伊藤計劃の魂を感じました
2015/09/06 02:30
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊藤計劃イズムを感じさせる短編・中篇8作品を集めた豪華な作品集です。戦争と最先端技術の行く末をドライに描いた「虐殺器官」の雰囲気とか、高度に管理された人間が迎える”個の終末”を描いた「ハーモニー」の雰囲気が継承されているとひしひし感じました。
特に良かった作品は、技術発展と倫理規範の間で生み出された次世代戦争を描いた藤井大洋「公正的戦闘規範」と、AIに管理されたニューヨークの真相を描いた王城夕紀「ノット・ワンダフルワールド」です。前者は「虐殺器官」の作風が出てるし、後者は「ハーモニー」をよりスタイリッシュに変えた作品だと感じました。
取り上げた2作品以外も技術の進歩に伴う、人間の倫理観と死生観と文化の変化が描かれていて、やっぱり伊藤計劃は凄い作家だったなと改めて思いました。他の作家さんが書いた作品群を読んでいても、大学生の時に電車の中で読んだ「虐殺器官」や「ハーモニー」の読後感が甦ってきたりして何とも言えない気持ちになりました。
あの時の衝撃を思い起こさせてくれる、とまでは言いませんが伊藤計劃イズムは死んでないなと素直に思えました。
トリビュートという意味
2015/09/29 12:29
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投稿者:ゐづみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変粒揃いな作品集で最後まで楽しく読むことができた。ただ、月並みなことを言ってしまうと、収録されている作品の果たしてどれほどが、真に伊藤計劃に捧げられたものであるのか、という疑問が残った。
「公正的~」「ノット~」「フランケン~」の三つは、直截的なトリビュートとして読めたが他は……。大森氏が商業的に伊藤計劃の名前を使うことに対して、彼が物語として語り継がれることを望んでいたが故である、みたいな言い方をしていたのでそこに関しては納得している。
しかし逆に、伊藤計劃の名を冠して他の作家の作品を広めようとするのは少し違う気が。事実、伊藤計劃の名前がなければ読まなかったであろう作品も多く、結果的には面白い作品に出会わせてくれたことに感謝もしているのだが、何か裡に引っかかるものを残してしまう。
「テクノロジーが人間をどう変えていくか」という問いに真摯に向き合ったオリジナルアンソロジー
2016/12/10 11:32
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投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る
「”トリビュート”と銘打ってはいるものの、こちらからしてさせていただいたテーマはただ一つ、
”『テクノロジーが人間をどう変えてくか』という問いを内包したSFであること”です」
このように、このアンソロジーのまえがきに記載されています。
個々の作品もそれに見合った内容になっており、伊藤計劃という作家の世界観を継承しているかどうかははっきりしないと思います。
そのため、このアンソロジーのタイトルを「伊藤計劃トリビュート」にすべきかどうかは最後まで疑問が残りました。
とは言いつつも、「テクノロジーが人間をどう変えていくか」という問いに対して、
7人の作家が全く違う物語で答えを出しており、このアンソロジーの完成度は非常に高いものになっていると思います。
ただ一つ残念なことを挙げるとしたら、このアンソロジーに収録されている1部の作品は別の長編作品の1部であるため、作品によって結末の完成度が異なってしまっていることです。
特に、「南十字星(クロス・デス・スール)」は同じ著者によって書かれた「クロニスタ戦争人類学者」の序盤部分にあたるので、結末を知りたい方はそちらを読まれることをお勧めします。
作品の結末の完成度を別にして、気に入った作品を上げるとしたら、
「未明の晩餐」と「怠惰の大罪」になります。
前者は料理、後者は麻薬犯罪者とSFをからめた作品であり、
このようなSF小説はあまり見たことがありません(自分が知らないだけかもしれませんが)。
今までに読んだことのないSF小説をお読みになりたい方には、この2作品が特におすすめです。
その道の解釈はいくつもある
2023/04/27 20:23
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊藤計劃が歩んだ道。半ばまで歩み、その歩みを止めた道。 その道の先をまっすぐに歩もうとした者。 その道の意味を考え、自分なりに消化し別な道を往く者。 その道の形を真似、自分のスタイルとした者。 一本の道に見えて、その道の解釈はいくつもあり、 消化の結果生まれたものは似ていたり、似ていなかったり。 真似たつもりでも、吐き出される答は違ってくる。 短すぎる生で、後の者に深い影響を残した作家伊藤計劃。そのトリビュート。 テーマは「テクノロジーが人間をどう変えていくか」。
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若手SF作家による伊藤計劃トリビュートアンソロジー。テーマは『「テクノロジーが人間をどう変えていくか」という問いを内包したSFであること』。
アンソロジーとしては1編のボリュームがあった。『まえがき』にもある通り、『アンソロジーとしての妙』は余り感じられない。反面、読み応えがあって、それぞれの著者の作風が感じられながらも、『伊藤計劃』という軸はしっかりしている。こういうアンソロジーもたまにはいいんじゃ?
