリストが何故行方不明なのか、知りたい。
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【感想】
アメリカでは毎年60万人もの人々が行方不明となり、約4400体の身元不明遺体が国内で発見されている。日本の行方不明者は毎年約8万5000人、身元不明遺体は約1000体ほどである。日本以上に人口や不法移民が多く、国土も広いアメリカにおいては、遺体の身元が判別されないまま数十年経過するケースも珍しくない。
だが、そうした身元不明の遺体を調査し特定する「民間人」たちがいる。彼らはインターネットで調査した情報を警察に提供し、捜査の支援を行う「市民探偵」だ。その活動の実態を描くのが、本書『未解決殺人クラブ』である。
いくら「市民探偵」といっても、素人がインターネットで集めた情報なんてたかが知れているのでは、と思ってしまうかもしれない。だが実際には、彼らの情報をきっかけに事件が解決に至った例も珍しくない。
それは市民探偵が調査にかける時間と彼らの情報の精度が、警察を凌駕しているからだ。10年間4000時間も費やして、行方不明者の糸口をインターネット上で検索する。裁判記録、警察による捜査報告書、死者・行方不明者のデータベースを精査する。実際に遺族や第一発見者、葬儀社にまで訪れて当時の状況を聞き取る。そうした警察顔負けの捜査力を展開し、遺体の詳細を詰める作業を繰り返し続けるのだ。
市民探偵のひとりであるエレンは、インターネット上の情報を照合する作業について次のように語っている。「とにかく、我慢強くなること。一晩で一致させられるわけがないんです。まったく結果が出ないまま、何年も作業を続けている人をたくさん知っています。私が初めての一致に辿りつくまで、5年かかっています。そこからようやく、ぽつり、ぽつりと一致するようになったんです」
彼女は仕事の後、身元不明者ウェブサイトの情報を数千件に渡ってチェックし続けて、遺体の特徴と発見時の情報を精査し、目星をつける作業を行っている。彼女のほか、「テント・ガール」と呼ばれた身元不明の女性を11年にもわたって調査し特定した人物や、殺人鬼の正体を暴き出そうと、郡保安官事務所に侵入して証拠品を盗み出した2人組もいる。彼らの執念の凄まじさがうかがい知れるだろう。
だがこうした市民探偵の活動は、あくまで自らの目的と事件における立ち位置をわきまえているから成り立つ善行であって、いちネット民感覚で適当に調査に加わると、容易に正義が暴走してしまう。不確定な情報をもとに犯人を決めつける「魔女狩り」が行われてしまうのだ。
例えば、2013年のボストンマラソンで発生した爆破テロについて。FBIによって容疑者2名の顔写真と防犯カメラの映像が公開されると、ネット掲示板Redditでは素人探偵たちが根拠なく犯人を決めつけはじめた。レースに集中していないかのように見える人物を丸で囲み、彼らが何か極悪な存在に気を引かれているのではないかと邪推した。ネット民は全く無関係の2名を容疑者に選んだが、それは彼らの持っていたバッグに「なにか重いものが入っているに違いない」と推測したからだった。
そして最悪なことに、この2人の男性の画像は、ニューヨーク・ポスト紙一面に「バッグの男:ボストンマラソンで目���された2人の男をFBIが捜索中」と掲載されてしまった。2人はすぐに警察に赴いて事情を説明したため逮捕されることはなかったが、その後も彼らへの誹謗中傷は続いたという。
トロント警察殺人課の元刑事マーク・メンデルソンは、インターネットは未熟な探偵たちが私的制裁を加え、根拠のない見解を広める危険な場所になると指摘している。「人相、名前、写真、監視カメラの映像といった容疑者情報を発信していいのは、警察だけです。しかし、ジャーナリスト気取りや警察気取りのワナビーたちが、勝手に結論を導いて、そんな人物誤認は独り歩きをはじめるのです。急激に拡散され、覆水盆に返らずの状態になる」
自宅の椅子に座って容疑者を追う探偵。まるでホワイトハッカーのように聞こえて格好よく思えてしまうが、内実はただの野次馬だ。熱に浮かされ、不確定な証拠に飛びついてしまえば、それは警察の捜査を妨害し無実の人を傷つけることになる。あくまで協力者という立場をわきまえて、手柄は全て警察に渡す。そうした真摯な態度のもとに、市民探偵の捜査は成り立っているのだ。
