エンタメな純文学
2012/04/07 21:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:お月見 - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤野千夜さんは、芥川賞作家でありながら、意外に(というと失礼かな)「中等部超能力戦争」とか、「少女怪談」など、妙なお話を書かれる方だなあ。と、思いながら面白く読んでいる作家さんです。
「願い」も、読んでいると漫画的なイメージが浮かぶ、ほどよくサブカル名詞をちりばめた(8つめの話「七日間」に出てくる脇役が、田中マルクス闘莉王に似ているという部分が特に秀逸!)短編集でした。
表紙の野球場を上空からのぞいた写真が可愛らしいです。
描かれるのは、普通の、市井の人々の半生や生活の断片で、9人の人生に共感したりドン引いたりしながら読みました。
3つの願いのおばあちゃんや、願いを叶えるお願い玉など、あともう少しでファンタジーの領域になりそうなところで、ぎりぎりのリアルの表面張力を保っている。そのバランスが見事です。バランスといえば、もう少し、話が続きそうなのに、途中で終わってしまうような印象もあり、そこがエンターティンメントと純文学の違いなのかなあと思ったりもしました。
いつか、めいっぱいマンガ・映画・テレビのエキスを詰め込んで、血も湧き肉も踊っちゃう、少女冒険活劇を描いてほしい。そんな期待を抱いてしまう(のは私だけかなあ)短編集でした。
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<願い>をテーマに「9つの短編が収めれられてます。私が好きだと思ったのは「つるとくま」そして「散骨と密葬」です。
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何と言ったらいいか…。どうにも登場人物の気持ちが伝わってこない。
各短編で、いろいろな年代の人物の人となりや思い、心情などが、いろいろな言葉、表現で描写されているのだけれど、不思議なほど読んでいて全く伝わってこない。
現実感がなく表面だけ、描き切れていない、という感じがいっぱい。
チャレンジしすぎなのでは??
角田光代さんが以前、この人の本を読んでいたのを思い出して、たまたま図書館で見かけて借りたのだが、本当にイマイチだった。
表題作「願い」と「つるとくま」はまだましだったかなあ。
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願いをテーマにした短編集。
いずれの作品も感情移入するほどではなく、別に読まなくてもいいかな、って感じ。
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横浜に行ってる時にカフェやバスのなかでぽや~と読みました。
好き。なんか好き。
・願い
3つ願い事をかなえてあげる、と言っていたおばあちゃん。
ふわふわと付き合っていて別れたけど、ひさしぶりの連絡のタケ。ほわっと。
・妹思い
妹思いのお兄ちゃん。
なんでもない話だけど、直球な感じが人間くさくて好き。
・ノーチャンス
美人妻をもちつつも、大坪さんにゆれる想い。
そういうのはあるやろなぁ~。
・つるとくま
おばけにおそれる美々加。
それがきっかけとなって母の再婚相手の熊さんに心を開く。
・散骨と密葬
自分の人生はとても順調だったけど、奥さん選びと子供の育て方は間違えていたかもしれない。。
でもその想い方がゆるりとしていて、すべてを包み込んでるような感じがあらわれてるあったかい話。
・ファウルボール
別れた彼女にひさしぶりに誘われた野球。
野球命になっている彼女と復縁か?と思いつつも、さらりとかわされるけれど、また会えるだろうなぁ。とぼぉんやりふわっと考える主人公。
・たくさんの荷物
ぱっちりおめめでイマドキ可愛いウエちゃん。アラフォー。
自分のが優位にたっていたはずなのに、おたく系スイトくんに振られる。
女友達にごねって、それをうけとめる友達。あたたかさがあるお話。よくありそうやな~。
・七日間
鳴らない電話。いっそのこと死のうと思う。という感じの暗いはじまりのお話なのに、日々はいつもどおり流れ、とんとんと話は進んでいく。田中マルクス闘莉王似っていうのが出てきておもしろかった。
・お願い玉
緑色の玉。水にひたす。
こういう苔玉とかこものめいたあたたかいものの存在って好きだな~。心をほんのりあたためてくれるような。
全体的に、何かとくべつなことがあるわけじゃないけれど、とんとんと過ぎていく毎日がいいなーって思える短編たちでした。
またふじのさんのお話読みたい。
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藤野さんの優しい視線が、少し病んだこの世の中を切り取って9編の物語に仕上げている。表題作どおり、この本全体を通して、つらい現実の中で何かに救いを求めるようないくつもの願いが描かれている。恋に破れたアラフォーの女性や、妹を欲しがる半分オタクな大学生、妻を恐れながらも部下との不倫を夢見る中年男、そして自意識過剰なひきこもり、、、などなどまさに今の日本のさりげない日常の断片を切り取り、淡々とした物語になっている。
