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一般書

漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

著者 加藤徹 (著)

かつて漢文は政治・外交にも利用された日本人の教養の大動脈だった。古代からの日本をその「漢文」からひもとき、この国のかたちがどのように築かれてきたのかを明らかにする。

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漢文の素養~誰が日本文化をつくったのか?~

税込 704 6pt

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著者紹介

加藤徹 (著)

略歴
1963年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。広島大学総合科学部助教授。「京劇」でサントリー学芸賞(芸術・文学部門)受賞。他の著書に「漢文力」など。

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みんなのレビュー25件

みんなの評価4.4

評価内訳

近代日本の礎を築いた「漢文の素養」

2006/12/09 13:02

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ゆうどう - この投稿者のレビュー一覧を見る

論点を一言で表現するならば、明治維新以降の近代日本の礎を築いたのは、それまで日本人が2000年かけて培ってきた「漢文の素養」である、ということだろう。
(おそらく)意味もわからずに鏡や刀に漢文を刻んだ古代の人々によって、「威信財」として漢字が受容され始めた。この頃はまだ、為政者の権威の象徴として、あるいはファッションとしての意味しかなかった。その後、徐々に文字としての漢字が普及し、7世紀から19世紀まで、漢文は「生産財」として機能した。「生産財」とは、政治的・外交的な意思伝達の道具、また、文学上の感情表現の道具というほどの意味であろう。筆者は、その辺の消息を、具体例を列挙しながらつぶさに説いていく。近世以降、中流実務階級が漢文の素養を身に付け、中国の士大夫階級(韓国では両班)の代わりを果たしたことが、世界史上でも特筆すべき江戸期の教養国家を作り上げ、日本の文化度を押し上げる要因となった。江戸時代の日本の書店では、清の国家機密である「実録」や、清国で禁書となった書籍まで販売されていたという。商売が成り立つほど、これらの純正漢文が読める読者層が形成されていたのだ。
幕末の動乱期からすんなりと明治維新の近代化が達成されたのは、漢文の素養を基礎として、社会の中間層に教養ある実務階級が形成されていたからである。その人々が、近代化の推進力となった。一方、中国と韓国では、早くから漢文を操れる上流階級たる士大夫層(韓国では両班)と、下層階級との分離が進み、中流実務階級が育たなかったことが、近代化の遅れの原因となった。「優秀な中流実務階級をもつ文明は強い」ということだ。
しかし、20世紀以降、漢文は、学者など一部専門家のみの教養となってしまった。「生産財」としての機能を失い、「消費財としての教養」となってしまった。日本人の漢文のレベルは、低下の一途をたどっている。最後に筆者は、漢文的素養の復活を望み、21世紀のあるべき漢文的教養の姿を提唱する。それは、「東洋人のための教養」であり、「生産財としての教養」であり、「実務階級の教養」であるという。
漢字と日本人の関わりについての具体的なエピソードなど、非常に面白く読ませてもらった。確かに、我々現代日本人は漢文が読めなくなっている。それは悲しむべきことでもあるが、一方で、近代以降の中流実務階級が欧米化を進める上で「英文の素養」を受容してきた結果とも言えるのではないだろうか。古代以来、東洋に位置する一国として文明化するためには、漢字を吸収・消化せざるを得なかったのと同じ理由で、明治以降の日本は、世界の先進国と伍していくために世界語たる「英語」を受容したのだ。そのため、「漢文的素養」が衰退していった。しかしながら、その過程には、漢字を受容したのと同じ日本的な精神が反映されているのだと思う。

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日本と中国は千年間、ずっとずっと、「政冷経熱」だった!

