関東最高峰大学への関西人高校生の殴り込み
2011/08/30 00:19
6人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一部 内側から覗いた灘校
_第1章 灘高はいかにして名門校となったか
_第2章 華麗な人材輩出と異色な卒業生
_第3章 現代灘高生気質
第二部 灘校と名門校のこれから
_第4章 世界のエリート校,日本の名門校
_第5章 中・高一貫校の将来を予測する
たちばなきとしあきは1943年(兵庫県)生まれ。灘高等学校を経て、小樽商科大学商学部卒業(67年,24歳)。阪大で修士課程修了(69年,26歳)。ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D,73年,30歳)。阪大(助教授)を経て、京大経済研究所(助教授,79年,36歳,86年教授(43歳))。同教授(03年,60歳)、定年退任(07年,64歳)、名誉教授、同志社大学教授。日本学術会議会員。元日本経済学会会長。『家計からみる日本経済』(04年,石橋湛山賞),
本書は,1927年創立,翌年開学された灘高等学校・灘中学校を歴史的かつ現代的な視点から分析したものである。07年,この「日本一」の学校は80周年を迎えた。本書で用いられている「灘校」という名称は一般的なんだろうか? 「灘高」ではないのだろうか?という素人疑問はある。ま,中学校を包含する名称にしないとだめだからだろうけど。
著者が灘を「日本一」と呼ぶ理由は,東大合格者数が日本最大だから。これには内部要因と外部要因があるとみていることが本書構成からわかる。私の見立てで精選すれば,内部要因としては二つ。一つは,関西という人口稠密な領域から優秀な生徒をリクルートできていること。もう一つは,関西では灘だけが東大志向生が多いという事実だ。関西のほかの名門高校は京大を目指すからだ。外部要因としては一つ。東京都の学区制の再編だ。当時は日比谷高校や西校,新宿校などにバトルロイヤルで進学していた優秀な生徒たちが学区に縛られるようになり,東京都では,すべての高校が均質的な生徒を入学させるようになった。とうぜん一校あたりの東大合格者数は減少する。相対的に,従来型で生徒募集に成功している高校は合格者数の絶対数に変化がなくても,順位は上がる。
面白いのは――本書の瑕疵とも思えるが――副題に「なぜ『日本一』であり続けるのか」とあり,読者には学校のフロー的側面=授業に焦点が当たっていると予想させるのに,実際に灘校が全国一になった理由としては,授業要因がコラムの形でしか載せられていないことだ。数量化できない要因を捨象している。社会科学者として至極尤もだ。
本書の将来予想は,学歴社会が緩むというものだ。著者がいう「学歴社会」とは,高偏差値大学卒業生が威信の高い職業に就けるという定式だが,この定式が揺らぐということだ。たしかに,在学者向けアンケートによれば,灘に進学した最多の理由が,「周囲の勧め」というのだから,むべなるかな。自分の進学先を自己決定しない,自己決定したことを隠避するという傾向は,決定に関する責任を転嫁する余地を残すから。この著者には『東京大学』という著作がある。評者未読だが,どうも高偏差値大学卒業生が,従来のような威信の高い職業に就けない,就いても長続きしないなどの事例を摘出したのであろうか。
(1269字)
灘という学校の変遷と特徴を記した一書
2021/11/03 22:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
概ねは既に知っていましたが、改めて本書を読んでみて確認するような感じでした。
私自身は同校の出身ではありませんが、遠い親戚には二人いました。灘といえば日本一難しい学校という事は小学校高学年の時に通っていた塾によって初めて知る事になりました。到底及びはしませんでしたが、校則が無く兎に角自由な校風は麻布と並んで憧れではありました。と言いつつも、私が小学校高学年当時の灘はやはりガリ勉のイメージが強く、根暗な印象しかありませんでした。最近の灘はメディアへの露出もあるせいか、イケメンや陽気な雰囲気も見てとれますが、依然として頭の優秀さは変わっていないと思います。
