秘密 -トップ・シークレット-(12)
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秘密 トップ・シークレット 7
2009/11/05 18:10
質量ともに、シリーズ最強の読みごたえ。衝撃度は、マグニチュード7クラスです。
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
死亡した犯人あるいは被害者の脳を取り出し、彼らが生前に見た映像をスクリーンに映すことで得られる情報をもとに、捜査員が事件解明を行う「MRI捜査」が可能になった2060年頃の日本。特に、通常の捜査では解明不可能な凶悪犯罪、異常犯罪に用いられるこの「MRI捜査」を一手に担っている科学警察研究所法医第九研究室、通称“第九”を舞台にしたこのシリーズ。犯人や被害者だけが知っていた生前の「秘密」が、事件の真相を知るためとはいえ、容赦なくさらけ出されてくるスリリングな妙味。今回、シリーズ7冊を一気に読まされながら、毎回、ぞくぞくさせられました。
なかでもこの最新刊の第7巻は、凄かった! 余命わずかな人物が「鬼」となって実行した事件に潜む、恐るべき復讐の刃(やいば)。周到に計画、実行に移された誘拐事件の全容が明らかになった時、思わずぐぐっ・・・・・・とこう、息を呑みましたねぇ。地獄の機械が回している運命の歯車を思わせる事件の顛末、皮肉な様相を呈する事件の悲劇的な展開に、震撼させられましたです。
さらに、シリーズ第4巻で導入され、新機軸となった話の妙味として、“第九”の室長である薪(まき)警視正と、“第九”の捜査員で部下の青木一行(いっこう)、法医第一研究所の女・薪こと三好雪子の三角関係があります。本巻でも、薪と青木の精神的な繋がりの強さ、深さを描いた場面が出てきて、それがこの、胸をえぐる復讐戦のアクセントとして効いているんですね。癒し効果というか、人間的な温もりを感じることができる本書の210~217頁にかけて。ぐっと胸に迫ってくるものがありました。
余談ですが、本シリーズと一脈通じる味わいを持つシリーズとして、漫画ではないミステリ小説ですが、山田正紀の「おとり捜査官」シリーズ5巻(朝日文庫)を挙げておきます。こちらもとても面白いですよ!
秘密 トップ・シークレット 1
2004/12/29 10:12
「見る」という行為の真髄。
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いくら - この投稿者のレビュー一覧を見る
生前の脳が見た映像を再現するMRIスキャナーという装置が実用化され、捜査に使われるようになった未来が描かれています。
様々な犯罪の真相を暴く秘密兵器になる!と期待されたが、MRI捜査には絶対的な精神力が必要とされ…。
表紙の美しさと帯の紹介文を見て、衝動的に買ってしまったのですが、これが大正解でした。世界観に見事に共感してしまいました。
MRI捜査に関わる人々の思いや、自身の抱えるジレンマも丁寧に描かれているのも印象的でした。
MRIスキャナーで映し出された映像は、その人の瞳を通しているので、とても主観的で「本当の姿を映している」のではなく、「その人の瞳に映った姿」なのです。
自分の視線の行く先を他人に知られたら…? 恥ずかしくて死にそうです。(もちろん、死んでからMRIスキャナーにかけられるのですが…)
普段何気なく行っている「見る」という行為の真髄を考えさせられる、奥の深い作品です。
秘密 トップ・シークレット 1
2003/06/24 12:02
本当は見てはいけないモノ。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:purple28 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2055年、MRIとう捜査方法が初めて採用される。
MRIとは、死亡した人物の脳に残された視覚の記憶を再生すること。その人物が、どういう想いで何を見ていたのかが分かるというもの。死の直前に犯人を見ていれば重要な手がかりになるし、犯人の脳を見ることで犯罪の全てが分かるのだ。
一見、画期的な捜査方法のように思える。
けれど、死者の脳を見ること=プライベートを暴くこと。
トイレも風呂も寝室も、全てを捜査官によって暴れてしまう。
知らない方が幸せだということはよくある。
けれど、人は知りたいという欲求に勝てないことが多い。
それがつまり真相へとつながることにもなるのだが、往々にして知らなくてもよいことまで分かってしまう。
全て真実ではあるのだが。
全てを知ることは、本当に必要なのだろうか。
知りたいという欲求のためだけに、他人のプライベートを暴くことは、そんなに大切なことなのだろうか。
本当は見なくてもいい、いや見てはいけないものなのだと思う。
この作品には、知らなくていいことまで分かってしまう哀しさを違った形で現した2話が収められている。
知ってしまったら、その記憶を消すことはできない。
どう折り合いをつけて今後その“真実”と付きあっていくのか。
続きが楽しみでもあり、辛い気もする。