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投稿者:タヌキネコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ギフト」は選べないところから、物語が生まれます。特に大人になる年頃でのその葛藤が、読んでいて身に染みました。いまその年頃でその渦中にいるひとにはきついでしょうか。共感するでしょうか。
運よく独り立ちして、遠く離れたところで暮らしていると、とてもしみじみしました。
アメリカのSF作家による3部作ファンタジーの始まりです!
2020/05/22 10:47
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、アメリカのSF作家ル・グウィン氏の「西のはての年代記」3部作長編小説です。同書『ギフト』がシリーズ第1巻、その後『ヴォイス』、『パワー』と続いていきます。同書の内容は、様々な超常の力「ギフト」を持つ人々の生活する高地に、一人の低地出身の風来坊が訪れるところから物語は始まります。ギフトを発揮できずに劣等感を抱いていた少年は、ひょんなことからその力の過剰な顕現により、封印のために目を閉じられてしまいます。そして近隣の違う「ギフト」を持つ村の長の孫娘との政略結婚の話が持ちかけられるのです。「ギフト」の言葉の意味が深く、また、少年の葛藤と成長が描かれているという点からも読みごたえは十分です。ル・グウィン氏のファンタージ―超大作の始まりです!
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西のはての高地に暮らすオレック
ギフト(特殊な能力)を持つ一族の領主の跡継ぎである彼に、その能力はあるのかどうか
強すぎる力を持つと思わされただけなのか
誰でも人と違う能力があると思う。強弱は別にしてね。
それをどう生かしていくか、難しいところだと思う。
グライと共に明るい未来に暮らせるといいね
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ゲド戦記以来、何年経ったのかわからないけど、ひさびさにル=グウィンの新作が児童書コーナーに並んでいるのを見つけたときは興奮した。
「早く文庫になれ」と念じてたら、文庫になったので、さっそく購入。
既存の価値観に立ち向かうル=グウィン。ゲド戦記は、海と島に、黒い肌の人々たちが暮らす世界だった。今回は、「西の果て」が舞台。
これはヨーロッパがモチーフかなあ。
『ギフト』では、西の果てのなかでも、「高地」という貧しい場所が舞台になっている。海と島ではなく、陸地を舞台に選びながらも、やはり「辺境」を感じさせる物語は、ル=グウィンだなあと思う。
「低地」の人々が半ば伝説に「魔法使いの住むところ」と言う「高地」で、魔法ならぬ『ギフト』を操る人々の物語。
しかし、ギフトを描く物語でありながら、そのギフトが発揮される場面は少なく、そして、最後まで決定的に重要な役目は果たさない。
それでも、緊迫した物語の展開に、一気に読めてしまう。
このあたりは、まことに名手の筆。
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ハイ・ファンタジー。
三部作です。ギフト、ヴォイス、パワー。ハードカバーでどうだったか確認してませんが、購入した河出文庫版では、パワーだけ上下巻になっていて、合計4冊。
まさにこういうファンタジーを読みたかったのだ、という異世界ファンタジーでした。生きているうちに出会えたことを感謝したい。ル・グウィンはゲド戦記から入って、SF作品を中心に読みすすめてきましたが、この作品がまちがいなくいちばん好きです。
第一部は、西のはての高地を舞台にはじまります。その辺境の地に住む人々がもつ特別な魔法、「ギフト」。誰でもそれがつかえるわけではなくて、その力を持った人々が、そうでない人々を農奴として抱えて、貧しい土地で暮らしている。
その中でも、とりわけ恐ろしいギフトをもった一族に、主人公は生まれる。一人息子である彼は、父親から受け継いだはずのギフトを、なかなか発現させることができず、その期待にこたえられないことに悩んでいた。だがある日、恐ろしい形でそれは発現し、彼は自分の制御できない力に怯えて暮らすことになる……
