おしゃべり怪談
著者 藤野千夜 (著)
納会帰りに雀荘へ寄った4人のOLが、おしゃべりな男に包丁を突きつけられながら、延々と麻雀をする羽目に陥る表題作ほか、コミカルで、繊細で、温かく、ちょっぴり怖い4篇を収録し...
おしゃべり怪談
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商品説明
納会帰りに雀荘へ寄った4人のOLが、おしゃべりな男に包丁を突きつけられながら、延々と麻雀をする羽目に陥る表題作ほか、コミカルで、繊細で、温かく、ちょっぴり怖い4篇を収録した作品集。若者の日常に潜むいつもは見えない不安や心のほころび、性の揺れを優しくリリカルに描いた野間文芸新人賞受賞作。(講談社文庫)
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歪んだ空間のまっすぐな線
2004/01/03 14:14
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投稿者:くれい - この投稿者のレビュー一覧を見る
歪んだ空間の中では歪んだ線がまっすぐに見えたり、まっすぐな線が
歪んで見えたりするのだろうか。
錯覚を利用した遊びに直線の横に曲線を何本か書き入れると直線が曲
がって見えたり、またその逆のものなどがある。
藤野千夜の短編集はそれを文章で試みたような作品である。
「BJ」は新婚で引っ越してきた部屋に霊のようなものを感じる女。
夫のほうは何も感じないようで、相手にしてくれない。
で、女はその霊に“BJ(ベビー・ジェーン)”と名づけてしまう。
「おしゃべり怪談」は乱入男に包丁を突きつけられながら麻雀を続け
させられる女たち。
「女性徒の友」は離婚した両親と新しい父親という関係の中で生活す
る中学三年生の女性徒。
「ラブリー・プラネット」は性転換して女になった兄を持つ女子大生。
で、「BJ」は霊に名前をつける女と、それにとくに相手にしない夫。
つまり相手にしない夫婦関係と霊に名前をつける女が…
「おしゃべり怪談」は麻雀の点数の計算を満貫以上が出来なくて、満
貫にならないからと包丁を突きつけられながらリーチをかけてしまう
女。
そういう心理は麻雀の初心者にありがち(私もそうだった)なのだが、
それを包丁を突きつけられている状況でやってしまうおかしさ。
「女学生の友」は母親と新しい父と暮らしながら、母親の嫌なところ
を感じる女学生。
離婚、再婚といった社会の状況なかで感じる女学生の心理。
「ラブリー・プラネット」は自分の電話の留守電に「バーカ」とかを
入れる女。
これは女が恋人の男の指の付け根を舐めるシーンがあるが、解説すれ
ば女になった兄の男根への願望みたいなふうにいえるのかもしれない
が…
そのような情況の中で、妻を信じぬ夫婦の関係が歪んでいるのか妻の
心が歪んでいるのか、包丁を突きつけられながら麻雀をしている状況
が歪んでいるのか、リーチをかけてしまう女の心が歪んでいるのか、
女学生の心が歪んでいるのか、彼女をとりまく家庭環境が歪んでいる
のか、自分の留守電に自分で「バーカ」と入れる女が歪んでいるのか、
性転換をしてしまった兄を持つ環境が歪んでいるのか、そういう歪み
の中でいったい本当に歪んでいるものは何か、まっすぐなものは何か
を描いているような作品群。
ブラックユーモアにあふれていてなかなか面白い。
「ラブリー・プラネット」の女が恋人に「お前、歪んでないか」とい
われるのだけれど、私にはそれが歪みに思えない。
私も歪んでいるのだろうか。