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店頭で見掛けた時に、何処かで聞いたことがある名前だと思ったら、『黒き水のうねり』の著者だった……ということで購入。
デビュー作でちょっと気になった欠点はほぼ無くなっていたが、全体の緩急のつけ方はけっこう独特の癖がある。映画やテレビ出身の作家は、全体の尺を本能的に考えている傾向がある……と、個人的には思っているのだが、この人に関してはそういう感じが皆無に近い。ユニークな個性だと思うので、消えてしまわないことを祈る。
巻末の解説によると、本書は4作目に当たっていて、2作目と3作目が未邦訳。こちらも邦訳されないかな〜。
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これは良かった!作家さんはテキサス州ヒューストン出身の黒人女性なのね。さもありなん。ヘイトクライム横行する中での黒人レンジャーの捜査ってのが独特の緊張感を生み出してグイグイ読ませる。ラストが文学っぽい含みがあって、引きずる読後感。気に入りました。「黒き水のうねり」も積んでたハズ。読んでみようかな。
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アメリカの人種差別が描かれているけれどそれだけではなく愛とか憎しみ、家族、住む場所とさまざまなことが重なり起きた事件。絶えることなく繰り返されてきた黒人に対する差別。そこから生まれる憎しみ、怒りの連鎖。そして殺人。人種問題だけではなくて政治、力、財産、土地とたくさんのものが絡んでくる。こういうものだからと諦めたり正そうとしたり。正しいこととは何かと考え向き合い続ける男の物語でもある。
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アメリカ南部が舞台で、根深い黒人差別問題が全面に押し出しされるという、題材としては個人的にとても苦手な分野なのですが、三冠受賞作品なので読まないという選択肢はない。
結果、読んでよかった。正義とは?と考えさせられる作品が最近は多い気がするが、捻りが効いてなかなかなもの。
しかし、南部は濃い!
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面白かった。が、まだ尚進行している人種偏見への認識を共有していないので感じ方はどうなのか疑問だが。
文中の彼らは大きな家族。黒人を憎んでいることが強迫観念となり逆に縛られている様子は印象に残る。
海外のミステリーが好きなせいもあるが、最近読んだ本も映画も人種間、男女の偏見、差別が基になる話ばっかりやなー。
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街の骨格が徐々にわかってくると、事件の背景も見えてきて、白人至上主義、ヘイトクライムが犯罪に絡み出す。簡単な物語ではない。
黒人のテキサスレンジャーを通して、「家族」という関係を浮き彫りにしていく。
家族関係、人間関係。掘り下げていくことで犯人に、そして胸を抉るような動機へと導かれる。
街や店の匂いが文章から漂う。お腹が減るような、また反吐が出るようなこともあったり。
アメリカ南部の田舎町で起きた正義の傑作ミステリでした。
犯人をとんでもなく間違えてて吹いたのは許してほしい…
私の範疇よりもっと複雑に、また素晴らしい余韻を残してくれますので…
こんな面白いものが書評七福神でみんな選ばないって2018年12月何事?(皆さんあげてますけどね。
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「ジョーがまずギターを取り出した。沢山の人々の--ジョーの、次いでマイケルの、そして今やランディとダレンの--運命を変えたギブソン・レスポール」
伝説のギターマン、ジョー・スウィート。彼のギターをシカゴから追いけかけてきたマイケル・ライトの遺体がバイユーで発見された。ついで白人女性の死体が同じバイユーの少し下流で。
東テキサス、シェルビー郡。人口178人の小さな田舎町。法律家になる道を妻や叔父に強く促されながらも、テキサス・レンジャーとして生きているダレン・マシューズを主人公に、人種間偏見と暴力が容認されるアメリカ南部の田舎町に起こる葛藤をいくつも重ねたように描いて、世の複雑さと人間と人間が向き合い、対立し、また憎み、愛する姿を、これでもかとばかりに描いてみせるその筆力に脱帽したくなるような一冊である。
自らの人種差別と性差別に無頓着なトランプだったら顔をしかめそうな黒人女性作家アッティカ・ロックの、デビュー後4作目にしてアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞・英国推理作家協会賞スティールダガー賞・アソニー賞長編賞と英米の文学賞三冠を達成した優秀作。
しかし日本人読者が好んで手に取るようなミステリー色は強くない。偏見によるヘイトクライムに包まれた町では、はっきりと右と左に陣営が分かれるからだ。この小説の舞台は小さな田舎町。道路が一本。道路沿いには二軒の店がある。片側は白人男性が集まる酒場で、もう一方は黒人女性ジェニーヴァの経営する食堂だ。白人の中には、ABTのメンバーもいる。KKKをさらにラディカルにしたような暴力的なほどの秘密結社アーリアン・ブラザーフッド・オブ・テキサス。この存在は本作で初めて知った。
黒人のテキサス・レンジャーであるダレンのトラックの運転台には血まみれのキツネの死体が投げ込まれるし、ジェニーヴァの店は銃撃の威嚇を受ける。小さな町で死体が二つ、さらに暴力、ここに迷い込んでプロ・デビューを予定していたのにヒューストンにまで到達できなかったギターマン・ジョーの伝説。