――「名声が目的だったら、市民探偵なんてやるものではない。DOEネットワークは被害者のためにあるのです。あなたが純粋に被害者とその家族を助けたいのであれば、そして、心から彼らのために正義と情報を求めているのなら、あなたは素晴らしい市民探偵になれるでしょう」
――――――――――――――――――――――――――
【まとめ】
0 まえがき
市民探偵は、仕事の合間を縫うように、あるいは余暇を使い、数千時間も費やして未解決事件の突破口となり得る手がかりや、行方不明者発見の糸口をインターネット上で検索し続けている。彼らは家系図をも作成する。裁判記録、警察による捜査報告書、死者・行方不明者のデータベースを精査し、墓標の刻まれないままの被害者たちに本当の名前を取り戻したいと願い、活動している。
例えばテネシー州の元工場労働者トッド・マシューズがその人だ。腐敗し、両目を失った遺体を包んでいたのがキャンバス地のテント・バッグだったことから、「テント・ガール」と呼ばれた身元不明の女性を、11年にもわたって調査し続けた。本書に登場する「インターネット探偵」のひとりは、10年以上求め続けた正義を下すため、人気の無い場所に犯人をおびき寄せ、自らの手で射殺することまで考えた。また、連続殺人鬼の正体を暴き出そうと、「オーシャンズ11」に感化され、郡保安官事務所に侵入した2人組もいる。
1 世界初のインターネット探偵
1998年、テネシー州キャンベル郡で女性の遺体が発見された。黒人女性で、年齢は30代から40代。胸部を刃物で刺され、頭部を銃で撃ち抜かれていた。腐敗が激しく、DNAも指紋も一致する記録はなく、身元はわからないままだった。
トッド・マシューズはDOEネットワークのメディアコーディネーターである。DOEネットワークとは、世界各地で行方不明になっている人々や身元不明者の未解決事件を解決に導くため、捜査機関の支援をしている組織である。彼は他にもプロジェクトEDAN(解剖時の写真や頭蓋骨をもとに生前の顔を復元する試み)を立ち上げている。
この事件の担当��事のエディ・バートンが、被害者の遺体を民間人であるトッドに預け、復顔を依頼した。トッドは再現した胸像と似顔絵をプロジェクトEDANのウェブサイトに公開した。
そこから6年が経った後、アメリカ政府がトッドを全米行方不明者・身元不明者システム『ネイムアス』の設立者と共同運営者として雇用する。このシステムは身元不明遺体の詳細を記録したデータベースと、行方不明者のファイルを相互参照できるようになっている。トッドはこの事件のファイルをネイムアスに公開し、捜査の進展を待った。
事件に光が差したのは、2015年のことだった。トッドは遺体が埋葬されている霊園に行き、DNA分析のために法人類学者たちが遺体を掘り起こすのを手伝ったのだ。そして2022年、エディがトッドに頭蓋骨を託してから約21年の時を経て、それがオハイオ出身のロリ・アレクサンダーのものだと判明した。
警察はロリの親族に遺骨を戻すことができた。「私の次の使命は、ロリ・アレクサンダーに関するすべてを調査することです」とトッドは誓う。ロリ・アレクサンダー殺害事件に関する捜査は今も継続中である。
トッドは若かりし頃に、ある身元不明遺体の特定に成功している。30年以上も未解決のままになっていた「テント・ガール」という女性の遺体。これがトッドをサイバー探偵のパイオニアとして一躍有名人にした事件だった。
1968年、スコット郡でテント・バッグに包まれた未成年の腐乱死体が発見される。被害者は白人女性で年齢は16〜19歳。その若い女性には両目がなく、死因を特定することができなかった。検死写真をもとに似顔絵が復元され、彼女は「テント・ガール」と名付けられてチラシが街中に配られた。しかし身元につながる情報は得られないままだった。
事件から20年経った後、トッドはテント・ガール事件に興味を持ち独自に捜査を開始する。何時間も図書館で過ごし、マイクロフィッシュのブースを陣取り、膨大な資料に目を通した。テント・ガールに関する記事のアーカイブを読むために、新聞社にも向かった。記事を書いた記者を見つけ出し(一部は引退してから長い年月が経過していた)、『マスター・ディテクティブ』誌を何度も読み直し、自分の知識として吸収していった。
