投稿元:
レビューを見る
全然わからなかった。
あまりにも観念的な描写が多くて、様々なテーマが交錯していて、どれも自分の中では消化不良のまま終わってしまった。
マックスクラインの記事は好きだった。
自分がもっと「言葉」というものに対して意識的になったらわかるようになるのかもしれない。
少なくとも、「生成AIで書いた小説なんてけしからん!」って言ってる人たちが概ね大馬鹿ものであることは理解できたので一読の価値はあった。
投稿元:
レビューを見る
・出るべくして出た作品という印象。
東京都同情塔はその時代に住んでいる人々や文化を象徴したシンボルタワーに思えた。平等で寛容で適切で清潔な世界に住む意味などを考えた。
多様性に忖度するとこうなるのかというディストピア小説。
投稿元:
レビューを見る
建築と言語を結びつけて、存在の規定について考えたことがなかったので非常に新鮮で面白かった。
平等、多様性というキーワードの本質を捉えきれないまま、言葉の持つ意味を暴走させたまま現実の議論が進めば、東京都同情塔が実際に建つ未来もあるのだろう。
投稿元:
レビューを見る
これが言いたいのか?と感じるが少ししてどうやら違うかも、と感じる体験を何回か繰り返した作品だった。
検閲者といった牧名の内で起こる思考や彼女の台詞、現代すでに見え隠れしている不安が現実となった日本など、これから十分訪れる可能性のあるディストピアを、強烈に言語化している印象を受けた。
舞台はタイムリーで、哲学的なアプローチもできる。楽しく読むことができた。
オリンピックやザハの競技場周辺の出来事を当時追っていればさらに楽しめたかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
第170回芥川賞受賞作
よく訪れるソウルで見慣れたザハ・ハディドのDDP
人々が集い語らい合うあの美しい建築物がもし東京にあったなら…
「仮にザハ案が白紙撤回となれば、東京の景色は古いまま、そこに住まう人々の視野も価値観も、化石のように停滞してしまう。」p45
これがまさに今の東京か
そこに立ち並ぶ東京都同情塔
「行き過ぎた多様性受容、平等思想のなれの果て」p93
「中に足を踏み入れた者に、我々のいた世界の方こそが牢獄だと自覚させることに、建築家は見事に成功している」p96
「平等」と「比較」
「snsなどは比較の最たるもの」
「独り言とは真逆の、正しくて、意味があって、衆目を集める主張を、大きな声で叫ぶ人ばかり」
『東京都同情塔』
『トウキョウトドウジョウトウ』
ラップみたい
言葉の羅列が不思議にすんなり入ってきて
読めば読むほどなんとも言えない面白さが滲み出てくる
投稿元:
レビューを見る
説明しないとわからないということは、説明してもわからないということだ、
という感じの本でした。
特に牧名の心情理解はかなり苦しかったです。彼女が何を考えているのか、一読しただけでは掴めなかった。その心情の変化に注目してもう一度読んでみたいと思います。
投稿元:
レビューを見る
普段使わない見ないような
言葉とか言いまわしばかりで
私には難しかったです…。
でも面白くなかったわけではなくて
なんか気になって興味深くて
最後まで読みました!
けど難しかった…。
他の読んだ人の感想とか見て勉強しようと思います!
そしたらきっとなるほど!ってなるはず!!
投稿元:
レビューを見る
著者の意図したものなのか分かりませんが、読了後も心がざわついております。
鉄は熱いうちに打てって事なんでしょうか。
東京オリンピック開催前のごたごた感とAI。
どちらもイマドキのテーマです。
ちなみに、今年はオリンピック開催年。
オリンピックの年になると、2020年の東京オリンピックのあの感じを思い出しそうです。(何を隠そう、我が家では「今でもあれは何だったんだろうか?」と話題になっている)
全く共通点がなさそうなオリンピックとAIを「東京同情塔」で結んでいるように思えました。
現時点では建築不可能な建築物の例として、国立競技場のザハ案で説明していると解釈しました。(結構なページ数です)
こちらは物理的に不可能な建築物ですが、「東京同情塔(シンパシータワートーキョー)」は精神的に建築不可能な建築物なのだと思います。
新宿の一等地に都庁や高層ビルと並んで犯罪者・受刑者を収容する高層な建物(東京同情塔)を建てるって、かなり難しいですよね。。。(罪を犯す理由があったとしても。そこは同情できるけど、犯罪を犯したことは同情できない)
建物の高さって人間のステータスや身分の象徴だと思うのです。
高所得者・エリートの人と犯罪者とで目線が一緒って、前者の方はかなり複雑な心境になると思うんですよね。高層ビルの上から下を見下ろした時の優越感が味わえなくなるのって、どうでしょう?
プライドが許せないと思いませんか??
