投稿元:
レビューを見る
読みやすく面白い。
言葉だけではわかりにくいものを、
物語、実話に基づく講義劇で
感覚的に伝えてくれるので、
理解しやすい。
投稿元:
レビューを見る
社会学的考え方を学ぶ上で、寓話を用いてわかりやすく解説した良書です。
また、「六つのボタンのミナとカズの魔法使い」と「ライオンと鼠」という、表面的には、
まった関係のないく2つの物語が、「ダイバーシティ(多様性)」という点で
実は通じているという点が、とても興味深かったです。
投稿元:
レビューを見る
●No.26
〜オリジナル寓話「カズの魔法使いと六つボタンのミナ」とイソップ「ライオンと鼠」を社会学教育の題材として語る。
p.216〜217 【「どの様に達成される調和が良い調和なのか」という「調和形成」(合意形成)の質の問題を考察】
★人々の自由はそれ自体に価値があるというだけではなく、一般にものごとの合理的な解決を生み出す可能性を増大させる。
〜また「ダイバーシティ」(多様性)は、みなが協力して何かを作り上げようとするとき、豊かな創造を生み、
また多くの人々により平等な社会的機会を与えることができる。
まして、異文化交流の必要な現代日本の社会・経済にとって必要不可欠なものとなっていると言える。
★物語では「空気を読んで」周囲に合わせるだけの人間を育てる社会環境について、否定的に取り上げている。
→そのような社会環境は、自由を狭め、多様性を否定し、合理的な判断を下せる土壌をも破壊するという意味で、
望ましくないと思うから。
〜「空気を読む」ことを求めるという若者の蛍光は心地よい友人関係を最後の逃げ場としている現代の若者の追い詰められた
心理の産物。(勉強しても働いても生活の向上に繋がらない閉塞感のある社会状況)
→《そういう心理を生み出すような社会状況そのものを変えていく必要がある》
★「多様性」の望ましい規範のもう1つの条件とは、多様性が豊かな社会の再生産に貢献できるものである、ということ。
〜人々の選択は自由であるべきとはいえ、勝手気ままでいいという事ではない。
少なくとも、人々が、価値観の異なる他者との信頼関係を築く事ができ、協働して豊かな社会の実現に取り組むようなもの でなくてはならない。(「豊かな」とは精神・物質両面での意味)
★この物語は、人々が自由で豊かで、かつ信頼しあえるといった社会をどう達成するかについて、人々の多様性や個性を
プラスに考える「Valuing Diversity」の価値観や、より生産的な社会行動や人間関係の形成を重視するなどの方向性は
示しているものの、「解」を示してはいない。
〜それ(解)は、これからみなで考えていくべきことである。
投稿元:
レビューを見る
一人の少女の旅の物語の中に、現代社会学の鍵となる概念がいくつか埋め込まれている。
挿画の印象とあいまって、不思議な夢のような印象。
日米文化比較についてのアメリカでの授業風景も戯曲風に載っていて、発言の様子が興味深い。
投稿元:
レビューを見る
21/6/17 90
多様な人々の達成能力の開発を進めるために経済的発展が必要なのであって、経済発展のために人材活用があるのではないと言う思想>アマルティア・セン(ノーベル経済学者)
日本では会議などの意思決定の場でも「空気を読んで」行動する人が多い。自分が少数派になって、孤立することを嫌がるからだ。でも、そうやって「空気を読んで」行動すると、「空気に合う」情報は出すが「空気に合わない」情報は出さないと言うことになりかねない。つまり、会議での合意は、偏った情報だけで達成されることになる。または、会議の最初のほうで誰が何を言ったかに基づいて皆が「空気を推測する」結果、どういうふうに議論が始まったか、と言うような偶然の事柄に結論が左右されかねない。これも非合理的だ。
「空気に合わせて」見掛け上の合意や調和を得ることは、人々の多様性のゆえに得られる豊かな情報を用いることができないということになるし、少数派の意見を差別しがちになる点で、自由な考えを抑圧する危険も大きいと思う。
思考や想像を要求される対話を不快と感じるほど、対話が消費的になっている。対話だけじゃない、人間関係そのものがそういう消費的な方向に向かっている。
人それぞれ価値観は違っていても、人から信頼を得るには、やはり態度に何らかの一貫性があることが重要だ。
投稿元:
レビューを見る
====================
「囚人のジレンマ」だけは知っていた
沢山の概念が散りばめられているのは解った
それは「社会科学的」概念らしい
====================
二部構成の本で、どちらも「物語」を通じて
抽象的な概念を具体的に想像できるように綴られています。
第一部は「六つボタンのミナ」
皆が七つのボタンを持つ世界で、六つしかボタンを持たないミナの物語です。
童話のような物語に散りばめられているのは社会科学的概念。
