ストンと落ちる爽快なラスト
2020/07/26 20:01
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投稿者:まみこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一気に読んでしまいました。
50人の人々をめぐる、お隣の国、韓国の掌編集。
それぞれの生活に息づいた、世界の矛盾と先への希望。あたたかく、心に染み渡ります。
読み終えて、1冊の中のすべてが繋がる爽快感と満足感をぜひ味わっていただきたい!
著者の知性を感じる良作でした。
お見事としか言いようがない
2024/02/21 14:16
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投稿者:もそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
50人の物語である。
全部ちゃんとストーリーがある。
それがすべてつながり、からみあっていく。
人間て、ひとりじゃないのね、と思わされる。
そして後味よく話は収束していく。
お見事としか言いようがない。
通り過ぎてゆく人々の心象風景を描く
2020/11/02 09:48
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
隣人の物語とでもいうのか、郊外都市に暮らす様々な人々の人間模様が淡々と書かれている。病院を介していろんな人が行き交う様子が、病や争いなどによって傷を負った人々の経由地を中継しているようにも感じられる。読むほどに、すれ違っている人々の相関関係が浮かび上がる。巻末には人名検索表がある。相関図とまちの地図を想像しながら読んだ。
海を隔てたすぐお隣の国。知っているようで、知らない隣人たちの日常は、ニュースにはならない真実である。
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ソウル近郊都市らしい地にあるけっこう大きな病院を軸に、そこに何らかの縁のある51人のささやかな話が49編+1編に収まっている。喜怒哀楽……といっても大変なこと、うまくいかないことに巻き込まれている人たちが、それでも一筋の希望を見つけたり、世のなかも捨てたもんじゃないと思いながら生きているさまが描かれているのが今の韓国らしい。きょうどこかで見かけた文句で「日本は正論に照れてしまう」というようなものがあったけど、そこがちゃんと正論がまかりとおる韓国らしいすがすがしさを感じるストーリーたちで、一編ずつ読んでいくのが楽しみなようなもったいないような一冊だった。手元に置いておきたい一冊。
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読売新聞20181125掲載 評者:朝井リョウ
産経新聞20181216掲載 評者:石井千湖(書評家)
東京新聞2019113掲載 評者:白石秀太(書評家)
読売新聞2019120掲載
読売新聞2020329掲載 評者:中島京子(作家)
朝日新聞202066掲載 評者:星野智幸(作家)
読売新聞2021822掲載 評者:尾崎真理子(早稲田大学教授)
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3回も読んだ。ハッピーエンドかサッドエンドかどっちでもない、誰一人も主人公ではない、50人全員主人公である小説で新鮮な感じだった。 様々人の事情を伺えて、特に外国人,障がい者,性少数者など他人を苦痛を考えてみる機会もできた。将来、社会問題について話す小説を書きたい目標を改めて叶えたいと思った。
少し恋愛話もあってモヤモヤしながら、一時私の青春の思い出になってくれた人が思い浮かんで、いつか別れることを知っているにもかかわらず好きっていう感情だけ信頼して関係を続けていくように心がけてた私が恋しくなった。相変わらず悲しむくらいの心は残っているって小説を読みながら気づいた。笑 恋愛の話は少しだけだが、印象深く残ってる。
人から、社会の差別から、他人の無視から心にけがをしても、誰か私のことを思ってたら安心して元気出すことができたら、一人でも私のことを好きにしてくれたら、理不尽な世界でも絶望せずに元気出して頑張れる原動力になる。難しいけれど、人を傷付けないで生きていきたいとまた思うようになった本!
社会問題を描く小説は、つまらない記事とは違って、まるで私が体験しているような生々しい感覚を与えてくれる点が意味があると思う。
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すばらしかった!最終章、涙目で、手を震わせて、願いをこめて、ページをすすめた。
いつもながら、訳者あとがきが、少ないページ数でとても充実。各小説のあとがきをベースに、韓国事情のルポ、エッセイが読みたいなぁ。
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50人の韓国人(一部例外あり)をそれぞれ主人公にした50編の短編集。登場人物はゆるく、あるいは緊密につながっていて、子供から老人、男性、女性と多様性に満ちている。それぞれに問題を抱えていることが多く、韓国の社会問題も反映されている。
登場人物は個性に溢れていて、それぞれの背景に思いを馳せながら読むのも楽しいし、各エピソードに別の登場人物がちらっと登場するのを探すのも楽しい。
社会がめちゃくちゃなところは韓国も日本も同じだなと思いながら読んだ。
ちょっと事件を盛り込み過ぎかなとは思ったが、面白かった。
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ホロコーストや戦争、大きな災害について語られる時に、「◯万人が亡くなった」のではなく、「一人の死が◯万回あった」のだと表現されることがある。この話ではそんな深刻な事態には(幸いにも)ならないけれど、最後の章を終えて振り返ると、確かに一人ひとりのささやかな毎日が愛しく思えてくる。著者が向ける登場人物たちへのまなざしがとても好きです。
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51人もの人生がゆるやかに交わりながら描かれていて、
何度もページを遡って確認しつつ読み進めた。
もうとんでもなく素晴らしかった!
