大奥の御幽筆
亡霊が見えるせいで呪われた子だと家族から罵られてきた里沙。
自分の力を忌避し、生きる意味を見失いかけていた彼女を繋ぎ止めたのは、奥勤めをしている叔母・お豊からの一通の手紙だった。
『そなた、大奥へ来ぬか――』
そこは男子禁制で全てのお役目を女が勤め、皆いきいきと働いているという。
こんな私でも誰かの役に立てるのならばと、お豊の力添えで奥女中となる決意をする里沙だったが、そこでは、とある亡霊騒ぎが起きていて――。
霊視の力を持つ奥女中・里沙と記憶を失った侍の亡霊・佐之介が、
大奥に現れる亡霊たちの心残りを解き明かす、感動のお江戸小説。
大奥の御幽筆~約束の花火~
12/31まで通常792円
税込 554 円 5ptワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
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2023/02/20 01:06
大奥ファンタジー
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
女の園「大奥」を舞台に、視える事で疎まれてきた主人公がその力を活かし彷徨える霊の魂を救う、感涙の時代ファンタジー。
誰もが「大奥」と聞いて思い浮かぶ醜い女の争いではなく、閉ざされた環境で起こる亡霊騒動にスポットを当てる事で制限が生まれ、サスペンス要素が加わり、王道題材の中にも新鮮さを感じた。人の役に立ちたいという純粋な想いが欠点を利点へと変えた、人の心を動かす優しい作品。男子禁制の「大奥」でも霊なら出入り出来るっていう意表を突いた所がとても良かった。
この手の話は悲劇のヒロインぶる主人公に嫌気が差す事がたまにあるけれど、里沙はどうにもならない事を嘆いたり、逆に変えられるであろう事を何もせずにうだうだしたりしない所に凄く好感を持てた。
佐之介の正体も気になるけれど、それよりも里沙との間に薄ら色付いている恋がどう成長するのか、続きを切望!
2024/08/22 09:14
第3弾
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大奥の秘密のお役目である「御幽筆」の里沙が、ボディーガードの亡霊・佐之介や親友のお松たちと共に、彷徨える霊の魂と生者の心残りを浄化する時代ファンタジー第3弾。
毎夜魘される女中の調査と、友好的ではあるが何も語ってくれない謎の多い亡霊と、前作からちらつく更に謎の多い黒い影と―――今まで以上に盛りだくさん。
大奥を舞台にした作品では珍しい「友情」がテーマの今作だが、「友情」を悪戯に強調するエピソードがあまりないのが印象的だった。特別な事も当たり前にやってのけてしまう優しい心の持ち主ばかりで、丁寧な日々の積み重ねが信頼と絆を構築していく、静かな強さを感じる描写が深く心に響いた。
「大奥」特有のドロドロした人間関係の駆け引きから、相手を想うあまりの自己犠牲まで、180度異なる感情のぶつかり合いが際立つ作品。
佐之介の記憶の回復と、怪しい影の今後の動きと、佐之介と里沙の関係性と、気になる点がありすぎて続きが待ち切れない。
佐之介とお松の新しい試みがまた見れるのか、凛々しいお松の勇姿にも期待。
大奥の御幽筆 2 永遠に願う恋桜
2023/10/20 20:33
第2弾
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
霊視能力を認められ大奥の「御幽筆」になった里沙が、ボディーガードの亡霊・佐之介と共に、彷徨える霊を見送る時代ファンタジー第2弾。
前作に続き、命を扱う作品に不可欠な「儚さ」がこれでもかと詰まった続編。
連作短編でさくさくと何件も解決するのではなく、たっぷり一冊使って一人を見送る。閉鎖された「大奥」という空間と亡霊とで一筋縄ではいかない設定が効いて、長さを感じさせず、自然と感情移入できてとても良かった。いつの時代も複雑な感情を持ち合わせている人間の、純粋さ故の希望と絶望。人の心が生み出す対照的な感情との向き合い方を、ゆっくりと丁寧に教えてくれる作品。
穏やかで温かな空気も前作から引き継がれているが、本作は翳りが足され、広さと深さがぐんと増した。
新たな問題、少しずつ取り戻される佐之介の記憶、里沙の想い、二人の距離感と、本作の亡霊事件とは別件でも見どころ山盛り。美味しそうな和菓子も出てきて満腹の一冊