そのまま物語としても楽しめるため、大人でなくとも楽しめます。
第二部は「ライオンと鼠」
物語を使い、教育現場というシチュエーションのもと
日米の規範、捉え方を比較できるよう提示されます。
物語としても、とても興味深い本。
この本が描かれる事自体がとても面白く刺激的です。
タイトルのダイバーシティは「多様性」も説明される事も有りますが
第一部は個人的な、第二部は社会的なダイバーシティが具体的に感じられ
2つの物語を併せて「ダイバーシティ」という本が作り上げられています。
社会学や経済学などに興味があり、
どこから紐解けばいいかわからない方にオススメの一冊です。
投稿元:
レビューを見る
書評などでは評判がよいみたいだが。。。一本目は創作童話。「カズの魔法使い」を訪ねてゆく少女が、道中さまざまなクイズを出される。囚人のジレンマ、共有地の悲劇、予言の自己成就、モンティ・ホールなど。ただ、とってつけたような印象が強く、それぞれのトピックの扱いが浅くてどうも。。。二本目は日米の文化論。イソップ童話の「ライオンとネズミ」の内容が微妙に異なっている(米国版は契約に応じて、、、というニュアンスになっているが、日本版は恩返しとして鼠が網を破る)ところから、両国の文化的な背景について考察を行なってゆく。こちらはそれなりに読み応えがあった。・ゼロサム社会においては、他者の成功は自分のパイが小さくなることを意味するので、全体が右肩上がりの社会とは異なり、成功者への風当たりが強くなるんだとか。
投稿元:
レビューを見る
この本で「ベイズ確率」のことを知った。
ダイバーシティは、今後の世界の一つのキーワードとなっていくであろう。
投稿元:
レビューを見る
近々お目にかかる予定のシカゴ大山口一男先生のご著書。「社会学者の私にだからこそ書ける文学」、6つボタンのミナの物語はもう少し大きくなったらこどもにも読ませたい。
投稿元:
レビューを見る
「6つボタンのミナとカズの魔法使い」についてのレヴューです
ミナという生い立ちに欠落をかかえるがゆえに、孤独を思春期から抱える少女の短めのビルドゥングロマン(実際には童話に近い)。
僕自身、ゲイだったので思春期に似たような悩み・孤独を感じたことがあったので、けっこう感情移入しながら読みました。
なぜ自分(だけ)は他の人と違うのか?そしてその違いをネガティブなものとされてしまうのか?
だんだん、僕個人もコミュニケーションにおけるそんな感覚がうざくて、コミュニケーション自体から撤退するという作戦をとるようになっていました。孤独というのは本当に当時楽だった。ただし、楽しかった訳じゃない。ミナのように僕も、思春期に「自分は孤独が好きだ」と思っていました。今から思えば無意識に楽しそうに無邪気に戯れている同級生に、すっぱい葡萄的な自己正当化をしていた気もします。さらに、その態度が孤独の中に安住して心を開かなかった自分に対して、回りも「一緒にやれへん?」「お前も来いや」的な言葉をかけづらかったような気もします。この辺は気づいて欲しい「被害者意識」の強いセクマイが多い気がする
ある程度自分の(ゲイとしての)アイデンティティがしっかりしてきたここ何年か、ようやく自分も友達との戯れを楽しみたいという欲望に素直になれてきました。ここまでこじらせてたのは自分がミナより、自分の孤独の問題に向き合うことを遅らせてしまったからな気がします。
中でも僕にとっては上記の問題を物語として、説教くさくない形で説いてくれている「孤独の森」の章が一番グッと来ました。
☆5つはセクマイふくめ、孤独な思春期を送った人にはぜひ読んで欲しいと感じたから。社会学的なテーマを物語に折り込んでいる点は現代のドラマツルギーとして面白いと思った。そんなドラマを見たいと思った
投稿元:
レビューを見る
論文の準備として購入。
久し振りにファンタジーを読むのが意外と楽しかった。
「知性の限界」とか去年読んだなー、と懐かしくなる。
後半のアメリカ文化のと日本文化の話はこちらも議論に参加するような気持ちで読んだ。
紀伊国屋ではダイバーシティマネジメントの本と並んで労働の棚にあったけど、直接的にダイバーシティマネジメントの本ではない。
投稿元:
レビューを見る
タイトルの通り、ダイバーシティについてファンタジーと大学での議論との二部構成から深い考察と示唆を与えてくれる一冊。
様々な社会科学や論理学の内容がちりばめられていて、なおおもしろい。
名著である。
<メモ>
・人は自分がひとりぼっちになることを恐れて、自分のことしか考えなくなるから、かえってひとりぼっちになる。
・囚人のジレンマにおいての戦略の一つ「寛容さの合理性」。裏切りを繰り返し許すことが、相手に罪の意識を起こさせるもの。
・アメリカの大学のリベラルアートでは、思考の自由と批評的精神の涵養が大切。
・日本のモラルは恩返し。アメリカは契約の順守?