灘中や灘高の算数や数学の問題をチラリとここ数年解く事があるのですが、難問というよりはよく練られた学術的な要素を潜ませている気がします。
本書は2010年に刊行されているので、今とはかなり様相が違っています。ただ同校の歴史や昔の様子を知るには興味深い一書だと思います。
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こないだ帰省した時に、地元の本屋で見つけた。目立つように置かれていてついついそのローカルな戦術が嬉しくて買ってしまった。実家からもっとも物理的に近い距離にある高校だし、まあ縁がないわけではない。わが母校の名前も多少出てくる。まだ読んでいる途中だが、読んでいてなかなか面白い。教育や経済がわりと自分の関心のある分野だから楽しめるのだろう。著者は労働経済学を専攻しているんだとか。「労働経済学」っていう分野があるんだね。はぢめて聞いた。
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日本のある意味トップである灘校に関して、様々な観点から迫っている本。欧米の名門校との比較や、格差社会についての問題提起もあり、学歴社会を考え直すにもいい本。
灘校=親のの状況が影響大。親の職業、年収、学歴との相関も大きい。医者も多い。教育の格差はスパイラル状に拡大する可能性もあるが、いちがいに悪いともいえない。要は、どういう力を身につけさせたくて、どういう教育の環境に身を置くかが重要。
他国でも、入試に学力だけを問わないところも多い。未来に必要な力を何に設定するかが重要。子供にも、入試以外のことを重要視する感覚を身につけてほしい。これは全て、大人の責任。子供は悪くない。
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同窓会が作った〇〇周記念刊行のような内容。それを覗き見る面白さはあるが、当り障りのないようなことしか書いてないし意外性がない。評者には灘校出身者の知り合いが多数いてみんなユニークなので、興味を持ってこの本を手にしたのですが期待はずれでした。
あとがきに「本書の執筆依頼を光文社の黒田剛史氏から受けたとき、正直言って驚愕したし、引き受けるかどうかかなり迷った」。確かにこれは驚愕で、昨今の新書が何故こんなにひどいかを裏付けるエピソードです。
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ふーんってw
日本にも凄いところはあるんだなぁと。
中学校で高校の範囲まで出来ちゃえば、
そのあとの高度な学習は楽しくて仕方ないんじゃないのか
なんて思っちゃったりもします。
凄い人しかいない環境で
育つことが出来るって、いいですよね。
(人によりますが、今になって思うと、ですw)
ぜひ日本の再生ができちゃう人材が
出てくることを祈ってます。
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現同志社大学経済学部教授、京都大学名誉教授(労働経済学)の橘木俊詔(1943-)による灘中・灘高の学校紹介。
【構成】
第1部 内側から覗いた灘校
第1章 灘校はいかにして名門校となったか
第2章 華麗な人材輩出と異色な卒業生
第3章 現代灘高生気質
第2部 灘校と名門校のこれから
第4章 世界のエリート校、日本の名門校
第5章 中・高一貫教育の将来を予測する
灘高と言えば、関西では進学校の中の進学校として、また灘中は中学受験のシンボル的存在として知られている。とりわけ、東大・国公立医学部の進学数・進学率は他の進学校とは懸絶した実績である。
そんな中高一貫の受験エリート養成の進学校である灘校とはいかなる学校かということが本書を一読すればわかる。
しかし、こんな母校自慢に薄っぺらい西欧と日本の名門校をくっつけた内容を、新書にして世に出す必要がどこにあるのか?