エリート、高所得者だから出来る事を犯罪者もできるようになってしまう。しかも、彼らの税金を使って東京同情塔で生活している。
それらを考えると、東京同情塔が建つって事はまずないと思うのです。高額納税者は絶対に嫌がると思うし、東京同情塔を見るたびに心がざわつくことは間違いないでしょう。
(高額納税者でなくともざわつくよ)
心がざわつく建築物つながりでザハ案の話が効いてきます。
そして、このストーリーはAIと人間の関係性についても書かれています。
(このストーリーが斬新)
AIがいかに人間に近づいていくのか?を取り上げた(シンギュラリティー)ものは見かけます。
しかし、こちらの小説は逆。
人間がAI化した先にあるものは?なのです。
マキナさんとタクト君の無機質な会話はAIに影響された末路なのかもしれません。
(最初はロボットなのかと思ったけど、人間だった)
会話に感情が感じられないのです。
しかし、以下の感情がある限り、人間とAIは切り分けられるのだと思います。(これが人間であるための救いとなる)
”でも僕の目を通した建築家の女の人じゃないと、なんか伝記にならないんだよ。なんとなくだけれど、でも絶対に、『違う』って体が拒否してる。僕の中に住んでいる検閲者が、それは伝記じゃなくてただの文章だって言ってる。フォルムとテクスチャーがない、ただのクソ文、ファッキン・テキストだって”(抜粋)
そして、この感情が残り続ける限り「東京同情塔」は建設されないのではないでしょうか。
個人的にこんな風に解釈してみたけど、どうなんだろ。
浅はかすぎるだろうか。
いろんな切り口のある小説であることは間違いないです。
なんだかまとまりませんが、この辺で。
投稿元:
レビューを見る
私には難しくて読むのが辛かった
建築家が葛藤してるのはわかるけど、
共感は出来ないかなー(性格的に)
投稿元:
レビューを見る
まだ中身を理解しきれていないが、仕掛けが面白い本。
例えば、p55の「豊かで恵まれた、ほとんど何でも持っている、前途洋々の、顔が綺麗な若者」という太文字の文章が後にマックスの言葉の引用であることは発覚するなど。このような太文字の引用やChat GPTの文章生成、そしてマキナの頭の中の『検閲者』など、この作者は言葉というものの描き方が上手すぎる。
そしてChat GPTの文章が本の中にスッと馴染んでいるのも心地よい。これは舞台が近未来だからという理由も勿論、マキナの思考回路が論理的で言葉に敏感だからという理由もあるだろう。マキナのキャラクターは、p27にて拓人の『ナンパ』という言葉を訂正した際のものにはっきりと表れており、可笑しみのある台詞で好きだ。
そして、ずっと言葉に関して考え続けているマキナではなく、一瞬「シンパシータワートーキョー」を見ただけの拓人が「東京都同情塔」という言葉を思いつく構成が良い。言葉についてあれこれ検閲しながら考えていると、感覚的な言葉の発露の可能性を失ってしまうのかもしれない。
今後生成AIにより小説世界はどのように変わっていくのか。わからないが、私は頭の中にあまりにも厳密な検閲者は現れないことを祈る。
投稿元:
レビューを見る
何やら今までの思考の枠組みを揺さぶられる感じがする。張り巡らされたテーマに、いくつもの問いが浮かんでくる。この塔はいったい何を象徴しているのだろうか。
投稿元:
レビューを見る
言葉の話だ、と思うのに、さまざまに込められていて頭が追いつかない。『ニムロッド』に似ている。天上に近づく塔を建て神に近づこうとした人間は、言葉を散らされ互いに言っていることがわからなくなった。他者を不快にする言葉を封じる。自分だけの表現をして誰にも伝わらない。全てが独り言。自分の言葉で語らず、生成系AIに言葉を翻訳してもらう。差別的な表現にならないように、自分の中にも検閲者がいる。
他者に寛容な日本人、犯罪者は環境がそうさせただけで同情すべき相手=ホモ・ミゼラビリスである。幸福学者。日本人は寛容だ、という作中の発言は絶対逆説的に使われていると思う。表面的な寛容さを装って、実際はものすごく不寛容で、暴力的な。言葉狩りでなんだかおかしくなっている社会。自分の意見だけを主張して、Twitterはただ呟くものではなく、意見を声高に主張するメディアになった。誰もが大声で独り言を言い、みんな同じと謳いながら違いに不寛容だ。そんな社会を象徴的に描いていると思うのに、一読しただけではなかなかとらえきれない深い作品。
投稿元:
レビューを見る
建築、日本語、AI、多様性など、約140ページの中で複合的に絡み合う。スタジアムや新宿御苑の独特な描写がよかった。
国立競技場について、ザハ・ハディド案のまま未来が進んでいたら今の日本や世界はどうなっていたんだろうか?とうっすら考えたこともあったが、本書を通して実際に自分の眼で見て見たかったような気に少しなった。
“東京都同情塔”と“シンパシータワートーキョー”、“東京タワー”“昭和塔”。文中の「言葉を無限に生成することで何を覆い隠そうとしているのか?」という問いが心の中でひっかかりを覚えた。言語化することで示されることと、隠されることがそれぞれ確かに存在しているのかもしれないなとうっすら思えた。建てられた塔の存在についても示されたことと隠されたことがあるのかもしれない。
