病気にならない社会を作る
2018/02/19 23:23
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投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
健康格差 あなたの寿命は社会が決める (講談社現代新書)を読んで、イチローカワチ氏のコメントに興味を引かれ本書を手に取った。
健康問題を病気になってから治療するのではなく、病気になる前に、問題を解決する。病気にならない社会を作る、みんなが健康でいる社会を作るパブリックヘルスの中の一つの領域である社会疫学をわかりやすく解説したのが本書。
格差社会が深刻化するアメリカの実態を解説しながら、高所得であれば健康かというとそうはならないこと、社会全体の格差をなくすことがすべての人の健康に寄与するその仕組みや理由をわかりやすく解説している。
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パブリックヘルスについて書かれた本です。
と書くと「パブリックヘルスってなんだ?」ということになると思うのですが、、、読んで字のごとく「社会全体の健康を考える」ということです。医療が個人の病気を治療し健康を回復させることだとしたなら、パブリックヘルスは社会全体で病気になる人を減らす、病気の原因になることをなくしていくということだと言えると思います。
パブリックヘルスについての専門書は出版されていますが、手軽に読める「新書」のような形でさせれたのは初めてのようです。とてもわかりやすく書かれています。
つづき⇒ http://amba.to/16KcYX0
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日本を母国とする筆者がハーバード大学でアメリカの公衆衛生向上のためにおこなっている講義を日本向けに再構成した内容。図表やわかりやすい実例を豊富に盛りこんでいるため、読むのは楽。
環境の変化が人々の健康にどのようなマイナスやプラスの影響を及ぼしているのかさまざまな実験やプロジェクト、たくさんの実例を紹介することで、目の前の患者への医療行為や生活習慣改善のための保健指導もさることながら、より重要なのは地域やコミュニティの環境など社会の仕組みを健康に資するものに変えていくことだ(それには生産者側や都市インフラやメディアといった業種をこえた協力が必要)、という論旨をわかりやすく伝えている。
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日本出身でハーバード大教授の社会疫学者。専門書では翻訳が何冊か出ているが、新書で著者の研究をわかりやすく解説された書籍。米国は医療費を多額にかけながら、低い健康水準であるが、その大きな要因は経済格差である。低所得層が影響をまず受けるのはわかるが、高所得層にも影響を受ける。資本主義である限り、格差をゼロにする事はできないが、格差を少なくする戦略として、①所得格差の是正②幼児期からの早期の教育③職の安定、が必要と著者は言う。そして社会全体をよりよくするための仕組みを作り、一人一人が行動を変えやすくするための環境を整える事が大切。個人の行動変容は、社会全体の枠組みを形成する中で、はじめて実現可能となるのであり、自己責任論に立つ限り改善はえられない。以上の事を科学的根拠を持って解説されるので説得力がある。まさに『上医は国を医す』である。
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もーめちゃくちゃおもしろい!!そして文章のいたるところからカワチ先生の人柄がにじみ出ていて。いやーとにかく面白かった!!!!
友人によく「おまえ大学院でなにしてんの?」って聞かれるんですけど、この本がまさに答え!!まだまだ自分の口で上手に説明はできませんが(汗)
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社会疫学書は自然科学書と言ってよいか、という問題はあるかもしれないが、ハーヴァード大学で活躍するもう一人のイチローの名著。臨床医学から公衆衛生学に転身して活躍している研究者は何人もいるが、この人の語り口はとりわけ心地よい。文科系の学生さんにも、いや、にこそ、一読をお勧めする。ポピュレーションストラテジーの意味がよくわからない人にはとりわけ。
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事例豊富に、かつシンプルにパブリックヘルスの論点を紹介。技術面で限界的な領域はともかく、平均寿命や一般的な健康に関する課題は、すごく社会環境や構造に影響を受けるとの点は、改めて納得です。
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「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」の観点から健康を考える本。
社会から経済的な格差がなくなることはない、ということを踏まえた上で考えるべきは、それにより生じうる健康の格差をいかに減らしていくかということ。
一つ一つの病に対処していくだけでは、経済的に、教育的に下方にある多くの命が零れていく。
これをどうにかするには、病気の根本となる「上流にある問題」に目を向け、健康の土台となる社会全体の環境づくりに取り組まねばならない。
教育への投資、仕事の裁量度の工夫、地域コミュニティの構築などなど、考えられる方法はたくさんある。
とにもかくにも、全体の水準を上げることこそが、全ての人にとって利になるということ、この考えを共有していくことがまず肝になると思う。一部の上流層の反射的な拒否感はどうしてもあるだろうけれど、そういった人々の協力がとても重要になる。
格差が広がると社会全体にストレスが蔓延していくというのは、感覚的にではあるけど本当に納得できる。逆に、データとしても一応示されていたけど、平均寿命で何とか説明しようとしているのがまどるっこしく感じられた。もうちょっと違うアプローチですっきり証明できるようになることを期待。
人間は思っている以上に、理性的に行動できる生き物ではない。 意外に直感で動いている(有害なタバコへの嗜好が例)。そのため、行動経済学的な、感情・イメージに訴えかけていく取り組みももっと考えていくべきだという言葉も、成程と思った。
要するに、アイデアと交渉力の勝負になるのだろうな(ものすごく大変だろうな)。
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医療関係の活動をしている方にはぜひ進めたい一冊
何故日本が長寿なのか。
健康意識も医療費も高いアメリカの寿命はなぜ低いのか?