「若い女性が行方不明になり、殺害され、家族がそれを届け出ないなんてことが、どうして起きるのだろう?テント・ガールを知っている人は、絶対にいるはずなんだ。誰かが彼女を探しているはず。彼女のおむつを替えた人、彼女に食事を与えた人、彼女の髪を梳かした人がいるはずなんだ。誰かが彼女を育てていたはずなんだ」
「この子が誰なのか、確かめてあげなくちゃいけないんだ」
やがて年月は過ぎ、トッドのテント・ガールに対する執着はコントロールを失いつつあった。彼の答え探しが原因で、結婚生活に暗雲が立ちこめ始めたのだ。調査にかかる高額な費用がその原因であり、現場に行く際のガソリン代、住民や記者、葬儀社に取材をする際の電話代がかさんでいた。それでもトッドはテント・ガールのことを諦められなかったし、諦めるつもりもなかった。彼女はトッドの夢のなかにも出てくるようになった。
転機は1997年だった。コンピュータとダイアルアップのインターネット回線を持つことができるようになったのだ。彼は行方不明者リストが掲載されたウェブサイトをくまなく閲覧し、長い間行方不明になっている友人や親類を探す人々からのメッセージが掲載されたフォーラムを読み込んだ。そしてテント・ガールのウェブサイトを作り、自分が数年かけて構築してきた数百ページにも及ぶ資料を公開した。
そしてついにその瞬間が訪れた。1998年1月のある夜、インターネットでテント・ガールの特徴に酷似している人を探している女性(ローズマリー)のポストを発見したのだ。
トッドは警察とローズマリーに連絡を取った。警察に「テント・ガールの遺体を掘り起こして、ローズマリーとのDNA鑑定を行ってほしい」とも要請した。警察は承諾し、DNA鑑定を実施。結果は「一致」だった。
テント・ガールの本名はバーバラ・ハックマン・テイラー。事件発生から30年経っていた。トッドは一躍時の人となり、メディアは彼を「世界初のインターネット探偵」と呼んだ。
2 Web探偵たち
トリシア・グリフィスは犯罪関連フォーラム『ウェブスルース』を運営している。「噂は御法度」という厳しいポリシーのもと、厳重に管理されたこのフォーラムには20万人もの登録会員がおり、オンライン上で議論を繰り広げ、未解決事件、そして行方不明事件の解決に取り組んでいる。国際的なネットワークは驚くべきエキスパートたちの寄せ集めだ。トリシアはこう説明する。「私たちがメンバーを探しているわけではないんです。彼らがこちらに来てくれるんです。看護師、医師、外科医、定年退職した警察官といった面々ですよ。先日はインクの専門家も参加してくれました。心理学者、精神科医、衛星写真を使って犯罪をピンポイントで特定しようという企業の社長も参加してくれました。いろいろな人たちが参加してくれています」
トリシアは自身のサイトがメンバー内で「冷静だ」という評判を得ていることを誇りに思っている。「他のインターネット探偵たちは、被害者の家に行ったり、大声を出したりするんですよ」。そして彼女は、ウェブスルースは事件解決を目指す団体ではないと、謙虚に言う。「犯罪を解決するのは法執行機関の役割です」「ウェブスルースでは、メンバーがその専門性を使って証拠をまとめて、捜査官や未解決事件の解決にとって、有益な情報となるように努力しているわけです。私たちが扱うのは、誰もが利用できる情報だけです。警察や報道機関が公開している情報のみを扱っているんです。私たちは捜査を邪魔しようなんて思っていません。絶対にね」
「現在、ウェブスルースには10名の管理者がいて、新しいメンバーに関しては徹底的な確認作業を行い、グループの書き込みをモデレートしています。私たちのルールはシンプルです。噂話は禁止、名前を書き込まない(ただし、警察が容疑者と断定している場合はよい)、侮辱行為なし、そして事実を追い求めるというものです」
ウェブスルースが一躍有名になったのは、2008年7月に、カイリー・アンソニーという名の幼児が行方不明になった事件を解決に導いたことがきっかけだった。実の母であるケイシーが娘を殺し、警察に嘘の証言をしていたのだが、ウェブスルースメンバーがケイシーの通話記録をもとにピンマップを作成して���女が事件発生時本当にいた場所を割り出したり、ケイシーのPCの検索記録から「誰でもできる窒息方法」という文字列を割り出したりしたのだ。
今はフォーラム内のスレッドが世界中の警察関係者に読まれているという。