====
拓人がベッドで休んでいるあいだの2時間ほど、私はひとりでビールをあけて、黄昏時に刻一刻と豊かに表情を変えていくスタジアムの屋根に陶然と浸っていた。その没入の仕方は、ほとんど自分と屋根とが一体化しているといってもいいほどだった。私はパワースポットのような場所にはまるで興味がない詩、スピリチュアルな感性にも乏しい方だと思う。けれど、ザハ・ハディドが東京に遺した流線形の巨大な創造物からは、何か特別な波動みたいなものを感じずにはいられない。たとえ信仰心など持ち合わせていなくても、文京区の丹下健三設計のカテドラルを見れば自然と神聖な想いが湧き上がってくるように、その屋根はある種、崇高で神秘的なエネルギーを私にもたらしていた。まるでひとりの女神が、もっとも美しく、もっとも新しい言語で、世界に語りかけているかのようだ。私は彼女の話す声に耳をそばだて、時には彼女に返事をした。(pp.28-29)
線の正確さに反して、そこに描かれたタワーらしき建物は、現実の物理法則を無視してひどく湾曲している。彼女の想像力の奇抜さに、僕たちは同じ人間でありながら本当は違う人間なんだと、あらためて断絶を感じざるを得ない。見えている景色、思考の前提があまりにも違いすぎる、たぶん古代オリンピックを近代オリンピックくらい。今までどうやって会話を成立させてきたのか不思議なくらいだし、そもそも成立させてきたと思っているのは僕だけなのかもしれない。(p.62)
閉園後の深夜の新宿御苑は、日中に散歩した庭園とは別の顔になっていた。というより、その空間と僕との関係性が全然違うものに変わっていた。僕が御苑を歩いているんじゃなく、御苑の方が僕を歩かせている。なんというか僕の内部に元々あったはずの考えだったり感情だったりが、御苑に吹く風や木々や芝生に移ってしまったような感じだった。心がざわざわするのは僕が不安なせいじゃなく、密集した木の葉がこすれ合う音を自分の心と取り違えているだけで、でも心よりも期の方がずっと大きいものだから、不安は余計に大きくなる。葉の一枚一枚の音が、翻訳されるのを待っている秘密のメッセージに聞こえる。そして、人が言葉を葉っぱ呼ばわりしてきた訳が、正解はともかく僕の耳の穴から全身に染みわたって腑に落ちていく。すべての言葉がそんなふうに内蔵にしっくりおさまれば、言葉と現実が離れ��れにならずに済むし、彼女も監獄から出られるのに、と思っている。(p.80)
塔は既に、東京の真ん中に隠しようもなく建築されている。けれど僕にとってその建築は、どう見たって破壊にしか見えない。ミサイルや爆弾が投下されたのと何ら変わらない、取返しのつかない破壊。破壊はまるで、どこかの競技場のようにとても美しい姿をしているものだから、今後たくさんの人々が「創造」と呼んだり「希望」と呼んだり「平等のシンボル」と呼んだりしていくのだろうと思う。多様性を認め合いながら共生するのは、とても素晴らしいことに違いない。けれどそのとき僕の目に映ったのは、見間違えようもないくらいの、どのような異論も見ろ目られないほどの、圧倒的な破壊だった。僕はその破壊を誰もが認める「破壊」とするだけの言葉を持っていないけれど、それは破壊だった。(p.87)
私はある時期から日本語を喋る日本人がみんな、一塊の同じ生き物に見えるようになった。同じチューリップが並んでいるだけでそこに個性なんかない。ゆるキャラの着ぐるみみたいに沈黙と中立的な微笑みを着込んで、本音と建て前、ウチとソトを使い分ける、器用で噓吐きで綺麗な黄色いチューリップだ。綺麗な嘘をつくのに慣れすぎて嘘をついている自覚さえもない。いや、君たちは厳密には嘘をついてすらいないんだ。私はこう思う、君たちの使う言葉そのものが、最初から最後まで嘘をつくために積み上げてきた言葉なんじゃないのか?(p.105)
タクト、日本語を知らない私に、君たちの言葉の秘密を教えてくれないか?ホモだかミゼラだかビリスだか知らないが、日本語とは縁もゆかりもない言語から新しい言葉を次々と生み出して、みずからの言葉を混乱させる理由は何なんだ?この建物は公式的、対外的には『シンパシータワートーキョー』となっているようだが、日本人のあいだで別の名前で呼ぶのはなぜなんだ?シンパシータワートーキョーと、トーキョートドージョートーのあいだに、何があるというんだ?言葉を無限に生成することで、何を覆い隠そうとしているんだ?もし仮に、日本人が日本語を捨てたら、何が残るんだ?(pp.105-106)
投稿元:
レビューを見る
ネット記事を見て、「AIを使って文章を作成した小説」という誤解を抱いたまま、読んでしまった感がある。これから読む方は、思い込みをなくして、フラットに読んで欲しいです。
投稿元:
レビューを見る
読み終わった後にスッキリするといった類の本ではなかったけど、読んでよかったなとは思った。
分からないことはAIに聞いて、SNSに思ったことをテキトーに書いて、平々凡々と暮らしている身からすると、なかなか登場人物の気持ちを掴むことが難しかったかも。
この作品を読んだことを、『言葉』『日本語』について考えるきっかけにできればいいなと思った。