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私は、連作短編集が好きだ。同じ世界で、違った人からの視点で物語が語られて、Aさんから語られた視点で持っていたイメージや先入観が、Bさんから語られる物語で別の意味を持つことが多いからだ。そのイメージの逆転が起きた時、やられた。とよく思う。
私の好きな伊坂幸太郎さんや辻村深月さんも連作短編集が得意?な作家さんだと思うが、今回の青山さんにもすっかりやられました。
さて、物語は銀座が舞台で年齢の様々な方が主人公で語られる。主婦や作家、クラブのママ、俳優を辞めた営業マン、奥さんに別れを告げられた絵画好きなおじさんなど、それぞれの視点から汲み取られる感情や考えが、今の自分に重なる部分が少なくとも少しはあって、中にはすごく重なる部分もあって。そんなそれぞれの登場人物を読者という観客席から見てるからこそ気づくことがあって。
さらに、王子や人魚姫の正体についても平行して伏線が張られており、もう少し長いエピローグよかったなと思いつつ、全てを語らないのがむしろ奥深いのかなと思いつつ、満たされた気持ちで読了できました。また、青山美智子作品が出た時には、読んでみたいと思わずにはいられない一冊でした。
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歩行者天国で賑わう銀座の街中に、自らを「王子」と名乗る青年が現れる。まさに“王子ルック”で身を固めた彼は、逃げた人魚を探しているという……。王子と人魚をキーワードにした5篇とプロローグ、エピローグからなる連作短篇集。
いつもの青山作品同様に各章の登場人物は微妙につながっており、誰がどこに関係しているのか想像しながら読み進めた。全体はアンデルセンへのオマージュだし、あの歌詞やら、あの画家さんの作品が登場したりと、遊び心に満ちている。
5章まで読み終えてエピローグへ。ここでの種明かしでようやく、これまでの時間が無駄じゃなかったと感じられた。愉しんで書かれているのはわかるが、ちょっとぼくにはついていけなかった。
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十二歳年上の恋人を持つ僕が、精一杯背伸びして彼女と釣り合おうとしてついていた嘘
二十歳になり夢を叶えるためアメリカへ旅立つ娘を持つ私の、孤独と無力感
趣味の絵画購入が過ぎて三か月前に妻と離婚した私の手元に残った妻からの贈り物のヴィンテージ時計
文学賞の選考結果を知らせる電話を待つ作家の私が活動的で社交的な妻の一言で取り戻す自信
手タレと銀座のクラブのママ兼任で十二歳年下の恋人を持つ理世
理世ママの店の元ホステス紗奈の失恋と勘違い
人魚が逃げたという言葉と共に歩行者天国でのロケでトレンド入りした王子
銀座に歩行者天国で「僕の人魚がいなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」という言葉ともにトレンド入りした「王子」。
とある日の、銀座で王子と遭遇した6人の物語たち。ちょっぴり切ない嘘や迷いや後悔が、王子と出会うことで変わり始める。
その瞬間の優しい鮮やかさ。誰もが自分の物語の主人公。うまくいかないこともあるけど、それでも人生ってどんどん変わっていくものだ。いや、変えていくものなのだ。アンデルセンが描いた人魚の物語を軸に展開する青山美智子ワールド。
これよこれ!!この読後感の良さが青山小説の醍醐味よ!!!
