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メディアをめぐる各国の状況について目配りのきいた解説を展開。気付かなかった視点からの指摘も多く、非常に参考になる。
ただし、唯一の欠点と思われるのが、日本のメディア不信をメディアへの無関心ととらえている点。無関心であることの原因は社会参加への意欲がないからではなく、メディアの側の作為的な番組制作に利用されることを嫌っているからではないか?そこにはメディアの独善性があるのだが、その点には著者の指摘は一切ない。残念である。
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英国,ドイツ,米国,日本でのマスコミ(メディア)の違いとそれへの信頼の違いが分かった。
高給取りなのに不勉強な人たちだから良くなることはないのではないか。
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メディアの国際比較である。日本におけるメディアの無関心は言い当てている。教育とは関係ないので教員養成ではすぐには使えないが、応用はできると考えられる。
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フェイクニュースや「マスゴミ」という言葉など揺らぐメディアへの信頼を考察した1冊。独英米3ヶ国の実情が知らないことばかりで面白いし、そこと日本の比較で浮かび上がる「不信というより無関心」には暗い気持ちに。かといってただ感情的にメディアを攻撃するのも違う。色々考えさせられるよなぁ…
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序章 「メディア不信」―何が問題か
第1章 「うそつきプレス!」―ドイツの右翼グループの台頭
第2章 大衆紙の虚報とBBCの公平性―英国のEU離脱決定
第3章 大統領が叫ぶ「フェイク・ニュース!」―分裂する米国社会
第4章 静かな「メディア不信」―日本のメディア無関心
第5章 ソーシャル・メディアの台頭―揺らぐ先進諸国の民主主義
終章 ポピュリズムと商業主義に蝕まれる「言論空間」
著者:林香里(1963-、名古屋市、ジャーナリズム研究)
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リベラリストによるメディア論。いろいろなデータを駆使し、面白い指摘をしているところがあり、役立つ部分が多かった。
一方で、著者はリベラルな民主主義者であり左翼を応援しているところに違和感がある。論調の根幹にこの左翼的イデオロギーがあるために、ネトウヨや欧米の右翼的集団の発言を上げて、偏向的報道と捉えているのだろうが、私など逆の報道の方が多いように感じている。いずれも「メディア不信」には違いないのだが、賛同しかねる。主張の根拠にも、「~が指摘するように」、「~と言われているように」、「~が示しているように」といった弱い論拠が多いため、説得力がない。また、例示も些末な事項や狭い範囲の事柄が多く、偏向的、恣意的と言われても仕方ないと考える。
本書が、日経新聞の書評で高く評価されていたのには、驚きを感じる。
「ジャーナリストたちは、医師、弁護士などと同様、職業を遂行しやすいよう特権を与えられる代わりに、高い水準の職業倫理が要求されている」p7
「2005年までは、一世帯当たりの新聞購読数は1紙を超えていた。しかし、今では一世帯当たりの平均は0.8紙だ」p12
「マスメディアには社会運営に必要な十分な知識を持つ主体的な市民を育てる任務が仮託されてきた」p13
「日本では新聞発行部数が多いことが新聞の名声の高さを示す指標のように受け止められてきたが、英国をはじめとする欧州各国では、部数とジャーナリズムの質は反比例すると考えられている。つまり、質の高い新聞ほど、発行部数は少ない(発行部数の多い新聞は低俗)」p59
「2005年に地元の運動で「みんなの滋賀新聞」という新しい新聞が創刊された。ところが、この平成の新聞創刊の動きはあえなく失敗に終わった(通信社の配信拒否、創設後6か月以内の選挙報道不可)」p119
「「政治経済関連ニュースと生活娯楽ニュースとではどちらに関心がありますか」という質問で、「政治経済関連ニュースに関心がある」と答えた人は、日本は49%で26か国中最低だった(2016年)。特に女性は「生活娯楽ニュースに関心がある」と答えている割合がほかの国に比べて頭抜けて高い(日本44%、ドイツ16%、英国19%、米国18%)」p130
