刀語
伝説の刀鍛冶・四季崎記紀(しきざききき)がその人生を賭けて鍛えた12本の“刀”を求め、無刀の剣士・鑢七花(やすりしちか)と美貌の奇策士とがめが征く!
刀語、第1話の対戦相手は真庭忍軍十二頭領が1人、真庭蝙蝠(まにわこうもり)!
真庭語 初代真庭蝙蝠 初代真庭喰鮫 初代真庭蝶々 初代真庭白鷺
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真庭語
2009/05/29 19:14
正直、本編よりこっちのほうが面白いんじゃないか、って思います。12冊vs.1冊で数が多いほうが負けるっていうのは、作品として本編はなんだ?っていうことなんですが、難しいこと考えずに今回の一冊を楽しみましょう。拾いものです。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
はっきり言います。『刀語』12巻束になったより、こっちの方が面白いかもしれない、って。予想外でした、二の舞じゃないかって危惧していたんです。だって、一年間、毎月、
これだけ?
ジョーダン?
嘘でしょ?
嘘だと言って!
次は凄い展開があるはず
絶対にある
あるに決まってんじゃん
あるよね
あって欲しい
あればいいな
もしかしてあったりして
これって最後?
とまあ、夢と希望がことごとく打ち破られた記憶が甦るんです。島田荘司だって第二部から持ち直したわけだし、12冊あれば何とかなる、だって西尾維新だもの(島田と西尾では出版が逆ですが)なんて時空を捻じ曲げて思っちゃう、それほどに酷かった、スカスカだった、山田風太郎が恋しかったわけです。
でね、今度は逆の意味で期待を裏切った。面白いんです。中身が濃い、っていうか『刀語』の後だと濃く見える。なにより、ミステリしてるんです。だって最初が密室ですよ、不可能犯罪の王者。で、次が WHAT です。何か、っていう謎。そして HOW って言っていいのかなあ、ちょっと分類怪しいけど。で、最後は本当にHOW、っていうか噴飯言葉遊び。
多彩ですけど、一つ一つの出来がいいんです。驚くくらいに。確かに解決篇は凄くはない。でも、小説としての面白さを考えると、実にバランスがいいわけです。しかも第四章、笑いました、っていうか感心した。ま、変に理屈が通っている部分があって、それについてはもっと羽目外せばいいのに、とは思いますが、それじゃあ滅茶苦茶になっちゃう。
ま、この手の冒険というか荒技には筒井康隆先生っていう虚人がいるわけですが、それを割り引いてもいい線いっているわけです。これなら維新ならずとも続編は出ないの?っていいたくなります。『化物語』シリーズは、そのまんま永遠に続けて欲しいんですが(シリーズ否定論者である私が祈っちゃう)、こちらもあと八人分は書いて欲しい、そう思います。
全体は四章構成で、登場人物紹介、アトガタリ、がつきます。全体を通しての語り手は真庭狂犬、まだ少女のような身なりで、全身に刺青を施した自称 里の観察者で、真庭忍軍の語り部です。年齢不詳で、少女とも女とも書けない、そういう女性です。で、その彼女がこの物語で四人の忍者を観察することになるわけですが、そのきっかけというのが選挙です。
選挙、っていうとちょっと違うんですが、とりあえずそう書いておきましょう。真庭忍軍の今の頭は神の鳳凰、と呼ばれる真庭鳳凰で、それで充分に機能しているのですが、その彼が頭領の数を現在の一人から十二人に増やすことを決めます。その理由は、これまたちょっと曖昧なんですが、あえて言えば民主化でしょうか。
で、候補者、といっても立候補しているわけではなくて衆目が一致するのが蝙蝠、喰鮫、蟷螂、海亀、狂犬たちですが、これでは十二人には到底及ばない。だから鳳凰が狂犬に、今分かっている候補者も含めて、人物を見極めることを依頼する。今回は四人。面白い相手ばかり。章とともに人物紹介をすれば
第一章 初代真庭蝙蝠:通称 無頼の蝙蝠。意思はあっても目的がないという、今時の人間風忍者で、使用忍法 骨肉細工。その蝙蝠が真庭春蝉の新忍法を探るお話。
第二章 初代真庭喰鮫:通称 涙の喰鮫。内面は慈愛に満ち、行動は情愛に満ち、目的は至愛に満ちる、愛に満ち満ちる平和主義者で、一殺千生(一人殺して千人救う)をモットーにする美女。 使用忍法 渦刀。捕虜の救出と敵の殲滅が今回のミッション。
第三章 初代真庭蝶々:通称 不遇の蝶々。誰もが見上げる巨体の、気持ちのいい男で、使用忍法 なし。敵対勢力・相生忍軍に追われる二人の運命やいかに。
第四章 初代真庭白鷺:通称 長槍の白鷺。忍者の限度を遥かに超えた言動や奇矯な振る舞いの持ち主で、語りの面白さは比類ない。ともかく周囲と噛み合わない忍者で、使用忍法 逆鱗探し。任務達成率10割の秘密を探れ!