3 黄金州の殺人鬼
市民探偵ポール・ハインズとミシェル・マクナマラは、オレンジ郡保安官事務所に窃盗に入ろうとしていた。目的の物は、黄金州の殺人鬼――70年代と80年代にアメリカの黄金州(カリフォルニア州)を恐怖に陥れた強姦魔――に関わる捜査の関連ファイル「マザー・ロード」だ。黄金州の殺人鬼は「EARONS」と名付けられ、刑事らは何年もかけてEARONSを捜索していたが、捜査は行き詰まったままであり、記録は何年も眠った状態だった。この山ほどの資料から証拠を抽出するという計画が成功すれば、我々が事件を進展させることができる。ポールとミシェルはそう信じていた。
ミシェルの知り合いが保安官事務所の証拠品室を案内してくれた。刑事は長年事件に取り組むミシェルを信用しきっていた。刑事の隙をつき、彼らは35個の資料箱をSUVに積み込むことに成功した。
ポール「EARONSの事件で僕が興味を抱いたのは、襲撃の地理的な配列でした。容疑者は北部カリフォルニアの特定地域で、2年から3年という期間で犯行を重ねていました。そして北部カリフォルニアの別の地域で襲撃を行い、5年から6年の期間で南カリフォルニア地域で犯行を重ねました」「僕は、この犯人が活発に犯行を重ねていた時期に、同じ地理的エリアに住んでいた人たちを探すことにしたんです。Classmates.com (同級生を探すサイト)や Intelius (人物検索サイト)、それから Ancestry.com (家系図情報検索サイト)、その他の公文書を探すサイト、情報収集サイトなどを駆使して検索を行いました。当時、警察の容疑者になっていなかったかもしれない人物、犯罪歴のない人々、犯罪発生地域とは別の地域に住んでいた人も探しました」
ポールは4000時間もの時間をかけてデータ・マイニングをし、独自捜査を行っていたという。
そうしたポールの調査実績に目を留めたのが、EARONSに関する長編記事を執筆・出版していたミシェルだった。
2015年の夏、ボールはロサンゼルスに引っ越し、ミシェルの主任調査員となった。彼女は子育てをしながら本の執筆を行い、黄金州の殺人鬼の正体を暴くための調査も継続させていた。ミシェルが強姦被害者や黄金州の殺人鬼を追跡した刑事らの話を聞く一方、容疑者が暮らしている場所を特定するため、ポールは綿密なデータ・マイニング作業を、地理的プロファイリングを用いて行った。ポールはより多くの卒業アルバムを精査し、ミシェルが手に入れていた黄金州の殺人鬼の身体的特徴を元に、該当しない人物を容疑者リストから除外していった。
ポールは10万人以上に及ぶ名前を調べ、その中から特に気になる人物の写真、名前と個人情報を網羅した数千人の「マスターリスト」を作成した。しかし分析が行き詰まりつつあったため、彼らはマザー・ロードを盗み出した、というわけだ。
捜査の途中でミシェルは亡くなってしまったが、ミシェルの死の一週間後、ポールは市民探偵で調査ジャーナリストのビリー・ジェンセンとタッグを組み、ミシェルのハードディ���クに残った3500ファイルの精査に没頭した。2人はミシェルの複数のメモ帳とデジタル化された数千ページに及ぶ警察調書、そしてもちろんマザー・ロードの中身に目を通していった。ポールはミシェルが書き残した遺作を引き継ぎ、本を完成させた。
そして2018年4月、黄金州の殺人鬼が特定され、逮捕された。彼の名前は「ジョセフ・ディアンジェロ」。72歳の元警察官だった。
未解決事件の捜査が専門で、ミシェルの友人であるポール・ホールズ捜査官が、犯罪科学捜査研究所の協力を得て、黄金州の殺人鬼の完全なDNAプロファイルに成功していた。これは強姦被害者のレイプキットの精液から抽出されたものだった。数千時間の調査が行われ、1800年代まで遡る家系図から、20人程度の「はとこ」「みいとこ」が発見された。その時点で、容疑者の可能性のある人物は8000人。そこから容疑者の身体的特徴を絞り込み、ジョセフ・ディアンジェロを第一容疑者に上げたのだった。
捜査員がジョセフの家を張り込み、ゴミに出されたティッシュを回収しDNA鑑定にかけた結果、黄金州の殺人鬼のプロファイルと一致。2018年4月24日に、自宅前のドライブウェイで逮捕された。
4 市民探偵の暴走
市民探偵の掲げる正義はときに暴走する。