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最近の灘中入学者のほとんどが浜学園や希学園などの進学塾生が占めている状況がどういう影響を与えているかが知りたかった。
格差社会についてのいくつかの統計は目新しい点がない結果であり、いた仕方ない点ではあるが、灘中生の家庭環境は特色深い。
卒業生のいくつかの紹介は実際の取材インタビューがあり、その点は他書にない面白さがある。
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[ 内容 ]
1学年あたり約200名という少数精鋭主義を考慮すると、東大合格者率や国公立医学部や京大への進学実績において、灘校は「日本一」といえる。
本書は、創立から現在にいたる歴史をひもときながら、数多くのOBにインタヴューをしたり、現役灘高生にアンケート調査を行ったりして、その秘密に迫った。
格差社会論の代表的論客が、中・高一貫校やエリート教育の功罪を徹底検証する。
[ 目次 ]
第1部 内側から覗いた灘校(灘校はいかにして名門校となったか;華麗な人材輩出と異色な卒業生;現代灘高生気質)
第2部 灘校と名門校のこれから(世界のエリート校、日本の名門校;中・高一貫教育の将来を予測する)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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若干期待外れ。
灘中・高のカリキュラムや、先生と生徒の人物像などの部分の内容は薄い。
卒業生へのインタビューなども載せてあるが、きれいごとばかりに聞こえるのは僕が斜に構えすぎなのかな。
灘が日本一の学校となった経緯を日本の教育施策や他の進学校との比較しながら論じている。イギリスやフランスの学校も引き合いに出して、すぐれた教育とはどのようなものか読者に問題提起している感じ。
あと、筆者の他の著作の宣伝がたっぷり。
まあ結局のところ、金持ちの子は金持ちなんだろう。
金持ちになって、子どもができたら読み直したい。
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「灘高がいかにしてナンバーワンになったか」ではなく「灘高の沿革」といった感じ。
期待したものとは違ったので何とも。
灘高の卒業生が読むと懐かしくていいかも?
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客観的な分析がなされていて、面白く読むことができました。灘高だけでなく、海外のエリート学校の歴史や現状も知ることができます。
少子化が進む中、私立の学校はどうなるか。個人的な予想としてはすでに兆候が現れているように淘汰がどんどん進むんだと思います。需要と供給の原則ですね。結局受験競争は緩和せず、一定の水準で推移するのではないでしょうか。単なる営利目的の学校は、それこそ淘汰されてほしいです。
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学歴社会が崩壊しつつあるとはいえ、国家試験のあるところに、灘閥あり。東大理IIIでの標準語は関西弁だと聞いたことがあるが、あながち嘘ではないのであろう。
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たまたま気になって手に取った本。日本でのエリート校のイメージをつかむにはイイかも。後半では海外のエリート校の紹介もあり、個人的には今後エリート校を研究対象にするかもしれないので非常に面白かった。
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灘校OB(14回生)の著者が書いた灘校の秘密。1968年の東大入試で日比谷を抜いて合格者ナンバーワン132名を記録し、日本全国をびっくりさせた20回生。(神戸高校の2年先輩も20回生でした)彼らの現在を追う分析は迫力がありました。灘では2桁キープが目的だったという秀才ぞろいの物凄い学校だと感じましたが、その灘の中でも最優秀な学生は?数学者の藤田隆夫と弁護士の河野玄逸という2人だそうです。藤田は数学者として有名だとのことですが、要するに最優秀でなくても灘という世界の中で、八ヶ岳のように優秀な峰が競い合いお互いに成長していっているということがわかります。6年持ち上がりでの教育が特徴であり、素晴らしい教師が多かったようです。一方、灘校紛争で灘を去った人物をも追っており、灘が教師として迎え入れいる話には、奥の深い学校だと感じました。単なる受験校ではなく、日本における知的階級の子弟の余裕ある学校という印象を持ちました。灘の生徒の特長をアンケートなどから把握し、父親の職業は医師が多く、公務員が少ないことが際立っているとか!また入学した理由として、大学入試実績より、自由な校風を選んだことが高いというのは、面白いです。そして灘から東大へ行って政治家になった人も少ないということもうなずける現象です。
後半ではイギリスのパブリック・スクール、そしてグラマー・スクールと比較したり、教育論のような内容になりますが、前半ほどの迫力はありませんでした。