一刀斎夢録 下
著者 浅田次郎 (著)
沖田、土方、近藤ら仲間たちとの永訣。土方の遺影を託された少年・市村鉄之助はどこに消えたのか――維新後、警視庁に奉職した斎藤一は抜刀隊として西南戦争に赴く。運命の地・竹田で...
一刀斎夢録 下
商品説明
沖田、土方、近藤ら仲間たちとの永訣。土方の遺影を託された少年・市村鉄之助はどこに消えたのか――維新後、警視庁に奉職した斎藤一は抜刀隊として西南戦争に赴く。運命の地・竹田で彼を待っていた驚愕の光景とは。「悪鬼の所業と言わば言え。」百の命を奪った男の迫真の語りで紡ぐ鮮烈な人間ドラマ・浅田版「新選組」3部作、ここに完結。
著者紹介
浅田次郎 (著)
- 略歴
- 1951年東京生まれ。日本ペンクラブ会長。95年「地下鉄に乗って」で吉川英治文学新人賞、97年「鉄道員」で直木賞、2000年「壬生義士伝」で柴田錬三郎賞を受賞。
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数少ない新選組生き残りの“齋藤一”自身が過去を語るという形なのだから凄い。
2016/11/23 00:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
“凄味”のある本でした。『壬生義士伝』(2002)では、吉村貫一郎(南部藩を脱藩した下級武士)という存在はしたらしいが実像は不明な人物を主役とし、『輪違屋糸里 上・下』(2007)では、京都の島原の太夫・糸里ほかの女性たちの視点から、新選組を描いてきたが、本作の主役は永倉新八(松前藩士)同様、実在したばかりか後年まで生き残った数少ない新選組生き残りの“齋藤一”自身が過去を語るという形なのだから凄い。このように実在の人物なので、浅田次郎が資料とした取材資料も数多くあったのだろうとは思うが、それにしても資料として記録されていない部分を補いつつ文庫版にして約880ページに及ぶ文章を作り上げる想像力は“凄い”の一言では片づけられないですね。見る人によっても異なる一人の人間の生き様を、如何にも“真実”の生き様のように浮かび上がらせてくれるのだから圧倒される。また、齋藤一という人物を通じて、武士社会が崩壊する中で苦悩した一つの時代、その中で都合のよい暗殺集団として機能させられた新選組の姿も浮かび上がってくるのだから興味が尽きない。さて、物語の主題は、齋藤一の語る「剣の奥義」とは何かという点に収斂してくのだが、この点に関しては、私には少々難解で結論としては消化不良となってしまった。とは言え、面白いことには変わりはない。
浅田先生のダンディズムここに極まれり
2016/12/27 21:02
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
市村鉄之介は斎藤一のコピーではなく 鏡のような存在だったように思う。共に寒々しい家庭に育ち 剣に生き…。その鉄之介に剣を教えたのは他ならぬ斎藤だった。同じように相手を生かそうとし、自らに引導を渡そうとし。だが鏡が対峙した時 生と死がはっきりと別れた。生き残った者は鏡の生き様の語り部になるのは必定だったのだろう。私の中の漢が震えた一冊。
また凄まじい作品をお書きになられたものだ・・・
2014/02/28 19:18
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投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
大政奉還がなされてご一新となり、戊辰戦争から西南戦争が勃発した、まさに混沌としたあの時代。教科書でサラリと読んでも、官軍賊軍の何がしかすらはっきりと理解出来ない。西郷隆盛や山縣有朋、大久保利通にもちろん新撰組。一体どっちが官軍で誰が賊軍なのか、時代が動くと共にうつろう不安定な世の中。
そんな時代を、当事者の言葉で綴っているのがこの物語。それもかの新撰組三番隊隊長、斎藤一の口をしてだ。あの場面であの戦で、何を考えどうしてそのような行動に出たのか。なぜ、斬ったのか殺したのか。もちろん綿密な調査を元にした、事実もあるのだろうけれど、それだけでは到底この物語は生み出せるはずは無い。この時代への深い思いと理解、そして新撰組への果てしなき愛情がなければ書けるものではない。いやそれでもこんな物語を、一体全体どうしたら編み出せるというのだろう。凄いと思うのを通り越して、不思議にさえなってしまう。事実を並べただけの学術書、では決して描けなかったはず。小説、物語、であるから出来た奇跡の一冊と言っていいと思う。小説の面白さをまた改めて痛感させられ、また感謝の念すら覚えさせられた。
何せ浅田氏が文字通り、精根こめて命を削って綴ったに違いない事が読むほどに伝わってくる。浅田作品は全て読んで来たけれど、この作品ほど文章間から立ち上る、「気配」の強い物は無かったと思う。それはいつも「人を思う」気持ちだった。「生きろ」と思う気持ち。そして、「死ね」という強い念。「生きたい」という気持ち、「死にたい」と思う気持ち。様々な凄まじい「気」が、文章間から立ち上ってくる。また各章を括る一文にも、毎度ばっさりと切り落とされた気分になる。それまで濃く深く語られて来た新撰組、そしてご一新の時代の物語を、最後の最後に少しだけすっと力を抜くように、しかしまさに斎藤一の初発刀一閃のように、素晴らしい切れ味で斬り結ぶ。文章の、いや1文字1文字の隅々に極限まで、気と根とを詰め込んだ作品に違いないと思います。素晴らしい作品を読ませて頂きました。心から感謝。
西南戦争へ
2021/08/03 10:52
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
実在の人物 斎藤一を主人公に、敗残の新選組 苦難の斗南藩 そして藤田五郎巡査としての西南戦争と波乱万丈の時代を背景にいくらかニヒルな人物造形が見事である。時代人物物 伝記としては実に面白いが、剣豪小説としては今ひとつ乗り切れないところがある。特に作者が力を入れたはずの締めくくりの章は乗り切れなかった。
感動の再会・・・
2021/06/30 11:46
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
鳥羽伏見の戦いで薩長軍に敗れ江戸に戻ってきた新撰組。甲州の戦いでも薩長軍に敗れた新撰組は会津~五稜郭へと転戦する。斎藤は会津で負けを認め斗南で暮らす。御一新後、斎藤は東京警視庁の邏卒となる。そして西郷が起こした西南戦争に出兵する。そこで元新撰組で斎藤が唯一技を指導した乞食小僧の市村鉄之助と再会するが・・・。
戊辰戦争から西南戦争までの隠された真実?仮説かもしれませんが、内容は納得できるものでした。と同時に武士の魂もこの時に消え去ったような気がしました。葉隠れの「武士道は死ぬこととみつけたり」のようですね。三部作を通して新撰組に興味を持ちました。