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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史小説というと司馬遼太郎が大変に有名だが、この本の作者 吉村昭は小説とは言いながら史実にできるだけ忠実に書こう という意志が見えて感銘を受ける。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」の影響か幕末の幕府側の役人は、旧弊で融通がきかず オタオタばかりしている というイメージがあるが、本書の主人公 川路聖謨のように気骨ある人材もいたということを改めて知らされた。
川路聖謨の後半生
2023/09/28 13:34
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアの軍艦ディアナ号への対処を中心とする川路聖謨の後半生を描いた歴史小説。徳川幕府は川路のような人を生み出せたのであり、また活かしきれなかったともいえる。吉村昭にとって川路のような人は一つの理想であったのだろう。
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
川路聖謨は樺太の国境策定やエトロフ島の帰属問題に関してロジアのプチャーチンとのタフな交渉がすごい。
幕末といえばどちらかというと薩長系の人物を思い浮かべてしまうが、岩瀬・小栗・水野等の幕府の役人にも光が当たればと思う。
今の政治家にも彼の交渉術は見習ってほしいものだ。
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「吉村昭の流儀」というような、精密で臨場感溢れる「旅の描写」により、川路聖謨の活躍した時代や場所へ引き込まれてしまう…
ロシアとの国交が拓かれた頃の物語だ…
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川路聖謨は昨今の歴史ブームでやっと灯りが照らされ始めたが、著者が取り上げた頃はまだ無名の段階だったと思う。
上巻では、優秀な役人としての川路を事細かに描き出してまるで彼と共に生活しているが如し。それと同時にロシア使節との交渉と同時に、同時期に起きた安政大地震時の下田の様子などが詳しく描かれていて、面白かった。
ロシア船ディアナ号は、津波に遭った下田住民を出来るだけ救おうとした。船員としての道徳がそこに確立していて、貫徹していたことに感動する。そして交渉の利害関係とは別に、川路聖謨ら幕府もロシア船への援助を出来るだけした。そういう「当たり前」の関係が、日露交渉の始めに起きていたことが嬉しい。
封建時代は身分制度が固まり、農民を虐げていたという印象があるが、大震災に当たって、商人からの寄進(米十俵、米五百俵、鍋176個、布団500枚等々)幕府の救済(米1500石、2千両)があったことに改めてビックリする。現代とあまり変わらないじゃないか。2千両の使い道は、死者1人につき大人子供の別なく一貫文、流失家屋に金三分、半潰水入りに二分与えている。政府の金を現金で被災者に直ぐに渡したという点で、現政府よりも優れているだろう。
川路聖謨の評価はロシア交渉のみではないはずだが、この小説ではそこに焦点を当てている。領土問題がどう決着がつくのか、そして川路自身の評価をどう描くのか、下巻を待たねばならない。
2014年7月10日読了
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江戸末期の勘定奉行であった川路としあきらについての小説。
吉村昭作品には幕末の人物を書いたものが多く、川路はその中でも世間一般にはあまり知られていない人物であるが、ロシアの外交使節との交渉は本当に見事であり、一仕事人としての心意気が感じられる。
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幕末、日本が諸外国から開国を迫られた頃、ロシアのプチャーチンと、開港・通商・領土についての交渉をした勘定奉行・川路聖謨(としあきら)の存在の大きさを知った。
明らかに軍備、近代化の遅れを目にしながらも、屈せず、粘り強い交渉力、そして人柄が豊か。才能ある者は身分に関わりなく、埋もれず出てくる養子制度が、努力を絶え間なく続けていくような、偉人を生み出していったのだろう。通史と呼ばれている通訳の実力も凄い。
長崎か交渉舞台が下田となり、この交渉中に起きた安政大地震の甚大な被害など、グングンと内容に引き込まれていく。世界遺産となった韮山反射炉はこの地震に耐え得ていたり、冬の強い海風、戸田村でのロシア船修復など、沼津出身の私にとって、情景が浮かんでくる作品だった。
