自由と平等でない国、アメリカ
2021/01/18 16:36
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投稿者:ジミーぺージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コーラという黒人少女が自由を求め、
奴隷であったランドル農場から逃げる話です。
現在までもアメリカ黒人差別は続いています。
コーラは、奴隷は主人の所有物なのだから、
ここから逃げるほかに自由は得られないのだと。
母のメイベルも同じことをした。
それも、私を置き去りにしてまでも・・・
コーラは勝ち気でくじけない性格なので、
悲劇的な内容でありながらスリルと希望が
混在した面白さがあります。
アメリカは奴隷解放で南北戦争までした国です。
世界中で民族対立、宗教対立による戦争があります。
しかし、奴隷には戦うことも許されない人間なのです。
だから、逃げるしかないのです。
奴隷とは、
「人格としての権利と自由をもたず,
主人の支配下で強制・無償労働を行い,
また商品として売買,譲渡の対象とされる
(もの言う道具)としての人間のことをいう。」
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投稿者:えんぴつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ社会の差別は、表向き60年代の公民権運動でほぼ改善されたというのは誤りだ。現実はなかなか変わらない。むしろヒスパニック系、アジア系への差別が顕在化して、状況はますます混沌としている。ブラック・ライブズ・マターのうねりが起きて、声を挙げやすくはなったのかもしれないが。
その昔、ビートルズが初めてのアメリカ公演を行った際、アメリカでは白人席、黒人席が分かれていて、入場口も別であること知り、この区分けをなくさなければ、公演を止めるとクレームをつけ、人種による席の区別が撤廃されたことをご存知だろうか。
地下鉄道という設定がまずユニークだし、悲しみを乗せた鉄道で逃げるという発想が、よくよく考えれば切ないではないか。
物語はスピード感を持って進む。しかし、現実はどうだ。
一気に読んだ。
地下鉄道(文字通りの意味で)
2021/10/31 14:45
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投稿者:じゃび - この投稿者のレビュー一覧を見る
実在した黒人奴隷逃亡支援組織、通称「地下鉄道」が本当に文字通りの意味での地下鉄だったら?という着眼点が面白いと思ったので読んでみた。南北戦争前の奴隷の逃亡劇なので当然相当にきつい描写が多く、内容も重いが、主人公が移動する土地ごとにアメリカという国が見えてくる構成と手に汗握る先の読めない展開に、途中で投げ出したくなるようなことは一度もなかった。
どのくだりも印象的だったけど、やはり伝説的に語られ続けた母メイベルの章で締めたところと、奴隷狩り人リッジウェイの存在が忘れ難い。黒人が白人と同じ人間だなんてことは本当はわかっていて、でもアメリカを強くて偉大な国にするためにはこれが一番都合がいいんだから仕方ないだろ的な開き直り方をしているリッジウェイの感覚は、ある意味奴隷の逃亡に手を貸す白人キャラクター以上に現代人っぽいように思った。
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投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
各章を受賞された作品、興味をもって読みました。
奴隷という重い重い内容ですから衝撃的な描写シーンもありました。
長い作品ですが、最後はコーラを応援してました。
是非お読みください。
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
南部で三代にわたって奴隷となっている少女が、地下鉄道の力を借り、「主人」のもとから逃げ出す。しかし、奴隷制のない地域まで逃げればいいのかといえば、そうではないという点がこの問題の複雑な点である。この小説には様々な差別の問題が盛り込まれており、勉強にもなる。単なる白人と黒人の対立の問題にとどまらないという点も重要。
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投稿者:ダタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷制という今なお歪みを残す重い歴史と
