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コースの定理で有名なR.H.コースの論文集。数式を使わないし、説明や例示もとても簡潔明瞭でわかりやすい。論文ではあるけれど、すいすい読めて面白い。
コースの定理が学生時代唯一面白いと思った経済学のトピックだったのだけど、これを読むとコースの問題意識をほとんど理解できていなかったんだってことがはっきりわかった。取引コストがゼロと仮定すれば、権利の所在とは無関係に最適な資源配分が実現する、というのがコースの定理。だけど、ここまではコースにとってはあくまで前提の確認でしかなくて、問題の中心は、現実の通りに取引コストが存在する場合にある。そして、取引コストが存在するために、権利の所在が資源配分に明確に影響する。権利の所在が資源配分に影響するのなら、その権利を規程する法もこれを無視できない。そういう、取引コストの存在が、資源配分に係る制度設計にまで大きな影響を与える、ということこそが、コースの問題意識の中心だったということ。いままでそれを理解しないまま、コースの定理がおもしろい、って言っていたのは本当に片手落ちもいいとこだったのか。
80年も前の論文集だからいままで敬遠してたんだけど、思いがけず楽しめたし、大きな発見もあった。やっぱり、原典にあたるのが一番だってことなんでしょう。