単純なハッピーエンドではありません
2019/02/05 10:52
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投稿者:ぱぴぷ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「カミサマ」を信じる人は、ときに怖い。最終的には、未解決なこともいくつかありますが、これ以上の結末を求めるのも難しいよなぁと思いました。
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投稿者:ブラウン - この投稿者のレビュー一覧を見る
怒りには正否がある。衝動的な怒りに己を任せてしまうと、無差別的に牙を剥く怪物と化し、対して、向けるべき矛先を知る怒りは、また諍いの種になりかねない扱いの難しいものだが、正しく振るえば人を救い得る糸口にもなるだろう。
命には血が通っている。誰しも同じ血が通っていて、各々のバックボーンさえなければ、普通に触れ合えるのかもしれない。しかし、我々は出自から離れることはできても、逃れることはできない。だからこそ、相互に抱えた実情へメスを入れ、また己の古傷を開くかのような痛々しいコミュニケーションを交わし、かつそのような痛みを顧みない信頼を寄せた吐露を汲むことが肝要だ。もしそれを忘れて、人を、自分自身を、盤上の駒のように動かそうものなら、恐ろしい食い違いが生まれてしまう。
前者はアスラとバルサの対比、後者はシハナ一派、あるいは肩書と出自のロールプレイに縛られた人々と、それ以外の人々との対比となって、強烈なメッセージとなって迫って来る。神の守り人は、作者が人間感情へ向けた眼差し、そのつぶさな観察によって紡がれた物語だった。
一方で、異界と現世の関係が、やはりこれまでの守り人シリーズと比べると異様だ。
これまでの物語は、異界と現世の狭間にある生態系が、登場人物を巻き込んだ大事件に発展するという筋書きで進んでいたのだが、この神の守り人では、異界の存在が「喉から手が出るほど欲しくなるスゴい魔法」くらいの陳腐さで、はっきり言って格が下がってしまっている。人間の意思とは無関係に「そういう営み」を送る異界の存在とは違う、人間のみにとっての禁忌の力の側面が押し出されており、シリーズで積み重ねてきた魅力が半減しているのが心残りだった。
一応、ほろ苦い結末の中に、今後の布石らしき匂いが漂っている分、最終的な評価を下すにはまだ判断材料が足りないというのが実情なのだが、やはりタイトルごとに綺麗にまとまっていたシリーズだけに、落胆の色がどうしても濃くなってしまう。
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自分の幼い頃を思い出しアスラとチキラの二人を守るバルサ。上下巻になり、ボリュームも増えた分物語の見所も多いです。
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守り人シリーズ4作目下巻。このシリーズが持つ力と深さに、本当に感服しました。単にハッピーエンドではなくて、でもすごい。アスラのこの後も気になります。児童書と一言で言ってしまうのはもったいなさ過ぎる!
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バルサとタンダにはまだまだイライラ!?させられます(笑)
でも、話が進みだしたらとまらない!!
次へ次へとページをめくってしまいます。
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「だけど,まあ,あんたが,この娘を見殺しにできなかった気持ちは,わからないでもない。あんたも,孤児だったわけだしさ。似たような境遇の子を,ほっておけなかったわけだろう?あまいよねぇ,あんた。一見こわもてだけど,そういうところはさ……。」
アスラは,その言葉を聞いて,はっとした。ジグロという養い親がいたことは聞いていたから,そうではないかと思っていたけれど,やはりバルサも孤児だったのだ。
あまいといわれて,バルサは肩をすくめた、
「たしかにね。――でも,他人をあっさり見捨てるやつは,自分も他人からあっさり見捨てられるからね」
カイナがにやっとわらった。
「名言だね。」
(本文p102-103)
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子供向けの本ながら、大変よくできている。深い世界観は作者が文化人類学を学んできたせいだろうなと思いました。押しつけがましくない母性を感じさせる点もよいかな。
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前回のお話の続きで。アスラという少女が危険に追い込まれるとき、どこからともなく風がふいて神が降りてきて人を殺してしまう。下巻は離れ離れにされていた兄チキサにやっと会えるが、そこはロタ王国で、シハナのわなにまんまと嵌められてしまう。その罠とはタルの民は隠れるように暮らしていかなければならない!それに納得できないシハナとイアヌは命をかけての大勝負に出る、アスラにカミサマが宿るように・・・アスラはまんまとその罠に嵌ってしまい最後は意識はあるものの目覚めなくなってしまった。この話はこれで7巻まできているけれど本当に面白い。児童書とは思えないほどの内容となっているのが凄くよい!!
