『脱原発の哲学』は語る
三・一一以後、原発問題に関する著作はとうてい数えきれないほど多く世に送り出されました。いまなお、学ぶべき素晴らしい著作が相次いで出版されています。それらの一部を手に取り数...
『脱原発の哲学』は語る
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商品説明
三・一一以後、原発問題に関する著作はとうてい数えきれないほど多く世に送り出されました。いまなお、学ぶべき素晴らしい著作が相次いで出版されています。それらの一部を手に取り数々の知見に学びながら、脱原発運動の末端をたどたどしく歩いてきましたが、原発問題の根深さとスケールの大きさに圧倒され、どこから手を付ければよいのかわからなくなることが度々でした。それは脱原発の必要性を確信しているにもかかわらず、思考の基本が定まっていなかったからです。「哲学」がなかったためと言っても良いでしょう。
そんな折に、佐藤嘉幸・田口卓臣の共著『脱原発の哲学』に遭遇しました。遭遇と言うよりも、衝突したと言ったほうが正しいかも知れません。一回り以上年少の二人の哲学研究者が、福島第一原発事故が惹き起こした諸問題に真正面から激突し、しっかりと組み伏せ、鮮やかに分析していることにただならぬ感銘を受けました。そこで、スペース・オルタの佐藤真起さんに、この二人へのインタヴュー講座の開催を提案するや、佐藤真起さんも一読興奮冷めやらぬ趣で即座に開催を決めたのでした。
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インタヴュー講座は次の三回です。第一回・二〇一七年一二月一七日、第二回・二〇一八年一月二一日、第三回・同年二月一八日、会場はいずれもスペース・オルタ(新横浜)。主催は平和力フォーラム(主宰・前田朗)、共催はスペース・オルタ、さらに協賛は福島原発かながわ訴訟原告団、福島原発かながわ訴訟を支援する会、市民セクター政策機構です。
主催の平和力フォーラムは、同じ会場で、これまで二つのインタヴュー講座を実施しました。一つは、原発民衆法廷判事だった鵜飼哲(一橋大学教授)、岡野八代(同志社大学教授)、田中利幸(広島市立大学教授・当時)へのインタヴューです。その記録は、鵜飼哲・岡野八代・田中利幸・前田朗『思想の廃墟から――歴史への責任、権力への対峙のために』(彩流社)として出版されました。もう一つは、原発民衆法廷に証人として出廷した高橋哲哉(東京大学教授)へのインタヴューです。その記録は、高橋哲哉・前田朗『思想はいまなにを語るべきか――福島・沖縄・憲法』(三一書房)として出版されました。
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佐藤嘉幸さんと田口卓臣さんへのインタヴューは、月に一回、三か月連続と、いささかハードスケジュールでしたが、お二人とも毎回入念に準備され、私の拙い質問に迅速的確に応答してくれました。原発問題に向き合い、脱原発を求める思考と運動を鍛え直すための講座ですから、話題はつねに重く、時に気分が沈みがちだったのはやむを得ません。しかし、お二人は、日本政府と東電の無責任に怒るだけではなく、立ち上がる被災者とともに悩み、ともに考え、ともに明日を見据えて「哲学する」俊秀でした。おかげで毎回、実に愉しいインタヴュー講座となりました。
福島原発かながわ訴訟原告団の村田弘さんは、講座の中で、避難者に押し付けられた苦境を語ってくれましたが、本書のために新たにインタヴューに応じてくれました。
最後になりますが、すべての記録を文字おこしして電子書籍にこぎつけ、本書に具体的な形を与えてくれた週刊読書人の明石健五さんに深甚の感謝を申し上げます。
二〇一八年五月三日
前田 朗
目次
- はしがき
- 第1章 「故郷喪失」と「避難の権利」
- 第2章 原発が壊す社会と人間
- 第3章 ポスト核時代を展望する
- 第4章 村田弘インタビュー「棄民は絶対に許さない」
- 第5章 福島原発かながわ訴訟原告本人尋問傍聴記
- 【巻末資料1】原発民衆法廷 東京最終法廷(主文要約)
- 【巻末資料2】『脱原発の哲学』を読むための三六冊
- 著者プロフィール
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