テンダーワールド
著者 藤木 稟
人類は再び「神」に遭遇する!? ネオ創世神話の降臨!! ーー近未来のアメリカで続発する怪事件。去勢された男女の変死体、封印された危険なゲームソフト『ゴスペル』、不気味なカ...
テンダーワールド
01/23まで通常922円
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商品説明
人類は再び「神」に遭遇する!? ネオ創世神話の降臨!! ーー近未来のアメリカで続発する怪事件。去勢された男女の変死体、封印された危険なゲームソフト『ゴスペル』、不気味なカルト集団「ハイネスト・ゴッド」。謎を追うFBI捜査官のカトラーとオカザキ、レポーター・鳴海たちが、巨大ネットシティ「OROZ」で遭遇する、人智を超えた真実とは!? 新世紀のハイパー・バイブル!
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なんだか積み残しが多いって言うか、解決していない部分が結構多い気がするんだよね、それなのにページ数ばっかり多くって。何だかボタンの掛け違いっていうか
2004/06/29 20:31
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《科学の奇跡と言われるタブレットが浸透する世界。ネット実験都市OROZ、連続するエイリアン殺人事件に二人の捜査員が挑む》
ある作家が、ジュニア小説作家で終るのか、それとも大人の小説の書き手になれるのか、の境目は何だろう。むろん、それは価値観を意味はしない。収入という点で見れば、今どきの大人がコンスタントに小説を買い続けるということもなくて、むしろ子供たちの豊かな財布を当てにできる前者のほうが、いい商売、賢い選択かもしれない。
夏目房之介が『漱石の孫』のなかで言うように、文学、名作が世の中を動かしている、日本が世界に誇れるものだというのは日本人の思い込みに過ぎなくて、実はアニメとマンガ、そしてゲームこそが世界からは日本発信の文化として認知されている、というのは正しい認識だろう。
そういう意味で、ある人間がジュニア小説作家であることは、彼(彼女)の能力のあるなしを意味するものではない。それこそ言いふらされたことだけれど、優れたジュニア小説は、大人の鑑賞にも十分応えてくれる。逆に、ジャンルに甘えた作品、いい加減な調査、虚仮脅しの事例、空虚な、辞書で始めて知った言葉をつらねたような文章で韜晦するような作品は、いつか子供たちに見捨てられるに違いない。
SFでもそれは変わらない。着想の意外性や状況設定の異常さだけに頼ろうとすると、底の浅さが見えてしまい、読むに耐えないものになる。逆に、状況をすんなり理解させる文章力があれば、その奇想が少しも気にならない。たとえば井上夢人『オルファクトグラム』や西澤保彦『両性具有迷宮』などは、格好の例だ。
時代は近未来。その誕生前後でBT(before tablet),AT(after tablet)と区分されるほどにインパクトが大きいタブレットが社会を左右する、遺伝子操作は当たり前の時代。ラスベガス近郊のネット実験都市OROZに頻発する殺人事件は、性器を切断された遺体の不気味な姿から「エイリアン事件」と呼ばれている。被害者に共通するのは、自分たちの遺体をRE研究所に献体をするという遺書を残していること。
この事件の解決のためにFBIが選んだのが捜査員カトラーと空手ボーイのオカザキ。二人が目を付けたのが、ネットカルトの教祖ロール・デネットである。彼らの捜査に組織の圧力がかかり、カルトの内部で何かが起きる。この流れは実にスリリング。ただし、この世界の鍵となるタブレットの凄さが、作者が騒ぐほどのものに思えない。だから描かれる社会そのものが、ガッカリするくらいプアである。
密かに取材をするジャーナリストの鳴海と、彼の意を受けてネット調査をするハッカーのロビン。彼らに迫る敵の魔手。話はそれなりに面白いけれど、たとえばエイリアン事件は、そのものが話の途中で消えている。作者紹介のところに「若いながら博覧強記で迫る」みたいな文があるけれど、こなれていないのはそのせいだろう。後半は事件の解決以外のことを描くことに精力が注がれ、凝縮度が落ちた。何だか頁数が泣いている気がする。