物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国
著者 著:黒川祐次
ロシア帝国やソヴィエト連邦のもとで長く忍従を強いられながらも、独自の文化を失わず、有為の人材を輩出し続けたウクライナ。不撓不屈のアイデンティティは、どのように育まれてきた...
物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国
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商品説明
ロシア帝国やソヴィエト連邦のもとで長く忍従を強いられながらも、独自の文化を失わず、有為の人材を輩出し続けたウクライナ。不撓不屈のアイデンティティは、どのように育まれてきたのか。スキタイの興亡、キエフ・ルーシ公国の隆盛、コサックの活躍から、一九九一年の新生ウクライナ誕生まで、この地をめぐる歴史を俯瞰。人口五〇〇〇万を数え、ロシアに次ぐヨーロッパ第二の広い国土を持つ、知られざる「大国」の素顔に迫る。
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物事を見る視点
2008/05/01 22:45
56人中、26人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の教育の最大の失敗というか欠点は、物事には何でも正解があると子供達に思い込ませてしまうこと、そして答えは必ずひとつであると刷り込んでしまうことであろう。しかし、人間の世界というものは複雑であり、答えはひとつとは限らない。その代表例が「正義」という概念であって、誰しもが同意できる「正義」などというものは実はこの世に存在しないのである。早い話、正義というものは国が違えば異なるし、人間の数だけ正義も存在するとさえ言えるのだ。日本人が大好きな「不偏不党」「公正中立」という概念も、実は大変マユツバだ。神ならぬ人間である以上、誰しもバイアスの虜であり、公正中立などありえないのだ。日本ではNHKは不偏不党ということになっているが、実は極左暴力集団のシンパが、いまだ相当数紛れ込んでいて、公正中立を装いながら安倍晋三内閣の倒閣運動を行なった職員が相当数いたことは、今や公然たる事実である。
さて、本書である。私は著者の黒川大使と面識がある。彼は優れた外交官であり、非常に該博な知識を蓄えた教養人でもあることをまず断っておく。本書に対し、あらぬ誹謗中傷を試みる浅学非才な輩がいるようなので、一言、まず断っておく。その上で、書評を書かせてもらうが、本書は日本人にかけているジグソーパズルの歴史知識のピースを補うような仕上がりとなっている。日本人の大半はそもそもウクライナに対し知識も無ければ関心も無い。「ロシアの一部分に過ぎない」などと勝手に思い込んでいる連中が大半である。このことを痛いほど知っているからこそ、大使は、あえて筆をとって本書をものしたのである。ウクライナに行けば分かるが、ウクライナには強烈な反ロシア感情が渦巻いている。このウクライナ人の感情を代表する政治家が、首相の座に返り咲いたティモシェンコ女史である。ロシア語とウクライナ語は語彙もほとんど同じである。キエフに立っている寺院だってロシアの寺院とほとんど変わらない。少なくとも我々日本人には同じに見える。しかしウクライナの人々はロシアとウクライナを同一視することW許さない。ロシアとは明白に一線を画すのであう。なぜか。それはロシアとの間で、血で血を洗うような凄惨な歴史と闘争を彼らウクライナ人は経験しているからである。もっとも卑近な例が、ロシア革命直後にウクライナを襲った大飢饉であろう。農民嫌いのスターリンはウクライナ農民を敵視し、ウクライナの農村を徹底的に破壊して「農業の集団化」を強制的に推し進めた。しかし、この農業の集団化とは、農村も農業も知らない都会のエリートが脳内で勝手に描いた妄想の類で、このスターリンの暴政の結果ウクライナの農業は崩壊し、ウクライナは農村を中心にものすごい飢饉に見舞われる。ウクライナの農村では自分が生んだ赤ん坊を鍋で煮て飢えをしのいだ母親の話さえ残っている。だから、ヒトラー率いるドイツの戦車部隊がウクライナに侵攻して来たとき、ウクライナ人たちは銃を取って戦うどころか、ヒトラーの軍隊を「解放軍」として歓迎さえしたのである。それほど彼らウクライナ人はロシアを憎みスターリンを憎んでいたのである。「文化的に類似点が多く言語的にも類似点が多い」くせに憎しみあっている民族・国家なぞいくらでもある。早い話、韓国の日本に対する態度、あるいは中国の日本に対する態度なぞ、黒川さんが紹介するウクライナのロシアに対する嫌悪感にかなり似ているのではないか。もしこれを「かなり偏った一部の分裂主義者の思想」などと片付けるのであれば、「日帝36年の支配」なぞとほざく韓国人の連中の言い分も「かなり偏った偏見に満ちた歴史観」といわねばならないし、わずか20万人しか人口のいなかった南京で「30万人が虐殺された」とほざくチャイナ人の主張も「白髪三千丈の類」と一笑に付さねば釣り合いが取れないであろう。大半の日本人が知ろうともしなかったし興味も持たないウクライナとロシアの間の複雑な関係にスポットを当てたことは大川大使の偉業と言わねばなるまい。
ついでながらウクライナは、大体ドニエプル川を挟んで東側、つまりロシアに近いほうはロシアとの経済的つながりも深く「親ロシア的」だが、川の西側は非常に「反ロシア的」である。そして現在はドニエプル川の西側の方に勢いがあるのである。