・アメリカでは頼み込むような形ではなく、一人の人間として、重々しく子供に注意する。取るべき行動とその理由を説明する。日本では下手をすると、うちに変えるまで我慢。などと、場の違いにより許されるような、先延ばしのような言い方をしてしまうことがしばしばある。自分が恥ずかしいではなく、人さまに迷惑をかけることの恥を教える。そして、人様に役立つことの徳を教えること。そんなことするなんて嫌い!みたいな起こり方をすると、嫌われるといやという感受性のみが育成されかねない。
・子供や若者の間で物質主義と自尊心の間に負の関係がある。
すなわち、自尊心が低いものは物質主義的になり、自尊心が高いほど物質的になりにくい。
自尊心の低さは向上心の低さやあきらめに結びつきやすい。
子供に物を与え、塾に通わせる一方で家族の手伝いや親子ともにするスポーツや遊びを通じて子供を誉め、認め、自信を与えてやること。
家族内で何か役割を果たすことで、家族で認められ、ほめられる。
それを通じて、責任感や肯定的意識が育まれる。
・お互いが共通のモラルで行動しても、文化が違い、言葉や態度の意味を正確に理解できないと、誤解が生じ、信頼関係は生まれない。これは人々の多文化理解が進めばかなり克服できる。価値観や文化が違っていても、一貫性のある人間であれば、信用につながる。
一方共通のモラルが薄れ、態度に一貫性がなく、説明責任を果たさずに、いると信頼はなくなる。
投稿元:
レビューを見る
なかなか良い本でした。
この本を読んで得られるものは
・社会科学理論(下に書いた)に基づいた着眼点
・異文化理解の重要性に気が付く
・日本文化の理解(というか再認識)
あたりだと思うが、
この辺の学習効率がおそらく今まで読んだ本の中で最も高い本だった。
色々と語りたいのだが、
まず著者がスゴイ(笑)。
カバー裏の著者紹介を読むと、
シカゴ大学の社会学教授で、コロンビアやUCLAの助教授経験もあり。そして卒業学部が東大の理学部数学科(!?)からシカゴ大の社会学Ph.D。
うむ。
んで、81~99年の間で社会科学分野で最も学術論文が引用された学者250人のうちの一人に選ばれたそう。
ほう。
そんな、経歴を読んだだけでもありがてぇお方の一般向け著書「ダイバーシティ」は独立2部構成になっている。
前半はなんとファンタジー小説。
ただ、これが社会科学分野の様々なトピックに問題意識が向くように工夫されていて、
最後にはしっかり解説もされている。
そのトピックとは囚人のジレンマ、共有地の悲劇、予言の自己成就、アイデンティティ、ダイバーシティ、カントの道徳哲学、規範と自由、統計の選択バイアス、事後確率と幅広い。
小説としてもそこそこ面白かった。(著者も純粋な文学としても楽しめるように配慮したと記しているから、この本の多面性に驚かされる)
後半は、これが素晴らしいのだが、著者のアメリカの大学での日本文化論の講義模様が再現されていて、
異文化理解の重要性に気が付くような内容になっている。
あっちの講義は学生同士と教員のインタラクティブな議論を通じて考える力を養おうとするのだが、
そうした議論を追う中で日本文化についても理解が深まるように工夫もされていてる。
ルース・ベネディクト、中根千枝、土居健郎、山本七平などの日本文化論の紹介も議論の中で絶妙にしてくれるという超親切設計。
理論だけでなく、実例も交えながら話が進んでいくので、問題意識を持ちやすく、読んでいると自分でも考えるきっかけになる。
だから、ちょっと読んでは立ち留まり考え、またちょっと読んでは、といった感じで、なかなかページ数が進まない。
しかし、語り口は軽く、理論と実例の割合も絶妙なので、ストレスは一切ない。
というわけでたぶん類書はないし、
比較文化論入門、みたいな本と比べても(読んだことはないが)、
ROI(読書の労力に対するリターン)は圧倒的に高いと思う。
投稿元:
レビューを見る
前半はダイバーシティについて、論理学的な頭の体操も含めて書かれた寓話。文学として読むのは難しいが、中学生くらいがダイバーシティについて学ぶための教材としてはちょうど良い。後半は、日米比較文化論の授業をまとめたようなもの。こちらの方が勉強になった。
空気が読めない、という言葉は、日本の上下関係を重んじるところからくる同調圧力だと思っていたが、今の社会に希望の持てない人々が、マジメな努力をやめ、今を楽しく生きるだけの人から産まれるという考え方は新しかった。
投稿元:
レビューを見る
もう1回読み直さないと、真意がつかみきれないような。
文化的なバックボーンが違うと伝わらないことが多い、というところは激しく同意。