収録作の中では藤井太洋の『公的戦闘規範』、仁木稔『にんげんのくに』が好みだった。王城夕紀『ノット・ワンダフル・ワールズ』が他作品と雰囲気がかなり違うな~と思っていたら、C★NOVELS大賞出身だったので納得。同じSF・ファンタジー系でも、ハヤカワや創元とはまた違ったカラーがあったのだよね、あの賞。
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「未明の晩餐」「仮想の在処」「フランケンシュタイン三原則」がよかった。「ノット・ワンダフル〜」は露悪的すぎて感心しないけど、後期クィーン的問題なのはよかった。
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収録作のどの作家の作品も読んだことがない
と思うけど、トリビュートという縁で知ったからには
少し手を出してみようか、と思うくらいに
どの作品も面白く読める。
勿論、伊藤計劃という対象があってのことだけど。
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伊藤計劃をテーマに、影響を受けた作家たちが集まったアンソロジー作品。
伊藤計劃の作品、虐殺器官、ハーモニー、メタルギアソリッド、屍者の帝国とどこかで繋がるようなとても面白い素晴らしい作品が集まった。
テクノロジーが人間をどう変えていくかを追求しているらしいが、あまりそこにこだわることなく、伊藤計劃が内包しようとした世界観にワクワクしつつ集まった新しい作家たちの物語を楽しむだけで良い作品だと思う。
個人的に「未明の晩餐」が秀逸で、テクノロジーと人間との関わりはもちろん、退廃した未来の東京を描くSFらしさ、その世界観における人間模様、食の話を中心にし、その全てが綺麗にまとめられている。
でもハッキリ言えば全てが面白い絶対読むべき作品だ。
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SFって踏み込んでしまうとエラいことになりそうで、星新一→筒井康隆→清水義範、小林恭二以外には手を出さないようにしてました、伊藤計劃まで。まぁ伊藤計劃も「ハーモニー」「虐殺器官」「屍者の帝国」しか読んでないけど。
というSFあまり読まない人間の感想。一番伊藤計劃っぽいなと思って気に入ったのが藤井太洋、次が柴田勝家かな。機械による戦争というか殺戮への反発、中国辺境のムスリムテロリストとか伊藤計劃好きそう、と思いました。どうもファンタジー系は苦手みたいで伏見完と仁木稔はちょっと苦手。王城夕紀と長谷敏司は単独でおもしろいけど、前2人も含め伊藤計劃あまり関係ない印象。
伴名練は屍者の帝国のスピンアウトなので一番伊藤計劃直結の内容やけど、個人的な好みでもう少し手前で描写止めてほしかったかな。伊藤計劃ならそこまで書かなかったんちゃうか、という。いや、トリビュートであって、みんなが伊藤計劃になろうってことやないんやけども。
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読んでてダルくなる話が多いなと思ったのは私の読解力のせいとして…。未明の晩餐とフランケンシュタイン三原則はとても素敵な香りがしました。
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私的には話がすごく粒揃いだった。
未明の晩餐はぜひ長篇でもやって欲しい。もっとよみたくなる、話だった。
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図書館で。
アンソロはあまり期待出来ないかなあ、と思っていたのですが個々の作品は骨太だし、お、これは結構すごいアンソロだな、と楽しく読了しました。とは言えあまり合わない作品もあるのでこればっかりは相性もありますしね。
公正的戦闘規範/藤井大洋
モバイルでのゲーム感覚の操作が実際の兵器を動かしていた、というプロットは古くはエンダーのゲーム、最近ではサイコパスⅡで見た覚えがありますが仮想敵ではなく実在の国家を舞台にしているのでやけにリアルだったり。中々面白い発想だな、と思いますが機密が漏れる前にもっと早く村は消されてもおかしくなかったかもなあ、なんてぼんやり思いました。
仮想の在処/伏見完
