- 販売開始日: 2017/12/15
- 出版社: 集英社
- レーベル: 集英社インターナショナル
- ISBN:978-4-7976-8015-7
戦争と農業(インターナショナル新書)
著者 藤原辰史
農作業を効率的にしたい。その思いが二十世紀の農業技術を飛躍的に発展させ、同時に、その技術が戦争のあり方をも変えた。トラクターは戦車に、化学肥料は火薬になった。逆に毒ガスは...
戦争と農業(インターナショナル新書)
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商品説明
農作業を効率的にしたい。その思いが二十世紀の農業技術を飛躍的に発展させ、同時に、その技術が戦争のあり方をも変えた。トラクターは戦車に、化学肥料は火薬になった。逆に毒ガスは平和利用の名のもと、農薬に転用される。本来人間の食を豊かにするはずのテクノロジーの発展が、現実には人々の争いを加速させ、飽食と飢餓が共存する世界をつくった。この不条理な状況を変えるために、わたしたちにできることを考える。
目次
- はじめに/第一講 農業の技術から見た二十世紀/第二講 暴力の技術から見た二十世紀/第三講 飢餓から二十世紀の政治を問う/第四講 食の終焉/第五講 食と農業の再定義に向けて/第六講 講義のまとめと展望/おわりに/主要参考文献
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なるほど
2017/11/29 22:49
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
牧歌的なイメージの農業と、野蛮な戦争。この二つが、決して無縁ではないという視点に納得させられました。
技術の発展は、実は農業と戦争を通底していた!驚きの良書です!
2017/12/16 09:34
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、20世紀の技術開発の進展によって農業効率性が高まり、生産性が飛躍的に上昇したが、実はそのことは戦争の在り方を根本的に変えるという、私たちに脅威を与えるものとなっていたという驚きの新事実を語った書です。トラクターが戦車に変わり、化学肥料が火薬に変わり、そして毒ガスが農薬に変わったのです。私たちの生活を安定させるための農業が、他方で世界中で飢餓や貧困の原因になっているという皮肉な状況に、私たちは今後、どのように立ち向かえばよのか、を再検討しようと試みた類書を見ない画期的な書と言えるでしょう。
幸福とはどういうことだろうか
2017/11/10 19:47
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の本を読むのは初めてである。戦争と農業という題名に引かれて一読する。あとがきにあるように食べものや農業の歴史をめぐって某所で話した内容を五つの講義に構成し直したものだそうだ。2章と3章のところで農業技術が戦争兵器に活用された話が述べられている。が、全体としては食、農業の歴史を辿りながら、現状の食べものや食のあり方に疑問を呈し、「遅効性が即効性に先立つ仕組みこそが生きやすい仕組みではないか」と強調する。仕組みとあるように個々人の生き方や感性等に留まらず、人間社会全体の理念として提示して述べている。「食べもの」と「食べること」を通じて、新しい学問の居場所を考えてみたいということが著者の願いだそうだ。
人類の発展進歩の礎となった農業、農業技術に翻弄されてしまう時代になり、食を楽しむことや生き生きと暮らすことも出来なくなっている。20世紀を振り返ればその酷さの極みが戦争であったし、現代の企業活動の根源は同類項ではないか。人間とは何か、社会とは何かを改めて考えさせられる1冊である。
主張を分かりやすくするために、書名についてはもうちょっと工夫の余地があるように思う。
前半と後半の内容の乖離
2018/02/09 09:56
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
途中からトラクターの世界史のネタを出し尽くしたのか、主張したいことがほとばしったのか、タイトルと乖離した内容になってしまった。確かにご説ごもっともだが、このテーマで購読した読者にたいしてフェアでない気がする。
著者の意見には賛同するんだけど、タイトルと内容にずれがあるような...
2021/05/22 23:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:忍 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一講が面白く、現代の農業技術が戦争の技術にもつながっているという指摘で、書名に沿った内容になっているのですが、それ以降の内容は書名とは少しずれていき、著者の主張を補足するために、他の書籍からの引用が提示されるという形式になっています。このため、個人的な意見に対してお墨付きを与えるように見せかけているだけではないか、と感じてしまいました。
それでも著者の言わんとするところにはうなずけるところが多々あります。人間が生存していくのに最も重要な「食」のために、戦争が起こり、そのために技術が発達、そこから派生した技術によって農業の形態も変わっていく。それにより「食」を生産する農業が経済社会に取り込まれて、産業化・工業化していく。その結果、「食」を消費するところまで、産業化・工業化されて、効率という指標で評価されるようになっている。
ただ、それではどうすればよいのか?、についてはまだ考えているところ、という感じで、結論がありません。もともとが、いろんな講演として発表した内容を、書籍にするために文章化したもののようで、そのために章のつながりが悪くなっているようです。そのあたりの事情が冒頭に書かれてれば、もう少し納得もできたのですが...