第二部以降は主人公を変えつつ(第一部の主人公も重要なキーパーソンとして登場しますが)、それぞれの目を通して、ひとつの世界が描かれている。その世界と、そこに暮らす人々の、血の通っていることといったら! 魔法や風土や、文化や歴史や信仰が、人々の生活に密着して活き活きと描かれて、なおかつそれが、壮大で魅力的なストーリーと絡み合っている。
異世界ファンタジーがお好きな方で、もし未読の方がいらっしゃったら、ぜひとも読んでいただきたいシリーズです。
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「ゲド戦記」以降久々に読み応えあるファンタジーに仕上がってると思う。
「ギフト」に翻弄されるオレックが自らの力を封じるために目隠しをしつつ、それでも冷静な判断と精神的な成長を果たしていくのは読んでてすごく引きこまれた。翻訳もそんなに気にならず、細かい表現部分で却って原書を読みたい気がした
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盛り上がれファンタジーな感じ(?)の話かと思って読み始めたらば、淡々と進むストーリーだった。ジブリの絵で脳内再生されるのは、ゲド戦記のせいか。
(鴨川の図書館)
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ル=グウィンといえばゲド戦記だろうけれど、「ギフト」シリーズも好きです。
「ギフト」と呼ばれる能力を受け継ぐ領主が治める世界。
主人公の少年オレックは領主の跡継ぎでありながら、その能力がなく……。
ル=グウィンの描写にはいつも圧倒されます。
私たちの前に見せてくれる物語の世界もそこに息づく人間も、力強さと確かさを持って現れてきて、引き込まれてしまいます。
自分の存在に苦悩するオレックの幼馴染みの少女グライが、とてもいいキャラクター。彼女の強さに救われるのはオレックだけでなくて読者もそうなんじゃないかと。
物語の世界に酔いたい方にとてもおすすめです。
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子どもの頃から
ハイファンタジーをあまり好まなかったので、
児童書の中で、1番、腰の上がらないジャンル。
読もうと思ってから、数年経過し・・・
ようやく手に取りました。
前半の回想部分(というか、すべて回想なのだけど)の、
部族の名前やら、その力やら、地名やらが、頭に入らず、進まず、
こんなに読解力なかったっけ?と思いながら、
読むのをやめなかったのは、ひとえに、ル・グウィンへの信頼ゆえ。
そうこうしているうちに、半分も過ぎた頃には、
いつのまにか、ひきこまれ、大きな満足とともに、読み終えました。
さすが。
もうちょっと、わかりやすい地図とか
登場部族の説明とかが、巻頭にあればなあ・・・
次もおもしろいことはわかっているので、
読みたいのだけど、いったん腰をおろしてしまうと、
また、なかなか上がりません。
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「ゲド戦記」以来のル=グウィン作品。
彼女は心に闇を抱えた少年を描くのが上手いなぁと思う。ゲドもそうだけど、この本の主人公オレックもまたそんな少年の一人で、家族との関係とか、幼馴染との関係とか、いろいろ自分に関わる人との中で闇を抱えざるを得ない状況になっていく姿が痛々しいながらもそっと後ろから応援したくなるような気持ちになった。
このオレックと幼馴染のグライがどうなるのか、気になります。
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静かで示唆的なお話。自然環境の厳しい高地に住み続け、長(ブランター)の家族に代々受け継がれる異能(ギフト)をもって一族を治める人々は、低地の町で暮らす人たちからは魔法使いと恐れられています。ギフトはその部族ごとに様々な働きをし、父から息子へ、母から娘へと伝わり、部族同士の相性により強く伝わったり弱まったり。これは低地の娘を娶った長の息子、オレックの物語。一族が持つ「もどし」のギフトはその命が無かったことにしてしまう破壊の力。オレックの幼なじみの少女グライがとても魅力的でした。ゲド戦記と同じく、繰り返し何度読んでも面白いと思います。