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久々の藤野千夜さん。うん、いいなぁ、彼女(って言っていいと思うんだけど)の文章、好きだなぁ、って改めて思いました。「三つのお願い」を微妙にかなえてくれるお祖母ちゃん、妹が欲しいと妄想していたら父親の再婚で実際に妹ができてしまった「ぎりぎりオタク」の男の子、小学校の同級生の男の子から霊が見えると言われて行動を共にする女の子、大きな息子が三人いても自分は「密葬と散骨」でいいと見切りをつけてしまう“あんちゃん”、兄からもらった“お願い玉”をずっと大事に持ち続け、実際に成功していく妹・・などなど、時折、乾いた小オカルトも入りながら、今の時代に生きる「普通の人たち」を優しく描いているところがよかったです。人生って特別なことなんか、そうそう起こるもんじゃないよ。毎日、毎日がやってきては去っていく。でもそれは空しいとか、つまらない、とかいうことじゃないんじゃない?というメッセージを汲み取ってしまうのは、続けて「田舎の紳士服店のモデルの妻」を読んでしまったからかも、なんだけど。
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いつもよりちょっとだけやさしい気がする。みんななにか足りなくて、それを願って暮らしているのかなぁ。切なさやら生きづらさやらを抱いて、なおかつ一縷の希望というのを信じてみようと思う。「ノーチャンス」の中の“ピチカート・ファイブのヴォーカルは、まだ佐々木麻美子なのだと思っていた。(嘘)”には、ふいた。
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藤野千夜久々に読みました。今回のは、ちょっと毒?棘?チクッと引っかかる感じがなかった。要素はあるのに・・・。物足りない?普通っぽい?「おしゃべり怪談」がインパクトあって、意外性があっておおぉーって感じだったので、あの感覚を求めていたから、かしら?
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久々に藤野さんを読んだ。文体、割と好き。ぐっとくるような、残るものはあまりない。強いて言えば、お願い玉、が良かった。
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短編
つるとくまで、少女怪談に出てきた美々加の少し成長したのが出てきてわろたw
亡くなったおばあちゃんが生前に、3つ願い事を聞くと言っていたのを思い出した失業中の奈緒
妹にあこがれ、親が再婚し念願の妹に兄としての情熱を注いだタツ
会社の女子社員と寝たいとつい思い、妻にその気持ちをほんの少し気づかれてしまう二郎
幽霊が見える同級生と、母の恋人のくまさんと、美々加
いい年した息子3人はいつまでも独身で、妹の葬式で自分のときは散骨してもらいたいと思う新平
別れた彼女に草野球の助っ人に来てほしいと言われ、ひそかに復縁を願った信夫
誰からも電話が来なかったら、死のう、と思っていたレイ
願い玉を小学生のときに兄にもらい、以来大事に扱い充実した生活を送る知子
あ、全部に願いが入ってる、と気づいた)^o^(
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家族を題材にしたお話がメインの短編集。どれもオチは曖昧なんだけれど、ふわりと暖かい。
元恋人に誘われた女子野球チームの助っ人をする男の話、ファウルボール。昔兄にもらった願いが叶う玉を大人になるまで大事にしている妹の話、願い玉。この二つが特に好き。
全体的に飄々とした人たちの、ちょっとした出来事を、書いているんだけどどれもラストがラストらしからぬ感じ。少し明るい予感、で終わってる。だから話は中途半端。それが逆に面白い。
曖昧なままのお話が、その後どうなるのかは、読んだ人の数だけ展開がある。 この短編は推理じゃないから、あえてそれでもいいのかなと思った。
気持ちが少し軽くなる作品。
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難しく考えずにサラッと読める。ちょっとサラッとし過ぎな感もあるけど。
短編で終わらせずに広げられそうな物語ばかりなのに、宙ぶらりんな終わり方で何だかモヤモヤ。まぁ『願いを叶える』じゃなく『願い』がテーマだから、願った事がどうなったかというのは大した問題じゃないのかも。
読後感は悪くないけど、しばらくしたら内容は忘れてしまいそう。
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*ささやかでいい。叶ってさえくれれば――
可愛い妹が欲しい、元恋人と復縁したい、部下と不倫をしてみたい、とにかく誰かと話したい……。
芥川賞作家が掬い取る、街にあふれたいくつもの小さな願いごと。静かだけれど切実な、9つの物語*
心の奥の柔らかい部分にふわりと触れる、やさしい風のような物語の数々。単純明快なオチなどはなく、ありふれた日々の物語を丁寧にすくい取り、ゆるりと仕上げているので、余韻が残る読後感。読む人、読む時期によっても感じ方が変わりそう。
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死にたいのか生きたいのか。死にたいのか生きたいのか。死にたいのか生きたいのか。死にたいのか生きたいのか。生きたいのか死にたいのか。
心の中で何度も考え、
「甘ったれんな」
と小さく口に出して言った。
(P.212)