「私たちは、ネットを通して自分の趣味興味嗜好に合ったニュースのみを選択的に接触する傾向が強くなっている。その結果、ネット社会では、人は興味のない事項や他者の異なる意見に出合う機会が少なくなり、互いに歩み寄って理解しようとしなくなりがちだ」p164
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ドイツ、英国、米国、そして日本の4ヶ国を比較してメデイア不信について書いた本。
格差社会から生まれた症状であるメディア不信だが、
中でも日本の無関心による静かなメディア不信という指摘は新鮮だった。
欧米と日本とのメディア不信で大きく異なる点は、そこに市民が存在するかどうか
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序章 「メディア不信」―何が問題か
第1章 「うそつきプレス!」―ドイツの右翼グループの台頭
第2章 大衆紙の虚報とBBCの公平性―英国のEU離脱決定
第3章 大統領が叫ぶ「フェイク・ニュース!」―分裂する米国社会
第4章 静かな「メディア不信」―日本のメディア無関心
第5章 ソーシャル・メディアの台頭―揺らぐ先進諸国の民主主義
終章 ポピュリズムと商業主義に蝕まれる「言論空間」
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各国のメディア不信の動向を掴むことができる。複数の調査データに基づいており、参考になる。
一部、個人的見解や説明不足な箇所もあるが、入門書としてはよい。
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日本・米国・英国・ドイツ各国それぞれが抱える、似たようで異なる「メディア不信」についての観察・分析がメイン。そこから帰結される課題と解決策は圧巻。ソーシャル・メディアの台頭による影響にも言及され、メディアへの信頼度が低下し続ける現代において必須の教養と言える。良書。
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メディアと大衆、メディアと国家の関係性が説明されている。国によってメディアのポジションや意義が異なる点が興味深かった。
◯ドイツ
欧州各国と比較しても、メディアの信頼度は高い。ナチスの反省から「リベラル・コンセンサス」が形成され、多くのメディアは保守的な発言を忌避する。しかし難民危機、欧州統合への懸念から、極右勢力の台頭も目立ち、リベラル派メディアの地位を脅かす存在にまでなっている。
◯イギリス
階級社会という特徴がメディアにもよく出ている。イギリスでは発行部数の多さ=信頼できるメディアという方程式にはならず、むしろ反比例しており、ジャーナリズムの質が高いThe Guardianなどは発行部数がかなり少ない。一方ゴシップ紙と呼ばれるDaily Mailなどは信頼性が低く、情報の精度よりも商業的な注目度を重視するため、いわるゆゴシップ的な煽りも多く、右派は労働者階級の受け皿となっている。このように新聞社によってイデオロギーがはっきりと分かれてるが、国内で最も信頼されているBBCは公平・中立性を保っている。ただ中立性に固執するあまり、時に正確な情報伝達ができていないと批判されることもあり、EU離脱の際も問題となった。
◯アメリカ
国内ではテレビの影響力は依然として健在しているが、ソーシャルメディアの普及により、メディアの構造が劇的に変わった。2016年の大統領選の際、トランプはTwitterを利用して扇動的な発信を行い、知名度を上げ続け大統領の座に上り詰めた。CNNを「フェイクニュース」と断罪する様子も印象的だったが、他者を攻撃する用途で信頼性について言及する場面も増える。SNSの情報の信頼性は非常に不透明で、何が「フェイク」なのか?、そもそも「フェイク」の定義とは?といった問題に国全体が直面することになった。発行時期的に本書には書かれていなかったが、2020年の大統領選では、SNSが主流メディアといってもいいほど活用がなされ、SNS企業がフェイクニュースを規制するほどにも事態は発展したことは記憶に新しい。新興メディアによって社会が左右されている。
◯日本
日本でもメディアに対する不信はあるものの、欧米諸国と比較すると、その構造が少しが異なる。日本の場合は、「無関心」による不信とされており、そもそもメディアを通した政治参画・市民参画といったケースが少ない。「マイ・メディア」を持つことなく、無関与な態度で現代情報化社会をやり過ごそうという風潮が存在する。