風神秘抄【上下合本版】
著者 荻原規子
笛の名手・草十郎と天性の舞姫・糸世。二人が笛と舞を合わせると天の門が開く…。平安末期を舞台に『空色勾玉』に連なる世界を描く、荻原規子のファンタジー大作、上下巻合本で登場!
風神秘抄【上下合本版】
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合本版のメリット
2024/05/26 20:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかくヴォリュームがもの凄いので合本でいっぺんに読めるのはひとつのメリット。今様(いまよう)狂いに熊野行幸で毎度おなじみ後白河院は実在の人物ながら、あまりにも個性が強くてお話向きである。あれこれ策謀を考えるのだけれど、草十郎と糸世に台無しにされることが多い。本書の題も後白河院が今様の収載を命じた『梁塵秘抄』から来ていて面白い。
とにかく、この『梁塵秘抄』は食えない。白拍子女(しらびょうしめ)が舞ったとされるが、歌詞だけで譜面も振付も不明な部分が多い。正直なところ、どう歌われて吟じられたのかよく分からないのだ。現在では白拍子舞の詳細もほぼ不明。
白の水干と立烏帽子に太刀佩きした女の舞い手が男装で舞ったと、わずかに装束が伝わるのみ。判官殿こと義経公についていった静御前は有名だけれど、当時の熱狂というか流行りの中に身を置いていてもよく分からない事が多いだけに仕方ない部分はある。
分からなさ加減では草十郎も相当なもの。篠笛の名手だから勝手に典雅な絵を想起してしまうけれど、斬った貼ったは当たり前の武骨で「東ざむらい」そのものである。口数が少ないので分かりづらいが、武装した検非違使もなんなく討ってしまったり危ない部分も多い男だ。
糸世の舞と草十郎の笛は暴走して時空もゆがめうる力を持つことも。ネタバレしても仕方ないし特に重要でもないので省略するけれど、この展開も含め本作と『薄紅天女』はシリーズ中でも異色な作だと思う。その後の『エチュード春一番』を読むに、平成~令和の日本にもつながっているように思えるのも気になる。