読み終わったけど、まだページをめくっていたい。
どこを読み返してもハッとするし、1回目とはまた違う感情が生まれる。
全体を通して、登場人物へのまなざしが好きだ。
たとえば、大学に関して。
大学に進学しなかった子。
奨学金のために休学できない子。
現在休学中の子。
それぞれ描いておいて、優劣をつけない。
ジャッジしない。
それがすごく素敵で、嬉しかった。
ソ・ジンゴンの「息子には大きな会社に入って大きな仕事をしてほしい」って願いも、エゴではなく彼なりの親心なんだと分かるし、
コン・ウニョンやキム・ハンナの章を読むと、でも自分の仕事をするってこういうことだよな、
ジンゴンもヨンモのことを、っていうか自分自身のことをもっと認めてあげたらいいのにと思った。
暴力行為を「厳しい指導」と捉えているイム・デヨル、忠誠心をはかるために無理難題を突きつけてくるクァン上士には憤慨したけど、その延長線上にあると思われる、
嘔吐などに苦しむソ・ヒョンジェに投げられた言葉
「大の男がそんなに弱くてどうするんだ?」
これにヒョンジェが「こういうことに性別も年齢も関係あるものか」
って認識できてるのは、希望だと感じた。
未来に向かって、社会は良くなっていくという希望。
と考えたところで頭に浮かぶのはスティーブ・コティアン。
希望が楽観であり、楽観に殺される社会で彼は育った。
自分が他の場所にいるときでも、そこでは今も誰かが殺されてる。
韓国遠征中の彼の心情が、物語の読者である自分と少し重なる気がした。
と、書いても書いても、気持ちが収まらない。
読み終わった人が集まるオフ会があったら行きたいくらいだ。
この本について誰かと話したい。色んな人の感想を聞いてみたい。
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やや。これは。50人(+α)の物語ということで散漫になるかと思いきやそんなことはなく。
ある章では主人公だった人がある章では脇役、またその逆など、なるほど誰もが自分が主人公で、他人の人生では脇役なのだよね。
いろいろなトピックや実際に起きた事件も無理なく収められ、最終的にまとまりもあって、しかもこのスピード感、ドライブ感。面白かった。
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いちばん軽蔑すべきものも人間、いちばん愛すべきものも人間。その乖離の中で一生、生きていくだろう。(311ページ)
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50人の主人公たちのオムニバス小説。いろんな人が出てくる。世代も職業も立場も様々。なんせ50人(実際には51人らしい)だから。
それぞれの物語がゆるく繋がってる。
「Aさんの話を、Bさんの視点から描く」というほどにはなってない。
「Aさんの話の中で、通りかかったあの人って、もしかしてBさん?」くらいの感じ。
伏線回収の気持ちよさが魅力の群像劇も良いけど、こういう緩いつながりで世界を描く感じも好き。
唯一の難点は、韓国人名の馴染みのなさで、ちょっと固有名詞を覚えづらいところか。でも、また読み返してみたくなる一冊。
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50+αのジグソーパズルとなった物語を、一片(一篇)づつ読んでいくのだが、しばらくすると、その一片の物語の隣にもう一片の物語が繋がっていき、やがて色々なカップルや家族、友人たちの姿かたちが浮かび上がってくる。
その仕掛けもとても面白いが、短い一篇の中に印象深い登場人物の行動や言葉があり、心に沁みる。
背景には、現在の韓国社会がはらむ問題や矛盾も描かれており、印象深い。
ラジオで紹介されたので読んでみたが、巡り合えて良かったと思わせる作品。
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この物語はあとがきにある通り、主人公がいないと同時に、誰もが主人公である物語だ。誰しもが自分の人生では自分が主人公で脇役ではないのだから。また登場する全ての人物は誰かの人生の脇役でもある。51人も主人公がいるのだから視点がそれだけ多いが物語は決して散漫ではなく、そのバランス感覚に驚かされる。主人公が脇役になり、脇役が主人公になる。一瞬人生が重なったり交差したりする。絶妙なバランス。ショートショートが延々続いているので山場らしい盛り上がりには欠けるけど、自分ではない近しい他人の人生を覗きみているような気分になる。そしてどこかで私自身もヒョイと登場して来そうな、そんな1冊だ。