最後はデータ篇。
画:竹
本及ビ箱装幀:ヴェイア
版面構成:紺野慎一(凸版印刷)
本文使用書体:FOT-筑紫明朝 Pro L
口絵表/描きおろし
口絵裏/『真庭語 初代真庭蝙蝠特別絵巻』パンドラ2008SPRING Vol.1 SIDE-B掲載 画 竹
初出ですが
「初代真庭蝙蝠」パンドラVol.1 SIDE-B 2008SPRING.2008年4月7日
「真庭語 初代真庭蝙蝠特別絵巻」を加筆訂正の上、改題
「初代真庭喰鮫」「初代真庭蝶々」「初代真庭白鷺」書き下ろし
となっています。
刀語 第12話 炎刀・銃
2008/04/08 21:23
話の内容より、維新がこの本で披露する歴史観、それがいい。それだけで★五つは甘いか、でも予想外です、いいこと話してます、見直しちゃった・・・
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いよいよ最終巻になりました。前巻のラストで意外な展開を見せたお話は、結局そのまま走ることになり、全体としての軽いという印象は決して変わることはありません。特に、第四章の家鳴将軍家御側人十一人衆との戦いは、いくらなんでも、これはないだろうという頁稼ぎ的なものではあります。
だって、その手の戦いは一人一巻ということで書かれちゃっているわけだし。ま、山田風太郎先生だったらもっと面白おかしい戦闘風景を描いただろうな、とはあらためて思います。ただし、全部が全部同じようなあっけなさで敗れ去っていく十一人を見れば、これも維新の予定通りの行動なのでしょう。
この巻で特に書いておきたいことは、家鳴匡綱の存在感の薄さです。総じてこの物語、登場人物に魅力がないのが特徴ですが、やはり重要な地位に居る人間はそれなりのものであるべきか、とは思います。結局、誰が一番得をしたかといえば、途中登場の否定姫と左右田右衛門左衛門、それと話半ばで姿を消してしまった七実ではないでしょうか。
逆に、この最終巻で最も意外なのは、我が家の高二次女も言っていたのですが、維新が述べる歴史認識です。歴史というのは、学問的には文字で記されたものだけが真実とされるのですが、ではそれが全て事実かといえばそうではありません。勝者に都合のいいものだけが残される、とは昔から言われ続けられ、だから史料批判が必要になるわけです。
しかし、さらに進んで維新は、創り上げられ捏造されたものもじつは歴史であり、それが混在しているのが現実であるといいます。さらに、それは最近よく言われる「作られた記憶」のように、私たち一人一人の中で歪められ或は増幅され、殆ど人類の数だけの歴史があるとも(ま、維新はここまで極論は言っていませんが)。
諸外国と日本の歴史認識の違いはよく言われますが、それは拉致問題、領土問題、国境問題においても見られ、世界に緊張をもたらしています。維新が描くこのお話も、荒唐無稽ではありながらも、決して絵空事と片付けられないものである、と言えないこともない、そう読むことも可能です。いずれにしても、私はこのラスト(イラストもですが)、納得して読みました。これで『刀語』との一年が終った・・・
蛇足ですが、私は全12巻揃ったものの懸賞には応募しませんでした。だって、巻末とはいえ本の頁の一部を切って送れ!とはないでしょ。それって12冊全部を傷物にしろってことなんですよ。本は読むものではありますけど、愛でて楽しむものでもある。いくら応募者全員にくれるものがあるとはいえ、まちっと上手いシステムを考えてくださいよ、講談社さん!
最後にデータ篇
目次ですが
序章
一章 別離
二章 家鳴匡綱
三章 城攻
四章 家鳴将軍家御側人十一人衆
五章 鑢七花
終章
アトガタリ
となっています。基本の五章構成。そしてデザイン関係は
画:竹
筆:平田弘史
本及ビ箱装幀:ヴェイア
版面構成:紺野慎一(凸版印刷)
本文使用書体:FOT-筑紫明朝 Pro L
竹さん、ご苦労様でした。貴方なくして『刀語』十二巻は語れません。むしろ竹さんの絵で救われたところも多かったと思います。栞、大切にします。
刀語 第7話 悪刀・鐚
2007/10/06 22:26
全てはこの巻のためにあった?キーワードは777、なんだか賭け事みたい。ま、最初からこれは維新の頭にあったんでしょう。でも寂しい、代わりにとがめが死ねばよかったのに・・・
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
このシリーズは、この第七巻のためにあった、と思いたくなる展開を見せたのが『第六話 双刀・鎚』でした。その巻の評では書きませんでしたが、今日は書いてもいいでしょう。第七話で、七実と七花が対決する、トリプル7ですね。ま、西尾のことですから最初から777という絵が頭にあったとは思うんですが。
で、内容は読んでもらう以外にありません。要するに
「お待たせしました姉弟対決!