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心温まる作品。人魚が逃げたという設定がいろんな人の人生に繋がっていく。ありのままの自分でいいと思えるところや1行の文が誰かの人生を変えるっていうセリフがたまらなく好きです。
一気読みして明日仕事なのに起きれるだろうか。
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Amazonの紹介より
ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りした。どうやら「王子」と名乗る謎の青年が銀座の街をさまよい歩き、「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」と語っているらしい。彼の不可解な言動に、人々はだんだん興味を持ち始め――。
そしてその「人魚騒動」の裏では、5人の男女が「人生の節目」を迎えていた。12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員、娘と買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込みすぎるあまり妻に離婚されたコレクター、文学賞の選考結果を待つ作家、高級クラブでママとして働くホステス。
冒頭から、謎の王子が現れて、人魚が逃げたと発言したということで、どうしても王子が気になるところですが、王子の存在は、あくまでも脇役の立ち位置であり、主人公達を引き立ててくれる存在でした。
5人が王子と出会うことで、自分自身の今置かれた恋愛や恋愛観を通じて、成長していく物語になっています。
青山さんの作品というと、やはり色々な伏線を張り巡らせて、最後に集約していくという展開が印象的だったのですが、今回はそういったインパクトは薄い印象でした。
個人的には、「全てが繋がれている」という爽快感がほしかったのですが、構成よりも、登場人物の心理描写や出来事にスポットをあてることで、より内容やメッセージ性が伝わったように感じました。
全5章で、主人公はそれぞれ異なっています。
物語の舞台は銀座で、和光や歌舞伎座、鳩居堂など有名な所が登場するので、行ったことのある方には、より親しみがわくかと思います。
さらに青山さんの表紙を手掛けている田中達也さんやU-kuさんも物語における友情出演のような感じで登場したので、ちょっと興奮してしまいました。
5人は、それぞれ王子と会います。普通ならば不審な人物だと思って避けたり、スマホで撮影したりとあまり王子と対等に向き合いませんが、この人たちは王子の話を聞き、王子にアドバイスをしたり、王子をきっかけに自分も何か変わろうと奔走します。
その助言は、その人自身の生き方からにじみ出た発言だったのですが、色んな角度から話されていたので、なるほどと思った部分もありました。
「人魚姫」の物語は、あまり憶えていなかったのですが、人魚から見た思いと王子から見た思い、そして老若男女、それぞれの解釈に、色んな意見を垣間見たので、面白かったです。
そして、助言を言った後の登場人物達がちょっと成長していく描写に優しく温かな気持ちになりました。
特に第1章と最終章が印象的でした。第1章は、ある女性に恋におちた男性、最終章ではその女性視点という「対」の構成になっています。
自分はこう思っていたのに、相手は違うことを思っていたという展開だったので、お互い直接向き合わないといけないと痛感させられました。
肝心の王子ですが、最後までハッキリと明示せず、匂わすようなファンタジックな存在で終わります。
途中、カードを店に提示したときは、ズッコケましたが、最終的にほわっとした空気感があって、不思議な感覚がありました。
また、最後の語り部が話す場面はエモく感じました。
人々が行き交う歩行者天国が、別の解釈で違った見方で見ることができるので、その発想がなく、新鮮味がありました。
今度、歩行者天国を上から見て、そういった考え方で覗きたいと思いました。
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青山さんの本は大好きで、発売と同時に手に入れました。人魚が逃げた!?ファンタジーなお話の中にもやっぱり読んでいると引き込まれていきました。そささてラストは。。。面白かったです。
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人間味あって、みんながみんな等身大で
目の前のことに四苦八苦してるからこそ
共感できるし入り込める。
いつもながらの青山さんの作品だけど
だからこそ安心して読める。
ほっと一息つきたいときに読むのに良い◎
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普段すれ違う人たちも皆んなそれぞれ悩みがあり、葛藤し、前を向いて生きているんだと親近感が湧き勇気をもらえる本。王子は一体何者なのか、最後は遊び心がありつい口角があがりました。
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表紙に惹かれて読みました。
話は、銀座をテーマにして進んでいきます。
最後の最後にこのどんでん返し、想像できなかったです。
とても、スピード感もいろんな人の視点もありとても楽しい本でした。
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青山美智子『人魚が逃げた』
2024年 PHP研究所
本作もまさに青山美智子ワールド全開の連作短編集でした。
人魚姫や王子というキーワードが出てきても不思議に感じるどころか、それでどうなるの?と興味津々で読み進めました。
文章も物語自体も凄く優しいけれど、人生教訓をまさに説いています。
本当にそうだなと思わされることばかりで。
そして第5章からエピローグの展開は心がざわついて大変でした笑
えーそうなのか!そうだったのか!という楽しみまであって。
心のエッセンスになる青山作品。素晴らしかったです!