逃避行というスリリングなドラマ。
二つの歯車が絶妙なバランスで噛み合い、
物語を最高にドライブさせている。
本書が素晴らしいので
映像化されたものは
見たいようで、見たくないような…。
アメリカ史を幻視する
2021/07/29 22:34
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷制時代のアメリカ、奴隷たちを北部やカナダまで逃がすネットワークを「地下鉄道」と呼んだ。ホワイトヘッドは文字通りに地下鉄道が張り巡らされていたらという設定を用いアメリカの歴史を語り直す。今日のアメリカについて考えるうえでも読まれるべき作品だ。
こんなに凄いとは
2021/02/25 16:33
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投稿者:のりちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの黒人奴隷のことは知っていたがこの小説ほど白人の黒人に対する扱いが酷いとは思わなかった。この小説は長い間黒人をドレイとして扱い続けたアメリカの実態をよく描写していると共にコーラの奴隷から解放される姿をサスペンスフルに描いていて感動した。
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投稿者:ごんちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
奴隷が開放されるまじかの話だと思いますが、コーラがリッジウェイから逃げて再三追われるところがなんともかわいそうに思いながら最後に生きて逃げられたところが良かったです。しかし、逃げる過程であまりにも親切な人達の死がつきまとい、コーラの命はたくさんの人達の希望であり、生かした人々の思いも受けていきていかなければならないと思うとこれからの人生はつらいものになる気がしました。
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アメリカの黒人差別を描いた名作といわれる小説は、描かれる物語の過酷さに加えて、人間の暗部、そしてアメリカという国の暗部まで切り込むような、凄まじい作品が多いと感じます。
この『地下鉄道』も、そうした作品の系譜を継ぐ凄まじさが伝わってくる。自由を求めたコーラが行き着いた土地の数々から、差別の根の深さ、アメリカという国の抱えた矛盾までも透けて見えてくるようです。
19世紀のアメリカ。南部の農園で奴隷として暮らしていた黒人の少女・コーラは、新入りの奴隷の少年・シーザーから、黒人奴隷を逃す“地下鉄道”を利用した、逃亡計画に誘われる。二人は逃亡を決意するが、奴隷狩り人のリッジウェイが二人の後を追い……。そして、コーラは各地で黒人の現実を知っていく。
地下鉄道というのは、史実的には黒人の逃亡を支援した組織の隠語のこと。しかしこの小説では、文字通り地下鉄道は鉄道として登場し、コーラたちは列車に乗り込み、黒人差別が厳しいアメリカの南部から、奴隷制が一足早く撤廃された北部へ向かいます。
物語の序盤で描かれた農園での過酷な生活と逃亡劇。そこから協力者の助けの元、地下鉄道で文字通り自由へ向かって走り出す姿は、自由の象徴としてとても分かりやすい。
作品の文章や話の雰囲気も硬質なのですが、この場面は映像として鮮やかに浮かんでくるよう。このイマジネーションだけでも、とてもユニークで、どこかロマンチックな予感を感じさせる。
北部に至るまでにコーラが訪れることになる、アメリカの各州。初めにたどり着いたサウスカロライナでは、コーラたちの農園があったジョージアとは違い、黒人に対しても先駆的な考えを持っているようで、コーラたちもここで仕事を見つけ、徐々に生活の場を築いていきます。このままここに居つくべきか迷うコーラたちですが……
州を超えるごとに形を変えていく物語。しかし、その根底にあるものは変わらない。一見ユートピアに見えた場所も、一歩足を深く踏み入ればそこには強烈な差別意識が息づいている。そして、新しい生活を築こうとするコーラの後を追うリッジウェイの存在は、現実的な脅威として、そして奴隷時代の過去として、コーラにまとわりつき安息を壊していく。そして地下鉄道自体の存在にも危機が迫り……
舞台が変わってのノースカロライナの章はかなり過酷。匿ってくれる人は見つけたものの、黒人は見つかり次第処刑され、匿った人物も無事で済まないということから、コーラはほぼ一日中屋根裏に隠れることに。そこから覗くことができる公園では、夜な夜な、黒人の処刑が行われ……
