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ふとしたことで戸籍の無い人が居ることを知りこの本を購入した。
全く意識したことがないことで予想外の驚きだった。
ドキュメンタリーだけに事実の表面をすくい取ったりオブラートをかけたりしながら書いたのだろうと苦衷がしのばれる一作だろう。文章が上手。
後半は著者の政治家としてのPRめいた部分が多くて少しひいた。
が、戸籍や住民票を取得する手段や役所の窓口係の無知や横柄ぶりが書かれているのは勉強になった。
もし、無戸籍の人に出会ったらこの本を教えてあげたいと思う。
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自分の周りに無戸籍の人はいない。幼馴染みにも、学生時代の友人にも、職場にも。なぜ断言できるかと言うと、戸籍のない人は小学校にも通えないし、働くにしてもマイナンバーカードとかの提出を求めない、雇用契約がしっかりしていないような職場でしか働けないから。まあまあ普通の人生をドロップアウトせずに歩いてきた自分には関わることのない世界だ。無戸籍の子どもは小学校行けないって時点で、ほぼ世間との関係を閉ざしてしまっているのと同じ。
だからこの本の中に書かれているような、戸籍のない人がいるなんてことは、レアケースなんでしょ?と思ってた。それが全然違った。いとも簡単に無戸籍になってしまうのだ。
そもそも著者が無戸籍に関心を持ったのも、自分の生まれたばかりの子どもが、無戸籍になってしまいそうになったからだ。
著者は再婚だ。前夫とは別居期間を経て調停が長引いたものの正式に離婚は成立する。その後、実際に生活をともにしている現夫と籍に入り、現夫との間の子を妊娠、出産した。離婚成立から265日後のことだった。
役所に出生届を出しに行くと、この子は現夫との間の子と認められない、民法上は前夫との間の子どもになるから、前夫の名前に書き直してもらわないとこれは受理できない、と断られる。
はぁ?
何それ?
民法772条に「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する」という、いわゆる「300日ルール」があることを著者は知る。この法律、明治にできて百数十年間変わってない。
この場合、生まれた子どもの戸籍を作るには、前夫が「嫡出否認」の訴えを起こすか、母子や実父が前夫に対して「親子関係不存在確認」の訴えを起こすしかない(2002年時)
どちらにしろ前夫の協力が不可欠である。
ちゃんと協力してくれる人も多いと思うが、例えば、DVが原因で離婚した人などは、居場所を知られることを恐れて、連絡をしない。そもそもDVから逃げたなら離婚が成立していない場合も多い。しかし、そんなことは考慮されず、出生届は上に上げた条件をクリアしないと受けてもらえない。
こうしていとも簡単に、無戸籍児が生まれてしまうのだ。
著者の経験によると役所の窓口の人も不勉強で、面倒臭いのか窓口をたらい回しにする。著者は政治家を目指しており、同じ政治塾出身の現職議員なども動かして、役所に圧力をかけるなどして、子どもが無戸籍になる事態を避けることはできたが、役所の冷たい対応に心身疲れて諦めてしまう人は多いだろう。
支援してくれる団体がないと、難しいと思う。
著者は念願かなって民主党の国会議員になり、さあやっとこれで無戸籍問題の解決に議員として取り組めるぞ、と勇んでいたら、時の民主党政権で小沢一郎が、一年生議員が地域の陳情をあっさり受けないようにとの配慮?で、そういった陳情を小沢一郎直轄にしてしまったため(無戸籍問題なんか取り組んだって票になんかならないため)取り上げてもらえないまま、政権交代してしまった。その後の改選で彼女も落選した。
じゃ、いまの政権に働きかけてみればいいとも思うが、同じような理由で取り上げないのか、はたまたNPOとかで動いたほうがやりやすいのか。
その後の活動を見てみると、後者のような気がする。
巻末に支援団体の連絡先が書いてあるので、こな問題で困っている人と接点を持つことがあってら、この本の存在を教えてあげたい。
