京都料亭の味わい方
著者 村田吉弘 (著)
「料亭は本来飯屋であり、敷居の高いところではありません。普通の人が、ちょっと贅沢しよか、という時に行ける場所です」――京都「菊乃井」の主人が語る、料亭の魅力のすべて。
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京都の料亭へのあこがれがひたすらつのるばかり
2008/09/30 22:30
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
料亭とくれば、政治家の会合をつい連想してしまう。しかし、この著者の経営する京都の料亭は、あくまで「飯屋です」と言い張る。料理を最高のおもてなしの中で楽しんでいただくという心意気がひしひしと伝わってくる。
著者はただ単に先代の料亭を引き継いだだけの人ではない。最初は、もう京料理の時代は終わりだと考えて、フランス料理の修業のために欧州へ渡航したりもしている。
さらに、京都でも、料亭ではなく割烹のお店を開くことから始めている。料亭だと、料理が宴席に運ばれてくるまでに、ある程度さめてしまう。また、女将がうやうやしく出迎えて、たいそうな座敷に通されるのも、これからは受けないだろう、という見立てであった。
そんなところから、料理ができてすぐにお客に提供できるカウンター席のみの割烹を開いたのだ。おいしい京料理を味わえればいいという人には、たしかに合理的なスタイルである。
ところが、割烹を営みつつ、料亭も切り盛りするうちに、料亭の価値を再発見する。お客は料亭の入口を通り過ぎたところから、日常とは異なる空間に足を踏み入れた感覚にひたる。女将と挨拶し、仲居に座敷に通され、値打ちのある器や掛け軸を鑑賞しながら料理を味わうのは、較べるもののないエンターテインメントであると表現する。
そんな経歴の持ち主の言うことだから、読者は京都の料亭の味わいにあこがれてしまうことだろう。著者は東京・赤坂にも料亭を開いているので、京都でも東京でも楽しめる機会が待っている。
あとは、値段次第である。そうして、「菊乃井」のお店のホームページを見ると、思ったほど高くはない。著者の言うように、晴れの日に利用するには、このくらいの値段なら手が出ないではないだろう。それでも、無理だという場合は、昼食時に利用すれば、さらに値頃感が出る。
著者は、保守的な考え方に回帰したのではなく、再発見したのだから、志は依然として高い。シンガポール航空の機内食のアドバイザーをしたりもしている。けっこう、冒険心に富む人だ。
東京に店を出すのでも、新しいビルのテナントとしての誘いが多いが、子の代、孫の代にも残っているかどうかという目で、判断する。短期に儲けて、店を閉めるというような浅ましい欲はない。
こんな著者のお店にあこがれがつのった。いつの日か利用して、京都の料亭というものを堪能したいものである。そのころには、著者が望むように、日本料理が正しく理解され、真に世界に通用するものになっていることだろう。