奴隷を逃すため、全米に張り巡らされた地下鉄道、という、寓話的でロマンチックなアイディアが中核にありながらも、物語自体はなかなかに希望が見えない。ようやく見えた希望や、穏やかな平穏も、裏切られ、崩壊する。そして地下鉄道自体も危機に陥る。これもまた、今の象徴なのかもしれない。
映画だったか報道だったかは忘れたけど、黒人男性が白人警官の前を歩くとき、どうしても緊張してしまう、みたいな話を見た覚えがあります。当時は若干オーバーに思ったものの、最近の情勢なんかを見ていると、それはもはや冗談に受け取れない。平穏に暮らしていても、運が悪ければその平穏が一瞬に崩れる。それは現実としてあるのだろうし、その現実の象徴としてこの『地下鉄道』という小説もあるような気がしてなりません。
一方で単に白人批判に終わらないのも、この小説の力だと思います。白人、黒人以外にも、移民やインディアンなどの先住民族のパワーバランスや歴史も、物語の中に織り込み、そうした歴史を描くことでアメリカという国が誕生時から持ち合わせる、闇を描き、また別の場面では黒人間の意見の対立も描く。
国家の暗部、あらゆる人間の持ち得る闇と対立。それも描くから、物語は単に白人は悪、黒人は被害者、という図式ではなくより重層的になっていく。
コーラ以外の人間にも幕間ごとに焦点を当て、その人物が抱える様々なかたちの差別意識を露わにしたり、あるいは自由を求める人、愛を求めた人の輝きや哀しさを表したりと、そういう点でも素晴らしいと思いました。特にコーラの母の真実が分かるシーンは印象的。
アメリカでピューリッツア賞をはじめ7冠を受賞し、ニューヨークタイムズやウォールストリートジャーナルなど様々な有力紙誌で年間ベストブックに選出された作品だそうですが、その輝かしい実績もうなずける。それだけ迫力に満ち溢れた小説です。
一見天国に見えるところでも、地獄は地続きで存在していて、地獄に見えるところですら、より深い闇がある。それは今のアメリカの人種間の状況も表しているのかもしれないし、人間すべてが抱える、敵や他人と判断した人に対する残酷さ。判断されてしまった人たちの過酷さと絶望までも、表しているのかもしれません。
『地下鉄道』は世界に対し、おぞましいけれど忘れてはならない過去と、そして本来あるべき今の姿、未来に作らなければならない世界の姿を思いだせるような、そんな作品だと感じます。
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アフリカで生まれ、父母を亡くして奴隷商の手に渡り、アメリカ南部の綿花畑で死んだ祖母。10歳の娘を残し、ひとりで農園から逃げた母。そして18になったコーラもまた、残忍な白人が営む農園を飛びだした。逃亡者を待っていたのは、黒人を北部にある自由州まで連れていくため、地下に張り巡らされたトンネルの中を走る蒸気機関車〈地下鉄道〉だった。しかし、農園の〈所有物〉であるコーラを、奴隷狩り人は執念深く追いかけてくる。安寧の地はどこにあるのか、なぜ彼女とその“家族”ばかりが逃げ続けなければならないのか。19世紀の黒人奴隷の目から見たアメリカの姿をデフォルメしつつ、現在も残る差別の心理を描いた歴史エンターテイメント。
まず文章が上手い。余分な装飾がなく、どの比喩もぴったりと嵌っていて、詩的でありながらストイックなほどエモーションに流れることがない。作中コーラは目を覆いたくなる悲惨な場面に何度も何度も、嫌になるくらい何度も遭遇し、当然泣いたりくずおれてしまうのだが、それを語る文章自体が涙に濡れてしまうことはない。
けれど物語の展開はサービス精神旺盛だ。蒸気機関の黎明期に地下鉄を走らせるというアナクロニックな設定はやっぱりワクワクすると同時に、作中コーラが何度も思いを馳せる「地下のトンネルを掘り線路を敷いた人びと」こそが、現実の奴隷解放運動に尽力した人びとの比喩となっている。コーラが逃亡する州の描写もときにSFのディストピアふうに、ときにホラーふうに誇張されているとはいうものの、特定の人種を絶えさせる目的で強制的に避妊手術をおこなうことや、被差別民同士の対立を煽って密告をさせたり、街中で私刑をおこなったりなどは、20世紀を通じて、そして今になってもさまざまな地域で続いていることを私たちは知っている。
