- 販売開始日: 2021/03/05
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-319212-1
われもまた天に
著者 古井由吉
インフルエンザの流行下、幾度目かの入院。雛の節句にあった厄災の記憶。改元の初夏、山で危ない道を渡った若かりし日が甦る。梅雨さなか、次兄の訃報に去来する亡き母と父。そして術...
われもまた天に
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商品説明
インフルエンザの流行下、幾度目かの入院。雛の節句にあった厄災の記憶。改元の初夏、山で危ない道を渡った若かりし日が甦る。梅雨さなか、次兄の訃報に去来する亡き母と父。そして術後の30年前と同じく並木路をめぐった数日後、またも病院のベッドにいた。未完の「遺稿」収録。現代日本文学をはるかに照らす作家、最後の小説集。
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より強く死の影を感じる作品群
2022/08/24 20:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
最後の純文学作家とも言える古井由吉の遺作である。短編が4篇収められている。しかし、最後の作品は未完であり、タイトルも「遺稿」となっている。古井由吉の後期の作品には死の影が差しているが、この中に収められた作品には、それがより強く感じられる。もうこの人の作品を読むことができないのは寂しい限りだ。
遺作となった連作短編集
2020/11/20 18:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:遊糸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯の惹句が心に沁みる。
「自分が何処の
何者であるかは、先祖たちに起こった厄災を
我身内に負うことではないのか」
「雛の春」昨年(2019年)の立春で始まり
(当時のインフルエンザの流行は、
今年(2020年)のCOVID-19に重なって見えてしまう)
「われもまた天に」では改元の祝いのあった連休のころを綴り
「雨あがりの出立」は梅雨のさなか接した訃報
そして
「遺稿」は、九月に大きな災害をもたらした台風を描く。
幾度目かの入院・手術や
衰えいく我が身を
あるいは
近親者の訃報によって呼び覚まされる
亡くなった人々への思いが綴られていく。
未完の「遺稿」だが、
これはこれで、完結しているようにも思える。
恬淡にも見えるが、文体は屹立し、
読むほどに胸に沁みいった。
言葉の選び方も見事という他はない。
(自分などが述べるのは、僭越で汗顔の至りであるが)