そして物語のかしこに鳴り渡るブルースの数々。本書のタイトルは、ジョン・リー・フッカーの曲『ブルーバード』から取ったもの。どろっと濃い南部の熱気の流れる町、別居中の妻と転職とに悩むダレンが目にするアメリカの真実がここに込められている。どの人物像も半端じゃなく描かれており、深い。シリーズ化されるとしたらその前段は十分に語られたと思う。期待したい。
ちなみにアッティカ・ロックには、2009年にデビュー作として邦訳もされている『黒き水のうねり』という作品もあり。ヒューストンのわけありの黒人弁護士が主人公だそうだ。ううむ、これも読まねばなるまいな。
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シカゴから来た男が運んできたのは、ギブソンのレスポールだった。
輸入盤で手に入れたミシシッピ・ジョン・ハートのレコードを擦り切れるまで聴いてフィンガー・ピッキングをコピーしていた頃を思い出した。『ブルーバード、ブルーバード』というタイトルは、ブルースの名曲から採られている。事実、文中にはライトニン・ホプキンスやジョン・リー・フッカーの名前がたびたび出てくるし、主要な舞台となる、ラークというテキサスの田舎町にある掘っ立て小屋みたいなカフェ<ジェニーヴァ・スイーツ・スイーツ>では、いつもブルースがかかっている。
面白いのは、ハイウェイ五九号線を挟んだ向かいには、プア・ホワイトが集まってくる<ジェフの酒場>があり、そこでは、カントリー・ミュージックがガンガンかかっているというところだ。つまり、道路をはさんで黒人が安心して足を運べる店とレイシストの巣になっている白人専用の酒場とがにらみ合っている構図だ。奇妙なのは、<ジェフの酒場>のオーナーであるウォリーが、毎日のようにジェニーヴァの店に顔を出すことだ。店を売れというのが名目だが、どうやらそれだけでもなさそうに見える。
テキサス・レンジャーのダレンは、家の管理を任せている老人が絡む殺人事件の裁判に巻き込まれ、レンジャーを停職中。レンジャーの仕事を快く思っていない妻のリサとも別居中である。そんなとき、友人でFBIヒューストン支局の捜査官グレッグから、ラークで起きた事件の捜査を内密に依頼される。道路沿いのカフェの裏に広がるアトヤック・バイユーで立て続けに黒人男と白人女の死体が見つかった。グレッグの話では人種がらみの事件らしい。ダレンは愛用のピック・アップ・トラックをシェルビー郡まで走らせる。
オバマ大統領が誕生した時には、これで人種差別も解消に向かうかと希望を持った人々もいたが、トランプ政権発足により、事態は逆戻り。地方では、白人至上主義者の活動が活発化し、人種間の軋轢は以前より悪化していた。言い忘れたが、ダレンをはじめ主たる登場人物は黒人である。テキサス・レンジャーに黒人はめずらしいが、ダレンの伯父がその道を切り拓いた。ロー・スクール出身のダレンはもともと弁護士を目指していたが、ある事件をきっかけにレンジャー入りを決めた。リサとの不和はそれが原因になっていた。
白人の勢力が強いテキサスだが、自分たちの力で商売をしたり、農園を経営したりして成功した黒人は、その地にとどまり続けた。一方で、才覚のない貧乏白人たちは、地道に働いて資産を得た黒人層を嫉み、執拗な嫌がらせをすることで、鬱憤を晴らしていた。それが、今では白人至上主義者がギャング団を組織するところまで来ており、ダレンは気を揉んでいた。黒人男と白人女の相次ぐ死には、黒人男が白人女とつきあうことを憎む者たちの仕業を匂わすものがあった。ただ、男の死体が先に発見されるのは異例で、それが気になった。
ブルースとカントリー、黒人と白人という図式的な対比の構図をとりながら、妻に拒否される夫と夫に拒否される妻、という相似的な構図が用意されている。黒人の被害者マイケルは、シカゴで弁護士をしていた。その死を知って駆けつけたランディは有名な写真家で、家を空けてばかりいることが原因で夫との関係が壊れていた。ダレンとランディは置かれた立場こそ違え、冷えた夫婦関係を作った元凶という似通った境遇にある。事件を追う中で共に行動することで二人の関係がどうなるのかというロマンスの観点も加味されている。
必ずしもフーダニットが主眼ではなく、謎を追うダレンの前に、もつれにもつれ、からまりあう黒人と白人をともに包む大きな憎悪を孕む人間関係の相関図が広がってくる。現在の事件は単独で解決されるものではなく、その裏に隠されていた過去の未解決の事件が浮かび上がってくる。互いに敵対視し、憎悪しあう間柄であっても、男女間には愛が芽生えることもある。周囲に歓迎されることのない愛ではあっても、愛し合えば子どももできる。
白人と黒人の間にある桎梏と、そんなものに左右されることのない愛の交歓とが亀裂を生み、やがては殺人に至る原因となる。人を殺すことが、単に憎悪からではなく愛ゆえに起きることがあるのは知っている。人の感情というものはそんなに単純なものではない。それが悲劇の連鎖を生むのだ。夫と息子の墓参りをするジェニーヴァの場面からはじまるのには訳があった。若いジェニーヴァと、ひとりのブルース・ギタリストとの恋が、幾人もの人々の人生を狂わせてしまう契機になっている。
ハイウェイ五九号線に沿って延びるバイユー・カントリーを舞台に、黒人と白人との愛と憎悪の相剋を、ブルースの名曲をバックに、鎮魂の曲を奏でる『ブルーバード、ブルーバード』。安っぽい正義感や、男の生き様などというありきたりな解釈を寄せ付けない異人種間の熾烈な愛憎劇を犯罪捜査にからませながら、人間という存在のどうしようもない哀しさと、それでもなお愛するに足る姿を、上滑りすることなく真摯に追い求めたミステリ、というより、アメリカで黒人として生きることの緊張感を鋭く見つめた、読ませる小説である。
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主人公が黒人(カラード)のテキサスレンジャーというだけで既に異色では?