キャラクターもまた魅力的だ。コーラをノース・カロライナへ乗せていく運転手の少年や、奴隷狩り人のリッジウェイと奇妙な絆を築いているホーマー少年はディケンズやマーク・トウェインの小説からやってきたよう。インディアナの理想郷のようなヴァレンタイン農園でランダー氏がおこなう演説はキング牧師を思わせる。そしてその最期はマルコムXのようだ。アメリカとアフリカン・アメリカンの近現代史がコーラの道程に濃縮されて再現されている。
白人のキャラクターももちろん重要な役割を果たす。地下鉄道の駅を守るのは白人でなければできないからだ。ときには駅と地下鉄道の秘密を守るため、彼らも奴隷制支持者のようにふるまわなくてはならない。ノース・カロライナの駅長マーティンとその妻エセル、そしてマーティンの父で元駅長の故・ドナルドのエピソードでは、矛盾を抱えた弱い人間が、それでも誰かを救おうとするギリギリの尊厳のようなものを描いている。私は特にエセルのどうしようもない人間味にリアリティを感じて、彼女の章の“正しくなさ”に涙が出そうにもなった。
また、コーラが女性だということも大きな意味のあることだろう。初潮が来るなり農園の奴隷仲間からレイプされたこと、手術で出産できない体にさせられそうになること。奴隷狩り人の仲間に体を狙われて、逃亡する隙ができたと考えること。かつてレイプされた経験があることをロイヤルに謝ってしまうこと。差別を受ける人種の少女であるがために幾重にも搾取される苦しみ、痛みが描かれている。コーラはとても強いが、深く傷ついてもいる。甲高い叫び声ではなく、闇を直視して深く掘り進む地下鉄道そのもののような低く声で、尊重されるべきものが尊重されない世界の異様さを訴えかけるのだ。
終わり方もシンプルながら現代に接続させていて上手いと思った。アメリカはいつになったらアフリカン・アメリカンの“故郷”になれるのだろう。
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黒人奴隷の少女が様々な犠牲を払いつつ逃亡し続ける物語。奴隷逃亡を支援する目的で地下に張り巡らされた鉄道を使って。
これは最高の良書。なぜなら全く眠くならない。アメリカの奴隷制度の歴史というノンフィクションの上に、冒険活劇風のフィクションが乗っている。自分自身、初めて知ったことも沢山。無駄な例えや修飾がないのにリアリティがある。実時間とは無関係にスピード感もあって飽きない。突然小話風に現れる、人物にフォーカスした章など、メリハリもある。
物語と面白いのはもちろん、アメリカの奴隷制度を知る上でも勉強になる。奴隷は人間とは別の生物扱いなのか?でも、性の対象にしてるんだから、やっぱり人間だと思ってるんだよな…、など。
日本にも士・農工商・穢多非人みたいな無茶苦茶な制度があったんだから、これを読んで頭ごなしにアメリカの歴史を批判するのも間違い。中学生ぐらいの必読書にしてもいいんじゃないかと思ったりする。
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奴隷として暮らすコーラ。
仲間と地獄のような農場から脱走を図る。
奴隷狩人の追跡に怯え、息を詰め、理解者との束の間の安息にささやかな生を得る。
どこまでもつらい物語。
だが、比類な物語性を持つ。
今年読んだ中で断トツの作品。
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血腥い描写が多く、気が重くなる。読了まで時間がかかった。それでも読んで良かったと思う。
黒人差別の実情、血に飢えた白人の惨さ。本作で描かれた奴隷制度こそ廃止されたが、本質は今も変わっていないように思った。いつか原文で読みたい。
「彼女は姿勢に気を遣い、歩く姿は槍のようだった。背を屈め続けるように仕込まれた、そして二度とは屈まないことを決意した者の在り方だった。」
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大傑作。
南部奴隷を逃す組織を「地下鉄道」と呼んだそうだが、それが本当に地下を走る機関車だったら?というアイデアを挿入、あとはかなり史実に忠実に描かれた、少女の逃亡譚。
『風と共に去りぬ』が正当な注釈がつくまで配信停止となったとき、ファンの私は「いやー、オハラ農園に仕えたマミーをはじめとする人々のように、奴隷だって(比較的)幸せな人生もあったのでは?」とか思ったけど、奴隷制をまるで理解してなかった。奴隷が何かをわかってなかった。ひとが何もかも奪われて生きる地獄を。
それでもこうして、どんな残酷な罰が待とうと、自由と尊厳を求める勇気を大勢が奮い、死んでいったことを知ろうとしていなかった。
教えてくれてありがとう。
そして物語としても、感情を排した語り口、美しい描写、テンポよき進行、実によくできちょる。