天国を出ていく
著者 エリナー・ファージョン , 石井桃子
幼い日,本がぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずし...
天国を出ていく
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商品説明
幼い日,本がぎっしりつまった古い小べやでひねもす読みふけった本の思い出―それはエリナー・ファージョンに幻想ゆたかな現代のおとぎ話を生みださせる母胎となりました.みずみずしい感性と空想力で紡ぎだされた,国際アンデルセン賞作家の美しい自選短編集から,この巻には13編を収めます.
目次
- 天国を出ていく
- 小さいお嬢さまのバラ
- むかしむかし
- コネマラのロバ
- ティム一家
- 十円ぶん
- 《ねんねこはおどる》
- ボタンインコ
- サン・フェアリー・アン
- ガラスのクジャク
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照明を浴びた高価な宝石というよりは、ていねいに作られた陽だまりのビーズ細工。
2011/11/25 21:01
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ファージョンという作家に、どうして今までめぐり合えなかったのだろう。
こんなにしゃれていてあたたかくなる本は、なかなかない。
ひとつひとつのお話のなかに、すごく大事で深いことが詰まっている。
それでいてとてもさりげない。
てのひらに乗せた卵を割らないように、ずっと握りしめていたいような、
そんな特別の思いをこの本に抱くひとは少なくないだろう。
ファージョンの脳内は、草原のように広かったのだろう。
ファージョンの心は、ひなどりのようにやわらかかったのだろう。
そうでなかったら、このような物語はきっと書けない。
この本はファージョン自らが短篇の中から選りすぐった自選集なのだが、
いちばん最初の「天国を出ていく」に、まずやられる。
単行本では27篇の収録が、文庫で2分割されているが、
2冊目のこちらの冒頭に「天国を出ていく」を持ってきた編集のセンスに拍手。
(どうなんだろう。ただ順番どおりに並べたらこうなったのかな?)
うつくしい空想のなかに、すこしだけシビアな目線。夢と現実が交差する。
「コネマラのロバ」、「ねんねこはおどる」、「サン・フェアリー・アン」、
「しんせつな地主さん」は、比較的長さがあり読み応えのある4篇だが、
どれもが読み終えたあとに、胸にあたたかいものがおりてくるような、
涙が出そうな幸福感をおぼえる。
心がふるえるとは、こういうことを言うのだろう。
そして、鮮やかで細かな描写。
「十円ぶん」の、男の子が機械をがしゃんとしてチョコレートが出てくるところ。
「ボタンインコ」のインコが女の子の指にちょこんと舞い降りるところ。
外国映画のワンシーンを観ているように、情景を伝えてくれる。
最後の「パニュキス」は、萩尾望都の初期の短篇に出てくるような、
少年のころ特有の淡い憧憬が綴られる。
少年の心のなかに住む、思いを寄せる少女のかれんさ、景色のうつくしさ。
夢をみているような一篇である。
そして「むかしむかし」の最後の二行にはう~んと考えさせられてしまう。
いまからでもファージョンに出会えたことに、感謝したい。