八つ花ごよみ(新潮文庫)
著者 山本一力
満開の美しさも散りゆく儚さも、一緒に眺めたいと願うのはいつだってただ一人、おまいさんだけだった。幾年もの時を重ね、季節の終わりを迎えた夫婦が愛でる花。あるいは、苦楽をとも...
八つ花ごよみ(新潮文庫)
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商品説明
満開の美しさも散りゆく儚さも、一緒に眺めたいと願うのはいつだってただ一人、おまいさんだけだった。幾年もの時を重ね、季節の終わりを迎えた夫婦が愛でる花。あるいは、苦楽をともにした旧友と眺める景色。桔梗、女郎花、菖蒲、小梅、桜……移ろいゆく花に、ゆっくりと熟した想いを重ね綴られる、八つの絆。江戸市井に生きる人々の、ゆかしい人情が深く心に沁み渡る、傑作短編集。(解説・細谷正充)
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江戸時代にも、不治の病はあったわけで
2013/07/24 07:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうにも頭と心が疲れて来た時に、山本さんの作品を手に取ります。江戸時代の生活や風情は、ささくれた頭と心をいつも柔らかく癒してくれるのですが。八つの短編からなる本作品も、江戸の風情や実情を良く現わしていて、さほどドラマチックではないけれどゆったりと読める一作。タイトルの通り、八つの花がそれぞれの作品にそれこそ花を添えるように印象的に使われています。そしてその花は決して華美な物ではなく、菖蒲やききょう、ひいらぎといった本当に庶民的な花たちで、控え目ながらもしっかりと各作品を色付けています。
それぞれの短編に共通したテーマというような物は感じられませんでしたが、比較的主人公達が歳を召していたことからしっとりとした作品が多いように感じました。印象的だったのは、「病気」。いくつかの作品には、「不治の病」が扱われていたのですが。そうか、江戸時代にも当然「脳溢血」や「クモ膜下出血」というような病気もあったわけで。また頭の中を手術する、等という医療もなったどころか、頭の血管が破裂する事で神経がやられ、体のあちこちの自由が奪われるのだ、というような知識も無かった時代。それこそ日々変わりゆく伴侶の姿におろおろとしながらも、何がしかの悟りを開いて「愛」を深めていく姿がとても印象的でした。ゆったりと時間が流れているようで、不便でもあり医療の面でも大変な時代でもあった江戸時代。それでも強くたくましく今日を生きた人々の、物語です。