- 販売開始日: 2017/04/30
- 出版社: 早川書房
- ISBN:978-4-15-010672-0
ニューロマンサー
著者 ウィリアム・ギブスン , 黒丸 尚
〔ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞〕ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送って...
ニューロマンサー
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商品説明
〔ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞〕ハイテクと汚濁の都、千葉シティの空の下、コンピュータ・ネットワークの織りなす電脳空間を飛翔できた頃に思いを馳せ、ケイスは空虚な日々を送っていた。今のケイスはコンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だがその能力再生を代償に、ヤバい仕事の話が舞いこんできた。依頼を受けたケイスは、電脳未来の暗黒面へと引きこまれていくが……華麗かつ電撃的文体を駆使して放つ衝撃のサイバーパンクSF!
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きれいな小説
2002/02/21 01:01
12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊藤計劃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テクノロジーが、政治とかエリートとかのてっぺんだけじゃなくて、どぶ底レベルの人間から変えてゆく。そういう認識を、コンピュータが生み出す人間の新たな認識の地平とからめて描き出した…というインパクト、いわば「最初にやったもん勝ち」の衝撃を取り払ってみれば(それもかっちょよくて凄いことなんだけど)、この小説に残るのは「場所」の印象、静かにまぶたに残る空間の雰囲気、だったりする。
冒頭のチバシティこそごちゃごちゃしてて猥雑だけど、あとはイスタンブールのエキゾチックな感じ、空港ターミナルのあの雰囲気、人気のない高級リゾートの、塵一つない奇妙な清潔さ、熱心に清掃された漆喰の廃虚のような無人空間、がらんとしたプール。そんな「場所」と、奇妙に歪んだドアとかグロテスクなホログラムとかの「オブジェ」が現代美術のような「妙な感じ」を残す。
思えば、サイバースペースにしてもこうした「場所」の印象たちの一つにつらなるものとしての役割が大きかったのかもしれない。
ぼくにとってこの本は、猥雑でブレラン的なチバシティのステロタイプなイメージよりも、リゾートやお城のがらんとした廃虚感に身をゆだねる(バラードの風景の乾いた心地よさに近い)「きれいな小説」だ。
サイバーパンクに大きな影響を与えた作品
2015/08/08 00:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
冒頭の多民族あふれる都市になった「チバシティ」の描写は圧巻。
未来を想像させる作品としては一級品、この作品は後続の作品群に大きな影響を与えたといえる。21世紀の今から見ると、多少は古い描写が多いが、それでも色あせていない。
元祖サイバーパンク
2001/08/05 13:31
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねも - この投稿者のレビュー一覧を見る
サイバーパンクの名を世に知らしめた傑作。汚濁の近未来社会を舞台に、情報戦が展開する。人間と機械の共生を新たな視点で提示し、諸方面に影響を与えた。
21世紀を先取りした新世代SF
2010/01/02 15:53
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
<電脳空間>(Cyber Space)。それは特殊な電極(trode;electrodeの略)を使って脳の神経(neuroニューロ)とコンピュータ端末(deck)を接続し、世界を覆い尽くしたコンピュータ・ネットワークの全データ、そして全プログラムを頭の中で視覚的・感覚的に再構成した仮想現実。だが、その幻想世界は電子的には実在し、それを構成するデータは現実世界を動かす力を持つ。
いわば<電脳空間>は現実世界とパラレルに存在する情報宇宙なのである。そして、デッキを介して意識をマトリックス(matrix)世界に没入(junk in)し、ウイルス・ソフトを使って企業の侵入対抗電子機器(Invasion ounter Electric=ICE)を破ってデータを盗むハッカーたち、それがコンピュータ・カウボーイだ。サイバネティック・テクノロジーによって不死性を獲得した最大最強の同族企業、テスィエ=アンシュプール(T=A)。そしてT=Aが生み出した、自らの意志を持つ高度のAI・ウィンーミュート (WINTERMUTE)の蠢動。電脳世界に張り巡らされた陰謀。次々と現れる謎と裏切り。人間とテクノロジーが融合し、国境を超越したグローバル企業が地球を覆う灰色の世界で、一流カウボーイ、ケイスの冒険が始まる。
痺れる設定。壮大な世界観。華麗なイメージの氾濫。電撃的な文体。ジェットコースターのような急展開。サスペンスフルなストーリー。黄金時代のSFロマンを現代に甦らせた「ニュー・ロマンス」。
そして何よりも、SF界に「サイバーパンク」という新しいジャンルを開拓した記念碑的作品であり、1980年代を代表するSF。本作なくして『攻殻機動隊』や『マトリックス』は生まれなかった。今日の無機質で無国籍で刹那的で猥雑で得体の知れないネット社会、虚無感と絶望が漂う格差社会を予見した内容には脱帽。
超空間えんずい斬り!
