雪原の月影
老人となっても少年のまま、成長することのない病、クルベール病。皇太子でありながらこの病に冒されたエルンストは、位を剥奪され、国内で最も貧しい領地メイセンの領主に任じられる。初めて見る城の外の世界。微かな不安と、不思議な高揚。エルンストは彼にひそかに想いを寄せメイセンまで追ってきた戦闘種族の男ガンチェと恋に落ち、共に生きることを誓う。そして、窮乏するメイセンで極貧生活をおくる領民を救うため、二人は共に、未来に向けて種を蒔き始める。だが、エルンストの病をめぐる謀略が明らかになり始め…!
※本書は一迅社より配信されていた「雪原の月影」(ムーンライトノベルズ掲載作より)を改稿した上で、大量に追加収録し、単行本書き下ろしを加えた完全版です。
雪原の月影 満月【イラスト入り】
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雪原の月影 三日月
2021/09/29 18:18
WEB発 伝説の長編の刊行 最高に面白いです
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あまりりす - この投稿者のレビュー一覧を見る
WEBで発表されていた長編ファンタジーBLです。
次の国王となるべく皇太子として育てられていたエルンストが、老人になっても子どものままで成長を止めるという病の為にその皇太子の位を廃され、皇太子宮を去らねばならないところから始まります。
この国では厳格な規律ーすなわち皇太子は男女とはず第一子である事、生まれ落ちたその瞬間から次代の王としての教育が始まる。帝王学は幼子でなければ身につかないと考えられているため、仮に皇太子が亡くなった場合は王の中で一番年少の子が継ぐ。
この国にはクルベール病という子どもの姿のまま成長を止める病があり、命には別状ないものの王として次代を残さないエルンストはなので皇太子を廃される事になる。
王と皇太子以外は宮を出て貴族として国内のどこかの領地を治めなければならないのに、歴史上初めて皇太子の位を廃されたエルンストが与えられた領地は国内でも辺境の貧しい国でした。
そこでその領民を少しでも豊かにしようとエルンストが奮闘するお話です。
エルンストは帝王学を学んできているのでどんな時でも冷静で自分の立場を考慮して手を尽くして尽力します。
あまり感情を揺さぶられないはずのエルンストがしかし、皇太子宮の湯殿に居た下男を辺境の地で見つけた時はなぜ?と心がざわつきます。
このお話はその下男であった男を伴侶にし、貧しい領地のあらゆる困難を少しずつ解消に近づけ、少しでも自分の治める領民たちが暮らしやすいようにと尽力するエルンストのお話であるのですが、
とにかく、地の文がそのエルンストの冷静さを現すように淡々と粛々と綴られていくのです。
それが逆にこの作品に重みを与えてる気がします。エルンストの賢さ、優しさ、慈悲深さなど彼が王として国を治めたらどれほどの国民達の益になったのか、貧し過ぎる領地を少しずつなんとかしていこうとするその姿がとてもいいです。
BLですので男性と男性の絡みももちろんありますけれど、またこのような皇太子の位を廃されるという微妙な立場のお話なので、だからこそ伴侶が男性である、それもこのお話に必要であると考えさせられるそんな作品です。
自分に仕える者達のために常に冷静であろうとするエルンストがこと、この伴侶ガンチェの事になると激情が溢れ、時には我が儘に時には凛気を起こしたり、自信を無くしたりするところが可愛いです。
また、ファンタジーなのでその世界観や人種設定などがそれはそれは細かくきっちり設定されていて、その独創性もとても素晴らしいです。
後半は10月に刊行されます。ぜひ皆様に読んでいただきたい作品です。
雪原の月影 満月
2022/01/10 05:42
号泣(切なくて愛おしい)
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やじやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレあり
雪原の月影三日月の続編なのでそちらから読んでください。
成長しない病のクルベール病にかかって皇太子を廃嫡され
僻地(最貧の地)の領主となったエルンストと
その彼を慕って追ってきて伴侶になったガンチェ
種族も寿命も違う二人の話。
でも、作品自体は色恋がメインというわけでもない
上弦の月
前巻に引き続き、エルンストと王都の関係の決着
エルンストががしがし政治的手腕を見せつけてくれます。
その部分の面白さとともに
この国の王族の有り様はすごいなぁと。
王族は二人しかいない(王様と皇太子)
それ以外は単なる貴族であると。
なので半血とはいえ兄弟なのに関係は希薄
(兄弟としての何かしらはないに等しい)
その中でトリ公爵だけは鬱屈を抱えているのがまた際立つ
(その鬱屈具合はこちらの世界では理解しやすい)
その上で、王と元皇太子の間に何もない(親子としての情とかない)のが
また際立つのだ。
エルンスト側にもそこらへんの情がないのが伝わってくる。
前巻で語った王族の閨事の作法を思うと致し方ないのかなぁと。
だからこそエルンストが皇太子を廃嫡されて
ガンチェに出会えたことを喜ばしく思える。
(国にしては優秀な王を失ったわけだけど)
下弦の月
時が過ぎ、メルセンはまだまだ途上ながらも発展しつつあり
懸念のリュスク国が攻めてくる事態に。
その間にグルート国へガンチェを送り出したり
(ここは実は最後の満月で深い意味を持ってくるのがまたすごい)
二人で旅したり。
その後の賭けのシーンとかも好き
(全体的にエルンストがずっと閨事に対する恥じらいとかがなく
周囲に包み隠さないあたりが可愛い)
物語はシリアスに進んでいくのだけれど、
周囲の者たちとの関係の描かれかたが温かくて優しい。
(加えてガンチェとの関係はずっと甘い)
リュスク国を深謀遠慮の末退けながら、
後顧の憂いに備えるための準備をする。
施政に終わりはなく、エルンストは目の前にある仕事をし続ける。
ラストのまでの数ページ涙があふれてくる。
決して覆らない種族の寿命の差
30歳も年若い伴侶を先に失うことを思うエルンストの思いが切ない。
乳液をガンチェに塗るシーンや
愛し合うときはいつもなんだか可愛らしいのもとても心に染みます。
からのガンチェの満月・エルンストの満月
この物語はここにしかたどりつかないとわかっていながら
涙が止まらない。
悲しく痛く切なくそして愛おしい。
これを読んでから、
表紙のガンチェの赤い鎧を見てその意味に号泣。
下弦の月で終わりにしても差し支えないかもしれない物語だけれど
やはりこの満月があってこその二人の物語なのだと思う。
泣こうが叫ぼうがこの終焉は見ないではいられません。
そして何度読んでも涙が出ないこともありません。
他に関係者との別れの書き方もさらりとしながらも
印象深く描かれていて秀逸だなと思う。
語っても語りきれないものがありますが
前巻の三日月とこの満月の二冊は
今後何度も読み返して泣くだろうと
それに耐えうる作品だと思っています。
とても大事な本になりました。
2022/01/04 23:05
感無量
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつゆき - この投稿者のレビュー一覧を見る
何度読んでも同じところで笑い同じところで泣いてしまう。そして読み終わったと同時にまた読みたくなる。
聡明なエルンストがガンチェのことになると駄々っ子のようになり、大男で武骨なガンチェを可愛いという。
今まで読んだ中で一番愛し合い幸せな二人の話だった。