鑢七花対するところの鑢七実!
現日本最強対するところの前日本最強!
虚刀流七代目当主は姉に勝てるのか!?
虚弱体質の天才は弟を打ち破るのか!?
ついに描かれる頂上決戦!
対戦格刀剣花絵巻!
感激感動時代劇!
刀語、七花と七実の第七巻♪
なんですから。それ以上の出版社の案内文などは最後に引用させてもらうとして、対決以外に個人的に楽しんだ部分を紹介しましょう。冒頭から思わずウネウネと字面を追ってしまうのは
「ひと月ほど前の話である。
家鳴将軍家尾張幕府直轄預奉所軍所総監督奇策士とがめと虚刀流七代目当主鑢七花が日本海において、ようやく自分達の乗っている船が尾張行きではなく蝦夷行きであることに気付いた頃だった」
という文の「家鳴将軍家尾張幕府直轄預奉所軍所総監督奇策士」のところですね。ま、こういうのは私にだってできるし、これが最初、っていうほどのものじゃあないんですが、時代小説でこういう遊び、っていうのは無かったでしょうねえ。ツモジイが読んだら卒倒しちゃうかも・・・
で、舞台は土佐の鞘走山清涼院護剣寺です。おお、こんなところに隠れていたのか清涼院!てなもんですね、やっぱり同時進行で出版を続ける流水へのエールでしょうか。それとも、単なるお遊び?それはともかく、そこはいわずと知れた聖地で、西から東から、毎年数千人という規模の剣士が『清涼院参り』と言い、この寺を参拝するためにはるばる四国までやってくるといいます。
聖地としての象徴は刀大仏だそうです。この物語の発端でもある刀狩令によって集められた凡そ10万本の刀によって作られた、まさしく剣士の魂ともいうべき、見上げても見上げきれないほどの巨仏、っていうんですから、思わず想像して笑っちゃいます。そんなにデカかったら首落ちるだろ、なんて思ったりして。
で、そこで27歳の姉・鑢七実と24歳の弟・鑢七花の姉弟対決が行なわれというのが、今回のメインストリーム。七実を別格とすれば、七花はともかく、とがめの存在感はなし。いるだけウザイ。むしろ、チョイ役で印象的なのが、左右田右衛門左衛門でも真庭鳳凰でもなくて、富士山のふもとに広がる樹海を、鳳凰とおどおどと歩く真庭人鳥(ぺんぎん)です。
西尾維新大好き次女と話し合ったんですが、ま、語り口とか動作は普通なんですが姿が可愛い・・・。それと私は左右田の冷静と、「不可」とか「不備」とかいった「不」+「 」といった二文字で始る会話が好きですね。ついでに先走っておけば、彼の存在感は第八話でもっと大きくなっていきます。可哀想なのは七花ととがめ。もう出てくるな、っていう感じ。
で、データ的なことをまとめておきます。構成は
序章
一章 護剣寺
二章 左右田右衛門左衛門
三章 七花八裂
四章 鑢七実
五章 七花八裂(改)
終章
となっていて、それ以外は毎回同じ
画:竹
筆:平田弘史
本及ビ箱装幀:ヴェイア
版面構成:紺野慎一(凸版印刷)
本文使用書体:FOT-筑紫明朝 Pro L
で、巻末を見れば例のごとく鑢七実のプロフィールが載っています。年齢 27歳、職業 無職、所属 巨刀流、身分 家長、所有刀 悪刀『鐚』、身長 四尺九寸、体重 七貫六斤、趣味 草むしり。必殺技は七つあげられていますが、最大の技「見稽古による見取り」は記載がありません。ま、技といえるかは疑問ですが。でも、趣味 草むしり、はカワイイ・・・
次回対戦予定は日和号、蒐集対象は微刀・かんざし、決戦舞台は江戸・不要湖。デ、今回、巻末で明かされた12ヶ月コンプリート読者プレゼントが凄い、欲しい。手作業で作られると言う特装版『刀語』全12冊、著者署名入り、ですぞ。一組、っていうのが淋しくて、10名くらいに、その次のレベルの賞品を出しなさい!