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ル=グウィンのファンタジーを読むのは「ゲド戦記」以来。大学時代、同じアパートの先輩に薦められて読み、自分のそれまでの価値観を変えてしまう程の衝撃を受けた。その時と同じような強い衝撃を受けることはなかったが、懐かしい読後感に浸ることができた。ハリーポッターシリーズのような勧善懲悪の図式のストーリーとは異なり、噛めば噛むほど味わい深い、甘みのある白米のような味わい?続編も読むべし。
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ゲド戦記作者による晩年作。やはり翻訳ファンタジーは語り口が微妙にとっつきにくい。そしてファンタジーのわりにはひどく地味だった。地味さに疲れた。それでもなぜか面白かった。不思議だ。首を捻りながらも3部作一気に読んでしまった。
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西のはての年代記Ⅰ~北の高地のブランターに伝わっている不思議な能力はギフトと云うが,低地の人々は魔法使いだと思っている。カスプロ家に父から息子に伝わるギフトは「もどし」だ。父カノックはこのギフトで低地から妻であるメルを得て,オノックが生まれたが,オノックにはギフトの兆しが見られない。父との訓練,母との読み書きの学習をしている内に,隣国を併呑したオッゲは「すりへらし」のギフトを振るった。親密な隣国「ナイフ」のギフトを持つターノックと「呼びかけ」のギフトを持つパーンの間にはオノックと同じ年のメルがいるが,「呼び掛け」のギフトをメルは動物たちとの繋がりを付けるために使いたく,母のように狩りに使いたくはない。父が蝮に襲われそうになるのを見て左手を挙げた途端に弾けたのを見てオノックは思いがけずギフトを振るったらしい。意志を持っても現れず,恐怖や怒りで発現するのか。メルから貰い受けた犬が乗馬を邪魔した時にも現れ,トネリコを見た後で見つめた蟻塚をもどそうとして,一帯を混沌に戻してしまい,荒ぶるギフトを持つと恐ろしいと考えたオノックは父と相談の上,眼の力を封じるために目隠しをして過ごす決断を行う。噂は噂を呼び近隣にも聞こえるようになったが,母が物語を字を連ねて書に残す作業では,自分の新たな物語を紡ぐ力,言葉を操って詩を著す力を知った。オッゲの孫娘との縁談が出てくるドラムマントへの訪問で,オノックは散々弄られ,母は恐れられ,オッゲによってすり減らされたらしい。赤ん坊を流してしまったメルは徐々に命をすり減らして1年1日後に痩せ細って死んでしまった。その姿は母の願いによって一目だけオノックは見ることができた。荒ぶるギフトでオッゲに対し仇を討ちたい気もするが,そもそも自分が父から一族のギフトを受け継いだか否かも定かではない。母が遺した本を読みたくて,母の寝室から持ち出した本を夜明けの淡い光の中で見ても何も発現せず,盲導犬としてグライから貰ったコーリーを見ても何も起こらなかった。グライとの会話から,荒ぶるギフトが出現した時には必ず父が後方に控えていたことを思い出し,オッゲがロッドマントに略奪に来るという噂に助太刀に出る時,オノックは目隠しを外した。父はオッゲの配下の放った大弓の矢に倒れたが,オッゲとその跡取りを戻していた。役立たずのギフトを持っていても何も起こらないと考えたオノックとグライは低地に移ることを決断した~カリフォルニア在住だが本はイギリスから出いていて著者の名はフランス風。怪しさが漂うが,テイストは矢張りイングランド風。西の果ての北方だからスコットランド的かというとそうではなく,ドルイドや魔法使いが出て来るノルマンが来る前のケルト的雰囲気が漂う。要らない知識がある所為で素直に読めないが,ヤングアダルトには受け入れやすいのだろうか? 二冊目のヴォイスも読んでみましょう
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葛藤、試行、対決、触れ合い、悲しみ、悼み。一人の青年の中に嵐が吹き荒れる。それはまさに思春期か。最終盤の引き込みは凄かった。グライがとびきり魅力的だ。