猫を虐待する動画をネットにアップした犯人を探していたフェイスブックグループ「Rescue Ink」は、南アメリカに住む無実の人物・エデュアルドを猫殺しの犯人と誤認し、誹謗中傷を行った。Rescue Ink のフェイスブックのグループメンバーからの攻撃がはじまると、エデュアルドは自ら命を絶った。もともとエデュアルドは鬱病だったため、彼が自殺した原因が魔女狩りによるものかどうかは誰にもわからない。
2013年のボストンマラソンで発生した爆破テロ。ボストンのFBI長官デスローリーズが容疑者2名の顔写真と防犯カメラの映像を公開し、メディアの協力を求めた。
メディアに対して、「容疑者2名の写真を掲載し、分析し、公にする」ことを依頼する一方で、デスローリーズは警告もしていた。「事態を明確にするため、使用する写真はこの2枚に限定すること。我々の活動を支援していただくために、公にされるものは限定されるべきです。これ以外の写真は信用できるものではなく、人々の注意を必要以上に逸らし、間違った方向に導きかねません。それは法執行機関のリソースに過度の負担をかけることになりかねません」
直ちに、写真と防犯カメラの映像はインターネット上に拡散された。インターネットトラフィックは急増し、FBIのウェブサイトはダウンした。ツイッターは憶測と仮説で大騒ぎとなった。そして、もちろんインターネット探偵たちは事件に取り組んでいた。キャップをかぶった男たちの顔をピクセル単位で精査し、ソーシャルメディアを徹底的に探して、2人の容疑者に似たプロフィール写真を発見しようと躍起になった。人々は野球帽、バックパック、ジャケットのブランドを捜した。誰もが仮説を書き込み、ボストンの街をGoogleストリートビューを使ってバーチャル散歩した。
しかしながら、結果的に発生したのは壊滅的な規模の魔女狩りだった。爆破事件が起きた翌日、Redditで「ボストン爆弾犯を捜せ」というタイトルのサブレディットが立てられ���。数千人が参加し、レースのゴール地点に並ぶ見物人の写真で埋め尽くされた。素人の分析屋がバックパックを持っている人を赤い丸で囲み、画像に「こいつがボストン・ボマー?」とキャプションをつけた。レースに集中していないかのように見える人物をマークし、彼らが何か極悪な存在に気を引かれているのではないかと邪推した。圧力鍋の写真や、バックパックのブランドを特定し、投稿した者もいた。スレッドに容疑者の可能性のある人物のニックネームが書き込まれた。
そしてレディターたちは2人の男性を選びだした。彼のずり落ちたショルダーバッグに、「なにか重いものが入っているに違いない」と推測したからだ。
4月18日の時点で、2人の男性の画像は、ニューヨーク・ポスト紙一面に「バッグの男:ボストンマラソンで目撃された2人の男をFBIが捜索中」というヘッドラインとともに掲載されるまでに拡散された。自分たちがテロ攻撃への関与を疑われていることに気づいた2人は、インターネット上に自分たちの写真が投稿されたのを発見した直後に自ら警察に赴いた。ポスト紙の記事が出る前の段階のことだ。モロッコ出身の若者たちの無実はすぐに証明された。しかしそれでも画像は新聞各社の見出しを飾り続け、インターネット上で荒らし行為をする人たちは、ソーシャルメディアに、犯人と決めつけた2人に対する悪意に満ちた脅迫をまき散らし続けた。
誤認された2人が捜査線上から外れると、次はまた無関係の人物、「スニール・トリパティ」が魔女狩りの対象になった。スニールはボストンマラソンの一ヶ月前から行方不明になっており、家族が捜索のための動画をYouTubeにアップしていた。
スニールの名前が最初に提示された後、より敵意に満ちた投稿が「ボストン爆弾犯を捜せ」のRedditのスレッドに投稿された。スニールの写真を容疑者2の顔写真に重ねたコラージュ写真を投稿し、2人の顔の類似性を指摘した。別のソーシャルメディアもこの流行に飛びつき、数時間の内にスニールの笑顔の写真はインターネット上に広く拡散された。インターネット探偵たちは、根拠も確証もないまま、行方不明の「優しい息子」が、ボストン爆弾魔のうちの1人の可能性があると結論づけたのだ。
その一方、真犯人2人は次のテロのため行動を開始し、警察と銃撃戦になる。2人は兄弟であり、兄は死亡したが弟は逃走した。