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無戸籍の日本人が存在する。様々なケースがあるけれど、最も多いと思われ、かつ本書でも中心的に取り上げているのが、民放772条が妨げになるもの。DNA鑑定で親子関係が判明するこの時代にあってなお、離婚後300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するという「嫡出の推定」なんてことがまかり通っていて、そのために義務教育も受けられず、まともに世のなかで暮らしていけない人がいる。
著者も772条のせいで子どもが一時的に無戸籍の状態に陥った。その後、裁判を経てわが子は戸籍ができたけど、そのとき夫が自分たちのことが片づいたから手を引いてしまうのは「ずるい気がする」と言い、以来NPOを立ち上げるなどして無戸籍者の支援活動や政策提言を行っている。
著者は相手の立場に思いを寄せる気遣いと想像力があればと述べていて、そこに深くうなずけた。今の時代、四角四面で想像力をはたらかせず、その先を見ていない所業の何と多いことか。
この問題の解決法って、772条が改められることだろうか。いや、暫時的にはそうでもよりよい解決って戸籍がなくなることだろう。一人ひとりが生きている、存在する証が認められればいい。戸籍なんてものがあるから それこそ旧弊な体制でのうのうと生きていられる人たちの気遣いや想像力の欠如のために、この国では人扱いされない人たちがいる。
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社会ネタとしてのドキュメンタリーとしてでわなく、政治本としてカテゴライズされるだろう。かなり面白いテーマとリアリティある進め方なのに、政治の苦労話の部分だけやたらツマラナイ。
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久々のノンフィクション。
とても重く深いテーマを、読みやすい文章で
分かりやすく伝えてくれる一冊。
様々な理由で「戸籍がない」まま生きてきた人々の、
理不尽に苦労をせざるを得ない暮らしぶりに泣ける。
役所も政治家も「世間様」も、基本は「親が悪い」と。
だが、明治に制定された民法の規定が、
百年以上経った今も変わらず「生きている」異常さに、
気づかぬ(振りをしている)インサイダーの責任は重い。
著者は、自身の子供が一時期「無戸籍」になった経験から、
無戸籍者の「人生を取り戻す」手伝いを精力的に続ける。
その視線はあくまで優しく、「誰も悪者にしたくない」と。
一冊通してそのスタンスは変わらないので、
かなり悲惨な話でも何とか読み進められる。
いや、読みにくい文章だ、という話でもないし、
テーマが重すぎて疲れるという訳でもない。
不謹慎を承知で言えば、とても「興味深い」テーマ。
「こんな、まるで昭和の小説のような」と、
読中何度も思ってしまった。
だが、これが現実に起こっていることである。
諸般の事情により、無戸籍者は毎年何千人も
生まれ続けているのだ。
役所や政治家が、この問題に対して「後ろ向き」なのも
ある一面では分からなくもない。
「某国のスパイが、無戸籍者の振りをして申請し、
日本人として登録されてしまったら一大事だ」
という公安的な危惧もあるのだろう。
が、その問題は、分けて考えるべきだ。
日本人の子として日本で生まれ育ち、
「DV夫から逃げてきたが、離婚してもらえない」
などの理由で、出生届の出されない子供は増え続ける。
義務教育も受けず、保険もなく、住民票も取れない。
当然「真っ当な職」に就くわけにも行かず、
常に貧困と隣り合わせの暮らしを強いられる。
この状況は、容易に「犯罪」の魔の手に狙われる。
弱者を食い物にする輩に狙われることもあれば、
自身が「生きるため」に犯罪に手を染める者も。
すると、「無戸籍者 = 犯罪予備軍」みたいな
分かりやすいレッテルを貼られる悪循環。
もはやどこから手を付けて良いのか分からないほど、
問題はこんがらかっている。
幸い、もの凄くゆっくりではあるが、動きはある。
NHKが「クローズアップ現代」で取り上げ、
大きな反響を呼んだことも後押しして、
世間にも国会にも「無戸籍問題」は意識づけられた。
まだまだ先は長いが...歩みを止めるわけにはいかない。
著者と、そのお仲間の献身的な活動には
頭が下がるばかりである。
...で、「読み物」として純粋に評価すると...