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江戸幕府に交易と北辺の国境策定を迫るロシア使節のプチャーチンに一歩も譲らず、領土問題にあたっても誠実な粘り強さで主張を貫いて欧米列強の植民地支配から日本を守り抜いた川路聖謨。軽輩の身ながら勘定奉行に登りつめて国の行く末を占う折衝を任された川路に、幕吏の高い見識と豊かな人間味が光る。(親本は1996年刊、1999年文庫化、2014年新装版)
本書は、勘定奉行としての川路聖謨の事績を小説化したものである。内容の大半を、プチャーチンとの交渉が占める。幕末にロシア使節、プチャーチンが来航した事は知っていたが、どの様な交渉が行われていたのか、イマイチわからなかった。
本書を読むと、幕臣たちが幕末の外交交渉に苦心したことがわかる。国力の著しく劣る日本が、ネゴシエートにより、言うべきことは言い、妥協点を見出していく様は、読んでいて外交官になった気分(爽快感は無いが達成感はある)になる。
当時の史料として、川路の日記(東洋文庫から刊)があるが、取っつきにくい。事前に、本書を読んで置くと、理解が深まるのではないか。そういった意味でもオススメの一冊である。
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勘定奉行 川路聖謨の生涯にわたる話である。幕末に生を受け、半生を主に日露和親条約の取り交わしの命を完うするためにプチャーチンらと命を厭わずに懸命に交渉を重ね、幕政に尽くした人物である。その人格は高く、今の外交官の模範となる静謐さと沈着冷静な判断力と物事の先を見抜く力を持った役人であった。これまでの吉村昭の小説の中で最も影響を受けた人物の一人である。墓所は、上野池之端の大正寺にある。
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記録文学とは、こういうものかとの思いで読み進んだ。
幕末時代は、とかく倒幕側の人物ばかりに焦点が当たりがちだが、幕府側にも、その崩れかかる屋台骨を何とか支えたいと必死の思いで誠心努力する、優秀な幕吏がおり、もっと光を当てるべき人材がいるのではないか。
本作品の主人公川路聖謨は、その筆頭たる人物と言っていい。
著者吉村昭が、彼を取り上げたのは、そのその豊かな人間性とともに、彼の中に、著者自身とも相照らす資質を見出したからではないか。
条約交渉をめぐる談判。この交渉経過を詳細に記した著者の取材の綿密さに、改めて畏敬の念を抱いた。
このような歴史上の偉大な人物に巡り会えることが、読書の喜びであり、醍醐味ともいえる。
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幕末のロシア使節プチャーチンとの交渉記録を丹念に。
そんな交渉の場、下田で大地震・大津波があったことを知る。
いつか下田に行って見たいし、ここに出てきた町を自転車で巡って見たい。
交渉の詳細、外交官気質(当時はそういうものはなかったでしょうが)みたいなものが克明に記述されていて、自分とはまったく違うので、ひたすら感服。
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主人公は川路聖謨。川路は幕末の幕府官僚であり、最高の地位である勘定奉行に上り詰めた人物。高邁・清貧、知的でそのくせユーモアのセンスも抜群な有能な人物だった。その彼の大仕事が、ロシアとの和親条約及び修好通商条約の締結。ロシア大使プチャーチンを相手に一歩も引かぬ姿勢は、当時の鎖国情勢の中でも情報収集に努めていたこと、そして開明的な発想と、上記の人格故。厳しい交渉をしつつもプチャーチンに尊敬された。川路聖謨というと、私には、手塚の漫画「陽だまりの樹」で漢方医と激しく対立しつつ種痘所を江戸に作ろうという主人公たちの側に大きな支援をした人物という認識だった。こんな有能な人がいたのかというのが驚き。しかしほんとかよ?と思ってしまうのがロシア人たちの凶暴性で、ある日フランス捕鯨船が日本に来た時に、役人たちが鎖国故追い払うと、血相を変えて怒り出す。ロシア人は安政の大地震による津波で船が壊れていたのだが、フランス船を拿捕、乗組員を殺し、乗っ取ろうとしていたという。川路たちも得体がしれなかったことだろう。
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尊王攘夷の志士が主役の幕末。不甲斐ないと言われた幕府の官吏に焦点が当たる。長崎、下田でのロシアとの交渉。頑固過ぎるほどに法に固執し、とことんまで国益を主張する。一つ誤っていれば、間違いなく現代の国勢、そして世界地図も変わっていただろう。その後の展開もあったが、結果として日本という国は残り、植民地にもならなかった。脱法して、私腹を肥やし、国を売る、現代の「政商」達に届けたい。一方、美徳とされた倹約思想。受け継がれてしまった緊縮は今この国に牙を向いている。安政大地震。自然は歴史をどう変えたのか。下巻へ続く。