う~ん、これは私にはわからなかった。ある程度の意志を確認できる年齢の人がシュミレーターとして使っていたAIがその人亡きあとも使用者と似たような思考をたどる、というのは理解できますが。この話ではその対象が赤ん坊でしょう?それってその子自体の自我がAIの中に育つという確証は取れないしただの自己満足としか思えなんですよね。
大体、赤ん坊の脳をスキャンするという事はそこで実際の肉体の方は死んでしまう訳ですよね?日本人の考え方として精神よりもまだ生きている肉体が冷たくなるまで親はそちらを重要視しそうだなあ、と思ったのもひっかかりました。そしてリソースとして姉の思考を演算させるのに莫大な電気を使用するのはわかるけど…あまりに無駄が多いというか。まあ生きているという事は特に目的があったり利用価値があるからするって事ばかりではないわけですが… ナンダカナ。という訳で結構独りよがりな家族だなあとか思いながら読みました。
南十字星/柴田勝家
これもあまりよくわからなかったな~ 世界的な善を為す、画一的社会を作り上げることで孤独を失くし、脱落者を失くす。圧倒的大多数による民主主義の平和的国家、かぁ。その割に主人公たちが微妙にブレブレなのが気にかかる。
未明の晩餐/吉上亮
これは面白かった!死んでいく死刑囚に対してずいぶんお金をかけるなあとは思いましたが(一方で市民権を持たずスラム街という名の駅構内で暮らしている人も居る世界なのに)それでも面白かった。
食べる、という快楽と真摯に向き合った作品。そうやって考えてみるとクスリによる快楽物質も食事や睡眠による快楽ってのも脳内で感じる信号に過ぎないのだから増幅することは可能なのかも。というか美味しそうな短編でした。だから好きなのか(笑)
にんげんのくに/仁木稔
随分とSFとは毛色の違う作品。人間の原点ってかなり暴力的だけどこういう部族が確かに存在してそう。温暖化対策に遺伝子操作植物を使用し、死の森になる、というのはなんか今後ありえそうで怖い。
ノット・ワンダフル・ワールド/王城夕紀
う~ん、これもよくわからなかった。なんとなく、グーグルとかマイクロソフトとかを彷彿させるような。オープンなようでいて徹底的な実力主義というか。
フランケンシュタインの三原則、あるいは魂の簒奪/伴名練
死者の帝国と同じような設定。ナイチンゲールさ��とか切り裂きジャックとか聞いたような名前の人が出てきて大活躍。人は魂を持つのか?という問いかけが面白い。確かに自分なんか死んでも体重変わらなそう。面白かったです。
怠惰の大罪/長谷敏司
麻薬王の話。これも大分SFっぽくは無い、でもSFっぽいお話。ちょっと前に読んだオスカー・ワォを思い出しましたがあちらの方が当たり前だけど(ノンフィクションも入ってるし)血を吐くような話だったなあ。
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伊藤計劃に影響を受けた作家たちによる書き下ろしアンソロジーをようやく読了。
8人の作家が設定が被ることのない話を各々展開していて、読み応えは抜群。
一部「ん?これはSFなのか…?」と首を捻ったものもあるが、なるほど、読み終えると確かにSFか、となる感じ。
8作品の中で好きなのは『ノット・ワンダフル・ワールズ』『フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪』
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※暴力及び流血描写、性表現の含まれる作品です。
【印象】
たっぷりどっぷり自由に集まった。
4、6-7編目に惹かれます。都市や『屍者たちの帝国』に関連しているため。
【類別】
小説、短編集。
SFやファンタジー、ユートピア/ディストピア等の要素。
【構成等】
全8編収録。各編平均90頁ほど。
【表現】
地の文は様々であり、また、専門知識は不要です。
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今は亡き伊藤計劃。
彼に贈る儚さに満ちた物語。
サイコパスまんまだなぁ、とか、ブレードランナーだなぁ、とか、ディックだなぁ、とか。
藤井さんのゲームの大元が、っていうのは実際ありそうだなー、とか。
殆どが、血にまみれ肉にまみれ、痛々しい箇所もありますがそれもご愛嬌。