塩野七生ルネサンス著作集
著者 塩野七生
見たい、知りたい、わかりたいという欲望の爆発、それがルネサンスだった――フィレンツェ、ローマ、ヴェネツィアと、ルネサンスが花開いた三都市を順に辿り、レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、フリードリッヒ二世や聖フランチェスコ、チェーザレ・ボルジアなど、時代を彩った人々の魅力を対話形式でわかりやすく説く。40年にわたるルネサンスへの情熱が込められた最高の入門書。 ※当電子版は新潮文庫『ルネサンスとは何であったのか』を元に制作しています。地図・年表なども含みます。新潮文庫版に収録の「対談 塩野七生×三浦雅士」も掲載しています。
わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡―塩野七生ルネサンス著作集7―
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塩野七生ルネサンス著作集 5 海の都の物語 下
2005/05/19 23:04
塩野七生は結局これ!
11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
塩野七生の本は沢山あるが、結局「サントリー学芸賞」を受賞した
「海の都の物語」に尽きますな。商業国家として繁栄を極めた中世の
都市国家ヴェネチア。最盛期には大英帝国顔負けの植民地帝国を築き
あげ、地中海を我が海としたヴェネチア。その栄華の絶頂期に衰退の
兆しは始まり、一旦衰退が始まると今までヴェネチアの長所だったもの
が短所となり、すべての歯車が逆回転を始めてしまう。帝国は衰退し
敗戦につぐ敗戦で領土は次々と失われていくが、皮肉なことにそれでも
ヴェネチア人は豊かであり続けたが故に、危機感は国民の間に高まる
ことはなく、構造改革の火は消され、衰退は続くのだった。豊かに
なった人間がリスクを取ることを避けるようになり、安全な道のみを
選ぶようになったことが国家から進取の気性を奪い去り、国家を衰退へ
と導いたという塩野の議論は初版から20年以上たった今も、その輝き
を失っていない。衰退した日本の大手都市銀行員に是非読ませたい一冊
である。
塩野七生ルネサンス著作集 4 海の都の物語 上
2003/09/13 06:25
学校で学ぶ歴史が嫌いだった人へ。
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルテミス - この投稿者のレビュー一覧を見る
私は学校の歴史が嫌いだった。
だが、今考えれば、年号を覚えさせられ暗記できたものの量で評価されるのが嫌いだったのだ。本書に出会う前の私は主にSFやファンタジーを読んでいたのだが、それらの中でも「舞台は架空だがストーリーは大河ドラマ的」なものを特に選んでいたのだから。
ともあれ「歴史は嫌い」と思い込んでいた私は当然歴史ものを読むことはほとんどなかった。したがって歴史の知識が増える筈がなく、あまたある日本の歴史物はたいてい読者の側にある程度の歴史の教養(常識)があることを前提にしているので、手に取る気にならないという悪循環に陥っていた。
だが、ある日。
本書の後に書かれた塩野氏の「レパントの海戦」が目にとまった。レパントの海戦の少し後の時代をを舞台にしたマンガを読んだ後だったのだ。三部作の三作目だったので、一作目から読んだ。面白かったが、この三冊の段階ではまだ「歴史」ではなく「物語」を愉しんでいた。ともあれ、同じ著者の別の作品を、と思って本書を手に取った。
私の読書傾向は、それ以来一変した。
本書に、「美術史以外ヴェネツィア史について書かれた書物が皆無に近い日本では、先例を参考にするということができないために、言葉の訳ひとつからして私がはじめなければならない」という記述がある。そのために塩野氏は大変に苦労されたのだろうと察するが、結果として本書は何の予備知識もなく読める歴史書となった。そのおかげで、私は本書を読み通すことができ、「自分が歴史を好きである」ことを「発見」できたのである。