ソーシャルメディアの熱狂的信者たちは、スニール・トリパティが現在逃走中の第2の容疑者だと、まるで事実のように語り始めていた。「ボストン警察の無線スキャナでスニールの名前を聞いた」というデマがインターネット上に流れ、トリパティ家にテレビクルーが殺到した。その後真犯人が捕まると、カメラクルーはトリパティ家の玄関前から撤収した。主要メディアにとって、スニールが容疑者であるというニュースに比べて、彼が人違いで容疑者として扱われた事実などどうでもよかった。
経験不足のインターネット探偵らによって行われた、ボストンマラソン爆破テロ事件容疑者に対する壊滅的な捜査は、熱意のありすぎる探偵たちが、良い結果よりも害をもたらしかねない典型的な例と言える。軽率に結末に飛びついたのはインターネット探偵たちだけではなく、プロのジャーナリストでさえそうだった。
トロント警察殺人課の元刑事マーク・メンデルソンは、インターネットは未熟な探偵たちが私的制裁を加え、根拠のない見解を広める危険な場所になると指摘する。このような活動は、深刻なまでに警察の捜査を妨げ、無実の人々を傷つけることさえある。
「テクノロジーの危険のひとつは、世界中の何百万人もの人たちが、今やスーパー探偵になっているということです」と、マークは説明する。「殺人について読み、犯罪ドキュメンタリーをテレビで鑑賞すると、すぐに検索をしはじめます。ソーシャルサイトを検索して、出会い系サイトを検索して、そして発見したことをまとめはじめるのです。チャットしたり、ブログに書いたり、メモや見解や動機を比較したりします。疑問なのは、導き出された結論をどうするのかということです。危険なのは、それぞれが、あるいはグループで何かをすることなんです。理想としては、その情報を警察に届け出ることなのですが」
「人相、名前、写真、監視カメラの映像といった容疑者情報を発信していいのは、警察だけです。しかし、ジャーナリスト気取りや警察気取りのワナビーたちが、勝手に結論を導いて、そんな人物誤認は独り歩きをはじめるのです。急激に拡散され、覆水盆に返らずの状態になる」
テント・ガールを探し出したトッドは、市民探偵を始めて35年になる。彼は市民探偵になりたいと希望している人たちにアドバイスがあるという。例えば、身元不明の被害者と行方不明者を結びつける際には、「あれこれ推測しない」ことだという。タトゥや特徴的な歯並びなど、目立つ特徴に着目することが重要だ。「もし警察当局に行き、『遺体と行方不明者の特徴が一致しているケースが3件あるのですが』と言うことが出来れば、警察はその情報をもとに捜査をはじめることができます」と、彼は言う。
善良な市民探偵は、発見したすべての情報を警察当局に渡すものだが、称賛されることを期待すべきではない。
トッド「名声が目的だったら、市民探偵なんてやるものではない。DOEネットワークは被害者のためにあるのです。あなたが純粋に被害者とその家族を助けたいのであれば、そして、心から彼らのために正義と情報を求めているのなら、あなたは素晴らしい市民探偵になれるでしょう」
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推理小説の世界では当たり前の“素人探偵”だが、それを地で行く驚異の人々を取材したノンフィクション。
もちろん、なんの権利も背景もない人達なので、武器となるのはインターネットだ。驚くべきはその執念で、発生から40年以上も経った連続殺人犯を突き止めた例もある。犯人だけでなく被害者の身元の特定に貢献したケースも取り上げられていて、遺族の心情に思いを馳せた。しかしSNSによる犯人特定の暴走で、無関係の人が被害を被る場合もあり、日本でも問題になった。
興味深く読んだが、写真が掲載されていればなおよかった。
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硬い信念と情熱的すぎる趣味の延長で突き進む、市民探偵たちの物語。
人生を賭けてまで取り組む人もいて、「未解決事件」の放つ求心力の強さを感じる。そして解決に繋がるケースの多さに驚き。
現地では有名なのだろうけれど、知らなかった強烈事件ばかり。
最後にネット探偵や集団圧力の怖さにも触れ、持ち上げてばかりではなく光と影の面も伝えている。
久々に手に取った海外ノンフィクションで、もっと他にも読みたいと感じた。