2006/07/16 22:42

9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

私が信頼する越知さんの素晴らしい書評に触発されて本書を購入した。越知さんのおみたて通り、非常に面白い本だった。漢字・漢文とは古来、東洋のエスペラントであり、日本、中国、韓国、ベトナムの教養人は、皆、漢字・漢文という共通のツール、共通の教養を身につけることで相互に敬意を払い、かつ円滑にコミュニケーションしてきたのだと加藤氏は指摘する。その代表的な例として加藤氏は巻末に張学良の例を挙げ、彼が日露戦争の英雄・乃木希典将軍を高く評価し、彼が203高地を陥落させたときに詠んだ有名な七言絶句「爾霊山」を90歳になるまで諳んじていたという話を披露する。これはNHKが出版した「張学良の昭和史最後の証言」に出てくる一説なのだが、うかつにもこの本を読んでおきながら、張学良が乃木希典の大ファンだったという部分を完全に私は忘却していた。父張作霖を日本軍によって爆殺されたことで張学良は日本を深く深く恨んでいたということは覚えていたのだが、その同じ張学良が日本文化にも深い敬意を抱いていたという部分は完全に失念したのだった。他にも日本の戦国時代の英雄達が詠んだ漢詩が、まるで展覧会でもするかのように並べられる様は圧巻である。上杉謙信が七尾城を攻め落とした時に読んだ漢詩「霜は軍営に満ち、秋気清し」は越山会の由来にもなった詩で田中角栄の愛人佐藤昭子が愛唱しているものだし、伊達政宗の「馬上少年過ぐ」は司馬遼太郎の同名の小説にもなっている。それにしても500年続いた日本の戦国時代が日本の歴史を中国のそれと隔絶したものとし、戦国時代の混乱こそが日本に分厚い中間層を形成する原因となって、それがゆくゆくは日本が近代化に成功する大きな遠因となったという指摘や、「返り点」に代表される日本式の漢文読み下し法が漢文知識を日本の幅広い中間層に漢文教養を広め、日本全体の教養の底上げにつながったという指摘(これがなかった中国、韓国、ベトナムでは漢文の知識は最後まで一部エリート層の独占物とされ、国民全体に教養が広がることがなかった)など非常に興味深い。それにしても面白かったのは、中国は周辺国と「対等」な外交関係を結ぶという発想は無く、中国と正式な国交を結ぼうと思ったら、その国は中国に朝貢を行い名目上にせよ中国の属国にならなければならなかったが、日本の朝廷はこうした中国のやり方を屈辱的と捉え、足利義満の治世を除いては日本と中国とが正式の外交関係を結んだことは千年以上にわたって無かったという指摘だ。これは目からウロコである。日本が中国と正式な外交関係を結ぶのは明治4年(1871年)の日清修好条規であって、それまで日本と中国の間は、ずっとずっと正式な国交はなかったのである。もちろん民間レベルでの交流は盛んに続いていたわけで、つまり日中関係は江戸時代もその前もずっとずっと「政冷経熱」だったという指摘は、読んでいて思わず微笑まずにはいられなかった。他にも「マメ知識」はほうぼうに転がっている。つい最近までPlanetの訳語として東京大学系はずっと「惑星」をつかっていた一方、京都大学系は「遊星」を使っていたという指摘や、中世までは僧侶は門地に関係なく優秀な秀才が社会の階梯を駆け上がることの出来る特別な身分であったことなど「へえ」と言わざるをえない指摘多数。読むべし、買うべし!

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諸君、注目したまえ!名著の登場である!

2006/06/25 17:25

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 初めに断言するが、これはたいへんな名著である。BK1の評価は★5つが最高だけれど、可能なら6つにしたいほどだ。
 内容はタイトルどおり、漢字や漢文が日本文化でどのような役割を果たしてきたかを、過去から現代にいたるまで時代を追って検証したものだ。
 まず、漢字が中国大陸から伝来したばかりの頃。漢字は文字として使われていたかというと、さにあらず。一種ファッショナブルなマークとして意識されていたという。われわれが意味も分からない欧米語の単語をTシャツにプリントしたりするように、また逆に非漢字圏の外国では漢字やひらがなが同様に使われるように、古代ヤマト民族もとりあえずは漢字を文字としてではなくカッコいいマークとして使用していたらしいのだ。
 ようやく6世紀の末から7世紀の初め頃、つまり聖徳太子が活動していた頃、漢字は日本史の中に登場する。太子が遣隋使に託した「日出ずる処の天子……」という文書や十七条の憲法は有名だが、著者は太子の漢文を分析して、すでに若干の和臭があり当時の知識人たちが日本流の漢文を使いこなしていた可能性が高いとしている。
 漢字の音読みに漢音と呉音(例えば「文」を「もん」と読むのは呉音、「ぶん」と読むのは漢音)がある理由など、小中学校では教えてくれない知識も盛り込まれている。
 以上は最初のあたりの簡単な要約だが、著者は単に中国文学者としての視点から漢字や漢語の使われ方をたどっているのではない。広範な教養をもとにした思わぬ指摘が随所に見られ、歴史や社会問題を考える際にも手助けになる本なのである。
 例えば中国民族にとって歴史とはイデオロギーであり「定説」だが、日本人にとっての歴史とは多様な解釈が可能なものであるという相違について、司馬遷と『日本書紀』を比較しながら説明したり、中国には科挙があり朝鮮やヴェトナムにも類似の制度があったのに日本にはそれがなかった事情を記述している箇所は貴重だと思う。
 また、中国の明末・清初めに、明を攻略した清は漢民族を虐殺したが、その記録は清では禁書となり、持っているだけでも死罪となった。しかし日本では普通に出版されて多くの人間に読まれ、異民族に支配されればどうなるかを日本人は知ることができた。江戸時代末、列強のアジア進出に日本がいちはやく備えることができたのはそのためだった、という指摘など、私は目から鱗が落ちる思いで読んだ。ちなみに明治時代になってから日本にやってきた清国留学生は、本土で読めない漢籍が日本にふんだんにあるのに驚いたという。
 そればかりではない。明治時代に欧米から近代の技術や知識を多く取り入れた日本は、そのタームを漢語に直して用いた。例えば「電話」「進化」「自由」「民主主義」「経済」などがそうである。そしてそれらは中国大陸に逆輸入され、多くがそのまま用いられた。現代中国語の「高級語彙」は、実は半分以上がそうした日本製漢語であると聞けば、驚く人も多いだろう。日本人は中国大陸から漢字を輸入したが、明治時代になっていわば「恩返し」をしたのであり、中国を中心とする漢字文化圏でそうした業が可能だったのは日本だけなのである。
 こうした博識ぶりを惜しみなく示しながら、素人にも分かりやすい記述になっているところに、著者の実力が遺憾なく発揮されている、と付け加えておこう。

