犯罪
著者 フェルディナント・フォン・シーラッハ , 酒寄進一
一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。兄を救うため法廷中を騙そうとする犯罪者一家の末っ子。彫像『棘を抜く少年』の棘に取り憑かれた博物館警備員。エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗。――魔に魅入られ、世界の不条理に翻弄される犯罪者たち。高名な刑事事件専門の弁護士である著者が現実の事件に材を得て、異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを鮮やかに描き上げた珠玉の連作短篇集。クライスト賞ほか文学賞三冠、2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位に輝いた傑作。単行本より改訂増補された最新決定版!/解説=松山巖
犯罪
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犯罪
2016/02/27 07:28
単行本よりも「これはリンゴではない」を強調した表紙に
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドイツの新人によるベストセラー、数々の文学賞を受賞!、と話題になっていたのでもっと重厚なやつかと思っていて・・・意外に本が薄くてびっくり!
しかも中身は連作短編集だった・・・。
が、内容、ぎっしり。 なんというか、“シリアスな小話”という感じ。
ある犯罪について、その事件にかかわることになった弁護士の「私」が時間軸を整理して物語るという内容なのですが、「私」の出てくるタイミングがそれぞれ違っているので語り手の姿は驚くほど見えない。 客観的な描写が淡々としたイメージをつくりあげ、残酷な事件もちょっといい話も同じ温度に感じてしまい、だからちょっとユーモアもあってまとまり具合も“小話”っぽい。 でもはっきりオチがあるわけではないので行間が広いというか、ある意味文学的です。
しかし、とてもおもしろい・・・。
一編一編が短いこともあり、読めば読むほどスピードアップ。
ひとつ読み終わるたびに、はぁー、とため息。 犯罪って、人間って、と考える。
ドイツの刑法や裁判についてなじみが薄いので「そうなんだ」と思うこともあり、フランス以上にドイツも移民が多いということにも驚く。 外国ってわからないこと多いなぁ、いや、日本のこともよくわかってないけどさ。
犯罪
2015/05/03 23:23
ドライな文体が心地良い短編集です
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
現役弁護士が書いた犯罪にまつわる短編集です。書き味がとてもドライな為、まるでノンフィクションのようですが、一応創作のようです(解説参照)。
2012年本屋大賞受賞作だけあって、展開・構成・訳文が非常によく出来ているという印象を受けました。また、淡々とした文体で犯人の異常性や人間関係の妙が際立ってる所も良かったです。
個人的には、「棘」と「エチオピアの男」が傑作でした。
犯罪
2021/08/06 07:02
読むのがやめられなくなる短編集
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドイツの弁護士でもあるシーラッハ氏の、作家としてのデビュー作。
11篇の短編が収められた短編集で、書籍タイトルのとおり、犯罪小説といっていい。
本国ドイツで2009年発表され、ベストセラーとなり、日本での翻訳は2011年。
日本でも話題となって、2012年本屋大賞「翻訳小説部門」で第1位になっている。
11篇それぞれストーリーが面白いが、この作品の魅力はシーラッハ氏の文章力だろう。
創元推理文庫版の「解説」で松山巌氏は、氏の文体を「短い一節で時空間の流れを畳み込むように表現する」と説明している。
そのせいか、妻殺しであれ(「フェーナー氏」)であれ、偽証罪であれ(「ハリネズミ」)であれ、銀行強盗であれ(「エチオピアの男」)であれ、犯罪を扱っていながら、湿気がほとんど感じられない。
いとも淡々と、事実が羅列されていく。
そして、これらの短編は単に犯罪を描いただけではない。
そこには必ず人間の秘めた姿がある。
冒頭の「フェーナー氏」は妻殺しの犯罪ながら、妻に蔑まれながらも耐えてたえて行ったもの。法はそんな彼を裁くが、彼を裁いているのは彼自身といえる。
11篇の短編の中では「チェロ」という作品がいい。
豪腕な父との生活を嫌って家を出る姉と弟の物語。しかし、二人には過酷な生活が待っている。病にかかり、死の前にあった弟を手にかけてしまう姉。その姉もまた拘置所で自殺してしまう。そして、あの父もまた、二人のあとを追う。
悲しみの色濃い作品である。