レーエンデ国物語
著者 多崎 礼
この世界を守りたい。
少年は大人になり、少女は英雄になった。
テレビ、書店で話題沸騰!
大人のための王道ファンタジー、はやくも第二弾!
☆☆☆
名家の少年・ルチアーノは屋敷を何者かに襲撃され、レーエンデ東部の村にたどり着く。
そこで怪力無双の少女・テッサと出会った。
藁葺き屋根の村景や活気あふれる炭鉱、色とりどりの収穫祭に触れ、
ルチアーノは身分を捨てて、ここで生きることを決める。
しかし、その生活は長く続かなかった。村の危機を救うため、テッサは戦場に出ることを決める。
ルチアーノと結婚の約束を残して――。
封鎖された古代樹の森、孤島城に住む法皇、変わりゆく世界。
あの日の決断が国の運命を変えたことを、二人はまだ知らない。
レーエンデ国物語 夜明け前
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レーエンデ国物語 1
2024/11/03 22:37
架空の歴史読み物
18人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
登場人物やファンタジー要素で魅せる類の物語は期待しない方が良い。タイトルがレーエンデ国物語とあるように、この作品の主役はレーエンデと呼ばれる土地そのもの、そこで何代にも渡って積み重ねられた歴史そのものだからだ。冒頭や終章ではちゃんとその点がほのめかされているものの、多分「人の話を聞いて伝えたいことを聞かない」類の人にはわかりづらいかもしれない。特に、第一巻時点での人物評価と、全てのことが終わった後の歴史の総決算としての人物評価を混同してしまう人には「何だこれ」と思わせかねないし、実際、レビューにもそういう人たちの意見が散見される。何なら読者は銀呪病視点か泡虫視点でこれを読んでいると思った方が良い。
登場人物は揃って欠点を備えている。無力で、暗愚で、病に侵され、満月の夜を恐れ、神話に縋り、支配に酔う。一つ一つは小さな人の弱さだが、これらがレーエンデの地で混合し、巨大な動乱へと発展していく。その前兆、そこはかとなく日常に漂う不安を払拭するように振舞う人々の生活はある種のリアリティを持っており、その生々しさを正面から描きながら、このライトな読み口を維持している作者の手腕は見事と言える。
これから時代を隔てて生まれ没する人々が、いかに自らの生きた痕跡を残し、それがレーエンデにどのような影響を残していったか? 歴史の分水嶺を主眼にしながらどっぷりと読書したいシリーズだ。
ここからはレビューの内で気になった点をいくつか。感情体験を書く感想と、内容を他人に紹介するレビューは根本的に違うもののため、感情体験を優先したせいで本来の内容から乖離している以下の二つについて指摘しておく。
例えば「AはBをいじめるCを殴った」が本文だとして、「AはCを殴った」は成立するが、字面の印象は全然違うだろう。以下に挙げる二点はそういう雑な読み飛ばしないし物語の前後関係への混乱、記憶の虫食いを元に書かれた傾向があって紹介の役目を果たしていない。そんなもの、レビューを参考にする人たちに向けて放置する訳にはいかない。「AはBをいじめるCを殴った」への感想は自由でも、「AはCを殴った」のような捏造、切り貼り、読者の頭の中だけに存在する創作は、内心に秘めている限りは結構だが、ひと度世に放ったが最後、批判なんて体裁をとるのもおこがましいフェイクになるのがわからないか?
読者諸兄、感情は十人十色で良し。だが印刷された活字は唯一無二だと留意してレビューしてもらいたい。
それから、最近このレビューから私の他のレビューを熱心にご覧くださる、とある方へ。
あなたのおかげで本の内容全体を吟味するよりも不満だから憂さ晴らしをし、そのために手段を選ばない人がいるという疑念に確信を持てました。ご多用な折にもかかわらず、わざわざご苦労なさってまで、私の主張に信憑性をくださってありがとうございます。
私を標的にした投稿が削除されてますね。私に呆れて自ら消したか通報されたか知りませんが、めでたくて結構です。
・ユリアがモテる様子を書きたいだけ?
一番モテてるのは父親。ユリアは父親の縁故バフで良スタートを切って、身分に奢らず庶民生活に寄り添ったので良好な人間関係を築けた感じ。重役の子を接待するノリ。主人公以外に関心を向けないと起こる明らかな誤読。
・言うほどレーエンデ、呪われてなくない?
現実で例えると、定期的に毒ガスが自然発生する地域に定住民がいるようなもの。自分の家がそこにあると想像して欲しい。どう考えても呪われている。読者が頭の中で思い込んでいる呪いのスケールとのギャップを埋められなかったために起こる誤読。
レーエンデ国物語 2 月と太陽
2023/08/27 07:37
太陽と月とは共存しない
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作の100年後のレーエンデ国を舞台としたファンタジー。帝国の圧政からレーエンデ人を自由にしようと戦いの先頭に立つヒロインと、それを知略の面で支えるヒーローを仲間たちが盛り立てる展開はありがちだが、結末は、悲しくまた虚しさを感じさせる。目先の利益や安寧を優先する市井の人々の共感は、一時的なものだという虚しさ。それでもヒロインは、次の世代に思いを託して退場するのだ。次作もある様子なので、また読み進めてしまうだろうな。
2023/07/17 13:54
魅せられる世界観
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:S910 - この投稿者のレビュー一覧を見る
帝国の中心にある独立した緩衝地帯で、古代樹を住処に暮らし、銀呪病という不治の病が発症するレーエンデ。
英雄である父を誇りに思いながらも、自分はからっぽだと感じている少女ユリアが、はじめて故郷を飛び出して父の語った美しい地に足を踏み入れてからはじまる物語。
元傭兵で複雑な境遇を持つトリスタンとの出会い。
互いに影響を与えあって恋をして、自分のために、相手のために、大切な人のために前向きに生き足掻く。
年に何本かは読みたい重厚な王道ファンタジーでとても楽しかった。
独特の世界観に魅せられて最後まで夢中で読んだ。
時を戻せたとしてもきっと同じ道を選ぶという彼らが、正解なんてわからないけどただ後悔しない道を選ぼうとする彼らが、まっすぐに生きて戦う姿。
それが何よりも美しいレーエンデという世界を象徴しているように感じた。
ただ個人的には、終章は蛇足気味で勿体なかったかな。