孤高のメス 外科医当麻鉄彦
著者 大鐘稔彦 (著)
当麻鉄彦は、大学病院を飛び出したアウトサイダーの医師。国内外で腕を磨き一流の外科医となった彼は、琵琶湖のほとりの民間病院で難手術に挑み患者達の命を救っていく。折しも、大量吐血して瀕死の状態となった「エホバの証人」の少女が担ぎ込まれる。信条により両親は輸血を拒否。一滴の輸血も許されない状況で、果たして手術は成功するのか?
孤高のメス 外科医当麻鉄彦 第6巻
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孤高のメス 外科医当麻鉄彦 第1巻
2010/04/18 21:43
肝臓移植のあり方を考えさせる娯楽大作
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからも分かるように、外科医が主人公のストーリーである。医師が主役になるフィクションは数多い。全てが当たるわけではないが、死と向かい合っている職業だけに迫真性があるのかもしれない。この小説は劇画から始まったそうである。それが小説化され、間もなく映画化もされる。
外科医とはいっても、主人公当麻鉄彦は消化器外科が専門で、分けても肝臓移植に興味を持つ。大学の医局で育ったわけで、そういう点では医師界の出世競争などには目もくれず、ひたすら患者のために医療を尽くすというキャラクターの設定である。
本編は『孤高のメス』というタイトルだが、「外科医当麻鉄彦」編で文庫本6冊、「神の手にはあらず」がその続編で4冊、の合わせて10冊の大作である。しかし、読みやすさと会話の多さであっという間に10冊を読了してしまった。
内容としては、消化器の外科手術の模様が、かなり丁寧に描写されている。しかしながら、読者としては慣れない専門用語と内臓諸器官の位置など不明な点が多く、全てが明快に理解できたとは言い難い。
当麻医師をとりまく医師界の状況、医科大学あるいは大学医学部、つまり医局の有り様、などがよく理解できる。全てがここに書かれているとおりだとは思えないが、当たらずといえども遠からずであろう。しかし、当麻は大学の医師ではない。街の病院の外科医の勤務ぶりもよく描かれている。
当麻の周りには他の医師、病院関係者、大学のボス、親戚、友人、知人が当然登場する。それが不思議と病に侵され、当麻の執刀で手術を受けるシーンもよくある。小説ならではの筋立てかも知れないが、やや不自然の感を免れない。
病院の医師、外科医なら誰でも手術はでき、腕にもそれほど違いはないと考えている患者一般から見ると、驚愕のシーンが次々と登場する。難しい手術になると自分ではできず、他の病院に回すシーンがよく出てくる。他所に回してくれるなら良いが、能力を超えた手術を自分の手で実施するのであれば、患者はたまったものではない。しかし、それが現実らしい。
エンターテイメントとして十分楽しめる作品で、医療のあり方なども考えさせられる緊張感のある力作であったと思う。
孤高のメス 外科医当麻鉄彦 第6巻
2021/12/20 08:08
外科医療では手術の技術が大きく影響するという特異性を迫力ある筆致で描いた力作。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
外科医療では手術の技術が大きく影響するという特異性を迫力ある筆致で描いた力作。特に広範囲に増殖したガンや、高度な技術を要する肝臓移植などの描写は現役の医師でなければ描けない迫力。しかし、本書の魅力はそれに留まらず、大学を頂点とする権威主義にすがる人間のあさましさ、そうした権威主義から派生する医療の歪んだ諸問題にも広く切り込んでる点である。例えば、術技の上手下手が大きく影響する外科の専門認定制度に術技審査が無いことに対する批判など私にも成程と思える。更なる魅力は、恋愛感情に代表される人間感情の描写であり、外科医療の具体的描写を除外しても恋愛人情小説として成り立つほどの面白さである。本シリーズは当麻医師が台湾へ去ったことで終焉するが、台湾での活躍?を描く『孤高のメス 神の手にはあらず 全4巻』も楽しみ。
孤高のメス 外科医当麻鉄彦 第4巻
2021/09/30 09:53
生体肝移植の結果が様々な人間の運命に大きく左右する第4巻。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
生体肝移植の結果が様々な人間の運命に大きく左右する第4巻。結果は失敗に終わり、一躍時代の寵児となった実川医師は批判の的に。卜部の国立大手前病院院長の夢も失墜。となるのだが、過程はといえば一喜一憂の連続で十分に楽しめる。しかも、既に当麻医師が台湾に渡ることになる足場を登場させるなど、先への根回しも怠りない。最も驚いたのは、恋をめぐる三角関係の行方だったのだが、なんと当麻←江森京子←青木医師という関係が急浮上して波乱の渦を作り出す。一方、責任者でもない当麻医師がどういう経緯で責任を負わされるのかに関しては、幾つかの布石はみられるがまだ判然としない。予想をどんどん裏切っていく周到な構成・展開にますます興味津々。