本書を、ただ「偏った本」などとレッテルを貼って切り捨てようとしていては、なぜウクライナ政府が執拗にNATO入りを希望し続け、ロシア政府がこうした動きに神経を尖らせているかも理解できないであろう(別にブッシュ大統領の陰謀のせいじゃないんだよ、ウクライナのNATO加盟の動きは)。本書は、浅学非才な連中の「蒙を啓く」うえでも必読の書といえよう。物事を知るためには、まず無闇にレッテルを貼っては思考停止に陥る悪い癖から改めていく必要があることは言うまでも無いのだが。
歴史は繰り返された
2022/03/12 15:27
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウクライナのイメージは、東欧旧ソ連邦の国、小麦産地の農業国と思う日本人が多いのではなかろうか。その歴史は地政学的には西欧とロシア・アジアを結ぶ通路にあり、東西のパワーバランスの重要な国。歴史を知りたくて本を探していたが意外と歴史を詳しくまとめた本は見つからなかった。本書も在庫切れ状態だったが2022年3月8日に8版が出版され入手できるようになった。独立まで350年かかった国。何度も周辺のロシア・ドイツオーストリア帝国、ポーランド王国等に分割占有された国。いままさにロシアによって侵略が行われている。徹底抗戦を叫ぶウクライナ国民。その根底に流れている民族の意識を知り歴史を知るためには良書と思われる。
大国に翻弄されるも民族の誇りを守ってきた歴史
2022/03/10 21:48
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
キエフ・ルーシがモンゴルにより滅亡した後にポーランド、オーストリア、ロシアと周辺の大国に支配され独立を宣言しても潰されてきた歴史がわかる。しかし何度独立が潰されても復活してソ連解体後についに独立を果たした歴史に感慨を覚えた。しかし現在(2022年)ロシアの侵略により再び危機を迎えているがプーチンの言うウクライナはロシアの一部で存在しないというプロパガンダが大嘘であることが本書を読むとわかる。
ロシアのウクライナへの侵攻という時期
2022/03/05 15:47
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロシアのウクライナへの侵攻という時期に、本書を読むことが出来た。ウクライナの歴史を知り、その地政学的な意義を理解することは、この時代の動きにより正しく対応するために重要だと思う。ウクライナは面積、人口においてヨーロッパ第二の大国であり、大穀倉地帯を有する点でも、重要な地域となっている。1654年ウクライナ・フメリニッキーがモスクワ公国と締結したペレヤスラフ協定を、ロシヤがウクライナに介入する根拠の一つにとらえているようだが、原本は紛失し、怪しい複写しか残っていない事実が、ロシアのうさん臭さを示している。
タイムリーな時勢のネタとして。
2022/05/28 19:59
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
連日ニュースを賑わせているウクライナ。そもそも恥ずかし乍らウクライナのウも知らない事に危機感を感じて掻き込む様に購入しました。ウクライナはどこにあり、どの様な文化を持ち、辿ってきた歴史はどの様なものか、国自体の大きさ・人種・言語は・・など、兎に角地盤を築きたかったです。本書はそれらを網羅してありました。従って、内容は良かったです。勉強になりました。
ウクライナは独立を果たしていますが、過去には何度も独立を経験しており、一方で侵略を受けたりと、波瀾万丈な国歴を経てきています。メディアで報じられている内容ではわからない、或いは見えていない背景を学ぶ事が出来て、有意義でした。
*****
2022/05/30 09:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は2002年に出版されている。ソ連から独立してからおよそ10年後である。そして20年後の現在、何度目かのロシアによる侵略が行われ、戦禍に見舞われている。
失礼ながら自分自身も含めて日本人の多くはウクライナ侵攻がなければウクライナのことを知ることもなかったのだろう。本書はウクライナの歴史、特にロシアとの関係について紐解いて解説してくれる。当時、多くの日本人はウクライナに関心がほとんどないという問題意識からウクライナ大使を経験した著者がとりまとめたそうだ。
ウクライナ情勢が日々更新されてくる。幸いにしてロシアの思惑通りに進んでいないようだし、欧米などの強い支援で押し返しているようだ。
何故ロシアがウクライナに固執するのかは本書から理解できる。ロシアによるウクライナ支配の歴史が物語っている。スターリン政権下では惨憺たる生活を強いられ、大飢饉や粛清により多くのウクライナ人の命が失われた。今はプーチンによって同様の行為が行われている。
最近読んだジョージ・オーウエルの評論集から引用すると、
政治的言語は、虚偽を真実と思わせるように
殺害をまともに思わせるように
風に過ぎないものに堅固らしい外観を与えるように
と企まれている。
ウクライナもある程度はそうかも知れないが、ロシアのプロパガンダはあきらかにこのとおりだ。
東欧史
2022/04/16 05:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人にとってあまりなじみがなかったウクライナ。皮肉なことに2022年2月24日にロシアが侵攻したことで俄かにその国が知られることに。その基礎知識がいっぱい詰まった本。周辺国を含めた詳しい歴史や文化を知る事が出来る。