南部の田舎町で起きた連続の殺人事件に巻き込まれる、事件の謎を丹念に捜査していく。
話しが全体的に地味だけど、比喩や暗喩に富んだ文章が抜群に上手いうえに、キャラの設定も見事。
そのせいか、さほどのストーリーでもないのにラストまで楽しめだ。
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主人公の黒人レンジャーを揶揄するように「夜の大走査線(In the heat of the night)」の名が本文中に使われる。同作が映画化されてから半世紀以上経つとゆうのに人種間の分断は相変らず社会に暗い影を落としている。なぜ同じ悲劇が繰り返されるのか、本作はアメリカの病巣を描く凡百のノンフィクションより強くその問題の深さを訴える。
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テキサス州のハイウェイ沿いの田舎町で、ふたつの死体があいついで発見された。都会から訪れていた黒人男性弁護士と、地元の白人女性の遺体だ。停職処分中の黒人テキサス・レンジャー、ダレンは、FBIに所属する友人から、事件の周辺を探ってほしいと頼まれて現地に赴くが―。愛と憎悪、正義の在り方を卓越した力量で描き切り、現代アメリカの暗部をえぐる傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞、英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞、アンソニー賞最優秀長篇賞の三冠受賞作!
静かな筆致だが、物語の力強さを感じさせる。収穫でした。
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ブルースが聴こえ、澱んだ沼沢の臭いがしてきそう。
ジョン・リー・フッカーのアルバム買わなくちゃ。
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この不穏な終わり方、次回作があるとしたら、ドキドキ。英米ミステリの主人公って音楽好きが多いな。リーバスのロック、ボッシュのジャズ、モースのオペラ。ジェニーヴァの言葉を借りれば「失われた愛」の物語。
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「愛と家族と故郷」という名の、強すぎる呪いの話。現代アメリカのテキサスが舞台なのに、戦後まもなくの日本を描いた横溝正史の金田一シリーズを思い出した。
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テキサス州の人口が200人にも足りないような田舎町で起こった2つの殺人事件に挑む黒人テキサスレンジャーの話。
ミステリーであり謎解き部分もしっかり作られているのだが、主題はアメリカ南部に今も深く根付く黒人差別問題と、恋愛の物語である。そのほの暗さや深さは我々日本人には計り知れないところもあるが、この本を読めばその一端を垣間見てしまう。
自分より劣っていたり、大勢とは違う個性や特質をもっていたり、立場が弱かったり、出身や民族や文化が違ったり、そういう人を差別する感情ってのは、本能に基づく根深いところにある人間のどうしようもない難点なのかもしれない。
でもどうしようもないからと、ほったらかしにするのでなく、他人を尊重し、違う文化や価値観を受け入れ、弱い立場の人であってもきちんと生活する事を受け入れる。そういう風であることを理性や知性で行動する、一歩ずつでもそこに近づいていくことが今後の人間のあるべき姿なんじゃないだろうか?
大手の有名書店ですら、店頭のかなり目立つところに「嫌韓何某」などと書かれた本などを並べていること、そしてそれらの風潮に流されてた自分を思い出すといたたまれなくなる。
小説、それも自分のいる場所から少し離れたところが舞台でありながら、非常に考えさせられる小説であった。
勿論ミステリーとしても上出来で読み応えのある作品である。
またちょっと余談になるかもなのだが、背景として使われる音楽の見事な扱いよう、ブルーズとカントリーをここまで上手く使い分け風景としてにじませる凄さ。例えば民謡と演歌と歌謡曲をここまで書き分けられる小説があればいいのになぁ…とか思ってしまう。