今改めて読むと時代錯誤していて笑える
2016/12/30 22:04
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投稿者:wankyo - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本が書かれたのが2012年か。今思うともう隔世の感がある。この本の内容はリーマンショック前までの話である。
その頃の外資系金融の世界をほぼ網羅しているが、ちょっと古い話であり、実態を盛って描いている。リーマン後、投資銀行は急激に変貌していたのだ。
2012年はもうプロップトレーダーなんてほとんど存在していなかったと思う。プロップトレードに多額の金をつぎ込むビジネスなんかとっくに崩壊していた。
ついでにいうと、トレーダーが威張っていたのも、もっと昔の話。2012年なら、プログラムトレード、アルゴ全盛で、トレーダーなんてオペレータに過ぎなかった。
投資銀行のマーケット部門は装置産業であり、ITの方が重要でプログラミングすらできないトレーダーなんて無用の長物だったはず。
アルゴトレード、HFTの前にトレーダーなんて全く無力であった。それが真実。
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軽妙な語り口と絶妙な喩えを駆使して,世界同時金融危機の実相と,その立役者である外資系金融機関の内実を綴る。著者の本の中でも一番の出来じゃないかな。
「強欲な資本主義が世界を破滅させる」という左翼的主張がよくあるが,無制限の規制緩和で金融危機が起きたというのは事実に反する。金融機関が巨大になりすぎ,絡まりすぎてて潰せなくなっていたことが,モラルハザードを招いていた。失敗したら税金で救済されるなら,リスクを取ったもの勝ちだ。
それにアメリカでは,グリーンスパン時代のマクロ経済政策(金融政策と財政政策)がうまくいきすぎていた。株価が落ちても,グリーンスパンが金利を下げて支えてくれる。このような状況が,投資家に過度のリスクをとるようしむけていた。こうして空前の巨大バブルが形成され,そして破裂してしまった。
リーマンショックまでの十数年間,世界の金融取引の規模は,まるでドラゴンボールで戦闘力がインフレを起こすように,どんどん膨らんできた。それにつれて失敗のダメージも拡大。LTCMが破綻して400億円の損失を出したのが98年。その十年後,リーマンブラザーズの負債総額は64兆円。
このドラゴンボールの喩えは,昔愛読してただけあって分かりやすい。ほかにも,信用の低いサブプライムローンを束ねた証券や,ギリシャ・スペイン等の二流国家を寄せ集めたユーロを,AKB48に喩えてみたり,なかなかセンスが良い。
金融危機以前の規制緩和は真の規制緩和ではなく,既存のプレーヤーに好き勝手をさせるだけで,参入障壁を下げて競争を増やすものではなかった。そして現在進行中の規制強化は,既存の体制を固定化し,監督当局の権限を肥大させる悪しき規制強化だ。世界は金融社会主義へ突き進んでいくように見える。
著者の結論としては,諸悪の根源は,モラルハザードを招く「暗黙の政府保証」ということになる。そのような保証が必要とされるのは,「大きすぎて潰せない」ことが原因だから,対策としては分割してしまえばよい。問題があれば,自己責任で潰してしまえるような,そういう金融システムが求められる。
銀行と証券会社は分離し,証券会社の投資銀行部門とマーケット部門も別会社に。投資銀行部門で行う自己勘定取引は禁止して,独立したヘッジファンドにすれば利益相反の心配もない。リサーチ部門も独立してやっていける。
ただ現在の巨大金融コングロマリットを,規制で強制的に解体していくのが良いのかと言うと,著者もそこは躊躇しているようだ。メディアの分野で,支配的だった組織から個人へと役割がシフトしてきているのと同様に,小回りの利く小規模な金融機関が卓越して,事態は自ずと改善に向かうかもしれない。
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外資系投資銀行などの実態を生々しく綴った本。ある程度想像通りではあるが、金の亡者と成り下がった人類の成れの果てがそこにある。世の中キレイごとだけでは済まないとはいえ、個人的にはいくら年収が高くても魅力的には見えない。著者の述べることは基本的に頷けるだけに、「これではいかんな」と思わずにはいられない。
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大まかに2つの流れをもつ本。
