絵島疑獄(下)
著者 杉本苑子 (著)
お忍びの芝居見物にワナが仕掛けられてあったとは……。わが世の春に酔い、重職にありながら水面下に繰り広げられた派閥抗争に気付かなかったとは……。「永遠流ですら罪が軽い」とま...
絵島疑獄(下)
商品説明
お忍びの芝居見物にワナが仕掛けられてあったとは……。わが世の春に酔い、重職にありながら水面下に繰り広げられた派閥抗争に気付かなかったとは……。「永遠流ですら罪が軽い」とまで思い詰める絵島の痛切な心情を、荒涼とした遠流の地、高遠に描く。“犠牲はいつの世も弱い者に”、憤りが伝わる著者会心の作。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
絵島生島事件の実像
2018/07/26 23:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
若くして将軍生母の月光院に重用されお年寄へと出世する絵島。しかしその胸中には忘れられない人がいた。現将軍の治世は磐石とみて、引退と結婚を夢見ていたところへ思わぬ罠が仕掛けられる。
青天の霹靂のように絵島たちへの鉄槌が下されて、わずか一月余りの間に1500人の連座者をだすという未曾有の結末へとなだれ込む。
芝居小屋での一幕は、作者のうまさを感じさせる。特に上巻での見合いのシーンがまざまざと思い起こされるような場面だから尚更だ。前回は、絵島が権柄づくの見合いなどさっさと断って、奥づとめにこれからの人生を賭けようと決心するきっかけになったが、今回の芝居見物は油断から足を掬われる奈落が待ち構えているのだ。この対比は、さすが杉本苑子さんだなぁと感心した。
大きな陰謀を成就させるための陥穽には、個人の努力や心は簡単に踏みにじられてしまう。聡明な絵島でさえも、流罪となってから初めてそれに気づくのである。
権力に抗う人々を力強く描く一方で、権力の側にいながらもその危うさに気づかない者には歴史は厳しい評価を下すものなのだろう。