とりあえず、映画の勝ち
2002/09/10 11:01
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投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、映画では数回見たことがあるが、いつも大変面白くみていた。今回初めて原作を読んでみたが、結構違いが目に付く。映画は面白く見せるために、かなりの脚色を施したようだ。
追われるナチの戦犯、エドアルド・ロシュマンと主人公であるジャーナリスト、ペーター・ミラーの追跡、逃走劇はどちらも共通しており、そこがこの物語の見せ場である。映画でミラーを演じている若き日のジョン・ボイドは名演であった。最近では歳をとったせいか、悪役を演じることの多くなったボイドである。
追われるのはロシュマンだけではなかった。ミラーもオデッサと名付けられたナチ戦犯支援組織から命を狙われる。ナチの戦犯は、戦後国家の庶民レベルに潜り込み、何食わぬ顔で第四帝国の国家再興を狙うものである。最近では旧ユーゴで民族浄化という言葉の元にボスニア=ヘルツェゴビナで新ユーゴ連邦政府軍による虐殺が行われ、やはり国際司法裁判所で裁かれたという出来事があったばかりである。
そこでも軍の指導者、カラジッチ、ムラジッチ等が追われる身となり、ついにはミロシェヴィッチ大統領自身が失脚するという政変があったばかりである。民族が複雑に入り組んだ旧ユーゴでは昔から民族間の確執があったのである。民族浄化とは何たる非人間的な言葉であろうか。
それにしても、ナチ戦犯の執念深さには驚かされる。あれだけ国際的な批判を浴びる中で、しかも追われる身でありながら、なおも第四帝国の建国を夢見るのである。大戦中、収容所で非人間的な残虐行為を繰り返したロシュマンは、すでに企業経営者に収まっていた。
ミラーはジャーナリストという職業以外のある動機でロシュマンを追跡する。オデッサに潜り込み、あっけなくロシュマンを追い詰める。追跡には新政府はもちろん、一般国民もそれほど協力的ではなかった。
追跡、逃走劇とは別に、ナチ戦犯の存在やネオ・ナチズムの盛り上がりに目を向けさせてくれ、その背景をよく伝えてくれる傑作であった。
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最後の最後でストーリーをど〜〜んと上げてしまうような展開。
何冊か、彼の本を読んだけど最初の書き出しの頃から、わざと抑えて書いてるのかな?
それを狙っているのかな。
私は、彼の本で泣いてしまいました。
海外作家の方は、風景や建物、周りの景色や感情など、とっても詳細に情景を書くみたいです。
そうすると、読んでる最中に映画で画像を見ているか?の様な感覚になるから好き。
オデッサ(ナチス親衛隊)のメンバーをなぜ?そこまで執拗に追いかけるのか?
最期の最期に判明する場面が今でも、心に焼き付いています。
この場面で、涙が止まりませんでした。
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戦後のナチスの秘密組織という大きな背景を持つ問題に一人で切りかかる勇敢な記者の手に汗握るサスペンス。
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高校の時に読んだ本 フレドリック・フォーサイスの小説の中では一番好きです。ナチスの親衛隊を追い詰めていくのはスリルがあって最高です。 自分的には主人公の彼女がストリッパーってのがちょっと。。。。でした。
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偶然、収容所の生き残りの老人の日記を読んだことから、ミラーは老人の敵・SSのロシュマンを追いかけ始める。ところが、彼の前に元SSたちの組織・オデッサが立ちふさがる・・・ 手に汗握りました。ミラーの真の動機はわかりやすいものの、決め手に欠けるよな〜と思っていただけに、種明かしには驚きました。覚えてるものなんですね・・・。
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ナチスはいやだなぁ、戦争はいやだなぁと、当然のことを改めて思った。
主人公の行動の理由が、極めて私的な復讐というのが良いです。
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いつもながら、読み終わった後に虚無感が漂う。
戦争の犬たちもそうであったが・・・
何かを訴えかけて、考えさせる終わりかた。
私は好きですね。
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ネオナチを扱った作品としては有名どころ。
