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この書籍では、
何らかのミスで遭難し、長期間のビバークののち生還した事故で、なにが生還に繋がったのか、を取材、考察しています。
山をやる人にとっては、遭難事故事例は自分事に受け止め、事故らないための予防線になりうるけど、山をやらない人にとっては、どちらかというと娯楽としてのノンフィクション事件になると思う。
この本を読んで1番驚いたのは、
人間って2週間水だけでも生きてるんだ。という生命力の偉大さ。とんでもないぜ。
とはいえそんな生活はごめんだけど。
そして最初の1章、事故者の手記だったとは、、驚きました。事故中に実際に書いてたメモとか、否応なく現実を突きつけてくる感じで緊迫感がありました。手記、現場検証、からの似たような事故者同士の対談と、くどいまでの考察。地図も掲載されてるので、かなり鮮明に状況が想像でき、事故の追体験ができます。
事前遭難してる山初心者の方にはぜひとも読んでから山に行ってもらいたい。
数々の事故の事例から考察されるのは、
どの事故も、
原因は道迷いからの遭難、滑落。早く下山しなきゃという焦りがある状況で、登り返すのがセオリーと知りつつも下山してしまった。という共通項。
ビバーク期間はさまざまだが、
精神力には結構差がある様子。長ければ長いほど辛い、というものでもないらしい。軽傷や短期間で病む人もいれば、重症で10日以上も冷静に記録を残してる人もいる。ということ。
事故はできるだけ防ぎたいけど起きる時は起きるもの。起きてしまったことはもうどうしようもないから、今からどうするかを考えるしかない。
結局、最後に決まる運命は運次第。
「ただ生死は運だとしても、絶対に生きて帰るんだと言う強い意思、最後まであきらめない精神力の強さが、その運を手繰り寄せる力になるであろう事は信じていたい。」
と著者も締めくくっている。
運は実力の内。
という言葉があるけど、運は偶然じゃなくてたくさん探して拾おうとしてる人の方が手に入るもの。
だから、
山に行ってる時はもちろん、行ってない時の行いも運という実力につながっている。
こういう事例を見ると、山、危ないなぁ。と思わなくはないけど、自分は大丈夫。という驕りは0にはできそうもないから(自分は大丈夫と信じる力も運に繋がると思うんだ)、自分にかかったバイアスには気付けるようにしておきたいと思います。
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何かおかしい、いや、大丈夫だ、このまま進もう。やっぱり変だ。道に迷った。足を滑らせ、急斜面を転がり落ちる。何とか止まった。擦り傷、打撲、骨も折れてる。さて、どうしよう。動くべきか、留まるべきか。所持品を確認。食料はどのくらいあるだろう。何日もつだろうか。まず確保すべきは水。水源はどこかにないか。誰か気づいてくれるだろうか。救助はいつくるだろう。今日も来ない。また暗くなる。…4つの事例で合計34日。遭難から発見されるまでの日数。自分なら何日耐えられるだろう。貴重な体験談。身体とともに心も鍛えておかなければ。
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「おかしい」と思っても「帰りの交通機関が気になる」「すぐ道に出るだろうと思う」「焦ってやみくもに動く」「判断力が弱まる」などなどの状態は、これまでの自分の山歩きの場面を思いおこしても容易に想像がつく。今でこそ単独行はしないが、若い時に一人で低山ハイキングをしたことなどを思い出し、恐ろしくなった。
この本で紹介されている方々は、中には重傷を負いながらも脅威の精神力と知恵とで助け出されているが、自分なら絶対に無理。山に出かける時の準備を再度見直さなければと反省した。また、このような書籍から遭難の状況を学ぶことの大切さも感じた。
助け出されるまでの夜、深い山中に一人閉じ込められた不安はいかばかりか。安全な場所で心地よく寝られることのありがたさを噛み締めながら、床についた。
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山って怖い~
けど、怖いほど魅力的なのも確か。
遭難者を発見した捜索隊やボランティアさん方、皆さんかっこいいです。
遭難者が、幻覚や幻聴を体験するのはよく聞いていたけど、国見岳の遭難者が見た幻覚は完全にホラーじゃないですか!
あんなの見たら、自分だったらもうその場でおかしくなってしまう。本当に幻覚だったんだろか……とか思ってしまう。
とにかく本作の方々は生還できて、ホントに良かったです。