金融業界で働く人間がいかにボロ儲けしているかについて、底意地の悪さ全開で自慢してくるのが、この本の一つ目の流れ。憎たらしくて仕方がないのだが、悔しいことにそのことが文章全体の娯楽性を高めていて、逆に面白くしている。著者がよくブログやtwitterで使うテクニックであり、ここは著者の思惑通り腹を立てながら読むのが正しい楽しみ方だと思う。
もう一つの流れは近年の金融システムについて、リーマンショック以前と以後でどのように変化したか、金融危機でどのような構造的欠陥が浮き彫りになったか、金融システムは今後どのような方向に変化していくのかについて、解説するというもの。こちらは非常にわかりやすく、知識をほとんど持たない僕にとっては大変ありがたい内容であった。
大規模な金融機関で投資を行うサラリーマンは、コンスタントに儲けを出し続ければ多額のボーナスをもらえ、また仮に損失を出しても高々クビになるだけなので、会社に尋常じゃない損失を与える可能性がある取引でも儲かる可能性が高いなら積極的に行うのが正解である。また、そのような取引を続けた結果仮に大損をこいて会社が潰れるような事態になってしまっても、世界経済への影響を抑えるために政府から資金援助を受けることが出来る。このように、金融機関のリスクとリターンの対称性はすでに完全に破綻してしまっている。現在、世の中は潰れてしまっては困るような銀行に対して新しい規制を増やすような方向に向かっており、まだ実際に潰れそうになったら資金を提供することはわかりきっているので、金融機関の公共性が上がり社会主義のような構造を築きつつあるとのこと。
本当ならすごい話だが、自分の知識量では判断がつかないので、読書や新聞を通してちびちびと勉強していくこととする。
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なんとなくしかわからなかった外資金融の世界を紹介した本。
でも、よくある内部の人間の珍エピソード集みたいなものではなく、外資金融の構造や置かれている環境等の全体像について簡潔に説明している。
多分、多くの人は金をたくさんもらっているスゴい奴らというくらいの認識しかないだろうが、一度この本を読んでどういう集団なのかということは理解しておくべきだと思う。
なぜなら、世界中の一般庶民のお金が彼らのために使われているという事実があるからだ。
今現在も続いている金融危機についても詳しく説明されているので、読んで損はしない。
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金融業界を取り巻く外的な環境をマクロ的に、金融業界の一角を占める外資系投資銀行というベールに包まれた業界内をミクロ的に描いている。著者は露悪的な趣味があり、挑発的な文章がいたく勘に触る方もおられるようだが、僕はさほど嫌いではない。
例示や説明の巧みさは、藤沢氏がの真骨頂を発揮しており、切れ味とドライブ感があってサクサク読める。
儲けは自分の懐に、●●兆円吹っ飛ばしたら、「Too big too Fail」により税金で補填してもらえてしまうという外資系金融機関のモラルハザードと、藤沢氏の言う「システミック・リスク」を分かりやすく指摘している。
業界ネタは本当に傑作で、年収数千万、日本の上場企業の社長の平均年収を超えているトレーダーのチームで、車を保有していたのが一人(しかも中古車)だけだったとか、現場責任者に人事権を握られている外資系投資銀行の人事部(HR)の仕事は手際よく退職に追い込むことだとか、●●銀行の誰それ君は8000億円をブッ飛ばしてくれたとか、某外資系金融機関の社員を引き取った某証券会社のその後の話だとか、大いに楽しませていただいた。それらは、残念ながらすぐに苦笑に変わってしまったのだけれど。
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難しい世界金融情勢と外資系金融機関の実態を独特の軽妙な語りに皮肉を交えてわかりやすく解説していて、参考になる。
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●内容
・物理学者から外資トレーダーに転身した著者が語る金融の未来像、と見せかけて現状分析がするどい。
・著者のキャラクターでもある、実も蓋もないクールな指摘が刺さる。
●コメント