2005/11/09 15:40
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tujigiri - この投稿者のレビュー一覧を見る
ぐわあ〜。
わけわかんねえ!
でもスゴイ……。
電脳空間に没入(ジャックイン)し、氷(アイス)と呼ばれるセキュリティブロックをかいくぐって自由自在にハッキング行為を行う「カウボーイ」、ケイス。
かつてその稼業でヘタをうち、電脳空間にアクセスする能力を封じられて、混沌の悪徳都市チバシティーの片隅でボロクズ同然の暮らしを送っていた彼は、ある日突然えたいのしれぬアミテージという男にとらえられ、能力回復の手術を受けさせられる。
ただし回復は一時的なものであり、アミテージに従ってある任務を果たさなければ再び路地裏の惨めな生活に戻らねばならなくなるという。
やむなくアミテージの組んだパーティに加わったケイスは、同様の方法で集められた仲間とともに、電脳世界のタブー領域に深入りするハメになる。
ケイスとは反対に現実空間での工作活動を担当する凄腕の女戦闘員モリィや、空間に幻影を出現させる能力をもつリヴィエラ、月世界で独自の進化を遂げたザイオン人のコンビなど、いずれも超一流のエージェントたちが入れ替わり立ち代り登場し、ケイスはケイスで脳死につぐ脳死を繰り返しながら、背後からすべてを動かすハイパーAI・冬寂(ウィンター・ミュート)の干渉のもと、誰ひとり真の目的を告げられぬ任務はめまぐるしく進行していく。
はたして、ケイスらを駆り立てる謎の組織の正体は? 電脳空間の奥底に眠る秘密とは?
超文体で炸裂する、元祖サイバーパンク小説。
こいつはSF界のウィリアム・バロウズだな。バロウズ「裸のランチ」もわけのわからないカオス世界を描いていたけれど、この小説もかなり難解。説明なしにオリジナルな単語や表現が続出するため、文意はなんとなくのニュアンスで把握するほかなく、小説の雰囲気を再現するのは非常に難しい。
が、独自の世界観が完璧に確立されているために妙にイメージ力を喚起するところがあって、少し慣れてくるとスリリングな読書感覚を味わうことができる。
とはいえ、あまりのドライブ感にきちんと話の筋を追えていたのかイマひとつ自信を持つことができず、解説まで読んではじめて大きな誤読はなかったと知り、ホッとした。
なんというか、明治時代の人間に携帯電話の概念を説明してもほとんど理解できないように、20世紀生まれにはこの小説の示す未来性に脳内処理が追いつかないのだろう。
整然とした理解は及ばないが、なぜか読み進められてしまう。
それもSF小説の醍醐味のひとつだろうと思う。
あの頃の未来は今の現実になりつつある
2011/05/22 19:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木の葉燃朗 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィリアム・ギブスンの第一長編であり、「サイバーパンク」というSFのジャンルの始まりと言われている作品。実は数年前に最初の数十ページを読んで、難しさに挫折した。今回も難しさは感じたが、通読できたし面白さも感じた。
難しいと感じた理由は、ひとつは用語が独特なこと。造語も多いし(タイトルからしてそうだ!)、漢字に読み仮名ではないルビがふってあったりもする。また、場面転換や人物の登場も唐突で、気が付くと別のシーンになっていたりもする。
しかし、そういうものだと思って、映像を見るような感覚で読んでいけば、内容は理解できるようになっているし、面白さを感じることができる。印象的だったのは、この作品が書かれたのが1984年だということ。この時点で、コンピュータのネットワークを仮想世界として描いている。イメージとしては、インターネットなどのネットワークが、すべてネットゲームや「セカンドライフ」のような世界として立体化されているようなもの。その世界で、「カウボーイ」と呼ばれるハッカー(クラッカー)たちがデータを盗み、データを守ろうと攻防する。今ならその世界観は現実とつながる部分もある。序盤のヤマ場のひとつ、センス/ネット社の襲撃におけるパニック発生のさせ方などは、リアリティがある。しかし、インターネットどころかパソコン通信もまだ普及率が低かった当時としては、未来の出来事という感じだったろう。逆に言えば、『ニューロマンサー』の世界は執筆当時の未来(つまり現在)を予見していたということになる。その想像力は興味深い。