環境と格差
格差は絶対に生まれるが、格差が大きいほどすべての階層の人の寿命が縮む。その「命の格差」を縮めるにはどうするべきか?
パブリックヘルスは社会全体の健康を考え、どこにいる人たちに働きかけるか。手段はえらばない。
虫歯を減らすために水道水にフッ素を入れるのもあり
人の行動をどう変えるのか?
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ハーバードのpublic healthで教鞭を取られている日本人教授が著者。パブリックヘルスって何?って言う人にわかりやすい入門編として良い本。
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格差は「負け組」のみならず、「勝ち組」にも影響する。
女性のストレスを減らすには、家事そのものの時間減らすことではなく、男女比率の割合を減らすこと。
「行動経済学」がキーワード
パブリックヘルスの取り組みを阻むもの・自己責任論・利益重視の民間企業の存在・人々は理性的で計画的という伝統的理論
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健康を「上流」から良くしていくパブリックヘルスの魅力、コミュニティの力に感動。特に、社会的格差が上流階級層にも健康に悪影響を及ぼすことに目から鱗が落ちる思い。
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2017年6月読了、疫学やヘルスプロモーションの考え方を、難しい言葉を全く使わずに解説した本。読みやすく、事業の考え方や、陥りがちな問題点など、自分自身の理解を深めることができたとともに、周囲の専門職ではない人ににどう伝えればいいのか、とても参考になった。
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これは名著。
健康格差とソーシャルキャピタル、ポピュレーションアプローチや社会疫学について、分かりやすく丁寧に解説してくれている。
健康づくり政策にとっての行動経済学の重要性まで触れていて、関係者必読の本。
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たとえば、肥満で生活習慣病になってしまったひとがいるとする。血圧も高い、血糖値も高い、などを改善していくために、お医者さんが薬を処方し、運動不足を解消するように促したりする。そういうのは、健康を大きな川の流れに喩えると、下流での対処のしかただと、カワチ氏はいいます。社会疫学は、川の上流で対処をするための学問。上流ではなにが起こっているかを考えると、貧困によって粗悪なスナック菓子や惣菜などを食べざるを得なくなっていたり、それらの営業宣伝がうまく感情に訴えることもあって、食生活に溶け込んでしまっていたり、ということがわかる。社会全体を鳥瞰図のように見て、処方箋を考えようとするのが特徴のようです。なので、個人に責任を帰することはほとんどしない。あくまで社会の仕組みの問題であり、個人個人を見ていくにあたっても、行動経済学の考え方で見ていくことになります。人間一般の行動原理としてみていくので、個人を責めることはないのです。また、現行の非正規雇用は不健康を産むだとか、流れ作業が大きなストレスを産むだとか、話の流れの中で登場する数々のトピックがどれも興味を引きました。理想の労働環境について、図を用いて説明してくれたり、高い教育を受けた者は健康である確率が高いことを教えてくれたり、人との触れ合い、それが具体的な助けではなくても、なにがしか助けたり助けられたりしているというソーシャルサポートの話があったり、200ページちょっとのなかで、盛りだくさんでした。でも、整理されているので、ごみごみしていない本で、読みやすいんですよ。