著者が自らたびたび言明しているが、塩野氏が「作家であって歴史家ではない」のも幸いした。歴史家の書いた歴史書では論拠となる資料をそのつど挙げないわけにはいけない。いきおい「注」が膨大な量となる。なかには、本の厚さのかなりの部分が「注」に割かれてしまっているものもある。いちいち巻末を参照するのは手間である。しかし、引用されている資料のタイトルなどに混じって、知らない用語の解説などが載っている場合もあるのでその手間を省くことはできない。
そういう散文的な理由以上に、「文章が作家のものであって歴史家のものではない」ことが、本書の魅力をより高めている。これは塩野氏の文章が簡潔、平明であるという意味「も」もちろん含んでいるが、ここでの主眼はそういう意味ではない。歴史家が歴史書を書くときは、おそらく「扱っている史実あるいはそれについての論考に関心がある読者」を想定しているであろう。そういう読者は、内容がしっかりしていれば、文章力は文法的に誤りがない程度であれば文句は言わない。しかし作家は、そういう「はじめから興味を持って読み進めてくれる読者」だけを相手にして文章を書く贅沢は許されない。常に読者の興味を引き続ける文章力(努力と言い換えてもいい)が必要不可欠なのだ。
その点、塩野氏は間違いなく作家であった。
史実について述べるときは臨場感豊かに、ときには脱線して空想と遊ぶ。ヴェネツィアを危機が襲うたびに、読者ははらはらして手に汗を握ることになる。読み終わったときに、知的好奇心だけでなく純粋に娯楽としても「面白かった」と言わせうる歴史書など滅多にあるものではない。
本書の後、ヴェネツィアに関する本が多数出版された。それらを読んで後に本書を読み返すと、塩野氏の視点がいささかヴェネツィアに好意的に過ぎる部分があるとわかる。だが。
本書に出会うまで、私は長らく歴史を「暗記物」だと思っていた。
しかし、ヴェネツィア旅行が趣味になってしまい、イタリア語をかじるようになった今では、「歴史」と「物語」が、イタリア語では同じ「ストーリア」という単語であることを、私は知っている。
そして、塩野七生氏は「ストーリア」の書き手なのである。
塩野七生ルネサンス著作集 4 海の都の物語 上
2005/05/18 10:05
かつての政治学徒にも興味は尽きない。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたつみの自游人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
6月末大学のクラスメートでアドリア海・エーゲ海のクルーズに行くことになった。そのクルーズの出港・帰港地が共にベネチアであり、クルーズ終了後更に2日間ベネチア観光の日程をとっていることから、思い立って昔読んだ塩野七生女史の「海の都の物語—ヴェネチア共和国の一千年」を読み直そうと考えた。
処が書棚にとっておいた筈のこの書籍が見当たらないのです。丸善に行ってみたところ、品切れで、途方に暮れたが、amazon.comと同じ方法で商売している@niftyの「お買い物」を呼び出し、ネットで注文したところ、4月27日の2100頃注文したものが、28日の午後には宅急便で配達されたのには驚いた。
十数年前に読んだ記憶があるが、細部は殆ど忘れていて、今回のクルーズの航路がヴェネチアが地中海の女王として、活躍した通商ルートと重なり合う為、興味は尽きなかった。是非ご一読をお勧める。
歴史としても面白いし、1000年に亘って繁栄を続けた統治機構を作り上げたプロセスなど、政治機構論的にもかつての政治学徒としても勉強になった。「ヴェネチア共和国は資源に恵まれなかった国である。資源に恵まれた陸地型の国家ならば、非効率の統治が続いても、そ
れに耐えていかれる。古代ローマ帝国、ビザンチン帝国、トルコ帝国も、悪政が続いてもそれが帝国崩壊につながるには、長い長い歳月を要した。一方、資源に恵まれないヴェネチアのような国家には、失政は許されな
い。それはただちに、彼らの存亡につながってくるからである」との指摘は日本と中国との関係にもそのまま通用しそうな議論で、身に詰まされる思いを懐いた。