正直な感想は「ちょっと長い」(^ ^;
もの凄く興味深い内容で、作者の熱意も伝わるが、
正直、後半ちょっとダレてくる...と言うか、飽きる(^ ^;
さらに尻上がりに「作者の自画自賛」が目につく(^ ^;
ような気がしてくる(^ ^;
作者と、登場人物たちの熱量は充分評価するが、
もうちょっと情報を取捨選択し、ブラッシュアップし、
この問題に明るくない読者でも、最後まで
緊張感をキープしながら読めるようになれば、
より大きい反響を呼べるのでは...と思いました(^ ^;
私は、「読書脳」の持久力が足らんかった(^ ^;
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難しい内容ですが、整理されていて大変読みやすかったです。
これは年齢、性別問わず多くの人に読んでもらいたい本だと思いました。
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離婚後300日以内に生まれた子供は前夫の籍に入る。たとえ再婚後早産で生まれたとしても。
それが受け入れられず、出生届を出さずに無戸籍となる子供がいる。それはテレビで見て知っていた。しかし無戸籍になるのは様々な理由があり人数もかなりいる、というのが衝撃的だった。
戸籍がないから実態が把握できない。生きているのにいない者となってしまうというのはいたたまれない。しかしやはり親の責任は大きいのでは、と思ってしまう。
著者のように早産で生まれた子供の場合でも裁判で現夫の戸籍に入れるのは大変というのは理不尽に思う。
法改正がされたのは少しは良くなったのかもしれないが、DNA鑑定さえも考慮されないケースがあるいうのは問題があるようにも思える。
DV夫から逃げて離婚できないまま新しい人と暮らす。そういったパターンは多いだろう。
逃げられたのは良かったと思うし、いい人に巡り合えたのも良かったと思う。だがせめて子供を産んであげたい、と思う心情が理解できない。
無知に対する代償は大きい。そしてその代償は全て子供がかぶるのだ。
最初に役所に届けた時に言われたという「離婚のペナルティだ」との言葉には憤りを覚えた。
何故そのペナルティを子供が背負わねばならないのか。というか、そもそも何故離婚にペナルティが必要なのか。
離婚後に生まれた子供の存在も、女性が再婚できない期間があるのもDNA鑑定が容易にできる現在では無意味に思える。
男性側にしても、自分の子ではないのに自分の籍に入ってしまうリスクがある。
ましてやそれを否定するための調停も屈辱を受けるものだそうなので男性にもペナルティになるという。
であれば余計に元夫には頼みずらいだろう。円満離婚だったとしても。
離婚後母親の方が親権を取ることは多いが、生まれた時は父親の籍に入れられるのが前提としてある。
子供は家のものであるが、育てるのは女性の役割であるという昔のままの法律なのだ。
親を責めても現状が変わるわけではないので、無戸籍の人たちの助けになるようなことは必要だろうというのはわかる。
成人してから戸籍を作るのも大変な手間がかかってしまうのも、悪用されるリスクを考えれば仕方のないことかもしれない。
無事に戸籍ができればいいとは思う。しかし生活保護を受けている話を聞くと、今まで税金を納めていなかったのにずるいとも思ってしまう。本人のせいではないのは重々にわかってはいるのだが。
少子化と言われるこの時代、こういった人たちはどれぐらいいるのだろう。
このような人たちを放置するのは国力の低下の一因となるのかもしれない。
何よりも、人として生まれたならば真っ当に生きる権利があるはずで、隠れるように生きてきた人々が普通に過ごせるようになればいいと思う。
この本には様々な事情で無戸籍のまま成人した人たちの事例がいくつか載っている。
しかし細切れでちりばめられているので途中で混乱してしまった。
政治の動き方も興味深い。
このような現状の一端を知るだけでも現状の改善につながるのかもしれない。
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自分の子どもが無戸籍になってしまったこと等をきっかけに、無戸籍の人が戸籍や住民票を取れるようにサポートしたり、法律や離婚届を変えようとした政治家の書いた本。作者はこの問題に”召命された”かのように、力強く活動している一方、どうやら無戸籍の問題を親の咎に矮小化して、むしろ現状に合わない民法772条をそのままにしたい一派の政治家も出てくることから、政治家にとっての課題や理想像が全然違うことが分かる。世の中の問題は多岐にわたっているので、それぞれに関心を持ってもらうために、政治家自体に多様性が必要だなと強く感じた。
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小説かのようなストーリー性があり、とても読みやすかった。
さらに内容に関しても小説、フィクションではないかと疑うようなものばかりで自身の無知さを実感した。
無戸籍は遠いようで身近。そして身近であってはならない。そのための法制度や、戸籍の目的を今一度考え見直さなければいけない。
誰しも生まれたくて生まれてきたわけではないのだから、当たり前の人権くらい与えてよ!