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はー…
シハナのことを、そんなに嫌いではないな。
不満を漏らすばかりの男たちにとは違い
自分から行動に出たわけだし。
守り人シリーズの女は、強い。
人を殺すのはいけないことだと口に出すのは簡単だけど
アスラの決断は、なかなかできるものではない。
正しいってなんなのか、分からない。
タンダとバルサは早く付き合っちゃえばいいと思う。
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逃走、隠し子、神との闘い
神の守り人 完結編
神様を抱えたアスラちゃんはどんな結末を迎えるのか?
異世界ファンタジーなのに、違和感なく物語りに入っていけます。
こういうファンタジーは珍しい。
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神の守り人の下巻です。
物語はなんだか、ちょっと不完全燃焼かな、という感じ。
あんまりめでたしめでたし、ではないですね。
確かにタルハマヤに関する出来事は、一応の解決を迎えているわけですが、ロタ内部のごたごたはこれからもっと悪化する気がします。王の手腕が試されますね。
うっかりすると内乱になるんじゃないかな、という感じ。
シハナもどこかに行方眩ませてますしね。今までの巻は、続きが出なくてもまぁおかしくは無い感じはしていたのですが、今回は続きを出すぞ、というのが見えますね。
ちょっと後味の悪い終わり方だったなぁ、というのが感想です。
読みやすいんですけどね。
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この物語を読み進めているとき、KiKi の心にはずっとある出来事が去来していました。 それは「9・11同時多発テロ事件」でした。 そして読了して、あとがきを読んだとき、この物語があの事件の1ヶ月前には書き上げられていたことを知り、著者上橋さんの心に浮かんだ物語と呼応するかのようにあの事件が発生したかのようなタイミングの妙に舌を巻きました。 とても残念なことに現実の世の中で発生したあの事件では「アスラ」のように「最終破壊兵器」を封印してしまえる勇気と胆力を持つ本当の意味で賢い人間はあらわれなかったけれど、この物語でははかなく幼い少女がそれをやってのけました。 深い物語だなぁと思います。
(全文はブログにて)
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(2015年1月12日 再読)
「ホビット」の完結作を見に行かねばと思って、1,2作目を見直しているのだけど、なんだかちょっと「ホビット」や「ロード・オブ・ザ・リング」と重なるところのあるお話だよね。
恐ろしい神力を得た少女アスラめぐって、様々な追手から逃れ、罠にかけられ、それでもタルハマヤに魅入り蝕まれていくアスラを救おうとするバルサ。
ずっと息苦しくて、心が重く沈むようなお話ですが、きっとアスラはマーサの下で一生懸命生きていってくれると思います。
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悪役が悪役っぽくない。国の為を思ってということろが感慨深いわ。色々な視点で考える人がいるってことですよね。
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2011年5月25日読了
なんというか、例えるなら狂神的というべきなシハナの行動。
帰還編になって狂気にも似た姿を現して、彼女暗躍する。おそらく、スファルの考える通り、シハナは自分のしていることを遊戯程度にしか思ってないのかもしれない。自分の意のままに相手が動くことを楽しんでいるだけなのかも。そう考えると、情がないシハナはバルサにとって非常に強敵だったわけで、崖から落ちた時はハラハラしました(;一_一)
タンダと再会した後のバルサは怪我を負っていたのもあるけど、どこか弱い女性の面を出していたなーと思いました。勿論、アスラのこともあるけれど、やはりタンダの存在はバルサにとってとても大きいものなんだと思いました。きっと、彼女の帰る場所はタンダの元なんでしょう。
アスラは最後、ようやく自分の行ったことに気付き、向き合い、そしてバルサやチキサの言葉を思い出して神と決別する。とても短い時間だけれども、彼女の決意と行動は並大抵のことではないなと思った。
終章、花の揺れる場所でバルサとチキサとアスラが3人で風に吹かれているシーンは印象的。きっと、最後の2行はアスラの心情なんじゃないかなと思う。
彼女が早く目覚めて、彼女らしさを取り戻せればいいな…。