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漢文が日本文化にいかに影響を与えたか

2022/06/20 21:42

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:パミチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書では漢文が日本文化に与えた影響について詳しく論じている。著者は言う。「漢文は、東洋のエスペラントであった。漢文で筆談すれば、日本人も、朝鮮人も、ベトナム人も、意思疎通をすることができた。」「日本や中国の生徒は、学校の授業で、「詩経」の三千年前の漢詩や、「論語」の二千五百年前の孔子の言葉を読まされる。」こういったことは世界に類がない。「英語の最古の叙事詩「ベーオウルフ」は八世紀の作品であるが、一般の英米人はこれを音読することさえできない。」「漢字や漢文は時代や国境を越えた普遍語である。」と。卑弥呼の時代から聖徳太子の時代、漢文の黄金時代である平安時代(遣唐使の留学僧は中国人と漢文で筆談できた。)、中世から江戸時代(杉田玄白の解体新書は漢文で記載されている。)、明治時代(張学良に愛された乃木将軍の漢詩)に至るまで漢文がいかに日本文化に影響を与えたかについて論じている。又幕末、明治には西周や福沢諭吉、中江兆民が西洋の概念を新しく考案した日本漢語で表現した。(「中華人民共和国」という語彙の内、純粋な中国漢語は「中華」だけで「人民」も「共和国」も日本漢語『日本人が考案した漢語』である。)現代中国語の「高級語彙」の内、半分以上は日本人が考案した漢語(日本漢語)であるという。これも当時の日本人に漢文の素養があったおかげである。我々が日頃使っている漢字や漢語について考えさせられる本である。なお文章は平易で大変読みやすい。

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漢字が日本を変えた? 日本において漢字が辿った意外な文化史

2007/11/21 22:32

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る

 漢文はかつて東アジアのエスペラントだった。著者はそう喝破する。

 日本も政治的に中国の支配を受けたことは無くとも、文化的には明らかに色濃い影響を受けている。文化の受容を可能にしたのが、漢文の素養だったのは間違いがない。

 大変に意外なことに、漢文による利はそれだけではない。遥か後世において、西洋文化を受容する際にも漢文の素養が役立ったとなると、俄然興味が沸いてくる。

 今の我々も、ひらがなを飛ばして漢字だけ拾い読みしても文章の大意は読み取ることが出来る。同じ流れで、学生時代に漢文も読めたという記憶を持つ方も多いのではないか。私自身、教科書に載っていた韓非子や荘子から持ってきた文章を眺めては楽しんだものである(残念なことに授業そのものは楽しめなかったが)。

 それと同じことが、かつては東アジア文化圏全体で行われていた。言葉は地域によって違えども、漢文を筆談に用いることで意思疎通が可能だったのだ。それも、つい100年ほど前まで。

 明治の軍人、乃木希典は二百三高地を占領したときに漢詩を読みそれを北方軍閥を率いた張学良が好んだ、あるいは孫文が日本へ亡命中に漢文で筆談をしていた、という例を本書で挙げている。