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なるほどな、民法772条か。特に貧困やら親がいい加減だったりしなくても、現夫の名前では出生届が受理されずに無戸籍になるパターンがあるんだ。よくわかってなかった。俺みたいな素人が考えても、誰かが生まれた時に戸籍の無いままで放置しておくことと、整合性の取られた出生届と、どっちが大事なんだよバカか?と思うような問題なので早急に法改正しろよ、思うけどな。無戸籍は離婚のペナルティ、ってのはすげえと思った。いやいや、19世紀の法律なんだってよ?しかし無戸籍の人の母親の元夫がその母親と肉体関係があったとか、鎌投げられたとか、この辺りはダラダラと冗長だったなあ。
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無戸籍で苦労している方々が少なくない事実は知らなかったし、大変驚いた。
ストーリー性があってとても読みやすく、法律問題の説明もわかりやすい。
法や政治に関する様々な本が、この本くらい読みやすければ、もっと色んな人(自分も含め)に政治に触れるきっかけができそうなんだがなあ。
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ねほりんぱほりんという番組で知った、
無戸籍者の実態をもっと知りたくて手に取った。
読んでみると、さまざまな事例が挙げられていた。
育児放棄や貧困が主な原因なんだろうと、無知な私が持っていたイメージよりもずっと根が深く、親や祖父母の代まで原因が遡るケースも。
そのせいで、親子で無戸籍の連鎖が怒るケースも少なくないということに衝撃を受けた。
一番ショックだったのが、本来ならば彼らを救うためにあるはずの日本の法律が、無戸籍者が戸籍を取得することを拒否する壁となっているということ。
離婚後300日問題、
日本人である証明がないから取得が困難で、それを証明したくても親が亡くなっている、
学校に通っていないはずなのにコミュニケーション能力や文章力が高いのは疑わしい等、
なぜここまで何の罪もなく生まれてきた彼らが苦しみを持たなければいけないのか、あまりに理不尽だと感じた。
確かに生きているのに、制度上「存在しない者」として生活している人たちの声が届いてほしい。
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書いてあることが全て事実だと受け入れたくない。「市子」の何倍も現実は壮絶で、現代社会に絶望を感じる。ただこの本は厳しい現実を提示するだけではなく、度重なる取材と当事者との対話の記録、そして戸籍取得にはどういう障害があるのかなど、無戸籍の人たちが少しでも生きやすくなるように著者が奔走し、その軌跡を辿っていく。全て著者の経験、取材、対話、記録で構成された、まさに血と汗の結晶。当事者たちが勇気を出して、告白した辛い過去に、我々がどうあるべきなのかを問われている気がした。苦しんでいる人が今もいる為、ありがとうございますとは簡単に言えないけど、感謝してます
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あまりにも自分の生きてきた世界と違いすぎて唖然とした
そんな多種多様な地獄ある?というエピソードばかり
政治家の本音を知れたりやり口も学べるし色んな「世界」が覗けて有意義でした
複数人のケースをザッピングしながら話が進むので少し読書の間をあけると記憶容量が極小の私は この人どのケースの方だったっけ?? となってしまい中盤あやふやなまま読み終わりましたけどそれでも十二分に学びがありました
終盤は歴史の話になっちゃうからちょっと退屈だったかな
あーしかし「留守中に夫(35)が母親(70)と肉体関係を結んでいた」の下りは本当に気分が滅入った
イミフ、どういうことだよ…