日本の国会
著者 大山礼子
政党間の駆け引きに終始し,実質的な審議が行われない国会.審議空洞化の原因はどこにあり,どうすれば活性化できるのか.戦後初期からの歴史的経緯を検討した上で,イギリスやフラン...
日本の国会
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商品説明
政党間の駆け引きに終始し,実質的な審議が行われない国会.審議空洞化の原因はどこにあり,どうすれば活性化できるのか.戦後初期からの歴史的経緯を検討した上で,イギリスやフランスとの国際比較を行い,課題を浮き彫りにする.「ねじれ国会」が常態化した今,二院制の意義を再考,そして改革の具体案を提示する.
目次
- はじめに
- 序章 政権交代は国会を変えたか
- 第1章 戦後初期の国会運営 日本国憲法と国会法の枠組みの中で
- 1 「国権の最高機関」としての出発
- 2 本会議中心主義から委員会中心主義へ
- 3 議員の待遇改善と補佐機構強化
- 4 憲法施行直後の国会運営
- 5 アメリカ・モデルの限界と修正
- 第2章 空洞化する審議 五五年体制下の国会
- 1 日本の立法過程の特殊性
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果たして問題は制度にあるのだろうか?
2011/11/08 10:27
13人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の国会が空洞化していると言われて久しい。肝心かなめの政策形成、法案審議に関するコアな部分の議論は、立法府の外、具体的には政党の内部(自民党の場合は部会-政務調査会、民主党の場合は部門会議-政策調査会)で為され、しかもその大半は非公開だから、一般の国民には与党が提出する法案が自分たちにどういう利益、不利益をもたらすのか分かりにくかった。法案の中身を知悉しているのは与党議員とそこにアクセスを持つ業界団体、利益団体と、その団体の窓口になる官庁(官僚)のみであり、それが利権の温床となり、族議員の跋扈を許し、政治をゆがめ、一部の団体のみに利益を誘導する我田引水的な政策形成がなされる理由だとされた。北岡伸一は、その著書『自民党』で、この構造を「利害関係者の政治」と呼び、飯尾潤は、その著書『日本の統治構造』、『政局から政策へ』で官僚が差配する政治の構造「官僚内閣制」にこそ諸悪の根源があり、官僚による過剰な政策形成への関与を排除し、内閣をその中核に据える政治主導を実現すれば、すべての問題は解決すると主張した。しかし、この飯尾の処方箋を実践した鳩山内閣、菅内閣がどのような「政治」を行ったかは、いまや全ての国民が知っている。飯尾の主張に対する評価は「病状の診断はその通りだが、処方箋が間違っていた」というものに定まりつつある。官僚を排除して政治家が表に出れば物事が解決する等という駄法螺を、どうして多くの国民、多くの政治家が真に受けたのだろう。官僚というモノ言えぬ黒子たちに反論の機会は無い。反撃することが許されないサンドバッグとして、この5年間、官僚たちはメディアの餌食となりボコボコにされてきた。しかし、そんなことをやっても事態は全く解決しないことを、私たち日本人は、3.11という国難を通じて、グロテスクな形で実物教育を受け、知るところとなった。本書で大山は、官僚内閣制では無く国会審議のあり方、具体的には本来議論の府であるべき立法府で何ら実質的な議論が戦わされず、もっぱら「ご説明」「低姿勢」に徹し、基本的に原案を一字一句訂正させないことを目的とする法案審議のありようを問題視する。そして審議日程に内閣が全く関与できず法案を議会に提出したら最後、法案審議の日程、ありていにいえば法案の生殺与奪の権を内閣は与党にゆだねざるをえないところにそもそもの問題があり、更には、与党の国会対策委員長が差配する審議過程にこそ問題があり、法案審議の主導権が与党にあるからこそ審議が空洞化するのだと主張する。確かに法案審議の日程に内閣が全く関与できない今の状況が弊害を生んでいるのはその通りだろう。そこは是非、諸外国の事例も参考にしながら正すべきは正していくべきだと思う。ただそれでも私は「ここを直せば問題は解決する」式の提案には、どうも諸手をあげて賛成しかねるという心境に私はある。確かに大山が本書で指摘していることは正しい。国会の審議がスキャンダルの追及や罵倒の連続で、肝心要の「相対立する国民相互間の利害をどう調整するか」という点についての議論が実質的にほとんど為されていないのは日本の議会制度の重大な欠陥であると私も同意する。」しかし、それは単なる制度、官僚制や国会法、内閣法だけの問題なのだろうか。違うのではないか。問題の本質は、わたくしたち日本人じしんにあるのではないか。私たちは自分の利害に極端なまでに敏感である。敏感でありすぎるくらい敏感である。これは異常なことではない。ただ私益が極端なまでに増長し、公益が無視される度合いが、いわゆる「先進国」の中で、まだまだ強すぎるのではないか。例えば成田空港である。日本の中核空港である成田空港は、周辺住民の反対運動と、それに加勢する全共闘一派のテロ活動のお蔭でいまだにその機能を十分に発揮できていない。その結果、海外出張する日本国民は、この一部の反対者のお蔭で多大な迷惑を蒙り続けている。それでも日本経済が追い風を受けて高度成長を続けているうちは、まだ良かった。低成長に陥り衰退の色さえ目につくようになった昨今、まだ国際的に十分競争力を持つ国際空港に成りきれない成田の現状を見ると、私はいてもたってもいられなくなる。本来、成田は周辺の土地を強制収容して農民をすべて他の地へ移し、そこへ新幹線を引いて東京駅と直結し、滑走路は最低でも3本、最大で4本は引いて、しかも24時間利用可能な国際空港にすべきなのだ。それを、一部の国民の反対を前に、開港から30年以上たっても滑走路がまだ2本しか稼働していない。これを政治の停滞といわずしてなんと言おう。しかもこの政治の停滞は制度や官僚制の問題では無い。公益を無視し私益の優先を図る日本国民じしんの有り様こそがその原因であり、これこそが日本の低成長をもたらし衰退をもたらしている最大の原因なのである。区々たる制度の欠陥に原因を求めることでお茶を濁すのではなく、「全体最適」こそが重要であるという真っ当な政治感覚を私たち日本国民のひとりひとりが取り戻すまで、日本政治の停滞低迷は続くのではないか。
議会制度の優れた分析書です
2015/11/09 07:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の国会というタイトルのせいだろうか、あるいは岩波新書という政治に関しては批判的立場の著作を出しているレーベルだからでしょうか、その手の期待を裏切るせいかもしれません。
自分の読んだ印象とまったく異なる内容の書評が多々散見される本です。まるで内容と関係の無い批判までであり、これでは著者に気の毒な気すらします。
この本は国会という制度の法律により定められた仕組みで運営される組織体の機能性について各国別によるそれぞれの功罪をきっちり語り、英国のウェストミンスターモデル理想型一点張りはおかしな御論であると語ります。むしろ機能不全の側面があることも語ります。
また二院制の日本では相対的に強すぎる参議院のありかたを語ります。
強行採決だの乱闘だのは無意味だとか、審議がなされていないとかテレビでの放映に向けてのフリップの是非だとかの問題ではないです。制度の是非と分析です。お間違えのないように。