ジョン・ボイドで映画化されたのをご覧になった方も多いでしょう。
事件の背後関係を掴むまで、時代背景が交錯するのでなかなか入り込めない人もいるらしいが、入ってしまえばこっちのもんです。
ミステリのようにドキドキさせてくれる。
執筆中、作者に脅迫状がばんばん届いたというのも頷けるくらい濃くて強い内容だから腰を落ち着けて読みたい。
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本書も、30年ぶりの再読。最近つくづく痛感するのが、10代で読んだ作品を再読すると、まるで違った発見や気づきがあるだけではなく、その作品の評価までがらりと変わること。これもまた、読書の醍醐味
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すぐ引き込まれて止まらなくなる。
オデッサってほんとにあったのかな?ナチ親衛隊を戦後救う組織があったとは。
どこまでがフィクション何だろう…
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「ジャッカルの日」、本作、「戦争の犬たち」と、このあたりはフォーサイスの連続スマッシュヒットだったなあ。
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数あるフォーサイスの作品の中で、個人的にはトップクラスに好きなもののひとつである。ドキュメンタリー的な迫力では「ジャッカルの日」に及ばず、スケールの大きさでは「悪魔の選択」 にはかなわない。現代的なトピックスとしてなら「神の拳」等が上だろうし、作品としての余韻ならむしろ短編を勧めたい。
もちろん、ナチスドイツの戦争犯罪の話は、今読んでも褪せることのない迫力で迫ってくる。冒頭の日記は胸がしめつけられるようだし、途中明らかになってくるさまざまな「事実」には事実ならではの説得力があり、怒りで胸が苦しくなる。ラストに近い主人公と敵役の言葉による対決シーンは、単なる小説の世界を超えた力を持つ名シーンだと思う。
が、むしろこの小説の味は、ほとほと呆れるほどの主人公のいい加減さ、調子の良さであり、主として偶然のもたらすドタバタの追跡劇である。シリアスな背景を取り除いてみてみれば、ほとんどコメディといっていいかのようなすれ違いの追いかけっこだと思うのだけど、どうだろう。
フォーサイスの作品、特に長編の主人公はプロ、それもプロ中のプロといいたいくらい、さまざまな意味で鍛え抜かれた連中である。そういうプロの行動のあざやかさが、彼の作品の魅力であることは間違いない。
しかし、本作においては違う。主人公はどうしようもないくらいアマチュアである。アマチュアの、身勝手で怖いもの知らずのめちゃくちゃにハラハラしながらつきあいつつ、その先が読めない動きに引っ掻き回されるプロたちの姿をちょっと小気味良く眺めることに、この作品の最大の楽しさがあるのだとおいては思うのだけれど、どうだろうか。
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大学生のころ『ジャッカルの日』を読んで震えましたが、本書も同じく最後まで読み切らせます。大江健三郎の『性的人間』なんかもそうですが、無駄な伏線がいっぱい張ってあり、ミステリーのように幻惑を狙った効果が企図されていないので、不条理な日常生活と連関しているようで、そのへんも楽しめます。しかし、なんといってもローラーコースターのような展開で主役のルポライターが危機的な状況をすんでのところですり抜けるとホッと息を呑みます。初版は72年。全然古びていません。
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ケネディ暗殺のニュースから始まって、ユダヤ系ドイツ人の老人の自殺、その日記のあたりでかなり凹んでしばらく放置してたけど、面白い。60年代が舞台で70年代初めに書かれた小説らしいけど、テンポがよくてさすが名作と言われる社会派ミステリー。実話や実際の人物も多くて、どこからどこまでが本当なのか、よくわからないが、ドイツの抱えていた戦後問題がかなりよくわかる。社会問題、差別問題、戦争、狂気、世界的に見て結局は同じような問題がまた起こるし、起こっているし、力のある者が生き永らえ、民がそのツケを払わされる、と言う矛盾に気付く者は、ことが終わってもどこの国でも少ないのかなあ、と感じた。
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オデッサを執拗に追う主人公の動機に曖昧さを感じるも、ラストで納得。
やはり個人の恨みがなによりも強い。