○本書の目的は、著者が理想とする未来を語ることにあるが、現状分析も濃厚で現在の金融業会の有様がみごとに構造化されている。就職前に読めば人生が変るほどの勢い。金融は構造的にウマイ胴元商売なので、なんとなくそれを感じ取っている高偏差値学生が集まるのだと。
(引用)
・宝くじは美味しいビジネスだが、これから説明する金融業も本質的にすごく美味しいビジネスなのだ。
まず、この宝くじとほぼ同じ仕組みなのは、保険業である。加入者から保険料を集めて、当たりくじを引いた加入者に一定の賞金を支払う、という意味で、保険業のビジネスモデルは宝くじそのものである。当たりくじ発生イベントを、加入者の死亡にしたのが生命保険で、自動車事故などの事故にしたのが損害保険である。
・次に、こういった保険会社が運用という名前のギャンブルをするために、カジノを運営しているのが承継会社である。…カジノの胴元はいつだって美味しいビジネスだ。この賭博場では、保険会社が客で、証券会社がディーラーである。もちろん客は保険会社だけでなく、年金基金や、投信などを運用する資産運用会社、銀行、ヘッジファンドなども証券会社の大事な客である。…金融機関、株や債権や、さまざまなデリバティブ商品を証券会社と取引し、証券会社はそのたびにショバ代を取る。これが証券会社の儲けとなる。
○イメージが先行しがちな外資系投資銀行の内情。キツイのは裏方さんやセールスで、トレーダーは優雅な暮らし。夜7時に帰宅するトレーダーが億の報酬を受け取る一方で、奴隷身分の裏方さんは午前様でやっと1000万円。トレーダー出身の著者から見ればこれは「薄給」という。
(引用)
・その点、マーケット部門の人間はかなり恵まれている。朝は早くて7時とか8時に会社に来るけど、夕方の6時とか7時にはみんな帰宅している。…僕は10年近くこ業界で働いているけど、一番遅くまで会社にいたのは23時くらいで、それも1年に数回くらいの頻度だ。
・外資系投資銀行のミドルオフィスは、一言で言えば、とレーダーやセールスの奴隷だ。奴隷だからご主人様が来るまでに出社し、そして、ご主人様が帰ってもいいと言わないと帰宅することもできない。
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ちょっと難しかったけど面白く読めた。金融機関が世の中の何に役に立っているのか、不況の中での本当の悪者はだれなのかがわかりやすい。
今後何に投資すべきか考えなくてはいけない気がする。
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外資系金融機関に勤める著者による現在の金融業界について綴った本
ブログの記事を定期的にキャッチアップするものにはそんな驚きは多くない。
複雑化する金融商品とそれを扱う金融機関のモラルハザード、大きくて複雑すぎて潰せないその金融機関を救うために肥大化する財政と中央銀行のバランスシートという現代の問題点を的確に洗い出す。
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読了。金融日記ファンとして読まずにはいられなかった一冊。個の時代になるという内容だが、直接金融の必要性を分かり易く解説している。桁が大きいな。。
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前作よりも金融に関する説明がわかりやすかったです。金融に疎い人は、こちらを読んでから前作を読んだ方がよいかも
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外資系金融=ゴールドマンサックスとか、の存在をしったのがここ3年位前。日本の製造業企業をかく『島耕作』と対照的だと思った。ものづくりや豊かさの探求とは違い、金の亡者!狙う会社が潰れる→他人の不幸で自分の懐に大金が入る。金融の知識のない私にも、読みやすくてわかりやすかった。
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p.186
この金融工学の分野が、世界の理数系の頭脳を浪費し続けてきた。〜癌やエイズの研究を続けていれば、ひょっとしたら世界の救世主になれたかもしれない人たちだ。あるいは、宇宙の謎を解き明かしたかもしれない人たちなのだ。それがいつの間にか、世界を破滅の縁に追い込んでいたのだ。何の自覚もないままに。
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「終わり」というタイトルだが、外資系金融の世界に魅力(主に金銭面(^。^))を感じさせる内容だった。