歴史を学び、反戦の声を指示したい。
2022/03/02 22:20
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
2022年の北京五輪が閉会して間もなく、ロシアがウクライナに侵攻したことを受け、ウクライナの歴史を知るために本書を手に取りました。初版は2002年に出版されているようですが、ウクライナ史に疎い私にとっては大いに学ぶことがありました。
ロシアによる2014年のクリミア併合は知っていますが、それ以前にも歴史上においてウクライナが様々な国から侵攻されていたことを本書で初めて知りました。その反面、何度も独立するために戦ってきたということでもあります。ちなみに、今からおよそ100年前の1918年には、ボリシェビキがキエフに進軍しています。
度々侵攻される理由として、大国に挟まれていることや、穀倉地帯としての土地の豊かさ、黒海に面した貿易面での利点などが指摘されており、地政学の面でも勉強になりました。
どうすればいいのかという不安な声を私の周囲でも聞きます。まずはウクライナを知ることで、反戦運動を支持する声を上げたり、周りの人と意見を出し合うことが大事なのではないかと思います。
ウクライナの精神
2022/04/30 07:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Maki - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウクライナと聞き思い浮かぶのは、肥沃な穀倉地帯であり、ソ連時代の負の遺産とも言えるチェルノブイリ原発がある事。ガリツィア地方の一部であり、ウクライナ飢饉で多くの命が奪われた事。
今まさにこのウクライナの地を、多くの犠牲の上に、プーチンが侵攻し我が手にしようとしているのか、肥沃な大地欲しさだけでは無い、ウクライナの心、精神さえも粉砕しようとしているとさえ思える言動の一因を本書を読み推察する事が出来た。
1日も早く、ウクライナの大地に、ウクライナの人々に、平穏な日々が戻る事を願わずにはいられない。
歴史に疎いと思っている人にこそすすめたい
2022/05/01 18:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:このたびは - この投稿者のレビュー一覧を見る
途中なので読書感を。予想外に入り込める、まずその事に尽きる。歴史に疎いと思っている人にこそ手にとってほしい。自分も久々に中公新書の歴史関係を読んだが、恥ずかしいことに他国の歴史はなかなか頭に入らなかった手合いだった。近い、関係が深い、好き嫌いといった自分なりの立ち位置がないと、身が入らないことも多い。それでも、今こそウクライナという国を知りたいという気持ちを、本書が丁寧に導いてくれる。筆者も言うように、ある国を知る知見の基礎は歴史にある。ウクライナを知らない、歴史はちょっと苦手、でも知りたいという気持ちに少しでも駆られているのなら、本書を勧めたい。
知らない歴史を知れた。
2022/04/29 14:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いけたろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヨーロッパとアジアつなぐ地域、ヨーロッパでも有数の肥沃な国土地帯であることが、今に続くヨーロッパとロシアの争点になっているということが理解できた。
一日も早く早い平和の訪れとこの国の潜在力が世界に貢献することを望まずにはいられない。
知らなかったことばかり
2022/09/25 07:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sadagoro - この投稿者のレビュー一覧を見る
知らなかったウクライナの歴史的背景が詳細日本書かれてあり、勉強というか学習になりました。
興味深い
2022/05/10 10:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウクライナの歴史が、分かりやすく解説されていてよかったです。ヨーロッパ最後の大国として、文化面でも素晴らしかったです。
おそロシア
2020/09/12 12:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:In - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウクライナ人がポーランドやロシア帝国、ソ連に支配される中で、彼らが受けた過酷な状況から恩恵まで見ていくと、常に日本が独立している状況が幸せに感じる。同時に日本からしても隣の国であるロシアが被支配民族に対してどういった仕打ちをしてきたのかということもわかってくる。
例外的にキエフ・ルーシ国など登場するが、基本的には他国の一部として支配されている。ポーランド・リトアニアに支配されたために、ロシアとは分裂し、その後の露帝国などの過酷な支配からウクライナは国制を共有できなくなっていったように見える。
ポーランドから離れてロシアについたのが運の尽き
2022/03/08 03:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
建国からソ連崩壊に至る迄の、
ウクライナの歴史を概説している本です。
記述はウクライナに肩入れしたところも
見られますが、まあ、入門書としては
こんなものかと。