 また、中国や朝鮮で書かれた史料が、日本にだけ残っているものも多いというのは面白い。日本において、昔から識字率が高かったこと、漢文の素養が出世に必須だったことから多くの文献が出回ったことが原因だろう。それが喪われてしまったのは残念に思えてしまう。

 本書の魅力は、これら漢文がもたらした多くの影響を、歴史上の人物と重ねて書くことで関心を持ちやすくさせていることにある。例えば、第一章のタイトルは「卑弥呼は漢字が書けたのか」。いきなりドキっとさせられる。考えたこともない話題を冒頭に持ってくることで一気に話題に引き込ませ、以後も読者の興味をそらさないよう次々と興味深い歴史上の逸話を織り交ぜているので楽しみながら一気に読める良書である。

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日本の漢文文化

2021/04/10 20:00

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る

日本の漢文文化について古代から現代に至るまで述べられている。漢文の素養が中流階級にまで浸透していたことが近代化の成功に貢献したということなど面白かった

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日本人と漢文

2020/04/12 23:33

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る

古代、日本に漢字が持ち込まれてから、どのように文化として蓄積していったのか、それを歴史的にたどった本。良書。

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「日本だけ」に酔ってはいけない

2006/08/01 15:51

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 日本が漢字、漢文を取り入れ、文化を作り上げてきた経緯が多角的にしっかりと要領よくまとめられていると思います。アジアの諸国での事情にも言及し、アジアにおける漢文は、ヨーロッパにおけるラテン語のような位置にあるのだ、とその価値を再認識するところが多くありました。例えば、韓国語圏でもベトナム語圏でも、自国語に対応させるための努力が幾つかあったことなどの説明はとても興味深いものでした。
 著者は「世界史には、優秀な中流実務階級をもつ文明は強い、という経験則がある。」とし、「19世紀までの漢字文化圏で、強力な中流実務階級が育っていったのは、日本だけだった。」と書いています。そしてこれまでの日本の経緯を振り返り、漢文の教養が大事だ著者は主張します。しかし、現代で「漢文」を強調する、「漢文」でなくてはならない理由はどこにあるのか、「漢文」という言語に学ぶべき部分の特徴をもっと書き込んで欲しかったように思います。
 せっかく他のアジアの国々との違いにも言及されているのですから、他のアジア諸国とは違い、漢文の力が日本をこのように作り上げたということについても、なぜ日本ではそうなり、他の国ではそうならなかったのか、もう少し突っ込んで分析し、意見を述べて欲しかったところ。新書という紙数の少なさゆえでしょうか、少し残念な気がします。
 挿入されているいくつかの著者の意見も、論旨を読み取りづらくしているかもしれません。「現在元号制度を維持しているのは、世界で日本だけである。今日、元号は、キリスト紀元(西暦)を使用する西洋文明に対して、日本文明の独自性をアピールする材料の一つとなっている。」などは、その独自性と「漢文の素養」という本筋との関係ももう一つ弱く、ここに書かれてある必然性に疑問を残します。独自である、長く続いているということが、重んじられる理由ではないでしょう。
 「漢文」でなくてはならない理由、が納得できれば、本書に書かれてきたこれまでの経緯も、これからの重要性もより強く納得できるのだがという思いが残った本でした。著者は2004年に「漢文力」という本を出版しています。「漢文の素養」、漢文で理解しなくてはならない理由、というのがこちらには書かれているのか、と思い読んでみましたが、やはり明確には伝わってはきませんでした。日本の「漢字・漢文の取り入れ方」の中に、答えが見えているような気がするのですが、素人が自分でつかみとるには難しすぎました。行間に書かれたものを読み取る、という力が読み手に不足していたのか(漢文の素養がないのか、単に日本語の素養が足りないのか)と恐れています。
 「国家の品格」もそうですが、昨今「日本の保持してきた良いもの」をもう一度重視しようという声が高まっているようです。捨ててしまったものを見直すことには賛成ですが、捨てられてしまった理由もあったでしょう。その理由もきちんと把握することも必要ではないでしょうか。この本を読んでそんなことも考えてしまいました。
 特色を有し、しっかりとした書評をいつも書かれている2氏が絶賛しておられるので読んでみました。漢字・漢文の取り込まれ方、文化的な経緯については確かに大変によい本であることに間違いはないでしょう。しかし、「漢文の素養をもっと」にはどうしても「当然」のように賛成、と言い切れない思いを捨てきれないまま読み終わりました。

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2006/03/06 02:32

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