#青山美智子
#人魚が逃げた
#PHP研究所
#読了
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『人魚が逃げた』
著者 青山美智子
装丁写真 田中達也
装丁・目次・章扉デザイン 岡本歌織
装丁は、青山美智子さんの作品ではお馴染みの田中達也さんの小さなフィギュアで“本書の世界“が見事に再現されています。
本を手に取り帯を見ると、角度によってキラキラと輝き、文字や背景に使われているブルー(水色)もとても綺麗です。
(読了後に再度表紙を隅々まで見てみると、小さな“発見!“が沢山あってまた愉しいですよ〜。
カバーを外すと、そこにも。(*´︶`*))
今回のお話は、『プロローグ』の王子へのインタビューにはじまります。
「僕の人魚が、いなくなってしまって……」
ー 人魚が。
「……逃げたんだ。この場所に」
続く5章、
1章 『恋は愚か』
2章 『街は豊か』
3章 『嘘は遥か』
4章 『夢は静か』
5章 『君は確か』
各章の登場人物が、アンデルセンの『人魚姫』の物語を主軸に本書の世界で繋がっています。
スタートは、とある番組の街頭インタビューに、まさしく“王子様“の姿をした、自らも王子と名乗る人物がピックアップされ、「僕の人魚が、いなくなってしまって……」と悲嘆にくれた様子。番組の方は「ーなんと、銀座に人魚が逃げちゃったみたいですね、見つかるといいですねぇ。皆さん、人魚を見つけたらご一報を!」と締められます。
ーそこから、SNSでは「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りし、人魚騒動に。
銀座を舞台に、五人のストーリーと人魚を探す王子が優しく繋がり、それぞれの答えを導き出します。その背景では無関係ながらネットニュースに踊らされるように“王子“を面白がっているところもあります。『エピローグ』で優しく紐解かれ、結ばれる物語。青山美智子さんの描く世界は、いつも優しさがありますね。(ネタバレにならないようこの辺で。お愉しみください。)
巻末に「本書はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。」というよく見られる一文が添えられていますが、本書に出てくる世界と現実の世界、アンデルセンの物語の世界とのリンクの“発見!“がまた愉しいですね。
アンデルセンの人魚姫の物語を読みなおしたくなりました。優しい読書の時間でした。ありがとうございました。(*´ω`*)
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連作短編。
イケメンの男の子は手タレでホステスの12歳年上の理世に恋をして付き合う。理世も実はそのイケメンを昔から推してる。イケメンは子供で貧しいことに嘆き、理世は年増なことに嘆くなど。
アンデルセン童話から出てきた王子が色んな現代の人たちと軽い交流をする。
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一言:『遊び心あるファンタジーな一冊』
感想:今の現代によくある内容だと感じた。特に、「思いのすれ違い」におけるケース。本書では各主人公の内面が描かれているため、第三者としては「なんで言わないの?」と問いたくなる場面。しかし、当本人同士ではそれらの会話がなく、あるのは素朴な会話だけ。互いに自己表現をなくなってきている、あるいはそのような時間を持たないといった時代の反映なのかと感じた。これを見て、内面を曝け出す、言葉として表現することの大切さを改めて知った。
「人は思考だけでは動かせない!人を動かしたかったら言葉にせよ!」
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今回のタイトル『人魚が逃げた』?ってそう言うストーリーへと繋がってくんだったんだ。そして表紙は銀座だったんだ。読み終えてなるほど~の感動作ででした。 童話人魚姫ってそういうお話だと分かったら童話もいいなぁ改めて読むと。今作もホント楽しかったです。 王子人魚に会えてよかったね。
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3月の最後の土曜日の銀座を舞台に「人生の節目」を迎えた5人の主人公による連作短編集。
全編を通して絵のない大人向け絵本のようで楽しかった。
エピローグではファンタジー要素がさらに強まり、ほんの一瞬目に入っただけの"あの人"にもそれぞれの"物語"があるんだなぁと思えるような仕掛けもあり素敵でした。