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著者 堂場瞬一
日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるため新設された「東海道マラソン」。神奈川県知事の号令のもと、県庁職員の音無太志は、日本陸上界の至宝・山城悟のペースメーカーと...
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商品説明
日本男子マラソンの長期低迷傾向に歯止めをかけるため新設された「東海道マラソン」。神奈川県知事の号令のもと、県庁職員の音無太志は、日本陸上界の至宝・山城悟のペースメーカーとして、孤独なランナー・甲本剛に白羽の矢を立てる。甲本はかつてハーフマラソンの日本記録を持っていた「30キロまでの男」。所属していた実業団が解散し、母校のグラウンドを借りて練習する身だ。ペースメーカーになることを渋る甲本に、音無は破格の条件を提示するが――。果たして世界最高記録達成はなるのか。数多の人間の欲望と情熱を乗せたレースは、まさかの展開に――。箱根駅伝を走る学連選抜チームの激走を描いたベストセラー『チーム』の“その先”の物語。疾走感あふれるレース描写と、男たちの人間ドラマに一気読み必至。
著者紹介
堂場瞬一
- 略歴
- 1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。「8年」で第13回小説すばる新人賞受賞。ほかの著書に「複合捜査」「夏の雷音」など。
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書店員レビュー
ペースメーカーは世界記録の夢を見るか?
ジュンク堂書店福岡店さん
頑張っていいのか?俺はまだ走れるのか?走っていいのか?
ハーフマラソンの元日本記録保持者・甲本の元に、神奈川県の職員である音無が訪ねてくる。何かのイベントへのお誘いかと期待した甲本だったが、音無の口から告げられたのは新しく開かれる大会、天才ランナー・山城に世界記録を出させる、ただそれだけのために開催される東海道マラソンでのペースメーカーの依頼であった。まだ現役のランナーである甲本は反発し、依頼を断るのだが……。
堂場瞬一の手によるマラソン小説。警察小説でかなりの人気を誇る作家ですが、デビュー作は実はスポーツ小説であり今でも結構な頻度で発表されています。この小説はそんな作品の中の一つであり、大学駅伝を描いた作品・「チーム」の続編となります。とはいっても前作を読まなくても全く問題ない作りになっていますので、「チーム」未読の方でも十分に楽しむことが出来ます。
前半部分は、主にマラソン大会を成立させるために奔走する音無の視点で描かれます。知事からのとんでもない無茶ぶりに悪戦苦闘する公僕ぶりにはなんだか同情の念を覚えてしまいますが、結構ノリノリでマラソンのコース選びをしていたりするあたり、この男なかなかタフである。後半部分は、いよいよ東海道マラソンがスタート。音無、甲本、山城。三者三様の思いが渦巻くレースは、誰もが予想し得なかった展開へと突き進んでいきます。
これは本当に面白かった!ただのスポーツ小説ではなく良質の人間ドラマに仕上がっており、音無、甲本、山城とそれぞれの視点から丹念に描写される物語は、レースの盛り上がりに合わせて読者をぐいぐいと引き込んでいきます。個人的には特に甲本の視点がお気に入りで、非常に人間臭くありながら結局は陸上馬鹿である彼の姿は、応援せずにはいられません。
冒頭の一文は、最終盤の甲本の心理描写より。物語とレースは、ここから一気にラストスパート!が、最後にある意味驚愕の展開が……。続編は、続編はまだかーーー!!
スポーツの記録に選手の能力以外の要素の関与をどこまで許されるのか考えさせるストーリ―
2016/07/27 19:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人ランナーにマラソンの世界最高記録を日本で開催されるマラソンで実現させようと、様々な立場の人間が織り成すドラマ。世界最高記録達成のためにマラソンコースそのものを設定して新たな大会を開催し、ペースメーカーを選定してエースに記録を狙わせる。その過剰なまでの「お膳立て」に対して記録を期待されるエースランナーが感じる葛藤。ちょっと前、競泳界では高速水着の問題がありました。スポーツが靴などをはじめ様々な道具、環境の下で実施される以上、どこまで人為的な関与が許されるのか、考えさせられる小説です。
読み応えあり
2022/02/23 10:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:沖田圭介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小説前編は,マラソンコース設定や選手選考という読む側としては退屈であるが,マラソンが始まると選手同士の駆け引きに飲み込まれてしまう程楽しいです。ただ,残念なのが結末がないところである。作家としては,最後は読者の想像に任せるとの意図であると思う。
山城ファンです
2015/09/29 01:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:でいびす - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作「チーム」で、主役級の活躍を見せた、
嫌われものの天才ランナー山城。
今作では、主役と言っても過言ではないですが、
彼の自己中には磨きがかかっています。
でも彼は、ただ、自分の納得の行く走りがしたいだけなのです。
あまりに実直に取り組むが故に、周りに敵を作ってしまう。
そんなことってありますよね。
他人に媚びない彼の姿は、ある意味魅力的です。
そして、山城を取り囲む、個性的な脇役たち、
作者の人間を書ききる力は圧巻です。
でも、ラストシーン、あれでいいのでしょか・・・
山城悟の魅力
2017/01/25 09:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RASCAL - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作「チーム」の続編、というよりも、傲慢スーパーランナー山城悟シリーズ、ですね。でも主人公は甲本剛の方かな。面白いことは面白かったけど、「チーム」ほどには感動しませんでした。山城に世界記録を作らせようと完璧とも思われるお膳立てをする主催者。それをぶち壊す甲本と山城が痛快。でも、山城さん、ちょっとひねくれすぎですよね。東海道マラソンのコース、その後開催されるようになった横浜マラソンと一部かぶってます。出たことないけど。
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2016/02/22 20:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:isajiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
記録を作り上げるということに、その走行環境を作ることに多くの人物が加わるという角度からのマラソン大会を作り上げるというストーリーだが、マラソンを選手以外からも捉える描き方は面白い。
マラソンは長い単調な競技に見えることもあるが、このストーリーの先行し、デッドヒートする2人のランナーの想いと駆け引きは、100頁以上に及ぶ緊張の連続であり、交差点のカーブを曲がるのにも、給水ボトルを取るのにも神経を集中したやりとりは読みごたえがあった。スポーツ小説という新しいジャンルでのノンフィクション的なフィクションであると思う。
ただ、リアリティー感をもう少し上げるには、第2集団以下のグループの主な選手の作戦や想い、レース展開も描いた方がより厚みのあるストーリーになったような気がする。
又、マラソンにペースメーカーが必要かどうかという問題提起もあり、本当に強い選手にペースメーカーに助けられる部分は何か、ペースだけであれば記録だけということになるが、勝負という駆け引きにおいては必要なのかどうかということで、結論は出ていないと思う。