以下、無用のことながら
著者 司馬遼太郎
「新春漫語」「綿菓子」「古本の街のいまむかし」「学生時代の私の読書」といった身辺雑記から「自作発見『竜馬がゆく』」「『翔ぶが如く』について」自作について、「文化と文明につ...
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商品説明
「新春漫語」「綿菓子」「古本の街のいまむかし」「学生時代の私の読書」といった身辺雑記から「自作発見『竜馬がゆく』」「『翔ぶが如く』について」自作について、「文化と文明について」「日韓断想」「バスクへの尽きぬ回想」といった地域、歴史への想いなど、折りにふれて書かれた、厖大な量のエッセイから厳選した七十一編。森羅万象への深い知見、序文や跋文に光るユーモアとエスプリ、弔文に流れだす、人間存在へのあるれるような愛情と尊敬――。日本人の高潔さと美しさを見つめた視線の先には何があったのか。司馬遼太郎という作家の豊穣な世界に、あらためて酔う一冊。
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それなりに
2020/09/30 16:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:井沢ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
エッセイ短編集。うちわの話やその当時の話などでよくわからないこともあったが、推測しながら読んだ。主に著者の晩年のエッセイが多い。正岡子規がやたら好きなことが印象に残っている。
読書からえたものは生涯の伴侶
2004/07/21 01:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
司馬遼太郎の膨大なエッセイから厳選した七十一篇。
その中でも「学生時代の私の読書」は司馬遼太郎の原点でもあり、氏自ら読者諸兄に
「何を読むべきか、どう読むべきか」の提言がなされていておおいに参考になった。
先ずは司馬さんの読書歴はと言うと、
中学の頃は徳富蘆花全集、漱石、鴎外、正岡子規などを読み、小説、随筆を読む楽しみ以上に、「明治人の心」というものを身近なものとしたようだ。
ここで司馬さんは「是非,諸兄に伝えたい」と特筆,提言する。
それは「明治文学をぜひお読みなさい。江戸中期から明治時代というのは世界史の中でも、めずらしい精神がぎっしり詰まった時代です。江戸期といういわば教養時代が、酒で言えば蒸留されて、度数の高い蒸留酒になったのが、明治の心というべきものです。諸君は異国の文学でも読むような気持ちで読んでゆくとよい。きっと発見があります。それを生涯の伴侶になさるとよいと思います」とある。
また兵役時代は、死を覚悟し『歎異抄』を音読。
ここでまた氏は提言する。
「日本の古典や中国の古典は音読すべし。音読すると、行間のひびきが伝わってきます。自分の日本語の文章力を鍛える上でも実に良い方法です」とこれまた懇切丁寧。
軍に入っては『万葉集』を繰り返し読み、「いはばしるたるみのうへのさわらびのもえいづるはるになりにけるかも」は、「死に直面した時期に、心をつねに拭き取る役目をしてくれた」と述懐するに及んで、文学、読書が精神の浄化の役目を為し、支えでもあり、まさに生涯の伴侶というべきものであったと言えよう。
末尾の解説に「文を書く上で気を使っていることは何か」という質問に
「一台の荷車には一個だけ荷物を」という答えがあった。センテンスを荷車に例え、関係代名詞を持たない日本語の不自由さも、この訓練によって道をひらくべしと啓蒙している。
人間にたいしてあふれる愛情とユーモア、卓見に満ちた司馬さんの世界も、こうしたたゆまぬ素地があったればこそと感嘆と畏怖の念を抱く読後感であった。
(エッセイ「学生時代の私の読書」初出:「読書のいずみ」第三十号,1987年3月刊)